王子様の美しい名前
ある日、一人の王子が生まれた。彼には、この世で最も美しい名が授けられた。
やがて彼が王位を継ぐ年齢に達した時、父である王のもとへ行き、こう言った。
「父上、私は自分の名が憎いのです。変えたいのです」
王は答えた。
「我が息子よ、お前は世界で最も美しい名を持っているのだ。民を見よ。その名を耳にするだけで、彼らは歓喜の涙を流すではないか」
王子は、願いが聞き入れられないことを悟った。絶望した彼は、自室に引きこもってしまった。
その時である。彼の前に醜悪な怪物が現れ、こう囁いた。
「この世で最も忌まわしい名を持つ農民がいる。お前のその名と、くれてやる気はないか?」
自らの名を嫌っていた王子は、これを受け入れた。だが、怪物は二つの条件を付け加えた。
『五年以内に王位に就くこと』
『名を譲った相手に、王位をも譲ること』
数年が過ぎた。しかし、父王はまだ玉座に座っていた。
そこで王子は、父の暗殺を画策した。父が死ぬと、彼はついに王位に就いた。
次の夜、あの怪物が再び現れて言った。
「俺はお前に『最も忌まわしい名』を与え、あの農民には『最も美しい名』を与えたぞ」
翌日、若き王は街へと降り立った。しかし民衆は、恐怖に顔を歪めて彼から顔を背けた。
「なんて忌まわしい名だ」と彼らは口々に言った。「なぜ、あんなにも美しい名を持つあの農民こそが、王ではないのか?」
王はあの条件を思い出した。かつての名を持つ者に、王位を譲らねばならない。だが彼は、何も起こりはしないだろうと高を括り、その条件を無視することにした。
五年が過ぎた。そして六年。
突如として、あの醜悪な怪物が再び姿を現した。
「お前が約束を守らなかったからだ」と怪物は言った。「俺の手で、王冠を渡しておいたよ」
怪物はかつての王を追放した。彼はある村へと彷徨い着いたが、そこでは誰も彼もが忌まわしい名を持っていた。全員が……彼を除いて。
「私はこの国の王だったのだ」と彼は村人たちに訴えた。「だが、一人の農民に玉座を盗まれたのだ」
村人たちは答えた。
「周りをよく見るがいい。新しい王が即位してからの十年間、国はかつてないほど栄えている。花咲く大地、幸福な子供たち、そしてあの輝かしい城。あの方こそ、世界で最も美しい名を持つのだ」
怒り狂った元王は、森へと向かった。そこで魔女を見つけ、こう言った。
「王座を取り戻すための軍隊をよこせ」
魔女は尋ねた。
「何の軍隊だい?」
「私を王に戻せる軍隊なら何でもいい」と彼は答えた。
すると魔女は、死者の軍勢を呼び起こした。元王はその軍を率いて城へと進軍した。
だが、玉座の間に入った瞬間、彼の血は凍りついた。
玉座に座り、彼を待ち構えていたのは――あの醜悪な怪物だったからだ。




