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第2話 学生時代のトラウマ

時間は更に遡り、小学生時代の話をさせてもらう。


小学校3年の頃、好きだった男子がいた。

名前は達也君。

スポーツ万能で、頭も良く、男女共に気兼ねなく話しかけてくれるクラスの中心存在の子だった。

顔もまた良く、目がクリっとして可愛いらしい顔をしていた。


そんな達也君の事を好きな女子はたくさんいたと思う。

ただ、当時は小学生っていうのもあり、友達として接するのが楽しいと思ってる女子ばかりで改まって

『好きです』

という告白を達也君がされたというのは聞いたことが無かった。


私も、達也君の事を好きな一人だったが、近くで一緒に遊ぶ勇気もなく、いつも遠くから達也君を見てるだけだった。それだけで満足いくぐらい私の日々は幸せだった。


ただ、残念ながらその年の秋に達也君が親御さんの仕事の都合で転校が決まってしまった。

達也君が転校する前に私達の学校で運動会が開催される時期がきた。


私の通っていた小学校は人数も少ないのもありクラス全員がリレー選手として走る競技があった。

達也君は学年の中でもとても足が速く、私はクラスの中でも最後から2番目という遅さの子。雲泥の差だ。

先生の順番決めで、達也君の次の走者が私となった。

何度もグラウンドでバトンをもらう練習をした。


バトン越しという間接的ながらも相手に触れる機会が与えられて凄く嬉しかった。

達也君も、速く走るコツや、バトンの受け取りのコツ等丁寧に教えてくれた。

だが、当の私は達也君が近距離にいるだけで顔が真っ赤になるほどで、達也君のアドバイスにも頷くだけで精一杯だった。


ある日の昼休みに同じクラスの仲の良い友達から

『毎日リレーの練習大変じゃない?みほちゃん、足が遅いって自分で言ってたから』

と心配の声掛けをしてくれた。


でも、私は達也君と練習出来る時間が凄く嬉しかったので

『走るのは大変だけど、達也君が良くしてくれるし。毎日こんな幸せな時間をもらえるとか夢みたいだ』  と、つい心の声を漏らしたのがいけなかった。

それをどこか近くで同じクラスの男子が聞いていたのだ。


私が心の声を漏らした翌日は、先生達が研修の為、全校生徒一斉に帰宅の日だったのでリレー練習はお休みだった。


(あ〜、今日は練習お休みだからちょっと残念だ)


そう思いながら私は職員室から出てきた。

帰る前に先生から頼まれた提出物を持って行ってたので、みんなより少し帰りが遅くなったのだ。


(早く教室に戻って帰りの支度しないと!)


少し足早に自分の教室に戻っていると、複数の男子の声が私の教室から聞こえた。


(あれ?まだ誰かいるのかな?)


と思いながら歩く速度を少し緩めてゆっくりと教室に近づいた。

教室の中の声が聞こえる位のとこまで来て私はピタッと止まってしまった。


『みほがお前の事好きらしいぞ』


『俺も聞いた!何かさ、お前とのリレーの練習がし·あ·わ·せ♡って言ってた』


等とクラスの男子が達也君に言ってからかっている声が聞こえたからだ!


(えっ!私の話じゃん!そもそも何で好きってことがバレてるの??幸せって言ったけどそんな艶っぽく言ってないよ〜)


私の頭の中はパニック状態に。


今のアラサーの私ならその当時の小学生男子の話を、冷やかしあるあるだと思える。

何なら

『それはね、好きとかじゃないの。足の速い人からのバトンを受け取るのは、それまでに他の走者を突き放してくれてるだろうから安心感があって嬉しいんだよ。わかる?』

って上手く誤魔化して説き伏せていたかもしれない。


ただ、残念ながらその当時は男子と話すことさえ顔が真っ赤になるほどの恥ずかしがり屋で、そんな事も言えるはずもなく…


荷物もあるし教室に戻りたいが、とりあえず廊下から教室のドアの端っこで見えないようにその様子を聞いていたら突然大きな声で


『お、俺は好きじゃないしっ!』


という声が聞こえてきた。 声の主は達也君だった。


『好きじゃない』という言葉は私に面と向かって言ったものではないにしろ、ハッキリと言葉として表現されたのは初めてなのもあり、かなりショックを受けた。


達也君と一緒にいる男子達からは更に


『みほは見た目は悪くないし良いんじゃな〜い?』


とからかいながらの笑い声が聞こえた。


(もうこれ以上、ここで聞くのは嫌だ!)


