月の落ちる前に
月の落ちる前に
どちらかというと、その男は裕福でなかった。むしろ貧乏であった。男は、髪や髭がだらしなく伸びているせいで、年齢に合わない容姿をしていた。常に、度の合わない丸い眼鏡と、ぼろ切れのような服を身に付けていた。しかしその男はどこか品のある顔をしていた。ほんの少し手を加えてやれば、どこぞの紳士に見えるだろうという男だった。
そんな男は今宵、独り晩酌をしていた。場所は民家の屋根なのだが、もうそこに人の生活する気配は無くなっていた。男の記憶によれば、そこには二年程前から若夫婦と幼い息子が住んでいたが、何ヵ月も前にここから飛び出して行ってしまった。この家だけでない。周りの家々はもうほとんど空っぽになっている。
今、この地球に住む人の数は、数年前と比べて約八割になっていた。では、二割はいったいどこへ消えたのかというと、それは、火星だ。地球の終焉に向け、人々は火星へと移住したのだ。
「おじさん!」
からっと明るい声が、下の方から聞こえた。覗くと、いつものあの子がこちらを見上げている。月明かりが彼女の真っ白なワンピースを際立たせた。
「お嬢ちゃん! まだいたのかい?」
男は思わず声を上げた。とっくの昔に、彼女は地球を去ったと思っていたのだ。彼女はまた微笑んで返した。
「うん! 塾の先生が今夜まで地球にいたからね。ぎりぎりまで授業を受けたかったの」
「熱心だなあ」
彼女はふふ、と悪戯っぽく笑って、梯子を拙く登ってきた。紳士らしく手を差し伸べてやると、その子はまた笑顔をこぼしていた。ほんの少しの大人っぽさと、まだ幼さが残った顔。見慣れたつもりだったが、今夜はひどく愛しく思えた。
「今日は挨拶よ」
「挨拶って、別れの?」
「やだ、これからもよろしく、の挨拶よ! どうせ向こうでまた会えるじゃない」
純粋な彼女の発言に、男は優しく笑顔を返すことしか出来なかった。
彼女は無造作に転がったビール瓶の数を見て腰を抜かしそうになっていた。そしていつものように、もう、と大きくため息をついて、意気揚々と瓶を並べ始めた。
「今日くらいはお酒をやめてよね! それに飲みすぎよ、いつもいつも」
「今日だからこそさ」
彼女はふっと顔を上げた。穏やかな目でじっと見つめる男の視線に、少し顔を赤らめて、誤魔化すように月を見やった。今宵は見事な満月だった。
「不思議ね」
彼女が独り言のようにぽつりと言った。
「こんなに綺麗なのに、もうすぐ落っこちてきちゃうなんて」
月はめらめらと燃えて見えるほど強く輝いていた。日に日に一回り二回りと大きくなっていく月。月はバランスを失い、この地球へと落ちてくる。『異常な自然現象』でこうなってしまったのだ。そのニュースを聞いたお偉方はパニックになり、進みかけていた火星への移住計画を急ピッチで進めた。そして今から約四年前、地球人は改造された神秘の場所へと足を踏み入れることとなったのだ。地球人の約二割は、すでに移住を完了しているそうだ。
「そうだなあ」
男は気の抜けた返事を返した。それはまるで緊張感のない声だった。
彼女は月を眺めながら、膝を抱えて座り込む。その表情にはひとつの不安もなく、希望に満ち溢れていた。
「私、明日の便で火星に行くのよ。話したでしょ。おじさんはいつ行くの?」
「――」
男は思わず、困ったような顔をしてしまった。しまった、と思って、すぐにいつもの穏やかな顔に戻した。男の些細な葛藤には、彼女は微塵も気付く様子はなかった。
「明後日の便だよ」
「ほんとう? じゃあ、明日ちゃーんとお見送りには来られるわね」
眉をふいっと上げて、ね、と返事を促す。彼女はまた意地悪そうににやりとした。
「こいつ」
額を突いてやると、無邪気に笑い声を上げた。男は、まだ彼女は子供だと思った。
男が隣に座るなり、恥ずかしそうにスカートを整えた。
「おじさん、あのね」
「うん?」
「私、夢があるの。笑わないで聞いてくれる?」
「もちろんだとも」
促すと、彼女は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った。
教師になりたいの、と。
男は、新鮮な空気が体中を駆け巡るような感じがした。興奮で呂律があまり回らなかった。彼女にぴったりだと思ったのだ。
「素晴らしいじゃないか!」
思わず声を上げた。彼女には意外な反応だったようで、大きな瞳を丸くして、照れくさそうに首を傾げた。
「そう?」
「そうさ、素晴らしいよ。君にぴったりじゃないか。きっと良い教師になれるぞ」
彼女は顔を赤くしてにこにこした。夢を語るというのは、案外この少女にとっては勇気のいることだったらしい。そんな勇気がこんな自分に向けられたことに、男は大いに満足していた。そして、少女の夢の叶うことを心から願った。
「おじさんは? 何か夢はあるの?」
「僕?」
驚いて妙な声が出た。まさか自分に、こんな質問の来る日が訪れようとは思ってもみなかったのだ。彼にも少なからず夢はあった。しかし語るにはあまりに、夢を見すぎているような気がしていた。
