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宇宙人移住区  作者: やみの ひかり
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04話 さくらがゆれる

 八雲つむぐは肌を緑色に塗り、医者の恰好をして、エリス・ヒューロンが住むヒューロン家の門の前で潜入しようとしていた。エリスと会ったのは二か月も前で、会わせてもらえなかったからだ。


「私は医者で急病が出たと連絡をもらいました」

「本当ですか? ちょっと問い合わせるからそこで待っていてください」

「間に合わないかもしれない! 急を要するのですぐに通してください!!」


 ドキドキ


 胸の鼓動が高まるつむぐ。


「そうですか。わかりました」


 作戦は成功して、門の中に入ろうとするが、


 ポタポタ 


 緑色の汗を流すつむぐを、


「ちょっと待て!!」


 門番が止める。腕を掴まれ、服を巻くし上げられると緑に塗っていない肌を見られてしまう。


「おまえ地球人だな!!」

「俺はエリスと友達なんです!! 会いたいんですお願いします!!」

「そんなわけあるか!!」


 門番にボコボコにされたつむぐは道の端でボロボロになって座っていた。そこへ水島さくらが現れる。


「つむぐくんボロボロね」

「さくらちゃん? うぐっ」


 つむぐは後ろから別の誰かに袋を頭に被せられ、拘束されて連れ去られてしまう。


 しばらく移動した後、


 ガバ


 袋が頭から外されると、そこはどこかの地下室のようだった。目の前にさくらが立っている。つむぐは動こうとしたが、拘束されて動けない。


「私の手伝いをしてくれないかしら」

「人殺しの手伝いなんて出来るか!! 黒い箱を返せ!!」


 さくらが懐からレーザー銃を出すとつむぐの頭に突きつける。


「今は私の言うことを聞いたほうが良いんじゃない? 別に宇宙人殺しをして欲しいわけじゃないの」

「……わかった。言うことを聞く」


 さくらが腕の縄を解くと、言うことを聞くふりをして、すかさず突進しさくらのレーザー銃を奪い突きつける。


「また引っかかったね」

「イテテテテ。宇宙人に恋でもしちゃったの? あんな悪魔みたいな連中」

「違うよ!! どこかで歯車が少しずれただけだと思う!」


 バン!!


 地下室の扉が開くと、


「さくら先生になにするんだ!」

「この悪党め!」


 小さな子供達が扉から入って来た。


「え……!?」

「演劇の練習なのよ。ね? つむぐくん」


 とっさに嘘をつくさくら。


「そうそう……」


 レーザー銃を下ろすつむぐ。


「勝手に入ってきちゃダメでしょ」


 子供達はさくらに怒られると,


「わー」


 一斉に逃げて行く。つむぐはさくらに手招きされて暗い地下室を出ると、そこは子供の保護施設だった。


「ここはね宇宙戦争で親を亡くした子供を保護してるの。戦争が終わって5年。まだ傷は癒えていないの。そして私も……」


 落ち込む顔を見せるさくらにつむぐは何も言えずにいた。

 パン!!


 さくらは手を叩き気持ちを切り替えると


「休日には手伝いに来てるの。じゃあ、ついでにつむぐくんには子守をしてもらおうかしら」


 さくらに導かれ、幼児が集まってるところに行かされる。


「みんあ集まって、今日はさくら先生のお友達に来てもらいました。さぁ自己紹介して」

「どうもはじめまして八雲つむぐと言います。今日はよろしくお願いします」

「みんなもあいさつして」


 子供達は声を合わせて、


「お願いします」

「じゃあ、私はあっちを手伝ってくるから」

「ちょっと、なにをすれば」


 パン!!


 お尻を蹴られるつむぐ。振り向くと子供がカンフーのものまねをしている。


「アチョー」

「このやろう。やったな!!」

「りょうたが怪人にやられてるぞ!! サンダービーム!!」

「う…… やられた……」


 子供達は元気に遊びヘトヘトになるとお昼寝をはじめた。さくらと休憩を取り、コーヒーを飲みながら話す。


「ふぅ。疲れた」

「一番下の子供たちはまだ小さかったから親の顔も覚えてないし、戦争の傷は浅いのよね。私が東京の大学に行ったことは覚えてる?」

「覚えてるよ。でも三年ぐらいで中退して帰って来たよね」

「三年だったわね。もっと長く感じる。東京に行ったらすぐに年上の彼氏が出来たの。彼は自衛隊の飛行機乗りだったわ。戦争のことなんて忘れて付き合っていた。だって彼はそんな素振り一度も見せなかったから。でも付き合って二年半した頃。彼は心的外傷後ストレス障害、PTSDを発症したわ。そして出撃すると帰らぬ人になった。私も心を病み田舎に帰ってきた」


 手に持ったコーヒーをテーブルに置き、真剣に聞くつむぐ。


「そして、戦争が終わり、宇宙人の居住地が私の町に決まったとき発狂した。そして私は宇宙人と地球人が共存を反対する団体、反宇宙人勢力プロテクトを作った」


「さくらちゃんにそんなことが…… 俺は宇宙戦争なんてまったく接点が無かった。テレビで流れてくる戦争の映像をなんだか別の世界のことに思えて、ドラマや映画を見てるのとまったく同じ感覚だった。俺にさくらちゃんの傷はわからない。でもさ、思うんだ。憎しみ合いを続けて戦争を続けてどうするの?  戦争を知らないここの子供にも憎しみ合いを残すことにならない?」

「じゃあ、私のこの気持ちはどうするのよ!!」


 バン!!


 イスをひっくり返しさくらは行ってしまった。つむぐはどうしたら良いのかわからなかった。戦争について考えることがはじめてだったわけじゃない。こんなに近くに戦争があることがはじめてだった。屋上で子供達の洗濯物を取り込む手伝いをしていると、さくらがやって来た。


「やっぱり、これは返すわ。ただし、つむぐくんが持っていて」


 さくらは小さな黒い箱をつむぐに差し出す。


「無理だよ。そんな怖いもの。エリスに返して安全な所に隠してもらおう」

「宇宙人には返したくない。私が持っていれば大量虐殺をおこしてしまうかもしれない」


 さくらの真剣な目に、つむぐは手を出し、それを受け取る。


「ごめんね。さくらちゃんの気持ちもわかるんだ。だけどおれが出会った宇宙人は地球人となにも変わらない女の子だった」

「そう。でも私は宇宙人を認めたわけじゃない。つむぐくんと進む道は違う」


 つむぐは服のポケットにしまう。


「それを終えたら帰って」


 洗濯物を取り込み終え、部屋の中へ持って行くつむぐ。振り返り、


「さくらちゃん。俺は……」

「待って!! 何も言わずに行って」


 さくらは振り返りもせずに空を見上げ、風に揺られるその背中は微動だにしない。終戦を迎えても未来にその傷は残って行くのだと知る。時間をかけて浄化していくことはできるのだろうか。


 わからない……

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