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お嬢様の手




途中、別の街の宿に泊まりながら、私たちはカルム村を目指した。


ずっと馬車に乗っているだけの車内では、特にオルトゥー君が活躍し、船長のマークさんが体験した海での出来事や、マークさんの娘であるフォーさんの狩り方法などについて興味津々に話を聞いていた。ケイトもオルトゥー君を可愛がっており、お茶を振る舞いながら楽しそうに相槌を打っていた。


私はといえば、そんな皆の隅で窓の外を眺めるか、持ってきていた本から氷の精霊『預言者(プロフェシー)』について調べたり、主に東洋で知られているという『魔力のツボ』について学んだりしながら過ごした。


時折、読み終わった本をウィリアム様が手に持ってぱらぱらと読んでいた。氷の精霊や、魔力のツボについてはウィリアム様にも知っておいてもらいたいものだったので、読み終わったあと、二人で考察した内容を話し合うのはとても有意義な時間だったと思う。緊張している私に気を遣ってもくれたのだろう。ウィリアム様のそういうさりげない優しさには、とても感謝している。



「あれがプレジよ」



そうやって、時間を潰しながら進んだ馬車が、やっとカルム村に一番近いプレジという街に到着した。


到着と言っても、まだあと数キロある。ぽつぽつと民家の並ぶ街道を一望できる丘に皆で並び、そのプレジを見下ろしている状況だが、冬の風に煽られて空が曇っているせいもあるのか、どことなく不気味な印象を抱いた。


フォーさんが風に靡く髪を押さえながら、プレジへと視線を向ける。その瞳は、どこか怒りのようなものも含まれていた。



「・・・・・」



それもそうだろう、カルムから一番近い街はプレジだ。そのプレジの自警団が協力的であれば、もっと早くジャンティーさんを見つけられたかもしれない。


貴族の支配下、つまりプレジを領地に置く領主が協力的でないとなれば、小さな村の人間ではできることも少なくなる。


私はその視線から視線を外すと、プレジにそびえる、二つの塔をじっと見つめた。



「フォーさん、あの塔は何ですか?」


「ああ、昔の城の名残みたいよ。昔はここに大きな城が建っていたんですって。昔、って言っても800年近く前のことみたいで老朽化も激しいかった。でも、少しくらいは遺産として残したいと領主が思ったみたいでね、塔だけ補修してああやって建ててるってわけ」


「なるほど・・・・あの塔は何かに使っているんですか?」


「さぁ・・・・観光客が来るような街でもないから、ただのモニュメントみたいなものみたいよ」


「・・・・・」


「お人形さん、あの塔が気になるのかい」


「・・・・気になると言えば・・・気になります」



プレジの街は塀で丸く囲われており、その街の真ん中に二つの塔が建っている。その二つの塔に繋がるように街からはいくつもの道が走っていて、ちょうど真上から見たら時計のようだと思う。


これはただの推測なので誰かに言うつもりはないが、もし、私が何かを理由に男性ばかりを狙って誘拐をしたとする。その数はおよそ十五名から三十名。仲間が数人いたとしても、力の強い男性をたったの一ヶ月で遠くまで運ぶのは難しいように思う。


魔術を使えば、転移魔術というものがあるので遠くへ物体を送り飛ばすことも可能だが、その魔術は『陣形』と呼ばれる、精霊や古代文字が使われている円形の陣を扱うため高等な技術が必要になる。国で扱える魔術師も限られており、尚且つ膨大な魔力を使用すると言われているので、そう簡単に人を遠くへ飛ばすことは難しいだろう。


だとしたら。


私なら、どこか程よく身を潜めながら男性を拐い、そして監禁できる場所を探すと思う。そう何度も男性を連れて辺りを馬車で走っていれば、嫌でも目に付く。できるだけ最小限に行動し、皆が寝静まった頃、一気に活動したほうが怪しまれるリスクもない。



