第1話 ― このクソみたいな世界の絶望を!
夜。
雨が降っていた。
その日は、やけに雨がしつこく降っていた日だった。
アダムはコンビニから出てきた。
コンビニ袋と、1+1の缶飲料と、さらにお菓子まできっちり買っていた。
キンパ一つに炭酸まで。
……はぁ……どうしてこうなったんだ……
信号が青に変わった。
渡ろう……
その時だった。
突然、遠くから強烈な光がアダムを包み込んだ。
アダムは一瞬焦ったが、すぐに戦闘態勢に入った。
彼の解決士時代の本能は、1級から9級に落ちていたとしても、感覚だけは生きていた。
待て……この感じ……
角度。
構図。
湿度。
そして……排気ガスの匂いまで……
これは、角だ……
ここで負ければ俺は死ぬ。
しかも、テンプレまみれのまま……
はぁ……この目に刻みつつ、やられないように命を賭けるか……
そうしてアダムはトラックを真っ二つにしようとしたが……
トラックは思ったより速く、アダムは油断していた。
시발、まさか……
ドンッ
そう。
アダムはテンプレまみれになった……わけではなく。
電動おもちゃカーに轢かれる想像をして、ショック死したのである。
中間界。
「お久しぶりですね。ここに人が来るのは」
「こんにちは。私は闇の女神マリスです」
「は!? ちょっと待て、そのテンプレ……いや待て、なんでお前闇の女神なんだ」
「え? 問題あります?」
「いや……それより俺、どうやって死んだ?」
「ショック死ですよ。しかも想像だけで死にましたよ、あなた」
「は?」
「どうやったらそんな死に方できるんですか? ふふふ」
「……おう、やるか」
マリスは知らなかった。
彼が男女平等主義者で、相手が誰であろうとサッカーキックをかます男だということを。
その瞬間、アダムのサッカーキックがマリスに直撃した。
「うわああああ!!痛い!!なんで殴るんですか!!」
彼女は立ち上がり、魔法を準備した。
アダムはその隙を狙うのではなく、ウィービングで懐に潜り込み、
男女平等パンチを放とうとしたが――
「試みは良いですね、アダム。私は慈悲深い女神なので一度は見逃してあげましょう」
アダムは黙っていた。
いや。
喋れなかった。
冷たくなったアダムの姿だけが残っていた。
「うわあ!!」
「は!? 俺、二回死んだのか?」
「だから女神を甘く見てはいけません。アダム、いくらあなたでも」
「では手続きを進めましょう。そろそろ台詞も尽きてきましたし、準備もなくなってきましたので、簡潔にいきます」
「一つ目。地獄へ行く道があります。」
「は?!なんで俺が地獄なんだよ!待て、いくら普段の行いが悪いとはいえそこまではないだろ!!」
「二つ目。生まれ変わってください ^^b」
「……それは違う気がする。」
「三つ目が本題です。現在この異世界は魔王軍がほぼ占領状態にあり、人手が非常に不足しています。異世界へ行っていただければ各種特典と、魔王討伐時に望みを一つ叶えて差し上げます。」
「は?!願いだと?!」
俺は悟った。
ハーレムの核心を!!!!!
「領域展開――
天上天下恋愛覇道結界!」
アダムはその瞬間、マリスの体型を評価し始めた。
「ふむ……悪くない。バランスも整っているし、顔も美人、しかも金髪……」
「性格が凶暴なのを除けばヒロインとして完璧ㅎ―」
「アダム。これ以上一言でも言ったら灰にしますよ。」
「すみません。」
「では異世界へ行きます。」
「良いでしょう。ようやく話が通じましたね。」
「さて、どの特典を選びますか?」
「お前。」
「……はい?」
「俺は……ハーレムを夢見てきた。目の前に美少女がいるのに諦める?」
「諦めるわけがないだろ……ははははは!!!お前は俺と一緒に異世界へ行くんだ!!!」
「嫌です!!!嫌だと言っているでしょう!!!こんな人間獣と同じ場所なんて絶対に嫌です!!!」
「クハハハハハ!!!ハーレムの時間だ!!!」
「きゃああああああ!!あなたのせいですよ!!!!」
「なんで俺のせいなんだよ?!お前が選ばれたんだろうが!!!!」
こうして二人は空中で転移し、そのまま異世界の地面へと一直線に落下していた。
「助けろ!!マリス!!なんとかしろ!!!」
「ふふふ……私には一つ方法があります。」
「何だよ?!早く使え!!!」
マリスは無言でアダムを盾にした。
「ちょっと待て……それは違うよな?」
「ははははは!!!女神を甘く見ましたね。」
「聖者相手だと思っていたのか……?」
「このクソ野郎……今度はワン○ースまでパクるのか……」
「よし!!こうなったら空中で決着をつける!!!」
「死ね!!!!!!!!」
しかし、二人は知らなかった。
被害者がもう一人いることを。
彼女の名はカリア。
カリアは今日も依頼を完遂し、報酬を受け取りにギルドへ向かっていた。
「ふむ……今日の報酬は悪くないな。早く次の依頼を受けねば。」
「……ん? 何か、さっきから変な音が……」
「え? ちょ――」
ドォンッ!!
