プロローグ
『父ちゃん母ちゃん見てるか? オイラ、人民解放軍の一員になるぞ!』
若干15歳の少年、カズヤはそんなことを考えながら広場に立っていた。
これから先の輝かしい未来が自分を待っている。そう信じていた。
「えー、第1029回解放軍選考会に集まった諸君! これより1次選考を始める!」
ゴツイおじさんの声が広場に響くと、たくさんの大人たちが選考会を受けに集まった人たちを適当な人数集め始めた。
「少年。君はこっちだ」
優しそうなおじさんに声をかけられたカズヤは、おじさんの後について行く。
カズヤが呼ばれた団体には、カズヤの他に5人の人がいた。
「最近では解放軍になろうなんて者も少なくなってきている」
優しそうなおじさんが集めた6人に話しかける。
他のメンバーは黙ってその話しを聞きながら歩き続けた。
「魔王が倒されてからもう永い。ずっと復活もしておらず、モンスターも徐々に減っているように見えたからだ。倒すべき相手がいないのであれば、志願者も減るし、解放軍になれる合格者も減る。当然だな。しかし最近魔王が復活したという噂があった。そのおかげなのかどうかは知らんが、今回の志願者は大多数だ。こんなに志願者が多いのは久しぶりだ。それに、合格者も多めにせよとのお達しだ」
この言葉を聞いて6人の顔が緩む。
「だがな。俺はだからと言ってそう簡単に合格させようとは思わない。モンスターとの戦いは命がけだ。半端な実力者はいらないと思っている。その代わり、俺が出す課題を全て合格したならば、堂々と人民解放軍の新米として活躍できるだろう」
優しそうなおじさんがくるりと6人を振り返る。
「自己紹介がまだだったな。俺はタイスケ。支援隊長が指揮する3つの部隊の1つ、護衛隊という部隊の隊員だ。お前は?」
一番端に居た女の子にタイスケが問う。
「わ、私はサクラです。その、よろしくお願いします」
サクラと名乗った女の子がペコリと頭を下げる。
タイスケは、ふむ。と頷くと次の者を促した。
「自分は、ヤシチです。よろしくお願いします!」
「俺はスケですだ。よろすく」
ヤシチの隣の男性は若干田舎訛りのある喋り方をする。
「オ、オイラはカズヤです。よろしくです」
カズヤの番になりカズヤが名乗る。
「私はギンです。よろしくお願いいたします」
カズヤの隣で芸者風の恰好をした女の子が、丁寧に腰を折って名乗る。
「僕はカクです。よろしくお願いします」
最後の男性は筋肉モリモリで、イカツイくいかにもなタイプだったが、見た目とは正反対にかなりの低姿勢だった。
「よし!」
全員が簡単な自己紹介を終えると、タイスケがそう声をかけて1次選考が始まった。