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お嬢様の船出





翌日、ついに出発の日となった。


朝食を済ませた私は、ケイトと共に馬車に乗り込む。見送りをしてくれた父と母は身を寄せ合いながら私とケイトに手を振る。執事長のジョージさんは、少し曲がった背中をそれでもピンと張って、綺麗にお辞儀をして見送ってくれた。



「それでは、行ってまいります」



今日はウィリアム様もお忙しいということで、スペンサー家の馬車で港へと向かう。その間、ケイトはうきうきと顔を綻ばせていた。


最近はケイトとも屋敷で無駄話をすることも少なくなった。以前、急に独り立ちを始めた私にケイトが可愛い癇癪を起こしたが、今回の件で少しは安心してくれるだろうか。ケイトの表情に私も自然と笑みが溢れるのだが、馬車の後ろにたくさん積まれた荷物を思うと、私の予想とは裏腹に、ケイトは何か使命感を持って参加したような気もしなくもない。


バーバラさんとエリザベッタさんの挑発にケイトが乗らなければいいが。


一抹の不安を抱きながら馬車に揺られること40分ほど。その馬車がギッという音と共に止まる。ケイトが馬車の窓から外を覗く。それに釣られて私も反対の窓から外を見た。



「わぁ!お嬢様、港ですよ!」


「そうですね・・・・海は久しぶりに見ました」



コールマン公爵の領地には、港もある。王都行きの船もここに停泊し、一度必要な物資を持ち込んで再び海に出るということもあり、とても広い。街の商店街とは違い、海産物をその場で売る漁師たちが所狭しと出店を開き、魚を買いに来た人々に威勢の良い声を上げている。その活気は、領民の活気の直結しているとなんとなく思った。


馬車から降りた私たちは、ウィリアム様の船を探す。ウィリアム様の話では、船の先端にセイレーンを飾っているという。セイレーンは上半身が人間の女性、下半身が鳥か魚になっているという。文献では、山に生息するセイレーンが鳥で風属性、海に生息するセイレーンが魚で水属性の精霊だとされている。


セイレーンはその属性により、扱える魔術も違うとのことだ。海のセイレーンは、その歌声が美しく、時に海に出た漁師たちを惑わすとも言われているので、ぜひともその生態を調査してみたい。


とにかく、その船の先端、船首像と呼ばれるらしいものを探す。すると、船よりも先に顔見知りの姿を見つける。ブライトさんとオルトゥー君だ。



「ケイト、あっちに行きましょう。紹介したい人がいます」


「え?あ、はい」



ケイトの手を引き、ブライトさんとオルトゥー君へと歩み寄る。すると私たちに気づいたのか、オルトゥー君が明るい表情を浮かべながら手を振ってくれた。それに振り返す。ブライトさんも胸に手を当てて、丁寧にお辞儀をしてくれた。



「ジェニファーお姉さん!」


「オルトゥー君、こんにちは。ブライトさんも」


「こんにちは、お嬢。今日は格別にお美しいですね」


「ええ、ケイトが頑張りましたから。ケイト、ブライトさんとオルトゥー君です。ブライトさんとは顔を合わせているのでわかりますね?」



ケイトの背中を押し、二人の前に出す。すると、ブライトさんの白雪のような肌の上に浮かぶ薄い唇に目が入ったのか、ケイトがうっとりと目を細めた。


ウィリアム様には劣るものの、ブライトさんのお美しさは街随一だ。甘いマスクに蕩ける女性は多い。ケイトもその一人だ。今日は使用人服ではなく、他所行きの街娘のような格好をしているので、ケイトはしっかりとワンピースの裾を握ると、そっと膝を曲げて会釈をした。



「ごきげんよう、キャサリンと申します。どうぞケイトとお呼びください」


「はい、お嬢様からよくお名前が出るのであまり久しぶりな気もしませんが、このようにお話しするのは久しぶりですね、ケイトさん」


「はいっ・・・・・・!」


「はは・・・・・」



目を爛々と輝かせ、美しいブライトさんに熱烈な好意を振りまくケイトにブライトさんが苦笑いをする。その様子を私とオルトゥー君が遠い目を向けるが、まるで気づいていない様子だ。


