咲子の夢 《1》
雲一つ無く晴れ渡った空の下。1人の幼い少女が母親らしき人物と、手を繋ぎながら歩いていた。
「ねえお母さん。またあそこに行きたいなぁ。」
「フフッ 行くわよ。あなたの大好きな所へ、ね。」
「やったー!嬉しいなーっ!!」
少女はうさぎのようにピョンピョンと飛び跳ねる。母親らしき人は微笑んでいた。
10分後、その2人はある建物に着いた。ぼやけていてよく分からなかったが、そこには『オルゴール博物館』と刻まれた石碑があった。
「こんにちはー!!」と、少女は威勢よく扉を開ける。すると、奥から1人の男が出てきた。
「いらっしゃい。また、来てくれたのか。」
「うん!だってサキ、ここが大好きなんだもん!」
サキ…?ああ分かった、この少女は…私の幼いころなのか…。とすると、あの女性は私の母だったのか。
少女改め幼いころの私は、建物の中へと入って行った。
「おじさーん。こっちに来てー。」
幼いころの私は先程の男を呼んでいる。何か気になった物でもあったのだろうか。
男が来て「何だい?」と言われると、幼いころの私は1つの箱を持った。
「これ、ゼンマイ巻いて!!」
そう言いながら、箱を開ける。その中は、歯車や細かな部品が組み込まれたものが敷き詰められ、その中心には人形があった、オルゴールだった。
「いいよ、ちょっと待ってていな。」
男はそう言うと、ゼンマイを巻き始める。巻き終わったと同時に、オルゴールは鳴り始めた。
誰でも知っているクラシックが静かな中で流れている。幼い私は、オルゴールの中心にある人形が、クルクルと回っているのを凝視していた。
音楽が終わると、幼い私は目を輝かせていた。
「綺麗だったなぁー。ねえねえ、もっと何か無い?」
「そうだな。じゃあ、一緒に見て聴いてみようか。」
そう言った後、男と幼い私は館内を歩き回った。
あらゆるオルゴールを見つけては聴き、見つけては聴きの繰り返しだった。
そんな中、幼い私は1つのオルゴールに目を止めた。
「あれ?こんなオルゴールあったっけ?」
「ああ…これか。聴いてみるかい?」
「うん。聴いてみたい。」
そう言うと、幼い私は箱を開けた。
「わあ、こ…オ…ゴー…のはぐ……とても……だね。」
何故だ?幼い私の声がだんだん聴こえなくなっていく。
「そう…ろう。あ…にあ……、きい…」
私の声だけじゃない、男の声もだ。そして次第に映像もノイズがかかったようなものになっていた。
声が消え、映像が完全に消えたとき…
私は目を覚ました。