そのままカリアは地面に叩きつけられた。
「うっ……私は……生きているのか?」
「心配しないでください。全部私のおかげですよ!」
アダムは即座に男女平等パンチをマリスに叩き込んだ。
「いったぁああああ!!」
「今のは正当防衛による合理的な手続きだ。」
「さすが闇の女神、やることも闇だな。この闇の半神チビ。」
「なんですって?!今の言葉取り消しなさい!!!」
その瞬間。
下敷きになっていた“何か”が、ゆっくりと立ち上がった。
「……奇襲か? いや、私は話が通じる。弁明を聞こう。」
「大変だ!!!!」
「マリス!!お前女神だろ!?なんとかしろ!!どう見ても強そうだろ!!」
「……ごほん。そなたはこの女神に害を加えたが、それを光栄に思うがよい。」
「急に口調変わるな!!!さっきそんな喋り方じゃなかっただろ!!!」
「うるさい!!今雰囲気作ってるの見えないんですか?!」
その瞬間、カリアがマリスへ突進した。
そして。
マリスはアダムを灰にした時と同じように、
カリアも一瞬で灰にした。
「……それアリなのか?……お前ただの魔族じゃないのか……」
「なんですって?蘇生すればいいでしょう?それに魔族とは?」
「アダム。あなたもあの地面の灰になりたいですか?」
「すみません。」
「とりあえず復活させろ。」
マリスが指を鳴らす。
灰だった肉体が再構築され、
心臓が鼓動を取り戻し、
カリアは復活した。
どう見ても女神の権能というより黒魔術だが。
「お前ら頭おかしいのか?!いきなり人を殺すな!!!」
「すみません……うちの女神が殺人狂なもので……」
「ちょっと?!そういう言い方やめなさい!!正当防衛です!!刃物持って突っ込んできたんですよ?!」
「いやだから落ち着いて話を――ってその言い方で落ち着くか!!!」
「……ああもう、我慢ならん。」
アダムは周囲を見渡し、鎌を探し始めた。
「あの、おばさん。これちょっと借ります。」
「それただの農具じゃないよ?」
「え? じゃあ戦闘用大鎌なんですか?」
「当たり前だろ。最近村の外でモンスターが暴れてるからな。」
「……は?」
「ちなみにこの村の住民、ほとんどレベル60以上だぞ。」
「……は?」
「……とりあえず少し借ります。」
アダムはカリアを見る。
「おい、バランスと体型の均整が取れているそこのお前。」
「……私か?」
「ああ。さっきの屈辱、晴らしたいだろ?なら決闘だ。」
「いいだろう。ただし賭けをしよう。」
「何の賭けだ?」
「私が勝ったら、お前はこの世界に存在しなかったことになる。」
「ちょっと待て!!一話目から主人公がこんな扱いでいいのか!?作者の頭どうなってる!!!」
「……いいだろう。行くぞ。全力を出す。」
その瞬間。
アダムの鎌とカリアの剣がぶつかった。
金属音が鳴る。
アダムは鎌を回転させる。
加速。
遠心力。
そして打ち下ろす。
そう。
忘れていたが、アダムは元一級解決士であり、
鎌の扱いに関しては非常に高い熟練度を誇っていた。
異世界に来た際に装備を奪われたため弱体化しているだけだ。
アダムはカリアを押し込む。
しかし。
カリアは純粋な剣術のみで応戦する。
そして。
魔力を剣に注入した瞬間。
形勢が逆転する。
押される。
徐々に追い込まれる。
「マリ――」
「うるさい!!!今アダム死にかけてるでしょ!!助ける!!!」
「受けなさい!!!セイクリッド・エクスプロージョン!!!」
アダムとカリアは同時に振り向いた。
理解。
助ける気はない。
まとめて灰にするつもりだ。
アダムが叫ぶ。
「시발!!!またお前か!!!!」
閃光。
爆音。
そして。
「このクソみたいな世界の絶望を!!!!!!」
旧版を読んでくださった皆様、ありがとうございます。
本作は内容を再構築したリメイク版として再スタートします。




