依頼人は変人
新キャラ登場!
主要キャラはあと一人程度だして終わりです。
第2章に入ってとうとうサブタイトルからBADENDが
とれましたが、BADENDなのは変わりません。
白。
あたり一面真っ白。だが微かに下が地面だとわかる。
その中に「俺」は佇んでいた。
「俺」はいきなり動き出し何かを抱きかかえる。
そして、「俺」を巻き込むほどにあたりが白に包まれる。
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「36,7か......」
俺は4日間の時を過ごして、ようやく風邪から解放された。
俺は幸村に比奈田のクッ菌をうつされてしまい、寝込んでいた。
それがもう尋常じゃないほどの菌であったのであろう、
俺は4日間ベッドから一度もでれないほどのだるさで、
トイレに行く時は立って行けなかった。
熱も酷くて、一度40度を越えた。死ぬかと思った。
そんな俺の運の悪さは、これだけではすまない。
俺がずっと寝込んで過ごした4日間の内、3日間が学校は
休みだった。貴重な連休をすべて寝て過ごしてしまった。
イジメ? 神様これイジメだよね? なぁお前おかしくないか?
教育委員会に訴えるぞバカ野郎!
俺の名前は榊龍紀。
並大抵のぼっちとは、段違いのぼっちであるつもりだ。
色々な苦難を乗り越え、いつでもぼっちを貫き通している。
突然簡単に自己紹介がしたくなってしまった。何故だろう?
俺は4日ぶりの制服に着替えて、朝食を求め一階に足を運んだ。
ちなみに俺と妹の部屋は2階にあり、親の部屋は一階にある。
「おはよー、お兄ちゃん。もうちょっとでできるから待っててね」
朝から元気に挨拶をしてきた2つ下の妹、小春だ。
ショートヘヤーに俺と同じで黒に少し青色がかかった髪。
友達豊富で俺が中3の時、あいつは中1でかなりの人数と
一緒にいるとこを目撃した。中には男もいたからすぐわかった。
こいつリア充なんだ、と。明るく活発で俺と正反対な妹だ。
「おう、おはよう」
俺は小春に軽く挨拶をしたあと、眠気覚ましにコーヒーを入れる。
砂糖もミルクも入れないコーヒーだ。
うむ、苦い。まるで人生のようだ。まあ人生はコーヒーより苦いがな。
コーヒーは甘さを調節できる分、まだまだ甘い。人生には程遠い。
俺は砂糖とミルクを投入して、コーヒーを甘くする。うん、甘い。
俺は一人でコーヒーのことを考えている間に、食事が目の前にできていた。
「お待たせー! 小春のお兄ちゃんへの愛がこもった朝食だよー!」
「悪い冗談はやめろ」
俺が言うと小春はえへへ、と悪戯な笑みを浮かべた。
まったく、冗談でもやるなよ。お兄ちゃん本気にしちゃうだろ。
小春のそれなりにうまい朝食を食べ終えたあと、学校に向かった。
学校に向かっていると前に同じ学校の生徒ただ思われる人物を発見した。
少し黒っぽい茶髪に短髪。いい感じにスポーツマンっぽい。
肩にはラケットを担いでいる。あ、もうわかった。
あいつは、山本幸村だ。
色々って程でもないけどそれなりに色々あり、まあ喋れる程度には仲が
良くなったかもしれない。あくまでかもしれない。断言してはいけない。
自惚れてしまったら負けだ。その先は絶対BADENDしか有り得ない。
俺に優しくしてくれた、ぼっちの俺と喋ってくれた。結構大層なこと
だが、そんな程度で友達だと思ったり、こいつ俺好きなんじゃね? とか
勘違いしてはいけない、これ人生の鉄則な。
まあでも一応見つけたら話かけて来てくれって約束したような
気がするからな。俺は幸村の所に行く。
「おい、ゆき......」
そこまで言って止まる。幸村は俺の声が聞こえなかったようだ。
危なかった.......。
なにが起こったかと言うと、幸村の友達? しらんがなんか
親しそうな奴が俺より先に声をかけていて、そいつが今幸村と一緒に
話をしながら学校に向かう道を歩いている。
もしこのまま気づかず俺が声をかけていたらどうなったと思う?
