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向日葵

作者: 如月。
掲載日:2026/03/28

「向日葵、か」

毎年、近くの畑に咲く向日葵。

夏の太陽に焼かれながら、その花を咲かせる。

その花を見ると、私はどうしても思い出してしまう。

妹の、日菜のことを。


それは、ある夏の日のことだった。

それ以外に言うことのない、いたって平凡な夏の日だった。

「ねぇ、このお花綺麗だよ!ひとつもらっていこうよ!」

ひまわりという花の名前すら出ない彼女に呆れながらも、少し危ない思考をしている彼女を咎める。

「ダメでしょ。だいたい、ここは他人様の場所だし」

そう言っても聞かない彼女は、私に言葉を返す。

「えぇー?いいじゃん、1つくらい取ったって誰も気づかないよ!」

そう言った彼女は、少し危険な気配がした。

「出口にいる人に気づかれるよ?そもそもこんな大きな花だし、持っていくのでさえ大変でしょ……。」

でも、と言って聞かないのだろうな、と思った私は、思わず身構える。

「あっ、そっかぁ……じゃあ諦める」

「偉い偉い、あ、あとでジュースあげるよ」

意外にも反抗しない彼女に拍子抜けしながらも、偉い偉い、と言って彼女の頭を撫でる。

「えへへ、もっと褒めてくれてもいいんだよ?」

すぐ調子に乗って、と言おうとしたところで彼女が口を開くところを見た私は、慌てて口を閉じた。

「あ、あとジュースって何味?私ぶどう苦手なんだよねえ……」

なんだ、そんなことか……と思いながらも、どうにか思い出して彼女に伝える。

「桃とぶどうと……あと何だっけ、りんごがあった気がする」

「りんごジュースあるの?!飲む〜!お姉ちゃん、早く帰ろ!」

待って、と言って追いかけながら考えたのは、りんごジュースごときで簡単に釣られて将来大丈夫なのかな、ということだった。

しばらく走って、もうすぐ出口が見えるかな、という所で、唐突に充電切れを起こしたロボットのように彼女が停止する。

「あ!忘れてた!お姉ちゃん、写真撮ろう!!」

写真なんて、と思ったものの、大事な妹の頼みだから、断れなかった。

「好きだね、写真……まあいいけどさ」

その代わり、後で日菜の写真も撮らせてよ、と返した。

ダメージなんて喰らわないのはわかっている。

だとしても、それくらいはしないと気が済まなかった。

私がただぼーっと立っている間に、写真は撮れたらしい。

「よし!写真撮れたー!」と、明るく笑う彼女の笑顔は、眩しかった。

すぐにプリントされるタイプのカメラらしく、みーん、と音を鳴らして写真が出てくる。

その写真を、私に渡してくる日菜。

「お誕生日おめでとう、お姉ちゃん!」

そっか、誕生日だっけ、なんて思う私は、のん気なのかもしれない。

「……このために、わざわざここに?」

「そう!向日葵の花言葉は光り輝く、って意味だから!お姉ちゃんにぴったりだー!と思ったんだ!」

私には、自分なんかより余程日菜の方が眩しく見えた。

「……私の写真なんて、いらない」

私にとって輝いてるのは、いつだって日菜だ。

だからこそ、日菜の写真がいい、と思った。

自分の写真なんてイヤ、というのもあるけれど。

「日菜の写真がいい」

そう言って、自分のスマホで写真を撮った。

少し悲しそうにしていた日菜は、そんな顔でも可愛かった。

「……祝ってくれてありがと」

「え?」

そう言った日菜が鈍感なのか、私の言葉足らずか。

どちらだろうな、と思いながらも、少し言い方を変えて言い直す。

「誕生日。お祝いしてくれて、ありがと。嬉しかった」

__うん!

__じゃあ、帰ろう。私たちの、家に。

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