勉強とは一人でするものだ
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「ついた! ここにしようよ!」
比奈田の案内により、ついたファミレスがここだ。
このファミレスは......。懐かしい、このファミレスは
俺の通っていた桜井中学校の生徒達がよく利用していた所だ。
まあ俺も一年の頃は若かったからな......、ここにこれば
友達ができるんじゃないかなぁ~? って思って勉強する時に
一度ここのファミレスを訪れた。
案の定、同級生の奴らや先輩達がうじゃうじゃ現れた。
そしてたまたまクラスの知ってる女子、村井さんと目があった。
俺は声には出さないが脳内で「あ、村井さんだ」って思っていて、
村井さんとはクラスで一応そこそこ喋っていたつもりだったから
あの人も一人だったし、声かけてくれるかな~と期待していた。
が、村井さんの顔でなんとなく村井さんの考えてることがわかった。
「あれ? あれはえっと、さ、さか......小春ちゃんのお兄さんだ」
てな感じだった。おい、途中で名前を思い出すのやめんなよ。
あと同級生の女子も知ってるって、どんだけ小春は有名なんだよ。
むしろ村井さんが一番優しかったかもしれない。他の奴らは
俺を認識してからがっかりしたような顔を見せてすぐさま視線を
他に移していたからな。渡邉くんとは結構仲が良いと思ってたのに......。
とまあ若かった頃のちょっとしたトラウマを思い出してしまい
若干ブルーな気持ちになる。
ていうかこのファミレスうるさいな。外からでも学生の騒ぎ声など
聞こえてくる。窓から中の様子を見ると、俺達と同じ高校の生徒を
発見した。そいつらのテーブルには一応教科書などが広げられているが、
誰も勉強せずに集団でキャアキャア喚いている。原始人共め......。
その光景を目の当たりにした鍵谷がフッ、っと嘲笑気味に鼻で笑った。
イラッときたのか比奈田が睨む様な目つきで鍵谷を見る。すると何故か
鍵谷は顔を手で隠して変な決めポーズを取った。そしてニヤニヤしている。
それを見た比奈田がキモッと言いながら鍵谷との距離を広げる。
俺も若干あいつから離れる。
「話にならぬな、言われて来てみたファミレスがこんな豚箱とは......。
このような所に我らを入れる気か? 騒がしすぎて勉強にならぬわ......」
それは俺も同感だ。この養豚場、ブヒブヒうるさすぎる。
ちゃんと豚を飼育しろよ店員。
「ならここ以外どこかあるの!? てゆーかなんでいるの?」
それはお助け部として言ってはならないだろ。一応依頼だしな。
「フッ、そうだその言葉を待っていたぞ! 我について来い!」
言うなりコートをバサッと翻し歩き始める。
......さて。
「どうする? 放っておく?」
俺の提案に普段俺達のようなぼっちにあわせることを得意とする
比奈田もコクコク頷いている。
「はぁ......。ついていきましょう」
春野がため息混じりで鍵谷の後を追う。比奈田は不満気だったが
春野の横に並び、一緒に向かう。
俺はこのまま帰ってもいいんだが......。
「ここだ」
ついたその店は先ほどのファミレスとは全くの真逆で、
店内は静かで、わずかな食器の音と客ののどかな喋り声だけの
清潔感溢れるファミレスだった。
正直さっき訪れた養豚場より、いいところだと思う。
「どうだ? この店はさっきのリア充共の巣窟とは訳が違うだろ。
店内は少しの喋り声だけでさっきの憎きリア充共の日本語か
どうか危うい喋り声しか聞こえないファミレスより、十分いいだろう?」
お前も十分、日本語かどうか危ういぞ。そして鍵谷が
最後に決めたドヤ顔は心底腹が立ったが、まあ店が良い所なのは
間違えないだろう。
春野は店を見て、少し笑っているような気がした。
さっきのお店よりは良さそうね、とか脳内で言ってるんだろう。
比奈田は鍵谷の紹介した所のくせに割と良い所だったから