そう思いその場から駆け出したので、達也君がその後何と言っていたのかはわからない。

私はとにかくその場から離れて、1人落ち込んでいた。


(好きじゃない事くらい知ってるし…。でもそんなハッキリ言わなくてもいいじゃない。遠くから見るのがそんなに悪い事なのかな…)

そう考えると自分でも気づかないうちに泣いていた。


その後、クラスに戻ると誰もいなかった。


私は、自分の赤いランドセルを背中にかるい、トボトボと家に帰りながら1つの心配事が頭に浮かんだ。

それは、明日からのリレーの練習の事だった。


不安は的中した。


あからさまに、達也君とのリレーのバトン練習は素っ気ないものとなった。

今までは何度もバトン練習に付き合ってくれたし、走るアドバイスもしてくれたが、その日を境に達也君は私との練習は1回〜2回で止めてしまい、その後直ぐに同じクラスの男子の元に向かい、全員のリレーの練習が終わるまで喋っていた。


こんな状態が達也君が転校するまで続き、ただ見つめるだけの機会も迷惑になるのかなと思い、自分なりに達也君を見る事も極力減らす日々が続いた。


クラスで開かれた達也君のお別れ会も皆が和やかな雰囲気の中で、私と達也君はお互いギクシャクしてしまいそのまま達也君は転校してしまった。


あの時、クラスの男子が達也君に色々言わなければ、私のささやかな楽しみがあったのになぁ…

本当、男子って嫌!

という気持が、変化して

『同級生の男子』

という分類が少し苦手になったのだ。



それから何年か経ち、小学校の高学年になる頃には男子と話す事にも少し慣れてきて、クラスの男の子とは赤面もせずに普通に話せるようになった。

その後、地元の中学に入り、地元の別の小学校区の子も同じ中学になった。


中1の時に校区の違う男子と同じクラスになった。

名前は吉良(きら)君という。

吉良君はもともと話好きなのもあるのと、たまたま私が〔加藤❳で、向こうが〔吉良❳なのもあり、出席番号が1つ違いなのもあり、たくさん話しかけてくれた。


当時の吉良君の背は165センチで私と一緒だった。

何故、一緒なのがわかるかと言うと、身体測定時に必ず

『何センチになったんだよ〜』

とお互い聞いていたからだ。まぁ、成長期あるあるの話だ。


頭は短髪の黒髪、目はちょっと細めで、笑うと更に目が無くなる位の男子だった。


私の通っている中学は、男子は黒の学ランだった。

高校も同じく学ランで、男子の場合高校と中学の違いはボタンの形と色と、校章ぐらいだったので、こちらもパッと見はどこの中学、高校かすぐに特定出来ない。まぁ、それが学校の狙いらしい。

ちなみに女子も中学はセーラー服で高校と違うのは襟と袖口のラインの数だった。

中学も3校あったが、3校ともラインの数は3本で高校は1本だ。色は高校と同じく、白·紺色·えんじ色で、リボンスカーフの色も形も同じだ。



話を元に戻すが、私も中学に入ったきっかけでちょっと変わろうと思ったのもあって、昔とは比べ物にならないぐらい男子と話せた。特によく話かけてくれる吉良君とは他の男子よりも話した。


吉良君とはいつもクラスの内外問わずバカ話したり、給食の牛乳をどちらが先に飲むかの競争したり、休んだ人の牛乳をどっちがもらうかのジャンケンしたりと毎日が楽しかった。


部活はお互い別で、私はソフトボールで吉良君はサッカー部だった。

私の学校のグラウンドがソフトボール部とサッカー部が半面ずつ使っていたのもあり、部活中もお互い

『よお!』

と挨拶したり、部の道具を片付ける際に見かけては、お互い軽口叩いたりしていた。


ただ、仲は良かったが友達としての感情しかなく、それ以上の感情はお互いに無かったと思っていた。

ただ、それは私だけだったということを気付かされた日が来たのだ。



中学2年に入り、吉良君とはクラスは別になった。

中学2年にもなると、小学生とは違い周りは彼氏や彼女が欲しいと言う言葉が増えてきた。

何なら数週間に一度誰かが誰かに告白していると聞くこともあった。


私個人は、その当時は部活が楽しく彼氏が欲しいという気持ちは全く無く、むしろ女友達と楽しく過ごしたいという学生だったので、無縁だなと思っていた。


中学2年の時のある冬の日昼休みの事だった。

同級生のサッカー部の男の子が、私を訪ねてきた。面識はあったが話した事は無い子で、(何で私に用事?)