ケイトにオルトゥー君も紹介したい私は、ブライトさんに釘付けなケイトの肩を叩く。



「ケイト、こちらはオルトゥー君です。ブライトさんのお店で助手をしているんですよ」


「こんにちは、ケイトお姉さん。オルトゥーだよ、オルって呼んでね」


「あら可愛らしい子ね、オル君。ケイトよ、よろしくね」


「うん。ジェニファーお姉さんと将来結婚する予定だから、もっと仲良くなろうね!」


「あらあら、それは大変な道のりね。ウィリアム様とライバルだなんて」


「負けないもん!」


「ふふ、お姉さんは()()()()()()()()()()()だから、手厳しいわよ」


「じゃあジェニファーお姉さんじゃなくて、まずはケイトお姉さんと恋人になって形勢逆転を狙わないと」


「あらあら、おませさんねぇ」



クスクスとケイトが笑いながらオルトゥー君の頭を撫でる。その様子を私とブライトさんが優しい目で眺める。ケイトならすぐに仲良くなると思っていたが、ものの数分でここまで会話の中に入れるとは。やはりケイトは会話上手だと思う。


よくケイトには道具の調達をお願いしているが、それはやはりケイトの交渉術があってこそなのだろう。そんなことを考えていると、不意にブライトさんが顔を覗き込んでくる。長い睫毛の下に転がる漆黒の瞳は、今日も美しい。



「お嬢様、ウィリアム様からお話しはうかがっています。どうぞお気をつけて」


「はい。何かお土産を買って帰りますので、楽しみにしていてくださいね」


「いいえ、土産話で十分ですよ。オル君には何か買ってきてもらえるとありがたいですが。昨日も船に乗りたいと駄々を捏ねたんですよ」


「ふふ、・・・・必ず、買って帰ります。もちろんブライトさんにも」


「ありがとうございます、お嬢様」



にこり、と薄い唇が弧を描く。その姿に私ではなくケイトがうっとりと目を細めた。本当に脳内がお花畑すぎる。思わず乾いた笑い浮かべていれば、ケイトの様子に気づいていないらしいブライトさんが首をこてんと傾げる。ああ、やめたほうがいいそういう可愛い仕草をするのは。ケイトが蕩けてしまうから。


と、ブライトさんの美しさに内心悪態をついていると、不意に背中に何かがどんっと当たる。多少よろけながらも、誰かに当たってしまったのだろうかと振り返る。


すると、そこには目を吊り上げたバーバラさんと、エリザベッタさんがいた。


お二人とも燦々と降り注ぐ冬の太陽の日差しを避けるためか、ひらひらとフリルのついた帽子をかぶっている。それはケイトからすれば最近流行りの日差し避けの帽子らしく、誰よりも反応をしていた。


そんなケイトの視線に気づいているのか、バーバラさんが赤い口紅を塗った唇をにんまりと上げる。そしてブライトさんへと視線を向けると、優雅にワンピースの裾を掴んで膝を曲げた。



「初めまして、バーバラと申します」


「エ、エリザベッタと申します」


「・・・・ブライトと申します」


「まぁ、お姿だけでなくお声もお美しいのですね」


「ありがとうございます・・・・・」



突然現れたバーバラさんとエリザベッタさんに、ブライトさんとオルトゥー君が多少身動ぐ。しかしそんな様子など気にもかけず、ブライトさんに歩み寄るとうっとりとした瞳のバーバラさんと、目をうるうると潤ませるエリザベッタさんが、その両腕をガシッと掴んだ。