なんとなく悔しいのだろう。
幸村はどうでもよさそうにあくびをしている。
「まあ入りたまえよ」
鍵谷が店の扉を開けて手招きする。お前の店じゃないだろ。
てか紹介しただけのくせに調子にのるな。
中は薄暗くてなんとなく綺麗な感じの空間だ。
先ほどのファミレスとここを比べるとさっきの所が居酒屋で
おっさん共が日本酒片手に上司の愚痴など言ってるとこだとすれば、
ここは学生が踏み入ってもいいのかと迷ってしまうような
優しい光で包まれたバーラウンジのようだった。
「ここは神経を集中させて魔力を練り上げる時などに
最適な場所だ。静けさに包まれたここは魔力を通しやすい。
いい練習場所だ」
お前は店で何をしているんだ。
「正直予想外ね。こんないい店が近くにあるなんて......」
「俺もビビったな。こいつがこんな洒落た店知ってるとは。
俺はてっきりラーメン屋にでも連れて行かれるのかと思ったぜ」
そんな所で普通は勉強なんてできないだろ。
適当な所に座り、腰を下ろす。学校を出てからずっと歩きっぱなし
だったので俺の足が悲鳴をあげている。弱っ、俺の足。
なんとなく周りを見渡すと俺と同じようにキョロキョロ顔を
振っている鍵谷。なんか顔がニヤけていて非常に気持ち悪い。
春野もそう思ったのだろうか俺を見ているような視線で
鍵谷を睨む。え、俺こいつと同レベ?
「おい、榊よ。周りを見るのだ」
言われた通りに周りを見てみる。すると今まで
気がつかなかったが、周りはほとんどが女性客だったのだ。
そして見た感じほとんどが若い女性。どの女性客もなんとなく
ビッチ臭がしない、春野のように清楚な感じだ。
「この店はな、この時間帯は女性客が多いのだ。それもかなり
若くて清楚系がほとんどを占めている。他の男性客と言ったら
我らを抜かしてもこの時間帯の秘密を知っている数少ない
猛者だけなのだ。無論、我もその一員よ。この店でやることは
一つ、見るのだ。観察しろ、現代社会を生きる若き美少女達を!」
最低だった......。確かに周りの数少ない男性客を見ると、
鍵谷のように女性客をチラチラ観察している。
もちろんのこと、女性陣はドン引き。鍵谷に向けてキツイ視線を
投げている。何故か春野は俺も睨む。いや、いつも俺のことは
睨んでいるし、いつもどうりか......。え、俺こいつと同レベ?
「じゃ、そろそろ勉強会を始めましょう!」
比奈田がそう宣言する。早速俺は勉強に取り掛かった。
俺は幸村に勝つために数学をする。春野も同じなのか
数学の参考書やら出てきた。
幸村は数学は余裕なんだろう、他の教科を出す。
鍵谷はまだキョロキョロしている。女性客を見ているのだろう
俺もさりげなく周りを見ようとする......が、比奈田が
俺をジト目で睨んでいたのですぐさま数学に目を落とす。
鍵谷と同じにされるのはごめんだからな。勉強するか......。
静かにやること3分ほど経って、いきなり比奈田が文句を言う。
「違う! こんなの勉強会じゃないよっ!」
今日は文句しか言わない比奈田。そう言われましてもねぇ......。
「むしろ勉強会ってやつはどんなことすんだよ」
「え? えーっと、皆でわからないとこ教えあったり、
テストでどこでるか確認したり、たまに休憩してお喋りしたり、
とにかく皆でやるのが勉強会だよ」
勉強してないじゃん......。
「それただ雑談してるだけじゃねえか。そんなのが勉強会と
言うもんなのか?」
「それに関しては同意見よ。そもそも勉強とは一人で静かに
するものだと思うのだけど?」
「うむ、我も全くの同意見だ。馴れ合いなど御免だから
我に友達など存在しないので、勉強会など初めてだ。故に勉強会とか
未知の単語。どんなことをすれば良いか、わからぬ」
ぼっちが口々にそう伝える。そう、勉強など本当は一人で
耳にイヤホンつけて音楽を聞きながら黙ってするものだろう。
