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エピローグ:おまけ

【ワンコ系熱血後輩】×【完璧だけど隙だらけな先輩】のラブコメディ!


一緒に仕事をしてから先輩・永遠(とわ)の仕事への姿勢や性格に惚れこんだ後輩・(さくら)は、何を思ったのか出勤時間の会社入り口前で一世一代のプロポーズをかます。しかし、あっさりフられてしまった。

そんな桜の事情などお構いなしに、運命の女神の悪戯によって給湯室で永遠と二人きりになってしまう。桜はめげずに永遠にアプローチをしかけた。結果として永遠が絆される形で「お友達から」契約を結ぶことに成功。これから一体どうなるのやら……前途多難な二人である。


今回は友達契約を結んだ直後のおまけ話です。


 永遠(とわ)が薔薇の花びらを指と指の間に挟んでひらひらと弄ぶ。

 この人って手も綺麗なんだよな。

「薔薇ってさぁ」

「はい」

「高かったろ」

「まぁ、花はやっぱ高いっすね」

「だよなぁ」

「へへ、でもプロポーズにはプレゼントが効果的って書いてあったんで。映画とかでも花束渡してましたし」

 桜は失敗した今朝のプロポーズを思い出しつつはにかんだ。


「ん」

 永遠(とわ)が急に右手を差し出してきた。桜はその右手を見下ろし、永遠(とわ)の顔を見つめ、もう一度右手を見下ろす。何だろうこの右手。

 首を傾げながら桜も右手を出して、所謂恋人繋ぎを試みてみた。すると途端に永遠(とわ)の手が引っ込む。

「え、違うんすか」

「違う」

「じゃあ何ですか? あ、コーヒー代?」

「んなケチなことするかって。じゃなくて、花束」

「え」

 永遠(とわ)が悪戯っ子のような顔で小首を傾げて見せた。

「もったいないだろ。お友達から契約は成立したんだしな」

 捨てちゃったか? と問われてブンブン頭を振った。デスクには持って行けず、車に戻してきたのだ。

「車の中にあります」

「なら帰りにくれ。取りに行くから」

「やった! あ、違う、はい喜んで!」

 桜は喜びのあまりノリで敬礼までしてしまった。永遠(とわ)が愉快そうに笑ってくれたので良しとしよう。


 こうして絶望を抱えた午前から一転、幸福に包まれた午後を桜は満喫したのであった。




 慰め会割り勘飲みコースは!? と滝田(たきた)に文句を言われつつ、桜は「慰めなど俺には不要なものですよ」と宣って退勤する。

 エレベーターで駐車場へ降りると、すでに永遠(とわ)が駐車場入り口で待っていた。慌てて駆け寄った桜はすぐに待たせた謝罪を口にする。

「うーん……」

 待たされたことへの不満、ではなく、永遠(とわ)は駆けて来た桜を見て何やら悩みだした。

「なんすか」

「いやちょっと、大矢(おおや)ってどっちかっていうと犬っぽいよな」

「いやほんとになんすか! それは。つーかだったら先輩は猫科っすからね」

「猫ぉ? 俺、動物占いはユニコーンだったぞ」

「まさかの空想上の動物。そもそも占いの話してないですから」

 永遠(とわ)が占いに興味を持っているのは意外だ。桜は新たな一面を知れて嬉しくなった。

 しかし、どんな占いが好きなのか聞くと永遠(とわ)は別に好きじゃないとあっさり否定してくる。

「じゃあさっきの占いの件はなんだったんです?」

「あー、友達とテレビ見てた時にやってて試しに占ってみただけ」

「へぇ。友達」


 そうこう話しているうちにあっという間に桜の車の前に到着した。

 運転席のドアを開けて中から薔薇の花束を取り出す。永遠(とわ)の手に渡そうと振り返った時、花束の薔薇が歪んでいることに気づいた。

 朝、地面に落としてしまったからだろう。悪いことをした。


 花束を受け取るために伸ばされた永遠(とわ)の手を見て、桜は花束を引っ込めた。

「は? おい、くれるんじゃなかったのか?」

「もちろんあげますよ! でもこれは落としちゃったやつだから、別のにします」

「別……?」

「ちょっと待ってくださいね」

 桜は運転席のドアを閉め、後部座席へと移動してドアを開ける。ふわりと薔薇の香りが漂ってきた。

大矢桜(おおやさくら)

