向日葵
「向日葵、か」
毎年、近くの畑に咲く向日葵。
夏の太陽に焼かれながら、その花を咲かせる。
その花を見ると、私はどうしても思い出してしまう。
妹の、日菜のことを。
それは、ある夏の日のことだった。
それ以外に言うことのない、いたって平凡な夏の日だった。
「ねぇ、このお花綺麗だよ!ひとつもらっていこうよ!」
ひまわりという花の名前すら出ない彼女に呆れながらも、少し危ない思考をしている彼女を咎める。
「ダメでしょ。だいたい、ここは他人様の場所だし」
そう言っても聞かない彼女は、私に言葉を返す。
「えぇー?いいじゃん、1つくらい取ったって誰も気づかないよ!」
そう言った彼女は、少し危険な気配がした。
「出口にいる人に気づかれるよ?そもそもこんな大きな花だし、持っていくのでさえ大変でしょ……。」
でも、と言って聞かないのだろうな、と思った私は、思わず身構える。
「あっ、そっかぁ……じゃあ諦める」
「偉い偉い、あ、あとでジュースあげるよ」
意外にも反抗しない彼女に拍子抜けしながらも、偉い偉い、と言って彼女の頭を撫でる。
「えへへ、もっと褒めてくれてもいいんだよ?」
すぐ調子に乗って、と言おうとしたところで彼女が口を開くところを見た私は、慌てて口を閉じた。
「あ、あとジュースって何味?私ぶどう苦手なんだよねえ……」
なんだ、そんなことか……と思いながらも、どうにか思い出して彼女に伝える。
「桃とぶどうと……あと何だっけ、りんごがあった気がする」
「りんごジュースあるの?!飲む〜!お姉ちゃん、早く帰ろ!」
待って、と言って追いかけながら考えたのは、りんごジュースごときで簡単に釣られて将来大丈夫なのかな、ということだった。
しばらく走って、もうすぐ出口が見えるかな、という所で、唐突に充電切れを起こしたロボットのように彼女が停止する。
「あ!忘れてた!お姉ちゃん、写真撮ろう!!」
写真なんて、と思ったものの、大事な妹の頼みだから、断れなかった。
「好きだね、写真……まあいいけどさ」
その代わり、後で日菜の写真も撮らせてよ、と返した。
ダメージなんて喰らわないのはわかっている。
だとしても、それくらいはしないと気が済まなかった。
私がただぼーっと立っている間に、写真は撮れたらしい。
「よし!写真撮れたー!」と、明るく笑う彼女の笑顔は、眩しかった。
すぐにプリントされるタイプのカメラらしく、みーん、と音を鳴らして写真が出てくる。
その写真を、私に渡してくる日菜。
「お誕生日おめでとう、お姉ちゃん!」
そっか、誕生日だっけ、なんて思う私は、のん気なのかもしれない。
「……このために、わざわざここに?」
「そう!向日葵の花言葉は光り輝く、って意味だから!お姉ちゃんにぴったりだー!と思ったんだ!」
私には、自分なんかより余程日菜の方が眩しく見えた。
「……私の写真なんて、いらない」
私にとって輝いてるのは、いつだって日菜だ。
だからこそ、日菜の写真がいい、と思った。
自分の写真なんてイヤ、というのもあるけれど。
「日菜の写真がいい」
そう言って、自分のスマホで写真を撮った。
少し悲しそうにしていた日菜は、そんな顔でも可愛かった。
「……祝ってくれてありがと」
「え?」
そう言った日菜が鈍感なのか、私の言葉足らずか。
どちらだろうな、と思いながらも、少し言い方を変えて言い直す。
「誕生日。お祝いしてくれて、ありがと。嬉しかった」
__うん!
__じゃあ、帰ろう。私たちの、家に。