と思った。


『加藤みほさんだよね?』


その子は私の名前を確認した。

『…あ、はい。加藤ですが…?』

『吉良知ってるよね?』

『はい。去年同じクラスだったから知ってるけど…』


そう言った後何だか凄く嫌な予感がした。


『あいつが今日の放課後に加藤さんに話があるみたいなんだよね。今日はどの部活もテスト前で休みだから部活無いよね?それでさ、放課後2年3組に来てくれない?』


と言ってきた。


嫌な予感が的中した!とこの時凄く思ったのを覚えている。


『あっ、いや…私…放課後用事があるんで!』


咄嗟に嘘をついた。


『すぐに終わるから来て!お願いな!』


そのサッカー部の男子はまさに捨て台詞という言葉が正しいという言い方で走り去っていった。


その様子を後ろから見ていた同じクラスの友達が何事があったのか気になったのだろう、私に


『みほ何だったの?』

と聞いてきたので、私は今の一件の出来事を話した。


話を聞いた友達からは


『それ、告白じゃない?絶対そうだよ!』


と興奮気味に言われた。


私も認めたくは無かったがそうとしか思えなかった。


(ただ、もしそうだとして何故に人を使って呼び出すのよ!自分で言いに来てよ!)


という怒りと呆れが込み上げてきた。


吉良君の事は嫌いではない。

でも付き合いたい存在でもない。

告白されても正直困るというのが私の答えだった。

(ただ、それを当人に伝えれるのか?…いや、無理だわ!私そんなにハッキリ言えるほど強い女じゃないわ)


そう思うと、放課後が憂鬱でたまらなくなった。



それから数時間経ち、放課後が近づいてきた。


帰りの支度をする前に、別のクラスの友達に借りていた雑誌を返しに行こうと思い向かっていると、先程とは違うサッカー部の面識の無い男子が私の少し後ろを歩いているのに気付いた。

よく見ると、前からもコソコソと話しながら同じくサッカー部の男子が私を見て話すのが見えた。


(もしや…)


と思い私は用事を済ませた後に自分のクラスには戻らず、違うクラスのいつも一緒に帰るテルミがいるクラスに向かった。


毎日部活が無い日は、私は自分の荷物を持ってテルミのクラスに行くようにしているのだが、今日は荷物を持たずに先にテルミのとこに向かった。


案の定、先ほどのサッカー部の男子数人が後ろから付いてきてるのがチラッと後ろを見た時に確認出来た。


(あんなにサッカー部の子がゾロゾロと付いてくること事態がおかしいじゃないの!もしかして、ちゃんと2年3組に行くかを監視してるの?)