「あるのね! 教えてよ!」
あどけない笑顔で迫ってくる彼女に、男はたじたじとなってしまう。
「そんな、僕には夢なんて、遅すぎるよ」
「何を言ってるのよ。ひょっとして、恥ずかしがってるの?」
「君だって恥ずかしがっただろう?」
「私はまだ子供だからいいの!」
「もう十六だろう」
「話を逸らさないでよ、おじさん」
悔しそうに頬を膨らます彼女が可笑しくて、夜空を仰いで笑い声をあげた。いやあ、すまないすまない、と声をかける。そうしてほんの一瞬の穏やかな沈黙の後、彼は静かに言った。
「僕は昔パイロットでね。前にも話したろう」
彼女は頷いて先を促した。
「小さな飛行機を飛ばしては、空を駆け上がっていた。それはそれは、本当に気持ちが良くてね。……夢があったんだ。あまりに夢物語だから、人には話したことが無かったけれど。
世界中を旅してみたいんだ。この美しい地球が生み出してきたものを、この目で見て回りたい。それが僕の夢だ」
今なら顔を赤らめた彼女の気持ちがわかる気がした。男は視線を落とした。言ってから、本当に馬鹿な夢物語だと改めて思った。
「その旅、私も付き合っていい?」
彼女が言った。ふっと、やわらかな風が吹き抜けた。
「もう地球では出来ないけれど、向こうでならまたきっと出来るでしょ!
私、おじさんの旅についていきたい」
彼女の意外な発言に、男はきょとんとした。純真無垢な少女の心に、思わず目頭が熱くなった。そうしてまた、この少女を愛しく思って、もどかしくなった。
「そうだね。君と一緒なら、きっとどこでも愉快な旅が出来るだろう」
少女はそれを聞いてふふ、と満足そうに笑った。そして、約束だからね、と言った。
「時間、いいのかい」
そう言うと、三つ編みを揺らしてぱっと腕時計を覗き込んだ。
「大変! 明日早いからもう帰らなくちゃ。母様に怒られちゃうわ」
革製の鞄を引っ掴んで、彼女は立ち上がった。ワンピースがふわりと風に揺れた。
「明日の便は十時発よ、いいわね!」
はいはい、と肩をすくめてやると、また意地悪そうに笑って、梯子を危なげに降りて行った。
男は静かになったそこでじっと動かずにいた。ふと、もう十月、随分と寒くなったものだと思った。おもむろに立ち上がって、彼女の去っていくのを見た。真っ白なワンピースはずっと遠くて、もうおぼろげだ。
男はすうっと心が痛くなるのを感じた。彼女と一緒に夢を叶えることは出来ない。彼女との別れは、もう間近なのだから。
火星へは、所謂ロケットで向かう。搭乗員は現在百名弱程度で、一日平均三機が火星へ向かい、地球と往復している。打ち上げ場所はひとつなので、搭乗を望む地球民が、連日休むことなく大勢そこへ集っている。しかし、フェンスに架かる有刺鉄線という古典的なトラップひとつで、人々はあの希望の機体へと辿り着くことはできない。男も、またそうであった。男は搭乗を求める声に押されながら、ただその機体を眺めていた。
彼女の乗る予定のロケットは空を向いてそびえ立っていた。この距離でもその迫力は凄まじい。小奇麗な婦人・紳士が、使いに大きな荷物を抱えさせ、フェンスの外の大声を上げる人々には目もくれず、優雅に乗り込んでいく。もうあと数十分で、この機は発射する。火星への希望の光だ。
男は彼女の姿をまだ見つけることが出来ていなかった。もう乗ってしまったのだろうか。無駄だとはわかっていても、頭を左右に振って、向こうを覗き込む。
その時、無機質なフェンスがひどく、高く分厚い壁のように思えた。彼女と自分を隔てる壁。あの大昔壊された有名な壁のようにはいかない、永遠とそびえ立つだけの果てしない壁――。
ふと、白いシャツの少女が目に映った。一目で、間違いなく彼女だと確信した。分かった途端に寂しさが男を襲った。彼女は白いシャツに、黒いスカートをはいていた。父と母と思われる男女と、何やら話している。すると、ぱっとこちらを向いた。思わず心臓が跳ねた。今度は嬉しさに包まれたが、彼女はすぐに視線を外してしまった。ゆっくりと辺りを見渡している。どうやら、この大勢の民衆の中から、男を捜しているようなのだ。
ここで大きな声を出しても意味がない。後ろからは、それを遥かに上回る雄叫びが止まることを知らないからだ。男は、精一杯手を振った。彼女を笑顔で見送ってやりたかった。男はただ手を振った。振りながら、ぐっと胸が痛くなるのを感じた。もう彼女と会話をすることは叶わない。自分のあの夢物語を実現することも。
すると、彼女の視線が留まった。まさに男のいる場所でだ。彼女は、すぐに手を振り返す。精一杯両手で、大きく振っている。届いた。届いたのだ。きっとあの美しく純粋な笑顔で、手を振っているのだろう。男はそれだけで十分だった。流れ落ちる熱い涙ももう気にしなかった。
ああ神様、どうか彼女が幸せになれますように。彼女の素晴らしい夢が叶いますように。
彼が手を振るのを見た。溢れんばかりの民衆に埋もれてはいたけど、間違いなく、それは彼の姿だった。少女は瞬く間に笑顔になって、すぐそれに応えた。見送りに来てくれた!