幸村はいいかもしれんが俺と今幸村の隣にいる奴とは話など俺がした
こともない、全く知らない人。そんな奴と一緒とか俺がその中で
空気になることは目に見えている。
ということで俺は、幸村達とは別ルートの遠回りの道で
学校に向かうことにした。そしてそのまま遅刻をし、樋口先生の
鉄拳を喰らうこととなった。BADENDだ......。
授業が終わった後は教室がざわついているもんだ。
俺はただなにかすることもなくぼーっと黒板を見つめている。
俺はぼっちを極めているので一人で何もすることがない時でも
時間を潰すのは得意だ。
ひたすらある数の素数を数え続けるとか、はあんまりしないわ。
最近読んでる小説のこととか考えたり、その後どのような展開に
なりそうかをひたすら脳内で考え続けたり、など
脳内での暇潰しはもう達人級だ。
ひたすら時間を脳内で潰していると目の前に可憐な妖精が現れた。
本当に男か? と疑ってしまうほどの顔立ちに華奢な体、
スポーツマンか? と言いたくなるほどの白い肌。
そう、我のアイドル七種夏向だ。
「榊くん、よっ」
「おう、よっす」
二人で何気なく挨拶を交わし、七種がクスリと笑う。
可愛い......。あと七種のよっ、が可愛すぎる......。
「なんか用か?」
「別に用事はないけど......、用事がないと話しかけたらダメ?」
「いや全然」
むしろ毎日話しかけに来てください。七種限定。
「ね、ねぇ榊くん」
「なんだ?」
微かに頬が赤い七種。なにか恥ずかしそうにしている。
告白か? 俺も好きだ! あるわけねーよな。
「幸村くんって、榊くんのことをなんて呼んでる?」
「龍紀って呼んでた」
それがどうしたと言うのだ?
「ぼ、僕も龍紀って呼んでもいいかな......?」
ピカッ! 俺の頭に閃光が走った。
「......も、もう1回......!」
七種は首を傾げる。
「龍紀?」
「ぐはぁ!」
な、なんて可愛らしい生き物なんだ......。
くっ、惚れてまうやろぉ!
「龍紀、大丈夫?」
「あ、ああ......」
俺は七種の可愛さにだらしない笑みを浮かべてしまった。
やばい、今俺極上に気持ち悪い顔してる。クール、クール。
「そういやなんで急に?」
これは結構気になった。まあ本当は可愛いからなんでもいいんだけど。
「え、いや、下の名前で呼んだ方が......、と、友達みたいだから......」
? 最後の方がよく聞こえなかった。呼んだほうが何だって?
「ま、まあそんなことはいいから!」
何故か顔をほんのり赤く染めて、七種がさっきまでの話を誤魔化し始めた。
まあ俺もどうでもいいけど。可愛いに理由はいらねぇ。
そこからは何気ない会話をして過ごした。
今日は七種がかなり可愛かった。
放課後、部室前。
俺は久しぶりにダッシュでここまで来た。
樋口先生の鉄拳が恐ろしくて、今日は何か言われる前にここに来た。
朝の鉄拳は痛かった......。腹を擦りながら部室のドアを開けた。
「うっす」
「あら、学校に来たのね」
今のは部長の春野春奈の声だ。
容姿端麗、文武両道、才色兼備、とはまさに春野のための言葉だ
というほどに綺麗だ。が、性格はいいものとはいえない。あと友達いない。
春野の学校に来たのね、というセリフは一日学校休んだから
今日は学校に来てたんだ。という意味だと普通思われるが、
こいつ学校に来たのかよ、みたいなニュアンスで春野は言っている。
こいつはそういう奴なのだ。でもこういった関係は割と嫌いではない。
最初からこいつとの関係が期待できない、確信を持てるところがいい。
下手に勘違いせずにいられる関係、そんな関係は嫌いじゃない。
俺は何もいうわずにいつもの定位置に腰を下ろして、
読書をする。そういえば比奈田と幸村は? まあいいか......。
「やっはー、はるりんにさかきん!」
この軽い調子で意味わからん挨拶、そして格好からして
いかにも今時ビッチ女子高生と思われる女。
何故かしらんが部員(?)の比奈田比奈だ。
そして俺のようなぼっちとも笑って話ができる女だ。
それが優しいからだというのは知っている。好きなのではない。
あいつにとって誰とでも笑って気さくに話をするのは義務なのだ。
そんなことをしているから、馬鹿な男子が勘違いをする。
本当、優しい女は少し苦手だ。春野のような奴との関係がちょうどいい。
「比奈田さん。前にはるりん言わないでって言わなかったかしら?」
声のトーンが低く、少し比奈田を睨んでいるようだった。
まあ俺を睨んでいる時の目つきに比べれば全然優しい感じだ。
「まあいいじゃん、可愛いんだし!」
何が面白いのかわからんがニコニコ笑っている。
こいつは春野がはるりんというあだ名が可愛いから嫌がっていると
わかってないのか? むしろわかっていて恥ずかしがるあいつを
見て楽しんでいるのか?