そう思うと何だか怖くなって、足早にテルミのクラスに駆け込んだ。


『あっ、みほ〜。今日は早いね〜。ちょっと待っててね。帰る準備するからね〜』


テルミは私の心中など気づくわけでもなく(当たり前だが)いつものゆったり声で言った。


ところが、それどころではない私はテルミの言葉など聞いてる場合ではなく、テルミに


『サッカー部の人から監視されてる!めっちゃ怖い!』


と訴えた。


そして、その訴えから一瞬間が空いて…


『えっ!?待って待って!監視?何?意味わからんない!どういうこと?』


テルミは珍しく早口で喋り、自分の通学カバンの中に教科書を入れる作業中の手を止めて私に問いかけてきた。


私は今日の昼間にあったことを話した。

そして、おそらくサッカー部の子らは私がちゃんと指定された場所に行くか監視してると伝えた。


一部始終をフムフムと頷きながら聞いたテルミは


『なるほどね。みほは行きたくないわけね?』


と聞いてきた。


私はその質問に人生でこれ以上無いってぐらいの食い気味に


『なるべくなら行きたくない!何か色んな人が関わってるのが既に嫌だ!』


今の気持ちを率直に伝えた。


『まっ、そりゃそうだよね〜。よし!じゃ今日は帰ろう?もし明日以降に何か言われても、急な用事があったんで帰りました〜って言おうよ?』


テルミは私の肩を撫でながらいつものゆったり声に戻り言ってくれた。


『そうと決まれば、とりあえずみほの荷物を取りにクラスに行こうよ。本当に監視してるかは私も見てみるから』


テルミがまた通学カバンの中に教科書を入れる作業を開始しながら言ってくれて気持ちが少し楽になった。


その後帰り支度の済んだテルミと、自分のクラスに戻る最中に先程のサッカー部員を数名を見かけた。

見かけた後に恐怖が倍増した。

何故かと言うとさっき見たのは、3人ぐらいだったのにいつの間にかに6人ぐらいに増えていたのだ。


『めっちゃ増えてるじゃん…』


映画とかで振り向いたら追いかけてくる犯罪者が増えてきたみたいなシーンがあるとすると、今の私はそのシーンが現実に起きたような感じだった。

(今なら追い込まれてるシーンを迫真の演技で出来そうな位だわ)

と本気で思っていた。


とりあえず、その増えた犯罪者…もといサッカー部員を気づかぬふりしたまま自分のクラスに戻った。


クラスには数人残って談笑していた。


『あっ、来た来た。あとみほだけだよ〜。みんな荷物をカバンに入れて帰ったよ〜』


クラスの女子に言われ


『あっ、あ〜、ごめーん。ちょっと先に色々用事済ませていたから遅くなっちゃった。急ぐね〜』


平静を装いながら私は手際良く机の中の荷物を通学カバンにせっせっと入れた。


その横でテルミが私の様子を見ながら


『サッカー部いたね。しかも6人ぐらいいたよね?マジで監視じゃん。怖っ』


そう早口で呟いたので、私も深く黙って頷いた。


『じゃ、みんな、また明日ね』


私は通学カバンを手に持ち、クラスメイトに声をかけて、テルミと靴箱の方に足早に向かった。


『今のところサッカー部の子いないみたいだから、今のうちにサッと帰ろう!』


テルミは事前に廊下を見回してくれたらしくそう言ってくれた。

ホッとしたのも束の間で、急に後ろから声を掛けられた。


『加藤さん!』


私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

振り向くと、その声の主は同じクラスのサッカー部の男子で、学年でも人気のある古川君だった。

いつの間にか私達の後ろに来ていたのだ。


『放課後2年3組に来てってサッカー部のやつから聞いてない?』


古川君が私に向かって言った。


同じクラスだが、古川君はクラスのカースト上位の人で、私は中間位の存在だからなのもあって、対面で話したのはこれが初めてだった。


私が何て返答をしようか考えていたら、


『あいつ…、吉良の事だけど、加藤さんの事本気みたいだから。ちゃんと話聞いてあげて』


と言われてしまった。


その言葉に動揺しつつ私は、逃げれないと思い


『わかった…』


絞り出すような声で古川君に伝えた。


その様子を横で見ていたテルミは心配そうに私の冬用のセーラー服の上着の長袖の端っこを引っ張ってきた。


私はテルミの方に身体を向け


『テルミごめんけどちょっと待ってて』


そう伝えて、カバンをテルミに預け2年3組へと向かう事を伝えた。


テルミは


『わかった。ここでちゃんと戻るまで待ってるね』


2年3組へと向かう為の階段を上がる私に向かって言ってくれた。


私は、階段を一段ずつゆっくり登っていた。


この時の私の心中はとうと…


(ものすごーく嫌だー。こんな事されるの初めてだし、そもそもサッカー部のチームプレイが凄くない?いやいや、こんな事じゃなくて、サッカーの試合でそのチームプレイを発揮してよ)


という1人愚痴大会であった。


色々心の中でグチグチ言いつつも、足は2年3組の扉の前までちゃんと来ていた。

扉は閉まっていた。

冬というのもあり、夕方になると日が暮れるのも早く廊下も先程より少し暗くなっていた。


(ここにいるんだよね…?)

おそるおそる扉に手をかけてゆっくりと横に引いた。

廊下はまだ陽が高いのもあって明るかったが、教室の中は、ほんの少し薄暗かった。

教室のカーテンが全部閉められていたからだ。

その薄暗がりの中、教室の真ん中の席の椅子に座っている男子がいた。


吉良君だった。

とりあえず中に入ろうと思った瞬間、先程まで廊下に誰も居なかったのに、数人の声が近く聞こえてきた。

聞き覚えのある男子達の声だった。


(あっ!サッカー部の子達だ!)