「(殺さず、監禁していればの話だけど・・・・・)」



一番恐れているのは、その場で殺し解体などしてしまっては足取りなど掴めないことだ。フォーさんの手前、そのような話をするつもりはないが、ここまで多くの男性を誘拐している犯人が正常な判断を下せるほど真っ当な人間とは思いがたい。最悪のパターン、選択肢の中でも一番考えたくないものではあるが、可能性がゼロではない以上、それについても考える必要がある。


私はその最悪の状況を予想し、ふるふると頭を振る。すると、それを見ていたらしいウィリアム様が冬の風に前髪を揺らしながら歩み寄る。


ケープを羽織っていても凍えるほどに冷たいその風に、ウィリアム様が手袋を外して私の指をきゅ、と握る。じんわりと伝わる体温に、じっとその手を見ていれば頭にキスが落とされる。



「冷えるね」


「・・・・そ、そうですね・・・・山の麓にあるというカルム村はもっと寒いのでしょう」



カルム村があるのは、おそらく山頂で雪を吹き飛ばす勢いで強風が吹いているあの大きな山の麓。すでにその山の全貌が見えているが、数キロ離れている丘から見ても、見上げるほどに大きい。


気高き山、そこに氷の精霊『預言者』がいる。会ってみたい気もするが、話の通じる相手とは思いづらい。今はその精霊にとっても一番活動のしやすい時季だろうから、無闇に近づけば氷漬けにされてしまうかもしれない。


その精霊を信仰しているというカルム村。もしかしたら、フォーさんが言わないだけで他の村や街にはない風習もあるのかもしれない。



「・・・・・・」



探究心がくすぐられながら山へと視線を向けていれば、ウィリアム様がジャケットを握り締めながら私の背中に手を回した。そうしてもらうと今まで顔に当たっていた冷たい風が遮断され、少しだけ顔が温かくなる。しかし、ウィリアム様は逆に背中が寒いだろうに。


密着していることもあり、あまり見上げたくはないのだが私はゆっくりと腕の中でウィリアム様へと顔を上げた。


ウィリアム様と目が合う。眠たげな瞼の下に転がる宝石のような深緑の瞳がゆっくり細められる。美しい薄い唇が弧を描き、背中に回された手が私を引き寄せる。



「寄りかかっていいよ、そのほうが私も温かい」


「・・・・・背中が寒いのでは」


「そう思うなら腕を回してくれると助かるかな」


「・・・・・・・」




一度離れたウィリアム様が私の両腕を掴む。そして後ろへとその腕を引っ張る。ウィリアム様の体の横でピンと腕を伸ばした状態の私は、側から見たら滑稽だろう。


再び私を抱きしめたウィリアム様がにこりと笑う。さぁどうぞいつでも、と言いたげだが私が背中に腕を回したらそれこそ抱きしめあっている男女が誕生する。今はまだ女装をしていないウィリアム様なので、できればそういう接触は避けたい。先ほどからぐにゅりと『あいつ』も出てきたし。



「・・・・・」


(さす)るだけでもいいよ」


「・・・・・・」



摩る。摩るとはウィリアム様の背中をだろうか。それは、抱きしめているわけではないのだろうか。ウィリアム様が私のケープの上で手を上下に動かす。そうすると、少しずつ摩擦熱によって熱が伝わってきた。


確かに、摩擦熱はその摩擦の強さによっては火を起こすほどにもなる。木の板に小さな穴を開けて、その穴に空気を送り込みながら摩擦を加えると、火が起きると言うし。



「・・・・・・」


「ほら、あたためてよ」



馬車に戻れば寒さをしのげるという考えがウィリアム様にはあったが、いい機会なのでそれを口にするつもりなど毛頭ないということを、私は知らない。


今は、この寒さをしのぐことを優先すべきかもしれない。私だけ温められるのも悪いし、お互い暖を取るためだ。そうだ、ただ急激な体温低下を防ぐための行動でしかない。


ゆっくりと、ピンと伸ばしていた腕を人形のようにギギギと曲げる。そしてぽん、とウィリアム様の背中に手を置く。ウィリアム様がにこにこ笑う。私は無表情のまま、できるだけウィリアム様の視線を避けてさすさす、と背中に触れる。