「はい」

 突然、背後に立っていた永遠(とわ)からフルネームで呼びかけられる。桜は背筋を伸ばして振り返った。

「一体何本買ったんだよ」

 桜の車の後部座席は、溢れかえるほどの薔薇で満員状態になっている。乗車人数オーバーとか言っているレベルではない。

「いやそれが100本って言ったつもりがテンション上がって1万本だったかな? もっとかも。言い間違えちゃって」

「大矢……言い間違え、ほんと気をつけなね」

 しみじみと言われて桜はちょっとしっかり落ち込んだ。自分でも気をつけなければと思っていたところだ。

 永遠(とわ)には恰好悪い姿ばかり見られている気がする。


 彼みたいに格好良い人になりたいのに、なかなか上手くはいかない。


「お金出そうか」

 永遠(とわ)はさらりと言って財布を取り出し始めた。桜は彼の腕を掴んでその手を止める。

「まさか! そこまでだせぇ男にしないでください!」

「いやださくはないだろ」

「俺のプライドの問題なんで!」

「うーん……」

 まずいぞ。永遠(とわ)って人はかなり財布の紐が緩い。相手のために払うことを躊躇わない。

 これは迂闊にご馳走しますなんてさせてもらえないかもしれない。

「はい、これ」

 綺麗な薔薇と取り換えた花束を渡す。永遠(とわ)はそれを素直に受け取って、でも、崩れた方の花束も桜から奪っていった。

「ちょっと先輩」

「俺のために用意してくれたんだろ? どっちもちょーだい」

「うぅ、まぁ……先輩がそう言うなら」

 花束二つ分でもたくさんの薔薇だ。永遠(とわ)の家に花瓶はあるのだろうか。きっと洒落た家に住んでいるのだろうから、花瓶の一つや二つありそうだが。


 後部座席に余った薔薇はどうしようかと桜は悩んだ。

 どうせなら全部永遠(とわ)に贈りたいけれど、どう考えても邪魔になってしまう。でも、薔薇に包まれた永遠(とわ)というのはなんというか、とても華やかだろうなと思えた。

 想像の上でさえ、永遠(とわ)は薔薇に囲まれても負けない華やかさだ。

「そうだ先輩。どうせならこれ、風呂に浮かべて楽しんでくださいよ」

「はぁ? 嫌だよ。恥ずかしい」

「でも勉強で読んだ少女漫画の中でやってましたよ! 綺麗だし、先輩ぜってぇ似合うもん」

「なにが『もん』だ。やーりーまーせーん」

 ちぇ、と桜は唇を尖らせた。本当に絶対似合うのにもったいない。

 花束二つ抱えてるだけでも十分その似合いっぷりは披露されている。


 それにしても、花が似合う男というのはとても恰好良いのではないだろうか。

 桜は永遠(とわ)をじっと見つめてうんうん頷いた。

「想像してんじゃないよ」

「いや今のは違いますよ!? ()()想像してないっす!」

「口滑らせすぎ」

 永遠(とわ)が歯を見せて笑った。

 お友達からという話だが、勝手に憧れてその背を見て来た社会人Aとしてはこんなにもお近づきになれただけで天にも昇る思いだ。


「先輩、今度メシ一緒に行ってください。俺を知るチャンスです!」

「どんな売り込みだよ」

「だめですか」

「いいよ。行こう。何が好き?」

「肉が好きっす!」

「いいねぇ。たくさん食え食え」

「あざっす! って違う! 俺にエスコートさせてくださいよ。永遠(とわ)先輩は何が好きですか?」

 ちらりと永遠(とわ)がこちらを横目で窺う。

「だーめ」

「えっ。何で!」

「お友達だから」

「お友達でもエスコートはするでしょ!」

「俺、後輩に接待させたくねぇし」

「接待!?」

 ひでぇよと桜は嘆いた。接待なものか。行きたいから誘っているだけなのに、永遠(とわ)からすれば会社の後輩とご飯に行く程度の認識なのだ。期待はするなと最初に釘を刺されているけれど。

 前途多難だと肩を落として落ち込む。


 ふと何かの感触が桜の耳元に生まれて顔を上げた。手で触れてみると、そこには薔薇の花びらが飾られていた。

「な、なんすか」

「花びら。抜けてたから」

「どうも……」

 チョコレートを半分お裾分けされたことを思い出してしまう。

 永遠(とわ)は興味深そうに桜をじろじろと眺めて、ご満悦の表情を浮かべた。

「人にばっか言ってるけど、大矢も薔薇似合ってるぞ。せっかくだから風呂に薔薇浮かべて、写真撮って送ってくれよ」

 意趣返し。

 なんだろうけど、似合ってるぞと褒められて手ずから花びらを耳に置いてもらえて、桜は有頂天だった。数秒前までの落ち込みどこいった、だ。

「送ります!」

「え、まじ」

「今夜送るんで、絶対見てくださいね」

「分かった。楽しみにしてる。じゃ、薔薇ありがとう」

 押し負けたように笑って受け答えした永遠(とわ)が、重そうな薔薇の花束を軽く振って駐車場から出て行く。そういえば彼はマイカー通勤ではないのだった。

「家まで送りましょうか!」

 というか送りたい。

「結構です」

 ばっさりと拒否された。永遠(とわ)はそのまま会社の中へ戻り、地上へと出るエレベーターに乗った。なんともつれない態度だ。

 しかし、お友達一日目なのだからこんなものだろうか。

 気を取り直した桜は、さっそく運転席に乗り込んでエンジンをかけた。風呂に薔薇を浮かべる前に、風呂をぴかぴかに磨いて綺麗にするのだ。永遠(とわ)に「こいつちゃんとしてるな」と思われたいので。


 桜のうきうきと呼応するかのように、車は軽やかに発進した。



おしまい


ここまでお付き合いくださった方がもしいらっしゃいましたら、最後までお読みいただきありがとうございました!

小説の息抜きに書いた小説で書くのがとても楽しかったお話です。

少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。

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