春野が目線で俺に助けを呼んでいる。もちろん見なかったフリ。
別に可愛いからいいじゃないか。あ、でもさかきん言うのはやめろ。
そしていつもどうり静かになった部室。
幸村は来ていない。今日はソフトテニス部の活動に行っているのだろう。
俺はただひたすら小説を読んでいる。
春野も俺と変わらず小説を読んでいる。ブックカバーで何を見ているかは不明。
比奈田は心底だるそうな顔で携帯をいじっている。すげぇデコってある
気色悪い携帯をいじっていると、携帯についているでっかいストラップが
揺れていて、見ているこっちがうっとうしく感じてくる。
比奈田は携帯を閉じて大きく伸びをする。
すると比奈田の並みの女子高校生よりも大きい胸が自己主張している。
大変目のやり場に困るので目を逸した。まじ俺紳士。
「......暇じゃない?」
と、一言呟き机に突っ伏した。そんな比奈田を見ていた春野。
「別に、いつもこんなものよ?」
「ああ、いつもどおりだ」
この静けさがいいんだよ。騒がなきゃいけない理由などない。
「いつもこんなのなんだ......。依頼とかこないのー?」
「いつも来るわけではないわ。何もしてない日のほうが多いほどよ」
俺はそれでいいんだけどな。
「すっごい暇なんだけど、誰か来ないかなー?」
比奈田がそう呟いた直後に、
狙ったかのように突然扉が開かれる。
そこにいたのは変なポーズを決める残念な奴だった。依頼人か?
右手に巻かれている包帯、黒の手袋、無駄にデカイコート、
左目には眼帯、ズボンにはチェーンが巻かれている。
「我を呼ぶ声が聞こえて来たので、ここに馳せ参じた」
誰も呼んでない帰れ。
「ふっ、ここであったのも運命か......、やはり貴様と我とは何かを感じる」
と、意味のわからんことをいいながら春野に近づく。
春野は逃げることもなくただ、小説を読んでいた。
「これも運命だ。我は運命の赴くままに進もう。
この言葉に、我のありったけの魔力を注ぎ君に伝える。
LOVE YOU Fo―――」
「ごめんなさい」
瞬殺ー! さすが春野さん、小説から目を離さずフリやがった。
男は固まったまま動こうともしない。
あいつ恥ずかしいー。しかも告り方がほとんどパクりだし。
比奈田は若干引いている。春野は気にせず読書をしている。
よく春野に告ったよなこいつ。まあ春野は見た目だけなら
間違いなく学年で、いや学校の中で一番綺麗だしな。
格好にセリフ、もうこいつのことは大体わかっただろう?
中2病だ......。しかもかなり重症な奴だ。
依頼に来たのか? 告りに来たのか? よくわからんがさっさと帰れ。
男は動き出し、近くの椅子に座ってこう言った。
「汝らの身の上はしっている。汝らのサークルはなんでもお助け部だ
そうだな。汝らは我の願いを叶える義務があるのだろう?
ならば手を貸せ、榊よ」
依頼でした......。まじで帰れよこいつ。
実は知ってる奴なんだが、名前忘れちまった。てへっ。
覚えてることと言ったら、こいつもぼっちだということだ。
中2病のこいつの依頼、絶対めんどうだよな。
すいません、風邪が再発して体だるいんで帰っていいですか?
読んでくださった方々に感謝です!




