表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

episode1―1

小説って難しいですね。

でも、書いていて楽しいので、これから力を付けていければ良いかなって感じです!

温かく見守る気持ちで、お願いします。

 同日、正午。

 ワイバーンから逃げるように街へ戻ってきたアスは、ギルド内に儲けられた食堂で、行き来する冒険者たちを眺めていた。

 冒険者は皆、仲間と談笑をし、クエストの感想に花を咲かせ、装備や所持品の確認ですら楽しそうにしている。

 今のアスには眩しすぎる光景だった。


 「……はあ」


 思わず溜め息が洩れた。

 悲しみではなく、これからの事への不安から出た溜め息だと思う。

 アスは一人で大きなクエストをこなせる力はなく、かと言って小さなクエストでは生活をやりきれない。

 所持金も心もとなく、装備品を買い揃えるほどの余裕がない。

 

 (まずは一人で戦える力を付けないと……)


 思い立ったアスは、壁一面に貼り出されたクエスト依頼板に向かった。

 貼られているクエストの種類は様々である。


 例えば、小型モンスターの討伐や活動の援助。

 例えば、薬草や鉱石の採取。

 例えば、中・大型モンスターの討伐や撃退。


 それぞれのクエストには難易度があり、それは星の数で決められている。


 初心者から新中級者に向けられるクエストは、星が一から四つ。

 中級者から上級者に向けられるクエストは、星が五から八つ。

 上級者よりも上――勇者に匹敵する力を所有する者、または素質を備えた者に向けられるクエストは、星が八つ以上で上限はない。


 当然、アスが受けられるクエストは難易度最底辺のものだ。

 お世辞にも充分と言えない報酬だが、仕方のないことだった。


 「お困りですか?」


 一人思案していると、背後から声が掛かった。

 やわらかい、優しい女性の声。

 振り返ると、胸元の防御力が心配になる服装の女性がいた。ウェーブがかかった明るい金に近い茶髪に、大きな瞳。豊満なそれが、圧倒的な存在感を放っている。

 この街で知らない人はいないでろう、ギルドのアイドルにして看板娘のシャルだ。


 「お探しのクエストでも?」

 「はい。初心者用のクエストを」


 初対面ならその美貌に狼狽えていたことだろう。しかし、アスは既に何度か見かけている。

 詰まることなく返事が出来たのは、その経験によるところが大きかった。


 「初心者のクエストですか……」


 考える素振りを見せたシャルは、何かを探すようにクエスト依頼板を伝っていく。


 「あ、これだ!」


 ビリ、と板からクエスト依頼紙をちぎって、アスに近付いてくる。


 「これなんかどうでしょうか?」


 手渡されたのは、小型モンスター同士の喧嘩で被害が出ている農家からの依頼だった。

 内容は、


 『小型モンスターの撃退。ただし、致命傷や生活に支障が出る怪我は負わせないこと』


 この依頼からは、モンスターを思いやる優しさが伺える。

 今時、特に珍しくもないが、こういった依頼を受けようとする冒険者は少ない。大きな怪我をさせない、ということは迂闊に攻撃ができないと言うことだ。

 武器を使えないと素手で取り組むしかなく、そうなれば冒険者が怪我をするケースが多い。

 そういった理由で、余りがちなクエストなのだ。


 「やはり、受けていただけないでしょうか?」


 アスからの返事がないことを、拒否されていると勘違いしたシャルは、どことなく悲しそうな表情を見せた。

 ギルドの人間として、いつまでも依頼を放置することは出来ない。だが、冒険者が怪我をする可能性が大きいクエストをオススメする罪悪感も感じている。

 そんな雰囲気を感じさせた。


 「いいよ。このクエストにする」

 「……へ?」


 シャルは一瞬遅れて反応する。

 

 「う、受けていただけるのですか!?」


 大袈裟な反応に、食事をしていた冒険者たちや装備を整えていた冒険者たちの視線が、アスとシャルに集まる。


 「おいおい、あの弱そうなヤツが……」

 「シャルさんの頼みで断れなかったんじゃないか?」

 「だとしても、蛮勇もいいところだぞ」


 ギルド内が騒がしくなり始める。

 シャルは注目の的になったことが恥ずかしかったのか、うっすらと頬を赤くした。


 「では、シャルさん。受理印をお願いします」

 「そっ、そうですね。こちらへ」


 アスはシャルに連れられて、クエスト受付まで向かう。僅かな距離にも関わらず、無数の視線が気持ち悪いほど突き刺さる。

 受付カウンターの向こうで、シャルが拳大の印を取り出し、クエスト依頼紙に押し付けた。


 「これでクエストを行えます。安全に気を付け、無事に帰還されることを願っています」


 決まり文句のような言葉を聞き流し、アスはギルドを後にした。



──────────────────────

 


 「ここであってるよな……?」


 クエストに記されていた場所は、街から外れた山の麓にある小さな村だった。

 特に荒らされているようには見えない。むしろ、畑には多くの作物があり、豊穣にすら感じられる。

 こういったクエスト達成のためには被害を受けた場所を視察する必要があるのだが、肝心の場所が見当たらない。

 とにかく、村を見て回ることにした。


 ぐるりと村を歩くと、豊穣である筈なのに、村に活気が感じられないことに気が付いた。

 道中、聞いた話によると、被害を受けているのは村にある畑ではなく、山の中腹部にある畑らしい。

 なんでも、その畑で栽培している作物が村一番の収入源らしく、小型モンスターのせいで実りが少ないという。

 場所だけを聞き、アスは山の中腹部へ向かった。


 到着すると、アスはその状況に驚愕した。

 土は掘り返され、作物らしき植物は根本から押し倒されている。何よりも驚いたのは、


 「くそ、コイツら……!」

 「む、無理だよ! 帰ろうよ!」

 「初陣が負けで終われるか!」 


 アスよりも先に、一つのパーティがクエストに取り掛かっていたことだ。

 

 

 


 


 

 

 

 


 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