「・・・・・・・」


「・・・・・」



ぴゅう、と一際強い風が吹く。ウィリアム様がぐい、とさらに引き寄せる。服だけでなく肌にも私の顔がめり込んでいるのではないかという状況に、背中に回した私の腕がぎこちなく動く。


ケープにつけられていたフードをウィリアム様が私の頭の上に被せる。こうなると本当に温かくなるから不思議である。それが、ただの体温だけではなく、恥ずかしさから来るものだとは私も思わなかった。



「ねぇ、あれであの二人付き合ってないの?」


「ケイトも不思議でなりません」


「ジェニファーお姉さっ・・・・・・!」


「オル君、今は邪魔しないよ」


「むぐぐ・・・・・・・!」


「久しぶりにお会いした時もあの調子だったからなぁ、胸焼けしそうだよ」


「(おぉっ・・・・・・!)」


「あ、」



忘れていた。そうだ、ここには他にもケイトたちがいるのだった。


ハッと我に返った私は勢いよくウィリアム様から離れる。その時ウィリアム様が悲しげに柳のような美しい眉を下げたが、気にしている余裕などなかった。


にこにこと微笑むウィリアム様を避けるように、フードを目深に被り馬車へと向かう。そうだ、最初から馬車に乗っていれば摩る必要もなかったではないか。と、今更気づく。



「い、いいい急ぎましょう」


「うん」


「(なっ、なぜ手を握る・・・・・!)」



馬車へと向かう私のかじかんだ手をウィリアム様が優しく掴む。そして頬をほんのり赤らめながら天使のような笑顔で私を覗き込む。ああ、だめだ。そういう顔をされるとあいつが喧しいから。


なぜ目撃者の多いところでこういうことをするのだろうか。いや、二人きりだとしてもやらないでほしい。心臓がいくつあっても足りない。


再び七名で馬車に乗り込む。手を繋いでいるということもあり、ウィリアム様の隣に座ることになってしまった。ウィリアム様が窓際、そして私が真ん中で隣がケイトだ。


ケイト、フォーさん、ブライトさんにマークさんが私を見てにやにやと顔を綻ばせる。オルトゥー君だけはむすっとしていた。



「・・・・っ、・・・・・」



もう嫌だ。私はこの居心地の悪い車内で息を吸うのも憚られる。なんとか話を変えようと、フォーさんへと視線を向ければ、にやりと笑われた。もうやめてくれ。コホンと咳払いをして声をかける。



「フォーさん、カルムへはどうやって向かいますか」


「プレジの中を通るよ。必要だったら街で一度降りるけど」


「・・・・いえ、降りずに馬車から見るだけにしましょう」


「わかった。・・・・あ、それで?男性陣は女装させるんだっけ?」


「ああ、・・・・そうでした」



すっかり忘れていた。プレジを通るなら、皆には女装してもらったほうがいい。一応、対策だ。私はウィリアム様に掴まれていない手で膝を叩くと、フォーさんに頷く。


すると一気に男性陣が嫌そうな顔をした。マークさんに関しては、馬車から降りずにカルムまで向かい、村に到着したらすぐにフォーさんの家に身を隠してもらうことにしている。船乗りということもあり、女装をさせるには不向きな体だということもあるが。というか、ウィリアム様とブライトさんの線が細いだけだろう。


しかし、どうしても不服なようで私の考えを他所に向かいに座るオルトゥー君が車内で立ち上がる。まだ小さいので馬車の天井に頭をぶつけるようなことがないとしても、揺れるのでそういうことは止めてもらいたい。