様子を見にサッカー部の子達がこちらの方に来向かっていたのだ。

私は見られたくないのもありすぐに中に入り、扉をそっと閉めた。

中に入ると吉良君が


『…よぉ。久しいな。…元気してる?』

一声かけてきた。


『う、うん。元気だよ』


最低限の返事だけして苦笑いする私


昨日までの私なら吉良君相手なら


『何、なに?呼び出してきちゃって〜どうしたの?』


って言ってたけど、これまでの流れと今の外の状況でそんな軽口を言える気持ちになれなかった。


お互い何となく無言になってしまった。

また、何となくこの空間が告白する人、される人の雰囲気に感じてしまい今すぐにでも出ていきたい衝動に駆られた。


(お願いだから何かの間違いであってー)

そう思った瞬間、先ほどまでド緊張で気付けなかったが教室の外の廊下に10人ぐらいの人影が教室の窓のカーテン越しにいるのがわかった。


『ちょっ、おい、どうなってる感じ?』

『うまくいってんの?』


等、いわゆる世間一般でいうデリカシーの無い男子達の声が聞こえてきて、ますますこの場が嫌になり逃げ出したかった。

小学校の時の達也君の時のトラウマが思い出されたからだ。


そんな事を考えてるとはつゆ知らずの私と対面している吉良君は、意を決して私に向かって


『俺、中1の時から加藤が好きだった。付き合ってほしい!』


ハッキリとした口調で告白された。


そんな吉良君には申し訳ないけど、当時の私の心境は三段階だった。

その内容はというと…


①(言われたー)

②(嫌だー)

③(無理ー)

だった…

(今だから謝る!吉良君ごめんよー)


まぁ、現実にはそんな事が言えるわけでもなく、頑張って言ったのは


『あっ、あの、気持ちは嬉しいけど、私、今は誰とも付き合えない』


というありきたりな一言だった。


『そっか…。うん。わかった!』


静かにでもハッキリと私の答えに対して意外にもアッサリと返答してくれた。

その言葉を聞いた私は少しホッとした。

そしてその後、私は


『あっ、私、友達持たせてるから行くね』


と踵を返しすぐさま教室の扉を開け廊下に飛び出した。


飛び出した直後、横を見るといつの間に集まったのかサッカー部の男子達10人程が、何と廊下に横一列に並び、教室の窓付近に立っていた。

おそらく盗み聞きしていたのだろう…

本当最低じゃ!

と、この時の事は、大人になった今ですらも思う。


私が出ていった直後、教室の外で盗み聞きしていただろう男子達がドドッと中に入り


『どうやった?』

『うまくいったのか?』


と聞いている声が聞こえた。


そんな声を聞くのも嫌で必死で靴箱で待っているテルミの元に走って行った。

靴箱の前で待っていたテルミは私を見ると 


『大丈夫だった?』


心配そうに声をかけてくれた。


『だ、だいじょばないよ〜。色々嫌だったよ〜』


今にも泣きそうな私をテルミが


『ヨシヨシ。帰りながら話を聞くね』

その優しい声かけがその時の私には救いの言葉だった。


テルミと学校からの帰り道、私はこの恐怖と嫌悪感が渦巻いた、今後の自分の人生でトラウマになるような出来事の一部始終を話していた。


この一件も、私の同級生の男の子が更に苦手となる出来事でもある。


ちなみにこの吉良君の告白話には続きがあり、何と私に告白した2週間後、吉良君は別の女子に同じようにサッカー部の男子達を使い、同じ教室で呼び出し告白したのだ!

しかも、その子はオッケーしたらしく付き合うことになった。


(いやいや、女なら誰でも良かったんかい(怒))


となり、ますます同級生の男子に対して苦手意識が強くなったのだった。



という、私個人的にはトラウマ級の色んな事があり、歳上の男性のが良いという枯れ専女子になったのだ。

また、そんな事があったからか、被害妄想というか、自意識過剰かもしれないが自分が男の人と喋っているのを見た人達や、一緒に喋っていた男の人がその直後に別の人達と話してる時に色々私に対して冷やかされてるのでは?とか考えてしまう思考になってしまったのだ。


中学の友達にその話をすると決まって言われるのが


『自意識過剰じゃ!誰もあんたの事言ってないわ』

と笑われる。

その通りだとわかってはいるが、なかなかその考えが拭えないままだった。


結果中学のあの件以降、男子生徒と話すのがまた、苦手となったのだった。













第2話になります。

わかりづらい箇所や、こうしたが読みやすかった等、また誤字脱字等がありましたら、ご指摘してもらえたら幸いです。


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