初の依頼達成はBADENDだった
次話で1章が終わります。
次話もよろしければ見ていただけると嬉しいです!
夢を見ていた。
いつものあの夢だ。俺の人生は等々まともに夢すら
見れなくなってしまった。
が、馴れてきてしまった。頭痛は酷いけど学校に行けない
ほどではない。俺、結構平気そうと思うだろう。
実はありえないほど痛い。弁慶の泣き所以上の痛み。
それはそれは尋常じゃない。それを毎日くらい続ける。
君に耐えられるかい? 俺は耐え続けている、なんてすばらしい。
そしてこの厄介なスキルのレベルが上がった。どんな進化をしたかと言うと。
学校での休憩時間はみんな寝るよな? そういう時間でも
深い眠りについたらあの夢を見るようになった。今までは
昼寝程度なら深い眠りについても夢は見なかった。
いらん固有スキルがレベルアップしたが嬉しくない。
影も一段と薄くなった。まあ気配を消すのはデメリットだけでは
ないからいいのだがな。人混み避けやすいし、人ゴミ共が避けていくし。
そんな俺と話せる奴らはむしろレアだ。
いまの俺と日常でしゃべる奴なんて、そうはいないし。
「榊くん、おはよう」
爽やかフェイスで俺の目覚めを迎えてくれたのは、
一人の天使だった。俺、死んだのか・・・?
「こんな可愛い天使が迎えてくれるなら、死ぬのも悪くなかった」
父さん母さん。俺、先に逝きます。地獄で待ってるよ、親父。
「? なにを言ってるの?」
天使かと思ったら七種だった。やっぱり天使だった。
「よっ、七種」
眠たい目を擦りながらあいさつする。そんな俺を見て
クスリと笑った。瞬間、眠気がどこかに吹き飛んだ。
「うん、よっ!」
ふつくしい・・・。
「今日もありがとう」
皆忘れているかもしれないが、七種の依頼は現在進行中なのだ。
「いいよ別に、部活だし」
「それでも、だよ」
ニコッと笑う七種に俺の心はヒートアップ。
「あと昨日は楽しかったよ、ありがとう」
え、なにこいつ、もしかして俺のこと好きなんじゃね?
と勘違いするのは中二で卒業した。二度とあんな失敗はしない。
あの頃の俺はバカだった・・・。
「礼なら幸村と比奈田に言ってくれ」
「たしかに、あの二人はすごかったね・・・」
『時は昨日に戻り、幸村視点』
「よーいどん」
元気も覇気もない気だるそうなしまりのない龍紀の
合図によりスタートした。まあこいつに盛り上げろと
言うのはテストの点数が毎回最下位の奴を全教科満点にする
くらいの難易度だ。不可能と言ったほうが早いかな。
そんなことはどうでもいい。今はクッキーを作ることに
集中しろ。クッキーを作ることに、生命を燃やせ。
(料理シーンは抜かせていただきます)
ふう、できた。まったくなまくらすんなよ作者。
周りに視線を向ける。春奈はすでにできたのであろう、
読書をしている。はやいな・・・。
夏向のほうはもうすぐ完成ってとこだ。
比奈は・・・、なんだあれ? いや、見なかったことにしよう。
2、3分して、比奈がようやく終わった。
「じゃあ、誰から見せる?」
やけにそわそわしている比奈。俺もそわそわしていた。
「龍紀、適当にトップバッターきめてくれ」
俺が言うと、龍紀は即答した。
「七種の見せてくれ」
夏向のか、あいつ料理うまそうだからな~。どんなになったか気になる。
「うん、わかった」
そして俺たちの前にもってこられたのは、星型のクッキーだった。
まあ定番だよな星型って。まずは龍紀が一口かじる。
「う、うまい・・・。最高だ」
あまりのうまさにか膝をついて倒れた。リアクションが大げさだ。
どれ、俺も一つ食べようかな?