「え〜まだカルムに着いてないのに女装するの?」


「何があるか分かりません。問答無用です」


「でもさ、まだカルムまでは時間がかかるじゃん」


「ケイト、洋服屋さんではカツラも購入しましたか?」


「はいっ、リストにはありませんでしたが、不備なく揃えております!」


「さすがです」


「ケイトお姉さん〜っ・・・・・!」


「お嬢様が問答無用だと言ったら、使用人も問答無用なのです!」


「え〜・・・・・・!」


「ウィリアム様、馭者に街の手前で馬車を止めてもらうように伝えていただけますか」


「・・・・・・分かった」


「ウィリアムさん!ウィリアムさんからも言ってよ!」


「・・・・・堪えるんだ、オル」


「・・・・・不条理だ!」



それから、数十分後プレジの前で馬車が止まる。女性陣は一度馬車から降り、着替えを待つことになった。洋服についてはケイトが詳しいので、男性陣にレクチャーをしているようだ。


そのレクチャーを受けている最中の男性陣の顔はとても暗かった。



「あとでお化粧もしなくちゃっ!」


「ははっ、あの優男とそのお友達なら綺麗に化けるんじゃない?」


「そうですよねっ!んもう楽しみで楽しみで!」



そう言ってケイトがトランクから私にいつも使っている化粧道具を取り出し目をキラキラさせている。少しウィリアム様が哀れに思えた。


着替えが終わったらしい車内からケイトを呼ぶ声がかかる。それに凄まじく素早く対応したケイトが車内へと消える。


その時間、およそ五分くらいだっただろうか。



「ふぅ・・・・・できました!」


「・・・・おぉ・・・・」


「ははっ!やっぱり!」



女性陣が馬車の外から車内を眺める。


するとそこには、流行り物のワンピースを身に纏い、扇子で表情を隠すウィリアム様とブライトさん、そして今にも泣き出しそうなオルトゥー君がいた。


やはりウィリアム様とブライトさんは元がいいということで、私以上に美しい。まるで舞踏会に参加する高貴なご婦人のようだ。白雪の肌が一段と美しいブライトさんとまさに天使としか言いようのないウィリアム様ではあるが、その目はどこか遠い。


胸には詰め物をしているのか、私より膨らみがあってそれが思わず笑いを誘う。



「・・・ふふ、・・・・・」


「お人形さん・・・・」


「ああっ、ダメですよ。喋ったら男性だとバレてしまいます。そうやって扇子で隠してください」


「・・・・・・」


「お嬢様?お名前も偽名を使ったほうがいいんじゃないでしょうか?」


「そうですね、確かに」


「ははっ!なら私がつけてあげるよ!優男さんがアンジュ、そのお友達がオディーユ、そこのちっこいのはプティだよ」


「プ、プティ!?やだ!そんな名前!」


「いいじゃないか!あははは!」


「アンジュ・・・・・」


「オディーユ・・・・・・」



ずーん、と沈む車内。しかし女性陣は愉快にその沈みきった車内へ乗り込む。着替え途中の一部始終を見ていたマークさんも遠い目をしていた。男性としては、とても屈辱的な瞬間なのだろう。女性よりも男性が強い者という風潮があるから、尚更だ。



「・・・・・っ・・・・」


「・・・・・・・」


「・・・・失礼しました」



なんだかいつもからかわれてばかりなので、こうやってウィリアム様が戸惑う姿を見ると笑いを誘ってしまう。思わずクスクス笑っていれば、じとっとした目をウィリアム様から向けられる。


慌ててお詫びをしたが、まだ私はにやけていると思う。クスクスと口元を拳を握ったまま押さえていれば、ウィリアム様が困ったように女性の姿のまま微笑む。その美しさといえばこの上ないものだった。おそらく、この場に何も知らない殿方がいたらうっかり間違えて口説いてしまうのではないだろうか。



