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それ逝け勇者様

『像職人トーニャの日常』~納期は明日、依頼主は勇者~

作者: 黒の巣
掲載日:2025/11/07


一日目:奇妙な注文客


俺の名前はトーニャ。

代々続く神像職人の家系で、今日も真面目に彫っている。

木の削る音、香るおがくず――あぁ、平和だなぁ。


そんなとき、扉がドンッ!と開いた。


「こんにちは☆! 神様の像を100体ください!」


……誰だこいつ。

顔が満面の笑み。手には木の棒。

嫌な予感しかしない。


「えっと、どんな用途で?」

「死んだときに生き返るポイントにしたいんです☆」


いや意味がわからん。

お前、RPGの世界観ぶち壊してない?



二日目:無理な発注


「で、いつまでに100体欲しいんだい?」

「明日までにお願いします☆」


はあああああ!?!?


木像ってそんなに軽く作れないんだよ!?

1体でも1週間かかるんだよ!?


「じゃあ100分でいいです☆」

さらに短くなっとるわ!!



三日目:地獄の作業


寝てない。

もう3日寝てない。

腕がしびれて動かない。


でもドアの向こうから、またあの声。


「トーニャさん、できましたか☆?」


「できるかボケェ!!」


「やっぱり! じゃあ見守ってますね☆」


ドアの外で踊るな。

応援になってねぇ。



四日目:素材の闇取引


木材が足りない。

勇者は言った。


「だったらそこら辺の椅子とか削っちゃいましょう☆」


いやいやいや!!

それ、王宮の備品だからね!?


結果、王様ブチギレ。

「誰だ! 王座が神像になっておるぞ!!」

勇者「トーニャさんです☆」


やめろぉぉぉぉぉ!!



七日目:神像バブル崩壊


勇者が神像をあちこちにばらまき始めた。

「これでどこでも復活できます☆」


そのせいで――

村中、神像まみれ。

井戸の中にも、屋根の上にも、トイレの中にも。


夜になると、風で「カタ…カタ…」って揺れる神像の群れ。

ホラーだよ!

信仰どころかトラウマだよ!



十五日目:クレーム地獄


「トーニャさんの像のせいで、夜寝てたら“ピカーン☆”って光ったんですけど!」

「それ魂の残留光だよ!!」


「私の家のトイレで人が復活しました!」

「知らねえよ!!」


「像を踏んだら足がしびれました!」

「神様怒ってんだよ!!」


もう修理依頼とクレームで生きた心地がしない。



三十日目:禁断の量産


限界を超えたトーニャは、禁断の手段に出た。

「……よし、型を作ろう」


粘土型を使って、量産型神像を大量生産。

名付けて――“神像Mk-II”。


ただし、祝福なし。

見た目だけの“なんちゃって神像”。


勇者が感動して泣いた。

「これで生き返り放題ですね☆!」


あっ、それ、偽物なんだよ……。

でも言えなかった。

だって、あの笑顔、怖いんだもん。



六十日目:世界が像まみれ


気づけば、世界中に俺の作った像が。

村にも森にも魔王城にも。

誰かが倒れるたびにピカーン☆


「勇者がまた死んだぞ!」

「また生き返ったぞ!」

「もう何回目だよ!」


神父さんも言ってた。

「もう祈るのも飽きました」



九十九日目:奇妙な静けさ


今日、勇者が来なかった。

いつもなら「おはようございます☆!」って扉蹴り破るのに。


静かだ。

久しぶりに木の音が心地いい。

あぁ、ようやく平和が――


……と思った瞬間。


外から声。

「トーニャさーん! 魔王城に“超でっかい神像”お願いします☆」


やっぱり来たーーーー!!



百日目:職人の悟り


今日もまた、木を削る。

勇者はバカだ。

でも、世界を救ったバカだ。


俺はもう、考えるのをやめた。

木を削るたびに聞こえる。

“カリカリカリカリ☆”


……あれ?

音が、星の形してる気がする。


やばい、俺も伝染したかもしれない。



―トーニャ、今日も彫る。世界の平和のために。たぶん。―


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