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光の恋

朝ごはんを食べて、また街へ繰り出す。

弥生は早速友達のところへ行ってしまったから、今は一人。

そういえば、光と響はあれから見ないけど、どうなったんだろうか。

ちゃんと朝ごはんは食べたのかな。


「………」


空を見ても何も変わらない。

朝市をやっていたところは、みんなの憩いの広場となっていた。

自分も、長椅子に腰掛けてる人の一人で。

ふと、首から下げてたユンディナ旅団の団員証を見てみる。

あいつはどうしたのかな。

ちゃんと燃料は補給しただろうか。


「お兄さん、ちょっと」


良いエンジンを積んでたな。

まあ、俺のスクーターも負けるとも劣らない良いエンジンに換えたけど。


「もう!なんで無視するの!」

「面倒は嫌いだからだ。お前もそうだろ?」

「うん…。まあ…」

「じゃあ、邪魔だ。帰れ」

「何よ!せっかく、可愛い女の子が話し掛けてるのに!」

「それが本当ならよかったんだけどな」

「もう!」


欠伸をすると、響に殴られてしまった。

まったく…。

何なんだよ…。

響は隣に座って。


「あー、もう。何なのよ、朝から」

「それは俺の台詞だ」

「光にこっぴどく叱られてさぁ。自分で行かないから、わたしが部屋まで運んであげたのに」

「なんだ、あれはお前のせいだったのか」

「んー?」

「なんで他人の部屋に光を放っていくんだ」

「いいじゃない。光は引っ込み思案だから、ああでもしないと、たぶんずっと片思いのままだと思うからさ」

「いや、待て。俺が好きになること前提なのか」

「そりゃそうだよ」

「はぁ…。でもまあ、光次第だろうな」

「ホントに?」

「ああ」

「よかった。全く興味なしだったらどうしようかと思ってたんだよ」

「んー、まあ、それは一旦置いておこう。それより、俺が気になるのは、お前がなんで光のことで一所懸命になるのかってことだ」

「ん?どういうこと?」

「光とお前がどういう関係かは知らないが、お前は光にベッタリじゃないか。それは、何か理由があるのか?」

「そんなにベッタリかな?」

「俺から見ればな」

「ふぅん。そんなこと、考えたことも感じたこともなかった」

「まあ、そんなものかもしれないな」

「でも、わたしは光のことが好きだから。光に、精一杯尽くしてあげたいって思うんだ。それって変なのかな」

「いや、変ではない」

「…なんか引っ掛かる言い方だけど」

「他意はない」

「そう」


少し首を傾げ、上を向いて。

今はちょうど、広場の真ん中にある大木の向こうに太陽が隠れていて、眩しくなかった。

響は一旦、大きく伸びをする。


「どうだった?光は」

「何がだよ」

「気に入った?」

「さあな」

「まあ、そうだろうね」

「光はいつ俺のことを知ったんだ?」

「さあ?何か言い始めたのは、昨日の夕方くらいからだけど」

「夕方?櫛を買ったときか…?」

「あー、そうそう。櫛屋の人に何か聞いてた」

「俺の名前とかか?」

「さあね」


どこに泊まってるとかは話してないしな…。

となると、響はどうやって俺の部屋を見つけたんだ?


「偶然だよ、偶然」

「何が」

「部屋を見つけたこと、不思議に思ってたでしょ」

「まあ…」

「昨日の夜、夕飯を食べに行ったら、光があの人だって言うから」

「ふぅん…」


帰ってきたときだろうか。

まあ、いつでもいいけど。


「そういえば、当の光はどうしたんだ」

「さあ?その辺にいるんじゃない?」

「その辺って…」

「ふぁ…。早起きしたから眠い…」

「よくそんな下らないことのために早起き出来るな」

「下らないかなぁ」

「充分下らない」

「んー。そう」


退屈そうに欠伸をする。

まったく…。

こいつは何しにきたんだ?


「………」

「寝たら置いてくぞ」

「それは困るなぁ…」

「じゃあ、寝るなよ」

「分かった分かった…」


そう言いながらも、響はウトウトし始めて。

仕方のないやつだな…。


「光。響を連れて帰ってくれないか?」

「えっ?」

「なんで後ろに座ってるんだよ。こっちに来い」

「うぅ…」


モジモジして、一向にくる気配はない。

…両極端だな、こいつらは。

響は活発で積極的。

光は大人しくて消極的。

お互いがお互いを補い合って、上手くいってるのかもしれない。

そういうのは結構珍しいけど。

とりあえず、後ろに回って、光の横に座る。


「……!」

「言いたいことがあるなら、響を通さないで直接言ってくれないと分からないぞ」

「えっ、あっ…」

「まあ、しばらくはこの街にいると思うから。そのうちに頼む」

「うん…」


もう一度、空を見る。

郵便屋が横切った以外は、やっぱりいつも通りの空だった。



弥生はどこに行ったのかな。

そういえば、友達の家がどこかを聞いてなかった。

まあ、暇だからといって乗り込むのもどうかと思うけど。


「あ、あの…」

「ん?光?ついてきてたのか?」

「うん…」

「そうか」


光は顔を赤くして俯いている。

…俺は、光のことが好きなんだろうか。

光は俺のことが好きらしいのに、俺は光のことが好きかどうか分からないなんて、光が可哀想すぎやしないだろうか。

もう一度、光の顔を見てみる。


「あ…」

「………」


偶然、目が合った。

光はさらに赤くなって、また俯いてしまった。

…どうなんだろうな。

俺は。


「あの…」

「ん?」

「わたし…響に頼ってばっかりで、格好悪いよね…?」

「それを聞いてどうするんだ」

「格好悪い人なんて、好きになってもらえない…」

「そうかな」

「えっ?」

「人間なんだから、欠点があるのは当たり前だ。それを含めて好きになってもらえないなら、そいつは本物じゃないんだろ」

「翔は…好きになってくれる…?」

「そうだな。お前次第、だろうな」

「…うん」


俺も頑張らないといけないけどな。

光に、本当に好きになってもらえるように。

何を好きになってくれたのかは分からないけど、まだ全く付き合いもないんだから、俺を見ているわけでもないんだと思う。

だから、頑張らないと。


「ほら、手でも繋ぎなよ!」

「ひ、響!?」

「お前はまったく…」

「光のこと、頼んだよ!」

「わわっ!?」


光を突き飛ばして、響はどこかへ飛んでいってしまった。

体勢を崩した光は、こちらに寄り掛かる形になって。


「あ、あっ、ごめんなさい…」

「なんで謝るんだよ」

「え、えっと…」

「…まあ、これから直していこうか」

「…うん」


通りを二人並んで歩いているだけだったけど。

でも、変に緊張してきた。

光が横にいると意識し始めると。

…気付かないうちに好きになってたのかな、俺も。

まあ、それはこれから分かること。

今は、少し気分を落ち着けよう。

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