「・・・・・・」


「・・・・、ウィリアム様?」



クスクスとまだ笑う私に、ウィリアム様が手を伸ばす。そして頬に手を添えた。なんだか嫌な予感がする。しかし七名も乗って余裕のない馬車の中では身動きが取りづらい。


ケイトに寄りかかるようにして逃げようとするが、なぜかケイトは私の背中を押してウィリアム様へと近づけた。本当に主人よりウィリアム様贔屓がすごいな。



「ウィ、ウィリアム様・・・・・」


「仕返しだよ」


「・・・・・・・!」



赤い口紅が塗られた美しい唇が頬に寄せられる。


わざと押し付けるようにされたことにより、ウィリアム様がうっとりとした深緑の瞳を離した後に自分の頬に触れれば、指に口紅がついた。いわゆる、キスマークである。


にんまりと微笑みながら扇子でその表情を隠すウィリアム様は妖艶なご婦人である。今は長い黒髪のカツラをかぶっているのだが、その一房を手に取ると流れるような仕草でそれを顔の後ろへと持って行った。この人、意外と楽しんでるんじゃないか。



「やーだぁ!キスマークなんてつけちゃって!」


「・・・・・・・」


「ははははっ!固まってる!かーわいいっ!」



ぷるぷると震える私にフォーさんがゲラゲラと笑う。


ケイトはその様子に「また奥様に報告することが増えたわ」と何かほざいていたが、この際無視をする。オルトゥー君が私の頬をがしがしとハンカチで拭いてくれたが、そのハンカチに口紅がつくと目を釣り上げながらウィリアム様を睨んだ。ウィリアム様は扇子で顔を隠したきり、こちらを見なかった。やった本人も少し衝撃を受けたらしい。



「ああ、あの門から入るわよ。門番には私が話をつけるから」



切り替えの早いフォーさんが馭者に何かを言う。それを受けて馭者が馬車を出発させた。


プレジの門番が馬車の中を見る。それにフォーさんが対応する。貴婦人ばかりが乗車している状況に門番が怪訝な顔をしたが、フォーさんがカルム村の人間だとわかるとそのまま通してくれた。



「・・・・・・・」


「これがプレジですか・・・・お嬢様、なんだか不気味じゃないですか?」


「・・・・・・・」



カルムまではプレジの中でも一番大きい通りを抜けるらしい。馬の蹄の音を聞きながら窓からひょいと顔を出すと平日の昼間だというのに人はほとんど歩いていない。


歩いていても、どこか上の空で何もない曇り空を見上げていた。確かにケイトが言うように不気味である。



「(妙だな・・・・やっぱり)」



これは、何かあると言っているようなものだ。


通りを抜け、再びプレジから出る。その間、誰も言葉を発する者はいなかった。


ここからカルムまでは一本道らしい。ゆったりと麓へと坂道を馬車が登っていく。そうしていると、フォーさんがいそいそと靴を脱ぎ出した。ここからは雪が深いので歩いて行くことになるかもしれないということだった。


それにならい、私たちも洋服屋で購入したブーツへと履き替える。そして、フォーさんが言うように馭者がこれ以上は馬車で行けないと言った。



「マークさん、女性用のケープを身に纏って外に出てください」


「わ、わかりました。お嬢様」


「雪が深いから気をつけなよ。私が案内する」


「お願いします」



馬車を降り、馭者にここまで運んでくれたお礼を伝える。馭者には何かあるといけないので、プレジではなく一つ前の街で待機してもらい、必要があったら手紙を送ると伝える。私の物言いに何か恐れを感じたのか、馭者は行きよりも早く坂を下って行った。



「行くわよ」


「はい」



いざ、氷の精霊『預言者』がいる山へ。


私たちは雪に足を取られながら進む。そうやって数分歩いていると村の外れに到着したようで、薪でも燃やしているのか煙突から煙が出ているのが見えた。



「私から村長に話をつけておくから、みんなは私の家で待ってて。目印は赤いドアよ」


「わかりました」



フォーさんと分かれ、赤いドアを目指す。


時折山から強い風が吹く。その風がただの風なのか、それとも精霊による歓迎か、拒絶か。私は一度気高い山を見上げると、その山頂で吹き荒ぶ雪を目を細めながら眺めた。




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