「しまったーーーー!! ぼっちの比率が高すぎたよ!」
比奈田が頭を抱えて叫ぶ。内輪の中にリア充より普段一人でいる
ぼっちのほうが多いとか異例だろう。
「わりぃ比奈、俺もよくわかんねぇ。勉強会とか誘われるけど
行った覚えがない」
ここでさっきまで完全に空気と化していた幸村からの裏切り。
「ええーーー!! まさかの4対1!?」
まあ幸村は知っているものだと思っていたのだろう。
ここで比奈田は心が折れた。
「うん......。そうだよね、勉強って静かにするものだよね。
ごめんなさい私が悪かったです......」
一気にシュンとした比奈田。何故か悪いことをした気分になる。
「いやまあ......、解けねぇ問題とかあったら聞いてくれ」
「え、ええ。それくらいなら構わないわよ」
とりあえずフォローに回ると、一転して明るい顔に。
「ありがとう!」
いつものニコニコした顔を俺にも向けてくる。慣れないことに
ぼっちの俺、&春野は視線を逸らす。
そして鍵谷が何故か当然だと言わんばかりに偉そうな顔をして言う。
「ふむ、榊と春野よ。我にも教えてくれるよな? おい?」
無視。
勉強会(?)が終わり、解散した。
比奈田や鍵谷が分からない問題を聞いてくるくらいしか
話すことはなく、静かな勉強会だった。
一応これから幸村との約束だった本屋に向かう。
お互い無言で本屋まで歩いていく。
前にも言った気がするが喋る必要性など皆無だ。無言こそ最強。
幸村も沈黙には馴れているのか特に何か話しかけてくる訳でもない。
俺は思ったんだが、こいつリア充の癖にはぼっち要素も持ち
あわせてるよな。沈黙には耐えれてるし、集まりとか行かないらしいし、
たまに学校で一人でいるの見るし。まあ俺には関係のない話だ......。
不意に、俺の毎日全く触らないスマホが自己主張している。
メールだと? 小春からか、見なくてもわかる。この携帯電話は
小春からしか連絡は来ない。小春用の固有携帯電話と言ってもいいくらいだ。
ちょっと前に幸村から来たのを抜かせばな。
「なに、比奈田からだと......?」
件名には『比奈だよ☆』とアホっぽく書かれていた。
「なんて来たんだ?」
幸村が俺の携帯を覗き込んでくる。えーっとなになに......。
『今日はありがとう~! わからないとこ教えてくれて
助かったよ♪ また機会があれば教えて欲しいな♪』
そうか、そういえば絵文字は使えないんだったなぁ......。
あ、今のは気にしないでくれ。
返信は、こうだ。
『ああ。もう勉強会などやらんがな』
返信......っと。今さらだがこいつ、なんで俺のメアド知ってんの?
そういえば幸村も知ってたし、俺の個人情報がどこかで漏れてる!?
俺の人権はどこ行ったのかと心配したが、今は気にしないでおこう。
すると、携帯がまた鳴った。今度は誰だよ......。
件名には、『俺の眼よ、全てを映せ。夢幻―三千世界―』
意味がわからん。はいはい、削除削除......っと、
ピッ♪ 削除完了、さよなら鍵谷。
「いいのか? 見ずに消して」
「ああ、どうせくだらんことだよ」
携帯をサッとしまって、俺達はまた歩き出した。
すると今度は前から人の気配。
そいつは、今日すれ違った俺達と同じ高校の女性。
黒くて長い髪の毛を後ろでポニーテールにしてあり、目の色は
綺麗な真紅。鍵谷のなどとは訳が違う鮮やかで、彼女にあっている。
若干つり目で少し細い目を俺に向けている。
こいつに何か強烈な違和感を感じるんだが.......。
「見つけた......、龍紀」
やけに真剣な目つきで俺を見ている。顔がマジだ。
幸村は何事かと俺を見たり彼女を見たりしている。落ち着けよ。
俺は落ち着いて、真剣な顔で彼女を見据える。
沈黙が数秒訪れて、その沈黙を破るように俺が口を開く。
「えーっと、どちら様?」
読んでいただきありがとうございます。
次話から謎の新キャラの話です。
次話もよろしくお願いします。




