07話 ヒューロン家の内乱(1)
その日は友好記念日のパレードだった。壇上に立つ宇宙人の王、マク・ヒューロンは高らかと宣言する。
「我ら宇宙人は地球の民と共に平和を誓ったこの日、双方の尊い犠牲を出した。亡き民は帰って来ない。だがしかし、後ろばかり向いていては彼らの犠牲が無駄になってしまう。憎しみ合いを断ち、平和が訪れた日として祝おう。そしてこれからの平和を祈ろう」
「わああああああああああ」
「ヒューロンさまああああ」
「おおおおおおおおおおお」
歓声が上がる宇宙人達の中につむぐもいた。おじさんのお店『エイリアンズオアシス』の出店を出していた。おじさんは、お祭りは値段を高くしても売れるというので、普段の倍の値段で販売しているのに、飛ぶように売れる。
みんなが平和を祈る中そんなに喜んでいない人物もいた。壇上の後ろで座るエリス・ヒューロンの弟、カイオ・ヒューロンだ。
ドオオオオオオオオオン
大きな音が聞こえ壇上を見てみると。カイオがレーザー砲を空に向け、銃口からは煙が立っている。どこからか現れた宇宙兵士達がマクにレイザー銃を向ける。宇宙人達は何が起きたのかわからず、呆然とそれを見ている。静寂が辺りを包む。
カイオが壇上にあるマイクスタンドの前に立つと、
「平和ボケしているみなさん。私、カイオ・ヒューロンは父の考えに反対だ。おい、そこのカメラマン!! ちゃんとテレビに生中継されているか?」
カメラマンがビビりながらもうなずく。
「平和なんて嘘っぱちの偽善だ。宇宙人の言葉を代弁して私が言おう。地球人にやられた痛みを癒すことなんて出来るはずがない。気持ちに蓋をするなんてうんざりだ。私は戦争がしたい。私の姉、エリス見ているか? 手始めにおまえが持っている黒い箱、それを私によこせ」
マクを兵士が羽交い絞めにして連れてくる。カイオがレーザー銃をマクの頭に突きつける。
「私は平和ボケした父が嫌いだ。三時間以内に持って来なければ撃つ」
「カイオよ。落ち着くんだ」
「うるさい!! なぜ姉が王座を受け継ぐんだ。民のことなど考えてい無かったではないか? 私はずっと考えている。いなくなってしまった彼らのことを!! アイドルなんてしやがって!!」
カイオが片手を空に掲げると、空中にタイマーの大きなホログラムを発生し、
「さぁ、スタートだ!!」
タイマーが動き始める。
「王の間で待っているぞ」
カイオはマクを連れて、王の間へと向かう。
「まずいことになった……」
一部始終を見ていたつむぐはどうすることも出来ずにいた。
(冷静に、冷静に)
一呼吸置き、さくらに電話してみることにした。
「もしもし、さくらちゃん? 今テレビ見てた?」
「見たわ。まずいことになったわね。反宇宙人勢力プロテクトでは今から作戦会議を始める。つむぐくんも来てもいいわよ」
つむぐは急いでプロテクトのアジト、保護施設の地下へとお店の出張用の車で向かう。10分後、保護施設地下室の扉を開けると、もうプロテクトの会議がおこなわれていた。
「カイオを抹殺しましょう!!」
「それしか無い」
「戦争を起こすわけにはいかない」
プロテクトの連中はどうやら、カイオを殺すことで話が盛り上がっている様だ。
「待ってください。殺すのは良くない」
つむぐが会議に割って入ると。筋肉質な男山口すぐるが立ち上がり、つむぐの胸ぐらを、グッと掴み、自分の顔に近づける。保護施設の職員で見かけた男だ。
「甘いこと言ってんじゃねぇ!! さくらさんの知り合いだから多めに見てるが、戦争を知らないヤツの意見なんか知りたくもない」
「やめなさいすぐる!! 争ってる場合じゃない。つむぐくんの意見が聞きたいわ」
「俺はマクを救出することが一番だと思う」
「戦争を仕掛けた張本人だぞ。そんなヤツ助けられるか!! こいつの意見を聞くのは間違ってますよ」
すぐるがつむぐを恐ろしい目で睨む。つむぐはたじろぐが、
「わかってますよ。でも平和を祈ってたじゃないですか。地球人と変わらないと思います。マクだって戦争の傷を負ってる」
「それはそうだが、裏で何を考えてるのかわからない。国を動かすとはそういうことだ」
パン!!
