始まり
このお話は不定期連載になるかと思います。
「燃料、大丈夫か?」
「うん。満タンだよ」
「忘れ物、してないよな」
「子供じゃないんだから…」
「おい、これ、忘れ物じゃないかね」
「あ…」
「はは、まだまだ子供だな」
「………」
向こう脛を思いっきり蹴られた。
「ってぇ!な、何…何すんだ!」
「ふんだ」
怒ったようにシートに飛び乗り、痛みに身を屈めているこちらを睨む。
…仕方ないけど、ジンジンする足を引きずってシートに座って。
まったく…いつからこんな凶暴になったんだ…。
「オヤジさん、お世話になりました~」
「ああ。気を付けてな」
「行ってきます…」
「しっかりな。妹の尻に敷かれないように」
「もう遅いって…」
「はっはっ、違いない」
背中をバンバンと叩かれる。
そして、そのままオヤジは顔を近づけてきて
「女の機嫌を取るにはな、プレゼントが有効だ」
「そんなことしてたら破産するよ…」
「はは、そうか。まあ、仕方ねぇな」
「何こそこそ話してるんですか?」
「男の内緒話だ」
「ふぅん…」
そして、また背中を叩いてオヤジは離れた。
「じゃあまた。達者でな」
「オヤジさんも、お元気で」
「元気だけが取り柄さぁ。言われなくても元気にしてるよ」
「ふふ、そうですね」
「よっしゃ、行くぜ!」
「おぉーっ!」「行ってこい!」
掛け声と共にエンジンをふかして。
ゴーグルをしっかりと付け、軽く手を振る。
すると、オヤジはニカッと笑って応えてくれた。
それを確認して前を向き。
日が昇り始めた大地へ駆け出した。