プロローグ〜追放と決意〜
新作になります。素人なりに書きました。皆様に読んで頂けるように日々精進していきますので宜しくお願いします。
プロローグを修正しました。こちら側の都合で他のエピソードも全て修正させて頂きます。
新しいこの物語を是非ご覧下さい。引き続き宜しくお願いします。
私はネルフィ・アウルディーン。
年齢はまだ十歳。けれど頭の中は、何百人の大人より速く回る自信がある。
いや、そうでなければ……こんな無茶な大企業で主任なんてやっていられない。
工房の片隅で、新しく組み上げた魔導機関の試験を終えた私は、疲れた指先を軽く揉みながらため息を吐いた。
「ネルフィ? 聞こえるかしら」
淡く光るホログラムが空中に浮かび上がる。現れたのは、金色の髪に深紅の瞳をもつ少女――私の幼馴染にして、エリムハイド王国の第2王女、リュシェル・エリムハイド。
「おお、リュシェルか。どうした、また王宮を抜け出したのか?」
「ち、違うわよ! これは正当な休憩時間。ネルフィは? ちゃんと休んでる?」
「私は研究が休憩みたいなものだ」
ふんと頬を膨らませるリュシェル。だが彼女の声を聞くと、不思議と胸が温かくなる。
その横で――黒猫の姿をした人工精霊が、銀のトレーを持って優雅に歩み寄る。燕尾服を着込んだ執事然としたその猫は、私のパートナーだ。
「ネルフィ様。休息のお茶を。糖分の補給も推奨します」
「ありがと、アルス」
「……黒猫が喋った!?」リュシェルが驚いて声をあげる。
「人工精霊アルス。執事代わりだよ。おまけに秘書も兼ねてる」
「秘書猫!? ずるい! わたしも欲しい!」
リュシェルの子供っぽい叫びに笑いそうになった、その時だった。
――ブザーが鳴る。
ヘリオス・コングロマリット本社、役員会議室への呼び出し。
胸の奥に、嫌な予感が走る。
◆◇◆◇
会議室は、冷たく豪奢な大理石の空間だった。
椅子にふんぞり返るのは、金髪を後ろに撫でつけた青年――ギルバート・ヘリオス。この巨大企業の若き新社長だ。
「ネルフィ・アウルディーン。君をこの会社から解雇する」
静寂を裂くように響いたその言葉。私は一瞬、耳を疑った。
「……解雇? 何かの冗談ですか、社長」
「冗談? はっ。十歳の小娘が主任を務めているなど、恥以外の何物でもない」
彼は鼻で笑い、私の積み上げてきた発明を「道具」としか呼ばなかった。
「君の研究成果は全て会社のものだ。これからは私の代で、新しいヘリオスを築く」
怒りで震えながら、私は静かに笑った。
「……残念ですね、社長。私が生み出した発明は、すべて私個人の特許にしています」
「なに……?」
「ご存じなかったのですか? ヘリオスの基盤技術、そのほとんどが私の名義で保護されている。私を追放するということは――近い未来、全ての発明の使用権を失うということですよ」
ギルバートの顔から血の気が引いたのを、私は見逃さなかった。
「き、貴様ッ! 調子に乗るなよ、子供が!」
「子供でも、発明は奪えませんよ」
私は背を向けた。
アルスがすぐ傍を歩き、ホログラム越しのリュシェルが心配そうにこちらを見ていた。
胸の奥に浮かぶのは怒りでも涙でもない。――決意だった。
「ヘリオスに未来はない。なら私は……私の工房を興す」
その時が、アウルディーン工房――いや、アウルディーン・ギアワークス誕生の瞬間だった。
明日からは朝の7時、18時と1日2回のペースで毎日投稿していきますので宜しくお願いします。
ネルフィの応援を宜しくお願いします。