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第4話 わたしは迷いに迷いました

「金髪……」

「マックのことよ! あたしたちの学校の3年生。天然の金髪といえば留学生のあいつだけじゃない。ほんとは先輩だけど、学校じゅうの女子に『マックと呼んでくれ』って色目使いまくってる、あの〝すけこまし〟のことよ!」


 どう答えたものか迷っているわたしに、サツキがいい感じのキャラ紹介をしてくださいました。

 持つべきものは親友なのだと痛感させられます。


「あたしの小噺にみんな集まり出したら、急にひとりだけロズのところに行って……。あれ絶対口説き落とそうとしてたわよね? あなた何か、ひどいことされなかった?」

「えっと……」


 わたしは迷いに迷いました。

 正直、サツキは最初に考えたような『なぜか気に入られる』タイプの主人公ではありませんでした。

 本当に友だち思いで、裕福なわたしに対し、そうではない自分の境遇を明るく話すような、からっとした性格の気持ちのいい女性です。


(サツキに嫌な思いはさせたくない……)

 そう、思いました。


 でも、この見知らぬ乙女ゲームにおいて、わたしが脇役であることには変わりありません。

 サツキの好感度が低いキャラがわたしに近づいてくる、そういうシステムだとわたしは考えております。


(と、いうことは――)


 マックとわたしが、その……結ばれたとしましょう。

 サツキは、わたしがマックの毒牙にかかったとお思いになり、最初は心配なさるでしょう。

 でも、わたしがちゃんと愛されているとわかったときは、心から祝福してくださるに違いありません。それはもうご自分のことのように喜んでくださるのが、目に浮かぶようです。


 でもそれって、きっとシナリオどおり。


(それだけは絶対に嫌よ!)

 わたしの最初の思いは、このゲームのシナリオに反乱を起こすことでした。

 それはサツキがどんなに素晴らしい親友であっても、変わらないのです。


 だったら、わたしはマックと結ばれるわけにはまいりません。


(できるだけサツキの好感度の高い殿方を、狙わなければ……)


 そう決めて、「マックとは何もない」と答えようとした、そのとき――



「ロズ。具合はどうだい?」

「みんな心配しているよ」

「早く元気な顔を見せてくれ」



 殿方たちが、もう待てないとばかりに部屋になだれ込んでこられました。


 サツキが怒ります。

「ちょっとちょっと! ロズが休んでるんだから、あなたたち……」

「もう大丈夫ですわ。ありがとう、サツキ」


 わたしはサツキの言葉を遮り、できるだけ優雅に立ち上がりました。

 殿方たちの視線がすべて集まるよう。


 そして、わたしへの好感度の高さが、はっきりわかるよう。


(見えましたわ……!)


 わたしを心配してくださる殿方たちの遥か後ろ、もう扉の外の廊下です。

 そこに、まるでわたしに関心がないように立っていらっしゃる殿方の姿があります。


 間違いなく、わたしへの好感度が最低。


 つまり……サツキへの好感度が最高のお方です。


(え、でも、どっち……?)

 扉の外の、右側と左側、それぞれに殿方がおられます。


 右側には、長髪でミュージシャンふうの、すこし冷たそうに見える殿方。

 左側には、帽子を目深にかぶりあご髭の見える、渋い感じの年配の殿方。


 どちらのお方も、わたしにはまったく関心がないように見えます。


(とにかく、今はシナリオに反抗する突破口を作らなくては!)

 わたしは、口々に心配の言葉をかけてくださる周囲の殿方たちを振り切って、扉のほうへと向かいました。

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