傍観者
何処かもわからない、とある場所。
そこに一人、少年がいた。
少年の前には、魔法陣が映っている。少年は、ただじっと、魔法陣を見つめていた。
そして、口を開いた。
「あいつ…はしゃいでいるな…。」
何かに呆れるものだった。その何かは…少年にしか分からない。そして更に、ただ一人で喋り続けた。
「ふざけやがって…あいつ、あの女殺すつもりじゃないだろうな…。」
険しい表情だった。目つきも鋭くなっている。
そんな時だった、少年は背後に誰かがいるのに気付いた。振り返ると、そこには長身の男がいた。だが、少年はこの男の事は知っていた。
「『Vampire』…!?お前、探し物は見つかったのか?」
少年がそう訊くと、『Vampire』と呼ばれた男は、「いいえ。」と残念そうに首を横に振った。
「そうか。それなら、しょうがないか。」
「…ところで、貴殿は一体何を見ている?」
今度は『Vampire』が質問してきた。少年は手招きして、魔法陣を見せた。
「これは…『Werewolf』か?」
「そうだよ。困ったもんだぜ。手下もそれなりにしか送り付けていないくせに…。」
少年はため息を吐いた。『Vampire』は少年を見てから、再び魔法陣に目を移した。
すると…『Vampire』の表情が、驚愕に満ちたものへと変わっていく。少年も彼の異変に気付いた様だ。
「馬鹿な…これは…!!」
『Vampire』はそうつぶやいた後、その場から突然姿を消した。少年は呆気にとられる。
「なんだあいつ。また行っちまった。…つうか、何を見たんだ?」
少年は魔法陣を、今度はよく見てみた。その時だ。少年はある真実を見た。
「な…フ、フハハハハハ!!」
少年は笑い声をあげた。そして、笑いを含んだ声でこうつぶやく。
「おいおい…嘘だろ…。こんな事あるかよ…。」
そして、少年は魔法陣を閉じると、また口を開いた。
「成程。…よし、決めた。倉岡咲子をここに呼ぶか。なんたって俺は、『オルヴェア・キアラン』なんだからな。」
少年は、笑みを浮かべた。




