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オルゴールと銀の弾丸  作者: 緑野くま
第四章 狂騒闇夜 …そして
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第二十五話 青の歯車『Werewolf』

月明りに照らされる、荒廃した街の中。私達は、戦っていた。

どの位時間が経った?時間なんていう概念になんか囚われている暇などなかったが、それでも気にせずにはいられない。暗い中にずっといるとなおさらだ。

戦っている間、絶え間なく鳴っていたのは風を斬る様な音ばかり。それも、全て『Werewolf』の攻撃だ。三対一とはいったものの、優勢なのはそっちの方だ。

月の光が影響を及ぼしているのか(そうだろうが)、『Werewolf』の力はこれまでに戦ってきた者よりもケタが違った。

私はいつもの二丁拳銃。夏美さんは弓で、遠距離から応戦している。

一樹さんの戦闘方法は、いわゆる肉弾戦だった。殴打や蹴りの威力はなかなか強烈なものだった。

だがそれも、『Werewolf』が相手となると赤子同然なのだろう。全く歯が立たない。

もう長い事戦っていたが故に、一樹さんは息が上がっていた。汗の量も尋常じゃない。

「お前らさ、おとなしく投降したらどうだ?そうすれば後は攻撃しねぇよ。」

『Werewolf』が余裕綽々といった風にそういう。その表情は、こちらが苛立ちを感じる程嫌な笑みだった。

「ハァ…お前の狙いは…咲子だろう…。僕達がここで終わると…ハァ…彼女が危ない…。」

一樹さんが息を切らしながらそう言った。そうだ…確かに『Werewolf』は最初こう言っていた。


『やっと戦えるなぁ…倉岡咲子!!』


恐らく、『Werewolf』は上野隊長に変身して、私と戦うチャンスを伺っていたのだろう。

だけど…何故?私は、『Werewolf』と戦う理由がない。何かした覚えはないし、そもそも今回初めて会ったのだ。

何でコイツは、初対面の相手に向かってこんな事が言える?仮に前に『上野隊長』として会っていたとしてもだ。

どちらにせよまあ…倒してから訊くしかない。

私は銀弾を乱射した。案の定、全て避けられてしまったが、その直後一樹さんが後ろから蹴りを入れる。

その一撃が、『Werewolf』の顔を掠めた。

『Werewolf』が、舌打ちした。よっぽど気に食わないらしい。その直後、再び『Werewolf』に襲い掛かるものがきた。一本の矢が、とんでもない速さで遠くから飛んでくる。

その矢が、『Werewolf』の腕に直撃しそうになった。しかし、間一髪のところで『Werewolf』は避ける。だがそれでも、『Werewolf』の片腕から血が流れていた。

「てめぇら…、その女と同じ位厄介だな…。」

そう言った直後、『Werewolf』は両腕を上げた。向いているのは…夏美さんと一樹さん。

「…っ!!やめろおおお!!」

私は叫んだが、『Werewolf』は聴く耳を持たず、構えを続けている。構えた手から出てきたのは、青白く輝く炎が二つ。その炎はやがて、槍の様な形になり…放たれた。

次の瞬間、二つの槍はそれぞれ、二人の身体を貫いた。広場に二人の絶叫が響き渡る。

「ううっ…!!」

私はいつの間にか、呻く様な声を上げた。ああ、声が出ない。そして、私の中で膨らんでいくのはもはや一つだけ。…怒りだった。

「貴様ああああァァァァ!!」

『Werewolf』に突進していく勢いで、私は走った。涙が止まらない。

『Werewolf』が、またあの構えをとった。そして、あの炎が放たれた。


私の身体に、直撃した…。


静まり返る広場。そこで、『Werewolf』は哄笑していた。

「存外呆気ないな。」

そう吐き捨てると、『Werewolf』は倉岡咲子の元へと行こうとした、その時だ。背後に誰かがいるのに気付いた。

振り返るとそこには…彼にとって、見覚えのある男が来た。

「…何しに来た。『Vampire』。」

『Vampire』は静かに答える。

「貴公を封印しに。」

「!?」

その時、『Vampire』は『Werewolf』の首を掴み、詠唱し始めた。『Werewolf』はさっきまで威勢が良かったのが嘘のように、もがき苦しむ。その数秒後、『Werewolf』を、青い光が包み、やがて歯車へと形を変えた。

『Vampire』は一息吐くと、もう一度詠唱を始めた。その時咲子、夏美、そして一樹の身体に異変が起こる。傷があっという間に塞がったのだ。

『Vampire』は三人の治療を終えた時、目の前に魔法陣を作り出した。

「オルヴェア…聴こえるか。」

『おう、任務完了ってとこか?そっち。』

「ああ…。ようやく、彼女を救い出せた。」

『あのバカが…咲子を殺してどうすんだよ…。まあいい。『Vampire』お前今、俺のいる場所が分かるか?』

「ええ、何となく。」

『後でこっちにこい。アレもちゃんとあるからな。』

「それはいいとして、こちらの二人はどうする?」

『Vampire』は夏美と一樹の方へと目線を向けた。すると、『オルヴェア』から返事が来た。

『一応そいつらの言う基地ってとこに連れて行く。こんなところで眠らせていく訳にはいかねえだろ。』

「分かった。お気をつけて。」

『おう。お前もな。』

『Vampire』は魔法陣を消した。そして咲子の身体を抱えて、何処かへと飛び去った。

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