「もう、行きますよ」
少女の母がじれったそうに言った。
「いったいどなたに手を振っているの?」
「別に、知らない人よ!」
仲の良い人、などとは、母の前では言えなかった。塾の帰りに偶然知り合い、暇さえあれば会いに行っていた人。そんなことを知られては、きっときついお咎めがあるに違いない。
「早くお乗りなさい」
「はい」
元気に返事をして、心の中で彼に別れを告げた。どうせまた明日会えるのだ。少女の心は晴れやかだった。さまざまな期待と希望を胸に、機に乗り込んだ。
『ご搭乗いただきありがとうございます。発射時刻は、予定通り十時です。』
無機質なアナウンスが機を満たした。機内は広々としていて、落ち着いていた。それぞれ本を読んだり、杯を交わしたりしていた。外のあの様子と大違いだ。
両親よりも先に席について、丸いガラスから外を眺めた。まだ民衆たちは大声を上げていた。あまりに大勢いすぎて、何を言っているのかは全くわからない。
「じろじろ見るのはおやめなさい。みっともないわ」
母が膝に手を重ねて、隣にすっと座った。父もその隣に続く。
「外の連中も、まったくもってみすぼらしくて、みっともない……」
母のこの言葉で、少女はむっとした。おじさんのように素晴らしい人はいるわ。みっともなくなんかない。
ポーンと音が鳴った。また機内アナウンスが流れる。無機質な声が、ただその事実を告げた。
『発射時刻は、予定通り十時です。皆様お席に着いて、安全ベルトの着用をお願いします。
尚、当機は地球からの最終便となります。お忘れ物なきようお願いします……。』
少女はふっと、頭が痺れるのを感じた。
今、今なんて?
「……母様」
「どうしたの」
少女は抜け殻のようになりながら、うわ言のように言った。
「これは……最終便なの?」
「ええ、そうよ。最終便は環境が良くないと聞いたけれど、何しろ搭乗券は本当に高くて――」
「外の人たちは」
「え?」
「外の人たちはどうなるの」
娘の問いに、母は、何の気なしに答えてみせた。
「知りませんわ、そんなこと。連中は搭乗券なんてどれだけ願っても手の届かない、貧困民よ。私たちは違うけれど」
「――」
だって、そうでしょ。言ったじゃない。明日の便に乗るんでしょう。そう、言ったじゃない。
少女は体中から酸素が抜けていくような感覚に襲われた。頭の奥が冷えて、ぼんやりとした。
彼は、彼は私に嘘をついたのだ。私を……私を心配させないために? 悲しませないために?