「こんなお美しい方が港にいらっしゃるとは・・・遠くからでもそのお美しさがわかりましたわ」


「エリザベッタは胸が高鳴って仕方がありません・・・・」


「・・・・・・」


「ジェニファーさんの近くには、美しい方が多いように思うわ。どのような魔術を使ってらっしゃるのかしら」


「(使うわけないだろ・・・・・)」



相変わらず手厳しい言葉に、思わずムッとする。しかしそんな顔をすれば二人の思う壺なので、すぐににこりと笑いかけると、ワンピースの裾を掴み膝を曲げる。


そうすると、二人は嫌味ったらしく顔を背けた。本当に嫌われて仕方ないな。少し悲しいよ。



「バーバラさん、エリザベッタさん。ごきげんよう。この度はお二人の別荘に滞在させていただくということで、大変感謝しております」


「ウィリアム様のついでよ、ついで」


「・・・・それでも、滞在させていただけるということで、私と使用人のケイトも感謝しております」


「あら・・・・使用人って、一人だけなの?」


「・・・・?・・・はい」


「随分少ないのねぇ」



そう言って、バーバラさんはどこかへと視線を向ける。私やケイト、ブライトさんたちもその視線に釣られて船の近くで待機をしている集団を見つける。


バーバラさんやエリザベッタさんと同様に、流行り物のワンピースと帽子をかぶった女性が10人ほどそこにはいた。あれは全てお二人の使用人なのだろうか。あまりにも数が多すぎやしないか。


長い滞在をするわけでもないので、身軽な方がいいと思うが。そう思う私だが、お二人は鼻高々に笑みを零すとまるで挑発をするように私とケイトを見た。



「随分、少ないんですわね」


「なにをっ・・・・・」


「ケイト、いけません」


「ですがお嬢様・・・・・」


「お嬢様ともなれば、準備に手間がかかるものです」


「・・・・・・・」



しゅん、としてしまうケイト。その様子をバーバラさんとエリザベッタさんが嘲笑うように眉を上げた。ブライトさんとオルトゥー君も気に入らないのか、眉を顰めているが私がケイトを止めた手前、何を言うわけでもないようだ。


しかし、私としてもどうしても癪に障るというもので。


私のことを馬鹿にするのは構わない。しかし、ケイトは本当によくできた使用人だ。たまに使用人とは思えない態度を取ることもあるが、それでも私の可愛い専属使用人である。


私は一歩、バーバラさんとエリザベッタさんへと歩み寄る。お二人が腕を組む。しかし怯まず私はグッと拳を握ると、申し訳程度に笑みを浮かべた。



「私の使用人のケイトです。使用人としての働きには、私も目を見張るものがあります」


「・・・・だから何よ」


「この旅でも、十二分にその力を発揮することでしょう。数ではありません、質です」


「っ、まるで私たちの使用人が使えないとでも言いたいようね」


「いいえ、あの使用人たちもそれなりの教養と技術をお持ちのことでしょう。私から申し上げたいのは、そちらの使用人に文句を言うつもりはないので、お二人も私の使用人をみくびらないでいただきたい。それだけです」


「なっ・・・・・・」


「私をよく思わないのであれば、それは構いません。ですが、」


「・・・・・・」


「私の右腕であるケイトを馬鹿にするおつもりなら、私も黙っていません」



そこまで言うと、ブライトさんとオルトゥー君が眉を上げた。あまり怒りを表情に出さない私が、その言葉に毒を含ませ嗜めたからだろう。


バーバラさんとエリザベッタさんの顔に熱が集まる。今にも何かを叫び出しそうな表情だが、私はすぐに視線をそらすとケイトへと向き直った。ケイトはなぜか泣いていた。どうしてだ。



「お、お嬢様が・・・・私のことを右腕と・・・・・」


「・・・・・ああ、右腕ではなく足だったかもしれません」


「お嬢様!そこは優しく私を慰めてくださいっ!」


「はは・・・・・・」



涙ぐむケイトの頭を撫でる。そんな私とケイトを、ブライトさんとオルトゥー君が優しい目で見つめる。


バーバラさんとエリザベッタさんはもちろん私を射殺すほどに目を吊り上げていたけれど、今回ばかりは険悪な関係を解消するための言葉はかけられそうにない。胃は痛めたが、それでも使用人の主人として、言うべきことは言わなくては。