手を叩くさくら。
「私の考えはカイオを抹殺したい。でもマクはたしかに平和を祈っていた。嘘だったとしても王からの言葉は宇宙人に効果は大きい。マクをカイオから解放しましょう。もしカイオが強行手段に出るなら殺害する。マップを広げて」
王の間があるヒューロン家の地図を出す。
「地球軍に助けてもらうことはできない?」
「それは無理。条約で宇宙人移住区内に地球軍は入れないことになってる」
さくらは、いろいろかき込まれた地図について説明する。
「肌を緑色にし、地下下水道から侵入する。こんな時のために一度侵入してしっかり経路は調べてある。気づかれないために、ヒューロン家に入るのは私とすぐる」
「俺も行かしてくれ」
つむぐがついて行きたいと名乗り出るとさくらは、
「殺されるかもしれない。覚悟は出来てるの?」
力強い眼光に一度たじろぐが、
「うん。エリスのためになにかしたいんだ」
「…… わかったわ。三人で侵入する。他のみんなは外でサポート。みんな準備して、マクを解放しに行くわよ」
「はい!!」
「はい!!」
「はい!!」
「はい!!」
みんな準備に取り掛かる。先発隊からの連絡が入る。
「エリスが動き始めました。ヒューロン家到着は30分後だと思われます」
「わかった。尾行を続けて。急ぎましょう」
車に乗り込んで行く。車の中でつむぐは肌を緑色に塗りながら、
ドキドキドキ
高鳴る胸の鼓動を抑えようとしていた。
キーー
車がヒューロン家の裏に止まると、車の底が開き地面にマンホールの蓋が見える。
「ここから侵入する。ちょっと臭いけど我慢して。つむぐくんこれを持って」
小型のレーザー銃を渡される。
「護身用だから、撃たなくても脅すのに使える。じゃあ、行くわ」
ガチャン
マンホールの蓋を開き潜入する三人。下水道を進んでいく。すごく生臭い匂いが鼻を突き抜ける。しばらく進むとさくらは地図を開く、
「ここね」
梯子を登って外に出ると、電気室に出た。
「これに着替えて」
渡されたのは宇宙兵の制服。着替えていると、すぐるはバッグからネズミ型のロボットを取り出し、王の間へ続く廊下のドアを開けるとそれを放つ。モニターを取り出し通路の兵士を確認する。
「ねぇ、マクを見つけたらどうやって逃げるの?」
「外にいる仲間に連絡して、建物の外に出て空飛ぶ車で拾ってもらう」
「うまくいくのかな?」
「考えてる時間は無かった。強行突破に近いけど、今の私達に出来る最善だと思ってる」
さくらに作戦を確認しているとすぐるが、
「カイオを殺せば一発なんだが」
「殺しはダメですよ」
「甘さは捨てろ。ここはもう敵の中だ」
さくらに先発隊の連絡が来る。
「エリス・ヒューロンが表門に到着しました。予想より早くてすみません」
「了解ありがとう。急がないとカイオの手にブラックボックスがわたってしまう。すぐる行けそう?」
「兵士の数が多いいな。隠れながら行けば時間がかかるし、兵士のふりをして紛れるのが一番かと。まずい兵士が来る」
ガチャ
ドアが開き兵士が入って来る。
「おまえ達何してる!?」
「はっ!! 何者かが潜入している形跡があり、捜査していました。こちらをご覧ください。地下から潜入された模様です。ここにはもういません」
「なに!? すぐに上官に連絡しろ!!」
「はっ」
電気室を後にする三人。
「危なかった」
「しっ。一気に王の間へ行くわよ」
王の間へと進んでいく三人。