「おお、うまい!」
一般の家庭に出されてもおかしくないレベルだ。さすが夏向。
「おいしーね!」
「男子にしてはなかなかの出来栄えね」
春奈も比奈からも好評だ。そういえばこいつ、男子だった。
たまに素で間違える。龍紀もそういえば男だったっていう顔をしてる。
「毎朝、俺の朝食を作ってくれ」
「もう、からかわないでよ榊くん」
真面目な顔で告る龍紀。冗談だよな? 顔が本気すぎる。
夏向のクッキーを食べ終えた。
「じゃあ次、誰が行く?」
よし、頃合だ。そろそろ俺のターンだろう。
「よし、俺に行かせてくれ」
(榊龍紀視点)
幸村のその言葉で俺は少し後ずさる。
さすがに料理中に爆発がおきなかった。爆発するかと思って
皆がクッキー作ってる時、恐怖で体が震えていた。
どれだけ怖かったかというと、もう遺書を書いてしまったレベル。
文面はこうだ。「リア充、爆発しろ」
だがかろうじて生きているのでこの遺書は先ほど、
ゴミ箱に3Pシュートを決めたところだ。外したがな。
「では俺のクッキーのご登場だ!」
バンッ! と乱暴に俺たちの前に幸村の焼いたクッキーが現れた。
「普通だ・・・」
幸村の持ってきたのは、普通に市販で売ってそうな長方形のクッキー。
中には星型やクリスマスツリー、雲みたいな型など、さまざまだ。
匂いも香ばしくて、夕飯前で少し腹が減ってて食欲をそそる。
普通にうまそうだ・・・。なんだ、死ぬんじゃないかと心配して損したぜ。
俺は早速星型のやつを一つ口にした。
「・・・うますぎる」
正直な所、七種のクッキーよりうまい・・・。
幸村の意外な一面その一、料理が得意。
(幸村視点)
俺はガッツポーズを取った。
自身があったし、尚且つ龍紀に認めてもらえた!
龍紀に続き、夏向、比奈、春奈と食べてもらう。
「うわぁ、すごいおいしいよ! 僕じゃかなわないや・・・」
「幸村うま!? 超意外なんだけど!?」
「・・・やるわね」
よし! 好評だったことに俺は一人、テンション上がっている。
どれだけ上がっているかというと、皆が引いていても気づかない程。
俺のクッキーがなくなって。
「次は私に行かせてもらえないかしら?」
そして春野は自信に満ちた顔をしている。
「幸村くん、あなたのクッキーはおいしかったわ。でも」
そしてクッキーを俺たちの前に置かれた。色々な形のクッキー。
香ばしい匂い、すぐにでも食べたくなる。さっそく龍紀が一口。
「まだまだね」
フフ、と凍るような笑顔を見せてきた。そして龍紀が口を開く。
「・・・・・」
が閉じた。そして無言でクッキーを食べ、一つ食べ終わると。
「・・・お前、どこのパティシエだよ」
その言葉に皆が春奈のクッキーを一つ、食べる。
「うまい・・・」
春奈のクッキーは市販で売っているものくらい、
いや、それ以上だ。値段をつけたら結構な値段にはなるだろう。
とりあえず、俺たちが太刀打ちできるようなレベルではなかった。
俺たちが夢中でクッキーを食べていたら、あっという間になくなった。
「料理対決は春野の勝ちだ」
龍紀が判定した。これは認めざるおえない、圧倒的な実力だった。
「いやー負けたよ。春奈クッキーうますぎ」
「私は料理には自信があるのよ。あなたのもなかなかの物だったわ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
お互い軽く笑い合った。今回は楽しかったぜ。
「て、ちょっと待ったーーー!!」
いきなり比奈が大声を張り上げる。騒がしい奴だなー。
「あたしの! あたしのクッキー忘れてるよ!」
「そういえばそうだったな」
「まあ見せてもらわなくても比奈の負けは目に見えてるけどな」
「そうだけど・・・、ちょっと酷くない!?」
比奈が、むうぅと怒った顔で俺たちを見る。負けは認めてるのね。
「忘れたの? 今回の依頼は比奈田さんのクッキー作りの手伝いよ。
どれくらい作れるものか、見てみるべきだわ」
お前も途中、忘れてたじゃねえか。あれは演技だったのか?
その言葉に比奈は嬉しそうな顔をした。
「ありがとう! 春野さんっていい人!」
そして抱きつく。春奈が「暑苦しい・・・」って小声で
言っていたが、本気で嫌そうな顔はせず、頬を少しだけ赤らめてる。
氷の女王のこんな顔は初めて見たかもしれない。
「では、お披露目ターイム!」
俺たちの前に出されたものは、
・・・・・・・・・・・・・・
な ん だ こ れ は !?