「やぁやぁ、遅れてしまった!」



すると、そこに遅れてやってきたフィーリウスさんが手に医療道具でも入っているのか、トランクを持って現れた。走ってきたのか、その額には汗が滲んでいる。少し運動したほうがいい、と陰で思った。



「先生、遅いよ。乗り遅れるところだったよ」


「いやいやぁ船が多くてどれだかわからなくてね・・・・お嬢様、ごきげんよう」


「ごきげんよう、フィーリウス様。お忙しい中同行いただきありがとうございます」


「いえいえ、いいんですよぉ。私も血清をつくるなんて珍しい仕事をさせていただけるんですから。今回は溜まりに溜まった有給を一気に使ってやりましたよ」




額に滲んだ汗をハンカチで吹きながらケラケラとフィーリウスさんが笑う。その様子に私も愛想笑いを浮かべる。今回ばかりは、フィーリウスさんがいなければ血清を作ることはできない。文献を読んだが、専門的なところも多く私で実験ができるかわからないということと、血清がきちんと作れなかった場合、それを投与するエギーユちゃんの病状が悪化しかねないからだ。


こういうことは、専門家に任せた方がいい。


ぜひとも、その技術を盗むつもりで参加させていただこう。そう、私が研究魂に火をつけているとも知らず、フィーリウスさんはケラケラと陽気に笑う。



「・・・・あ、」



その時だった。


遠くから馬の蹄が聞こえる。その音に、私だけでなくフィーリウスさんやケイトたちも顔を向けた。どうやら貴公子のご登場のようだ。


バーバラさんとエリザベッタさんが胸の前で手を合わせながら、その登場を待つ。ケイトも、早く顔を見たいと言わんばかりに目を見開いた。相変わらずである。


ゆっくりと止まった馬車。馭者がそのドアを開く。長い足が見え、次に流行り物の黒いジャケットが見える。そして、冬の太陽を浴び人間かと疑うほどのお美しい顔がこちらへと向いた。


女性陣発狂。船の前で待機していたバーバラさんとエリザベッタさんの使用人たちもが、歓喜の声を上げた。大げさだ。




「ごきげんよう、お人形さん」


「ごきげんよう、ウィリアム様」



私を含む女性陣が、皆一応に膝を曲げて会釈をする。ウィリアム様も胸に手を当て丁寧にお辞儀をしてくれる。たったそれだけの仕草で、女性陣はうっとりと目を細めた。


ウィリアム様は今日もお美しいお顔を綻ばせ、私へと歩み寄る。するとバーバラさんとエリザベッタさんがその間に入ろうと動く。しかし、ケイトが睨みをきかせてそれを阻止した。すでに女性の戦いは始まっているらしい。


それを横目に私は胃を押さえながらウィリアム様に再度お辞儀をする。すると、何を思ったかウィリアム様が私の肩に伸びた髪に触れた。暴漢から逃れるために髪を切るという行為をした私だが、時も過ぎれば髪も伸びる。その髪はケイトによって綺麗に後ろでまとめられているが、こめかみのあたりはゆったりとさせていたので、そこから髪が少し出ていたらしい。


