第1話 スマホが欲しい少女
ああ、スマホが欲しい。
10代の女の子でスマホが欲しくない少女がいるだろうか?
いや、いない。
だから12歳の誕生日を前に私はおばあちゃんにお願いしてみた。
「おばあちゃん、私、誕生日プレゼントにスマホがほしいなぁ」
「あら、ごめんねあゆみちゃん。ちょっと今月から生活が苦しくなっちゃって無理なのよ」
「え?」
その日のおばあちゃんからの返答を私は忘れないだろう。
「お父さんと、お母さんの保険金が底を着いちゃってちゃって今月からおばあちゃんの年金と行政からの手当だけで生活していかなくちゃならないの。あゆみちゃんの進学にもお金がかかるし……だからスマホは我慢して」
「えっ……。おばあちゃん、そんなの初耳なんだけど……」
私の両親は、私が幼い時に交通事故で亡くなった。
以降私はおばあちゃんに引き取られ、おばあちゃんと一緒に生活している。
おばあちゃんは親代わりに一生懸命私を育ててくれた。
それはよく分かってる。
でも、両親の保険金もあって今まで生活に不自由することはなかった。
それが何で急に?
「おばあちゃんのお友達がね、とてもお金に困ってて。絶対返すって言うから仕方なく貸すことにしたのよ。お金がなかったら首を吊るしかないって言われたら貸すしかないでしょ? 大丈夫よ。絶対返すって約束してくれたから」
「おばあちゃん、……そのお金絶対返ってこない気がするなぁ……」
案の定、そのお金が帰ってくることはなかった。
そして私の生活は貧困まっしぐらになった。
小学校は無事に卒業できたけど、中学校の入学準備でお金が足りずおばあちゃんは借金することになり、中学生活は悲惨なものになった。
食べ盛りの時期だというのに、満足に食事も出来ないことがしばしばあった。
ひどいときは雑草を食べて飢えをしのぐこともあった。
お風呂にも満足に入れなくなり、「臭い」といじめられるようになった。
程なくして私は不登校になった。
当然、おばあちゃんとは何度も衝突した。
反抗期まっしぐらだった私はおばあちゃんに何度もひどいことを言った。
でも、おばあちゃんはそんな私に一歩も譲らず真っ向からぶつかって、そしていつも受け入れてくれていた。
学校に行くよりも大事なことがあると、不登校になった私を受け入れてくれていた。
おばあちゃんは、貧乏になっても笑っていた。
貧乏でも人の価値は損なわれないってことをおばあちゃんは教えてくれた。
だから何度もぶつかったけど、その度におばあちゃんとの絆は強くなった気がする。
おばあちゃんは不思議と憎めないんだよね。
不登校になってから、おばあちゃんの内職やチラシ投函のバイトを手伝うようになった。
その頃から生活が少し上向いて、雑草を食べることはなくなった。
ただ、私はスマホが欲しかった。
その果たされないスマホへの想いは年々積もっていった。
不登校のまま中学を卒業した私は、何とか近所のコンビニでバイトが出来るようになった。
実は、店長さんとおばあちゃんは顔見知りで、生活が苦しいのを知っていたから実質小卒の私を採用してくれたと後から知った。
当然ながらバイト代は安い。
でも我が家の収入は増えたので少し余裕が出来た。
そしてバイトで稼いだお金で念願の格安スマホを購入したのだった。
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