俺たちの眼前に出現したのは何色かわからない謎のクッキー?だ。
いやクッキーじゃない、これは・・・暗黒物質。またの名を、
ダークマターと言われる物だと思われた。
(榊視点)
・・・・。俺の体が危険信号を出している。
こいつは危険だと、俺の血が騒ぐ。
まさに暗黒物質、ダークマターと呼ぶべき存在が君臨していた。
俺は体から流れる嫌に冷たい汗を、止めることはできなかった。
(春野視点)
・・・。私はこの嫌に鼻につく悪臭を漂わせている物質に、
私が不覚にも恐怖心を抱いてしまった。クッキーを作る
材料の中でこんな暗黒物質を作れるような材料はない。
榊くんが間違って違う材料も渡した、まったく愚かな人ね。
とも言えない。そもそも暗黒物質を作る材料がこの家庭科室には
存在していないはずなのだ。何故、どのようにして生まれてしまったのか。
私達は今、いらない奇跡の目撃者となってしまった。
(榊視点)
どうする。これはすぐに捨てるべきだろう。
だが、どうやって捨てるのだ? この暗黒物質は簡単に
ゴミ箱に捨てていいものかすらわからない。
俺たちが戦慄していると比奈田が慌てている。
「み、見た目はこんなんだけど、食べてみないとわからないよ!」
食べてみなくてもわかるから。絶対まずいから。人死ぬから。
「そ、そうね。さっきから率先して味見をしてくれてる人がいるんだし」
「フッ、春野にしては珍しい言い間違えだな。・・・これは毒味と言うんだ」
「毒じゃないし! ・・・やっぱり毒だと思う?」
初めこそ否定はしたが、やっぱり見た目が見た目だ。少し困ったような
顔をして小首を傾げる。完全に毒だろこれ。
「おい、これマジで食うのかよ? 暗黒物質になってるぞ」
「で、でも、食べられない原材料は使ってないんだし、大丈夫だよ!
・・・・多分」
あの優しい七種ですら、こう言っている。これはまじで危険。
「そうね。ここに怪しいものを作れるような原材料はないわ。
一応食べられるものだと思う。それに、私も食べてみるから大丈夫よ」
てっきり俺にすべてを押し付けるのかと思った。
「彼女のお願いを受けたのは私。責任くらい取るわ。
それに、彼女のクッキーのようなものは何が原因で作られたか、
把握しなければ、その後も正しい対処ができない。知るためには
危険を冒すのも仕方のないことよ」
道端に落ちていても泥だと言ってしまえば納得してしまいそうな
謎の固形物を一つ摘んで、俺を見た。体は僅かに震えて、
目も少し潤んでいる。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「・・・私、死なないかしら?」
「・・・俺も食うから安心しろ」
流石に同情し、一つ摘んでみる。やばい、汗がやばい。
「・・・俺も食うよ。一応俺も、部員だし」
「僕も、食べてみるよ・・・」
二人も一つ、暗黒物質を摘んだ。二人共、優しいな。
比奈田も一つ摘んで、皆で苦忌威を食べた。
「くっ、思い出したら吐き気が・・・」
確かに食べれないわけではなかった。それが逆に苦痛だった。
ゲロを吐いて倒れていたほうがよかった。
あのクッキー?を食べて気絶したほうがよかった。
と思わせるリアルな不味さ。いっそ倒れてしまいたいと思ってしまう
劇薬。どうやったらクッキーの材料を使ってこのようなクッキー?を
作ったのか聞きたい。まあ食べて即死するわけではなかったが、
多く摂取してしまうと、死んでもおかしくないんじゃないかと思う。
現に、幸村は俺たちより多く摂取してしまい、先に帰ってしまって
今日なんて熱がでて休みだそうだ。クッキー?のせいかはわからないが。
その後、春野がまずお手本を見せて、つきっきりで比奈田のクッキー
作りの手伝い。春野が完璧すぎて俺と七種には言えることがなかったので
まあ見てるだけだった。3回作り直してようやくクッキーができた。
普通にうまいレベルだったが、まだまだ春野にはかなわなかった。
まああいつを比較対象にしてはダメだ。次元が違いすぎる。
とゆうわけで、まともなクッキーが出来たところで
比奈田がこれでいいというのでそのまま解散となった。
依頼達成なのかな? 初めて依頼を達成した。超どうでもいい。
放課後、部活に行く途中。比奈田と会った。
そして黙って俺に、暗黒物質を投げつけた。なにこれ? 俺に死ねと?
「これはその昨日のお礼、みたいなやつよ。榊も手伝ってくれたし」
ほんの少し頬を染めて、比奈田は言う。
そしてそのまま去っていった。あれ? こいつのクッキー、最後は
ちゃんとしたクッキーだったのに・・・?
あいつ、もしかして春野なしだったら作れないんじゃ・・・。
まだ依頼達成じゃないことが発覚したが、忘れることにした。
比奈田からもらったクッキーは、舌が焼けるような味だった。
見てくださってありがとうございます。
感謝です。