その髪を指に絡めると、ウィリアム様がうっとりとその深緑の瞳を細めた。女性陣発狂。



「今日も綺麗だね、誰にしてもらったの?」


「ケイトです」


「そうか、それはよかったね」


「はい。ありがとうございます」


「香水でもつけているの?いい香りだな」


「・・・・っ・・・・」



くん、と鼻を鳴らしながら私の首元に顔を寄せる。ケイトがその拍子に何か呟いていたけれど、聞こえない。聞きたくない。



「潮風と相待って、爽やかな香りだ。ずっと嗅いでいたくなる」


「・・・・・ウィリアム様、こそばゆいです」


「はは、ごめん」


「はいはいウィリアムさん、そこまでね。それ以上やったら俺ウィリアムさんの足踏んじゃうかも」


「ははは、いつも手厳しいなオルは」


「誰がそうさせてるんでしょうねぇ?」


「私かな?」


「わかってるんだったら離れろっつーの!」



いつもの茶番が始まる。それをブライトさんがクスクス笑いながら眺める。ウィリアム様に頭を撫でられたオルトゥー君は悔しいのか短い手をぶんぶん振り回しているが、ウィリアム様の長い腕に阻まれてそれが当たることはなかった。


どこでだって明るい雰囲気にさせてしまうウィリアム様に、私も笑みを零す。するとそれに気づいたのか、ウィリアム様が私の腰に手を添えた。



「父の船の『誉れ海路を征く女神(セイントメールデーア)』だよ。特別に貸してくれた。客室も多いから退屈はしないと思うよ」


「ありがとうございますウィリアム様。私もいくらかお金を下ろしてきましたので、航海費の足しにしてください」


「いやいいよ、今回は必要最低限の人数しか乗せないから」


「ですが・・・・・」


「こういう時こそ貴族の特権を使わないとね」



にこり、と笑うウィリアム様。確かに公爵家のご子息ともなれば、その財力は多いことだろうが本当にいいのだろうか。私も屋敷に籠るばかりで散財しないので貯金はそれなりにある。いつも助けてもらってばかりだし、お金は払いたいのだが。


しかしウィリアム様は気にしていないのか、ブライトさんと会話を始めてしまった。これは、何か別の形でお礼をしたほうがよさそうだ。しかし、どうやって。


そうこうしていると、挨拶も済んだのかウィリアム様がその長い足を船へと向ける。




「それじゃあ、行こうか」


「はい」


「バーバラさん、エリザベッタさん、港に着いたらシュヴァリエまでの案内はお願いしてもよろしいですか?」


「もちろんですわ!馬車を用意しておりますので、ぜひ乗ってくださいませ!」


「お、お話したいことがたくさんありますの。ぜひ三人でお話しましょう」


「ははは・・・・・」




ケイトの目を掻い潜って、ウィリアム様の両腕をぎゅうと握り締めたバーバラさんとエリザベッタさんが一緒に船へと乗り込んでいく。


その様子を遠い目で見つめる私とオルトゥー君。あの二人、本当に素早い。


しかし私たちも行かなくては。と思い直し、ケイトへと向き直る。すでに馬車から荷物は馭者が運び込んでくれたようなので、身一つ船に乗せるだけだ。



「ケイト、私たちも行きましょう」


「はい」


「お嬢様、ケイトさん、お気をつけて」


「はい。ありがとうございますブライトさん」


「お姉さん、負けちゃだめだよ。今回ばかりはウィリアムさんの肩を持つから俺!」


「ははは・・・・・」


「笑いごとじゃないって。あの二人、気をつけないと面倒なことになりそう」


「私も、何か嫌な予感がします」


「やめてください二人して。・・・大丈夫ですよ、何事にもなりませんから」




雲行きの怪しい二人に私が笑みを零す。しかしブライトさんもオルトゥー君も心配なのか、眉を下げた。ケイトも闘志を燃やしているようで、確かに不安といえば不安だが。



「私は私らしく、エギーユちゃんの目を覚ますために依頼を解決するだけですよ」



そう伝えると、ブライトさんとオルトゥー君が目を見張る。そして、優しく笑いかけてくれる。大丈夫だ、誰が何と言おうと、私は私らしく行動をするだけ。そこにバーバラさんもエリザベッタさんも関係ない。


二人に会釈をすると、船に乗り込むための木の板に足を乗せる。



ーーーーいざ、『花の守人(チュテレール)』のもとに。



潮風を感じながら船に乗り込む。ウィリアム様が甲板でこちらへおいでと手をあげる。


その手に、私はゆっくりと歩みを進めた。




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