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日本産魔術師と異世界ギルド  作者: 山外大河
ギルド活動編
30/35

20 異変

「そういえば、アレから黒点病の方はどう? 薬効いたか?」


「はい。あの時の薬で完治しました。まだ二回目の服用だったんですけど、治ってくれてよかったです」


 出口に向かって歩きながら、俺達はそんな会話を交わす。


「それにしても……結構雇われているギルド、多いんですね」


「そんだけ厳重に警備してんだよ」


 歩いているとやはり他のギルドが警備している所を通る事になる。明らかに持ち場を離れている訳だから、その都度状況を説明する必要があったけれど、短く説明すれば分かってくれた。

 だけども……たった今、視界に入った方への説明はなんだか面倒そうである。


「あぁ? なんでテメェが此処に居るんだよ。お前の警備は三階だろうが」


 森のクマさんこと、キースである。


「ロベルトの仲間の奴に、転移術式で飛ばされたんです。だから此処に居ます」


「おいおい、調子乗った事言ってたくせに、なんだよそのザマは」


「……」


 コレに関しては、何も反論する事が出来ない。

 多分だけども……コイツが同じ状況に立たされたとするならば、俺の様にあっさり飛ばされたりはしなかったのではないだろうか。


 目の前の男の力は、きっと俺の様に仮初めの力じゃない。その力を得るまでの過程に経験だって山程詰んでいる筈だから。

 だからきっと、キースには俺を罵る権利があると言ってもいいだろう。


「それで、その子は?」


 隣に立っていたカルロスがミラの姿を見てそう尋ねてくる。


「そうだよ、なんなんだよそのガギは」


「簡単に言うと、逃げ遅れて巻き込まれた一般人だよ」


「それで、今あなたが出口に連れて行ってると」


「そういう事です。いくらなんでも放っておけないでしょう?」


「まあ確かにそうだね。キミの判断は正しいと思うよ。今は僕達以外は自由に動けないからね。無事に送り届けてあげなよ」


「了解です」


 俺がカルロスにそう返した所で、カルロスはキースに視線を向けて口を開く。


「そういえば熊さん小さい女の子とか好きだったろ? 替わりてえとか思ってる?」


 その言葉を聞いた瞬間、ミラが自分の身を守る様に俺の背に身を隠す。


「なあカルロス……一周回って逆に落ち着いたぞ。後で殺すから」


「あ、これマジでヤバい奴だ……」


 と言いつつも笑っているカルロスと、逆に怖い位の真顔のキースを眺める俺の背から、ポツリと声が聞えた。


「隠れておいてなんですけど……私十四ですよ。全然小さく無いですよ……」


 そうは言っても、若干子供っぽい容姿な気がするし……何よりキース位の奴の場合、十四が相手でも充分に犯罪のにおいがするからな。

 そんなやり取りを交わした後、俺達は再び出口を目指した。



                  ◆◇◆◇



 そして暫く歩いた時だった。


「裕也さん。裕也さんからみて、私は子供っぽく見えますかね」


「年相応じゃねえの?」


 そんなやり取りを交わす俺達の前に、唐突にソレは現れる。

 本来見つけるべき存在。だけどミラを外に連れ出すまでは、出会いたくなかった存在。

 その存在の登場に、ミラは一歩後ずさり、そして同じ様に相手も顔を引きつらせた。

 俺はミラを庇う様に前に出て、構えを取る。


「今度はお前か……ッ」


 金髪の同い年くらいの青年。

 俺に不可解な事を言ってのけた、あの青年が、俺達の正面に出現した。

 そして青年がそう口にした直後だと思う。

 身に付けていた指輪が……赤く、光り始めた。


「……ッ」


 突然俺の体が金縛りの様に動かなくなる。

 いや、違う……体が、勝手に動く?


 気が付けば、ゆっくりと俺の視線が逸れ始めた。

 ゆっくりと、確実に、ミラの姿を人見に移す。


 そして訳が分からぬまま、俺の手がゆっくり、しかし確実に握られ……そして動き出す。

 まるで、ミラを殴り倒そうとでもする様に。

 だけど次の瞬間、その手は止まった。

 否、止められた。


「何やってんだてめえ!」


 青年に跳びかかられ、そのまま床に張り倒される。

 そしてそのまま馬乗りになり、勝手にもがきだす俺の腕を抑え込んでいた。

 青年は叫ぶ。


「コイツの指からその指輪を取れ、ミラ!」


 その声に、ミラが小さく躊躇う様な声を漏らした。

 戸惑っている。間違い無く状況を呑みこめていない。

 そしてそれは俺も同じだ。

 なんだよ……これ。


「早くしろ! もう持たねえ!」


 青年の声を聞いて……いや、もしかするとこの状況の異常性に気付いてか、ミラが俺の指か指輪を外しに掛った。

 そうしてそれが抜けた瞬間……その不可解な現象は終わりを告げる。


「戻った……のか?」


 指輪が抜けた瞬間から、抵抗されなくなったからか、青年がそんな事を口にし、ミラも安堵の息を漏らす。

 そして俺はゆっくりと呟いた。


「……何だったんだよ、今のは」


 その答えを正確に答える事が出来る者はいないだろう。

 俺の身に一体何が起こった事。そしてこの青年がミラか……もしくは俺を助ける為に動いた事。他にもまだいくつか。

 だけど確実に断言できる事が一つ。


 俺達の雇い主のリリーブ社……裏に絶対、何かある。

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