『皆様お席に着いて、安全ベルトの着用をお願いします。尚、当機は地球からの最終便と……』
「ちょっと、あなた大丈夫?」
母が少女の肩を支えた。先程までの元気が嘘のように消えている娘を、さすがにおかしく思ったのだろう。父も新聞から少女に目線を移している。
「私……私、ちょっと、……お手洗いに」
「いけないわ、もう席に着いておかないと」
「すぐに戻るわ……」
母の手を振り払うように、席を立った。搭乗員の女性が少女を制止したが、彼女は、すぐに戻りますから、と。
知っていたの? 知っていて、私に手を振ったの? どうして……。
少女はあまりのショックで、声も出せなかった。息が苦しかった。もう彼と二度と会うことは出来ないのだ。彼と会話を交わすことさえ。何故なら彼は、火星へと行くことは出来ない。あの綺麗な月が落ちてくるのをただただ眺めるしかないのだ。彼には、いや、あそこにいる大勢の人が、搭乗券を買えなかった。搭乗券を買うことは、命を買うことであった。金で命を買ったのだ。私は。もう何も叶わない。彼の夢を、叶えてあげることも。
「お客様、お席にお戻りください。まもなく発射準備が……」
若い男性の搭乗員が、彼女をなだめるように引き留めた。男性は、今まさに出入り口を閉めようとしていたところだった。少女は、足を止めた。
「お客様、どうかお席に――」
その時だった。自分でもそんな機動力があるのかと後々驚いたほどだったが、少女は一目散に駆け出していたのだ。もちろん、外へ向かって。
「お客様!」
男性の声が少女を追いかけたものの、その少女はまったく止まる気配が無かった。迷いは無かった。
細い連絡通路を駆ける途中、誰ともすれ違うことはなかった。きっともうみんな、あのひどい乗り物に乗り込んでしまったのだ。あんなたくさんの命を、希望をほっぽって、逃げおおせようというのだ。
涼しい空気が少女の横を吹き抜けた。あっという間に少女は脱出した。何度も足がもつれそうになったが、ひた走った。辿り着きたい場所はもう決まっていた。
機内から、この少女の姿を見た母親と思しき悲鳴が上がった。
男は祈っていた。ただ、彼女の幸せだけを。機はもう数分で発射だった。さっきから、熱い涙はちっとも乾かない。大勢の貧困民は悲鳴をあげ始めた。どうあがいても逃れられない死に、人々は恐れおののいていたのだ。男は静かだった。男は、ただ静かに時を待った。
その時、民衆がざわついた。飛ぶ瞬間がやってきたのだろうか。男はそう思って顔を上げた。次の瞬間男は、心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けた。
「お嬢ちゃん!」
出来る限りの叫び声を上げた。もはやそれは叫びだったのだ。悲痛と、驚きと。
「どうして!」
少女は懸命に走っていた。ただ一直線に、男のもとへ向かっていた。
「どうして……!」
少女は、少女は笑顔だったのだ。あの無垢な、そして愛しい笑顔だ。しかし彼女の顔は涙で濡れていた。文字通り顔をぐちゃぐちゃにして、彼女は男に駆け寄った。意外な展開に、いつの間にか、民衆は静かになっていた。
「おじさん!」
もう二度と聞けないと思っていたその声に、男の胸は震えた。さっきよりもずっとこのフェンスを憎く思った。フェンスをほとんど鷲掴みにして、顔を可能な限り近づけた。少女は、息を切らしながら、笑顔で彼の手に、自らの手を添えた。
「お嬢ちゃん、どうして――」
「嘘つき!」
その第一声に、男は思わず拍子抜けした。
「え?」
「明日の便は無いわよ、あれが最終じゃないの! 馬鹿ね!」
「!」
そうだ、これは最終便なのだ。彼女はここにいるべきじゃない。
「君、君は――行かなければ」
「いいのよ」
少女はゆっくりと首を振った。一筋の涙が紅潮した頬を伝った。
「いいの。私、あなたと生きたいの」
男は、頬が熱くなるのを感じた。彼女のほうからこんな告白をされてしまっては、顔が立たないといった感じだ。
「それに、あなたの夢を叶えなくっちゃ」
「けど、君の夢は……」
「それならここでだって叶えられるわよ! 私きっと良い教師になるんだから」
少女はまた、美しく輝く笑顔になった。そこに迷いの無いことに、男は少し救われた。
「僕は……僕はなんてことをしてしまったのだろう。僕さえいなければ、君は生きて、夢を叶えて、幸せに……」
「ええ本当に、あなたさえいなければね」
彼女は微笑んで、男の手を包むように握った。
「あなたがいてくれて良かった」
男はまた自分が泣いていることに気が付いて、途端に恥ずかしくなった。そしてこの少女をまた、本当に心から愛しく思った。
遠くで地鳴りのようなものを感じた。民衆がまたざわつく。あの最後の機体が、今まさに、空の果てへ飛び立とうとしていた。男は、彼女がそれをじっと眺めているのを見て、聞いた。
「お嬢ちゃん。後悔は、無いのかい」
彼女は男のほうに振り向いて陽気に言い放った。
「当然!」
男は彼女が戻ってきてしまった悲しみより、戻ってきてくれた喜びに満たされた。そうして二人は額を合わせて、お互いのいることを確かめ合った。
「君の未来が飛んで行ってしまうぞ」
火星へ向けた最後の便は、轟音と凄まじい煙を上げて宇宙へと旅立って行く。二人はそれを見つめながら、静かに寄り添って歩いていた。地上はこの上なく穏やかで、人々は絶望というより、その壮大な景色に感動すらしていたのだ。
「私の未来は、ここにあるわ」
少女は男の手を握ると、微笑みを向けた。男もまた、少女の手を握り返して、この幸せな時に心から感謝した。
「ねえ、どこへ行きたい?」
「そうだなあ、ヨーロッパなんてどうだい? ……。」
――そうして二人はいつまでも、いつまでも幸せに暮らしたという。