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愛慾の魔女  作者: 髪槍夜昼
五章
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第八十二話


「見えてきたな、アレがウェネフィカか?」


エルケーニヒは遠目に見える都市を眺めながら呟く。


「…そうみたい。私も来るのは初めてだけど」


地図を確認し、エリーゼは頷いた。


大陸の北部都市。


魔道協会の本部からは遠く、所謂辺境だが、寂れた雰囲気は無かった。


それどこか、都市を囲むように高い壁と頑丈そうな門が存在し、どこか物々しい雰囲気すらある。


「…想像していたのと少し違うな。ここは地味な教区長が治める平凡な都市じゃなかったのか?」


「その筈だけど…」


魔女狩り隊の本拠地だったヘクセならともかく、辺境都市のウェネフィカにコレは物々し過ぎる。


魔女の襲撃に備えて都市の護りを固めたのだろうか。


しかし、アンネリーゼの話を聞く限り、協会に無断でこんなことをするような行動力がヴェルターにあるとは思えなかった。


「止まれ! そこの二人、何者だ!」


その時、見上げるほど高い壁の上から声が聞こえた。


鎧に身を包んだ男達が壁の上からエリーゼ達に杖を向けている。


「私は協会所属のエリーゼよ! 身分証もあるわ!」


エリーゼは懐から一枚の紙を取り出し、見えるように掲げた。


「…確認する! そこを動くな!」


警戒した表情を崩さないまま、見張りの一人が壁から下りてくる。


魔法を使ってエリーゼ達の前に着地し、身分証を受け取った。


(…コイツ、結構マナが多いな)


身分証を確認する見張りを眺めながらエルケーニヒは考え込む。


魔女やヴィルヘルムに比べれば弱いが、人間にしてはそれなりの強さだ。


上に居る人間達もこの男と同じ強さだとすれば、全員集まれば魔女の襲撃も防げるかもしれない。


ただの自衛にしては戦力が高すぎる。


魔女と戦うことを想定していた魔女狩り隊と同等以上だ。


「…確かに、本物のようだな。ウェネフィカに何の用だ?」


「魔女の魔法が原因で、マギサからここまで飛ばされてきたの。教区長アンネリーゼと連絡が取りたいから教区長ヴェルターに会えないか伝えてくれない?」


「…少し待っていろ」


そう言って見張りの男は杖を掲げた。


「『ウォークス』」


パチン、と杖の先端が青い光を放つ。


小さな球状の青い光は壁を超えて都市の奥へ飛んでいった。


「ヴェルターさん、門番のアルバートです」


「!」


(通信の魔法…? 通信機も無しに…?)


それを見てエリーゼは思わず目を見開く。


通信の魔法は本来、非常に高度な魔法だ。


アンネリーゼであっても、他の都市と連絡を取るには専用の道具を必要とする程だ。


(…テオドールの音魔法と似ているな。効果範囲は恐らくこの都市だけか)


エルケーニヒは興味深そうにアルバートの魔法を眺める。


ブルハでの戦いの時、テオドールも似たような魔法でエリーゼ達と連絡を取っていた。


アレはテオドールのオリジナル魔法だと言っていたが、他の魔道士が同じ発想を得ても不思議では無いだろう。


だが、テオドール曰く、協会では直接ダメージを与えない魔法は低く評価されると聞く。


あまり人気の無い音魔法を都市を守る者達に習得させ、門の見張りをさせると言うのは協会では考えられない発想だ。


「…ヴェルターさんはお前達にお会いになられるそうだ。ついてこい」


アルバートはそう告げると、壁の上に居る者達に合図を出した。


強固な門が魔法によってゆっくりと開いていく。


「さあ、入れ」


(…この感覚は、結界か)


エルケーニヒは無言で開かれた門に触れる。


ただ頑丈なだけじゃない。


門の上から何重もの魔法が掛けられている。


エルケーニヒでさえ破壊するのに苦労しそうな強固な防護魔法。


しかもこのマナの感触は、白魔法だ。


(アンネリーゼがマギサに展開していた白魔法に似ているな。だが、聞いた話では白魔法は希少でアンネリーゼ程の白魔道士は他に居ないらしいが…)


「おい、モタモタするな! ヴェルターさんを待たせるんじゃない!」


「エルケー、行くよ」


アルバートとエリーゼに言われ、エルケーニヒは渋々門から手を離した。


(さて、何が待っているのか)

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