小言元気の投稿日誌
都内某所のネットカフェ。
その部屋の住人は、見た目はオタク、性格はまさしく陰キャであるだろうと推測されるような目つきである。
彼の名前は小言元気という。
彼の趣味はネットサーフィンである。
今日も行きつけのネットカフェで、仕事帰りにアイスクリームを頬張りながら、バナナボートのストローを口に入れ、コーラをチューチューと吸っていた。
ネットを開くと、彼はアダルトサイトを一周したのち、ホームグラウンドへと降り立った。
グフー
それは世界最大の掲示板であり、動画投稿やつぶやき、ブログ投稿など、様々なコンテンツをそろえた、プラットフォームサイトである。
彼は早速グフーの自身のアカウントにログインをした。
彼のアカウント名は
小言元気
そう、本名でのアカウントである。
デフォ設定がそうだったとかではなく、彼は彼なりの考えを持っていた。
匿名で投稿すると、どうしても自分よがりの汚い投稿を増やしてしまう。ファンでもない、興味も持たないどうでもいいことですら、批判したくなるのが人間だ。
アイドルが結婚すれば、アイドルという仕事が云々、下手な絵を投稿すれば、よくこんなスキルで云々、動画の編集が下手くそだと、時間の無駄などと平気で書き込める。
本名での投稿は彼にとっては誓約であった。
ピコン、ピコン
新しいイラストが投稿されました。
みかんたべたろうのイラストは、お世辞にも上手いとは言えない。
人の輪郭が曲がっているし、ベタ塗りも下手くそ。
おまけに、腕が三箇所で折れている少女の絵である。
機械戦士 カナコ
という題名のイラストは、もはやピカソ戦士に改名をした方がいいほどのインパクトである。
しかし、熱意は伝わるものがあった。
作成記録簿には、約20時間の大作であることがわかる細かい作成記録が残されていた。
絶望的とも言える絵のセンスだとしても、この素晴らしい努力を誰が批判できようか。
彼は早速そのイラストにコメントを残した。
神絵師、ここにあり。現代のアニメを独創的なペンタッチで再現。
一コメをゲットすると、そのコメントにいいねがつき始めた。
これでまた1人、ネットの批判の嵐や、誰も見ない悲しい状況から救うことができた。
そんなコメントを1日100件投稿し、彼は帰宅の途についた。
小言元気
この物語は、そんな1人の心優しい青年が、人々の心を動かし、たくさんの人を救っていく、そんな物語である。