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水道管の工事

 モキュメンタリーです。っていう出だしでいいんでしたっけ?

 こういう形式やホラーは初めてなので、初心者丸出しでもご容赦ください。


 最近水道管が破裂する事故が各所であるじゃないですか。もちろんあれらは経年劣化で起きる事故だって分かってます。オカルトだなんて思ってないですよ。


 なんでこんなことを書き出したのかというと、昔友人から聞いた話を思い出したのでちょっと書いてみようかなと思った次第です。

 モキュメンタリーって形にしておけば、気づかれても分からないかなと。

 前置き長いですよね。もったいぶるつもりはないんです。

 随分前に聞いたものだから話半分で読んでください。



 その友人、少し変わったお仕事をしてました。友人の名誉のために書いておきますが、とてもきちんとした会社で福利厚生も聞いた限りだととても充実してるそうです。お給料も良いみたいだし。羨ましいです。――すみません、脱線しました。


 で、何の拍子でその話題になったか忘れたのですが、その友人が「たまに経年劣化や作業中の事故ではなく、全く何もないのに破裂する水道管がある」そうです。

 以下、はっきりと覚えていないので「こんな感じだったはず」と私が脚色した会話文になります。


「なによそれ?」

「説明が難しいというか。できない」

「は?」

「うーん……どう言えばいいのか。全部話すと、怒られる……」

「いや、話し振ったんだから説明してよ。気になるし」

「場所が悪い」

「地盤の問題って意味?」

「違う、こう道が交差してる? というか。うーん」

「……交差点? それが理由なら、渋谷のスクランブル交差点は一年中水が噴き出すことになるね」

「そう。だから違う。ええと、水の通り道の相性が悪い」

(さっぱり分からんが、突っ込んだら説明してくれないだろうし……)

「そうなると、物理で直しても繰り返す」

「水道管を取り替えても無駄ってこと?」

「そうそう」

「じゃどうすりゃいいのさ」

「私が務めてるような系列の会社が担当して、道を直す。流れやすくすればぶつからないしね。元は上手く除けてたもの同士を無理矢理繋いだから喧嘩して破裂するわけ」


 本来の会話はほぼ忘れてるので、大体こんな内容だったって思ってください。



 本題。


 その友人と会わなくなって暫く経った頃、私は金欠で警備員のバイトをしてました。

 警備員て建物の警備だけじゃなくて、工事の時の交通整理なんかもします。バイトはそういう担当の方が多いかも。

 警備員の恐い話しはつきものですが、どちらかと言えばヒトコワの部類なので――また別の機会に話せたらいいなと思います。


 道路の工事現場って短期が多いです。私が担当した現場は、一日から三日が多かったですね。

 務めていた会社が今で言う「下請け専門」だったという理由もあるとは思いますが。

 工事が終われば、同じ現場に戻ることはますないです。だから余計に、記憶に残ってるんです。


 その日も業務を終えて事務の社員さんに終了連絡をしました。


「ヒトロクマルマル、現場終了」(私のバイト先は、時間の連絡はこういう形式でした)

「ヒトロクマルマル、了解。……あ、君。ちょっといい?」

「はい」

「明日の現場なんだけど、こっち行ってくれるかな?」


 現場は住んでいる場所に近いところを選んでくれるのですが、この時は珍しく離れた地区でした。といっても電車では一本だったので、こちらとしては乗り換えがある現場よりずっと行きやすいわけで。


「行きます」


 即答です。

 翌日、少し早めに家を出て指定された住所に向かいます。工事現場へ直接行くこともあれば、事務所で作業員の方と合流して現場に行く。という場合もあります。


 その日は建設会社の事務所集合でした。

 ごく普通の事務所に、ごく普通の作業員のおじさん達。でもなんかみんな表情が暗い。

 簡単にご挨拶と朝礼して、すぐに現場へ向かいます。

 軽トラ三台に分乗して、十分ほど。幹線道路に近い田んぼの真ん中。

 元あぜ道だった所は綺麗に舗装されてて、農作業のトラックも出入りしやすいだろうなーと言う感じのごく普通の場所です。


 四つ辻の端っこから、水がちょろっと吹き出てます。


 突発的な水道工事はままあったので、今回もそれだな。規模は小さいからすぐ終わるなラッキーとか思ってました。

 ちなみに日給制なので一時間で工事が終わっても、まるっと一日立ちっぱなしで交通整理してもお給料は同じです。

 ヘルメット被って交通整理(といっても、田んぼの真ん中なので通る車はほぼ無い。しかし工事する場合は、小規模でも警備員が必要なのです)の準備してたらおじさんの一人が


「またか」


 とぽつり。

 多分私、「え?」って顔したんでしょうね。おじさん慌てて凄い笑顔になって。


「いやあ三日前になおしたばっかりなんだけどね」

「何回目だったかな?」

「よくある事だから」


 バイトの私でも「よくある事ではないんだな」と分かりました。

 工事自体はアスファルトを剥がして、壊れた水道管(細かったです)を取り替えてまたアスファルトを戻して終了。一時間かかったかかからないかくらいです。


 帰るときに事務所の社長さんがみんなに缶コーヒー配ってました。私ももらった。

 そして翌日、新しい仕事現場の指示を聞くために事務員さんのところへ行くと。


「……昨日の建設事務所、行ってくれる?」

「はい」


 同じ事務所ってだけで、まさか工事現場まで同じじゃないよね。と思いつつ行くと……予想どおり同じ現場でした。


 おじさん達、疲れ切った顔してます。でも直すしか水を止める方法はないので、またアスファルト剥がして水道管取り替えて、と同じ作業で終了。

 この時は友人の話なんてすっかり忘れてましたし、覚えてたとしてもバイトがどうこう口出しできるものでもない。


 で、翌日。事務員さんのところへ行くと、なんか困った感じで電話をしてました。


「……あのー新しい仕事……また同じ現場ですか?」

「ああそれ、なくなった」

「?」

「業者があの現場の仕事は受けないって。だからもうあの現場ないよ」


 建設会社が現場から手を引いたら、警備員もすることはありません。一時間くらいで日給稼げる美味しい現場でしたが、ほっとしたのを覚えてます。


 なんとなく思い出したので書きましたが、その後「ずっと水が吹き出る現場」がどうなったのかは分かりません。

 きっと偶然が続いただけなんでしょう。

 私は霊感ないので友人のように何か見たり感じたりとかできないので、現場に「黒いもやが出てた!」とか興味引かれるような体験もありませんでした。


-----


「へー神様って喧嘩するんだね」

「神様?」

「違うの? 流れ…つまり神様にとっての道を勝手に変えられたから、水の神様が怒ってるんじゃないの?」

「神様なら対処法はまあそれなりにあるけど、違う物も流れてるし。それに、通り道は何が使ってるか分からないからね」

「何ってなによ?」

「知らん方が良い」


 それきりはぐらかされて、分からないままです。



 ……モキュメンタリーってこういう締めでもいいんでしたっけ?


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