『像職人トーニャの日常』~納期は明日、依頼主は勇者~
一日目:奇妙な注文客
俺の名前はトーニャ。
代々続く神像職人の家系で、今日も真面目に彫っている。
木の削る音、香るおがくず――あぁ、平和だなぁ。
そんなとき、扉がドンッ!と開いた。
「こんにちは☆! 神様の像を100体ください!」
……誰だこいつ。
顔が満面の笑み。手には木の棒。
嫌な予感しかしない。
「えっと、どんな用途で?」
「死んだときに生き返るポイントにしたいんです☆」
いや意味がわからん。
お前、RPGの世界観ぶち壊してない?
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二日目:無理な発注
「で、いつまでに100体欲しいんだい?」
「明日までにお願いします☆」
はあああああ!?!?
木像ってそんなに軽く作れないんだよ!?
1体でも1週間かかるんだよ!?
「じゃあ100分でいいです☆」
さらに短くなっとるわ!!
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三日目:地獄の作業
寝てない。
もう3日寝てない。
腕がしびれて動かない。
でもドアの向こうから、またあの声。
「トーニャさん、できましたか☆?」
「できるかボケェ!!」
「やっぱり! じゃあ見守ってますね☆」
ドアの外で踊るな。
応援になってねぇ。
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四日目:素材の闇取引
木材が足りない。
勇者は言った。
「だったらそこら辺の椅子とか削っちゃいましょう☆」
いやいやいや!!
それ、王宮の備品だからね!?
結果、王様ブチギレ。
「誰だ! 王座が神像になっておるぞ!!」
勇者「トーニャさんです☆」
やめろぉぉぉぉぉ!!
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七日目:神像バブル崩壊
勇者が神像をあちこちにばらまき始めた。
「これでどこでも復活できます☆」
そのせいで――
村中、神像まみれ。
井戸の中にも、屋根の上にも、トイレの中にも。
夜になると、風で「カタ…カタ…」って揺れる神像の群れ。
ホラーだよ!
信仰どころかトラウマだよ!
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十五日目:クレーム地獄
「トーニャさんの像のせいで、夜寝てたら“ピカーン☆”って光ったんですけど!」
「それ魂の残留光だよ!!」
「私の家のトイレで人が復活しました!」
「知らねえよ!!」
「像を踏んだら足がしびれました!」
「神様怒ってんだよ!!」
もう修理依頼とクレームで生きた心地がしない。
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三十日目:禁断の量産
限界を超えたトーニャは、禁断の手段に出た。
「……よし、型を作ろう」
粘土型を使って、量産型神像を大量生産。
名付けて――“神像Mk-II”。
ただし、祝福なし。
見た目だけの“なんちゃって神像”。
勇者が感動して泣いた。
「これで生き返り放題ですね☆!」
あっ、それ、偽物なんだよ……。
でも言えなかった。
だって、あの笑顔、怖いんだもん。
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六十日目:世界が像まみれ
気づけば、世界中に俺の作った像が。
村にも森にも魔王城にも。
誰かが倒れるたびにピカーン☆
「勇者がまた死んだぞ!」
「また生き返ったぞ!」
「もう何回目だよ!」
神父さんも言ってた。
「もう祈るのも飽きました」
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九十九日目:奇妙な静けさ
今日、勇者が来なかった。
いつもなら「おはようございます☆!」って扉蹴り破るのに。
静かだ。
久しぶりに木の音が心地いい。
あぁ、ようやく平和が――
……と思った瞬間。
外から声。
「トーニャさーん! 魔王城に“超でっかい神像”お願いします☆」
やっぱり来たーーーー!!
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百日目:職人の悟り
今日もまた、木を削る。
勇者はバカだ。
でも、世界を救ったバカだ。
俺はもう、考えるのをやめた。
木を削るたびに聞こえる。
“カリカリカリカリ☆”
……あれ?
音が、星の形してる気がする。
やばい、俺も伝染したかもしれない。
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―トーニャ、今日も彫る。世界の平和のために。たぶん。―




