第7話 : そして神話は語られる
第7話の公開です
前回フォーブルが言っていた神話が語られる事になります
「それで、この世界の神話の回避能力についてでしたか?」
すっかり日も落ち焚き火を囲んでいる中フォーブルが切り出す
「あぁ、できる限り詳しく頼む」
俺はそう言いながらほかの3人には見えない、メニュー画面の中にあるメモのような物を用意する
元々はクリエイト関連のメモの為にある機能のようだがまあ、記録を残せるならなんでもいいだろう
「まず、この神話には2人の神が出てくるんだが、1人はシンジによく似た回避能力を持った神で、もう1人は何者をも破壊する能力を持った神だ」
破壊する能力…どこかで聞いたような能力だな
そんな事を思っているとフォーブルは話を続ける
「2人の神はそれぞれ世界を創ってその世界を護っていたとされている、しかし、いつの日か破壊能力の神は自らの力に飲まれてしまったんです、そして、破壊能力の神は回避能力の神の世界を破壊しようとこの世界にやって来たそうです」
世界渡り…俺がまだ習得できていない能力の1つか…
「しかし、この世界が今尚存在しているってことは破壊能力の神はこの世界を壊すことに失敗したのか…?」
まあ、実際はつい先日俺がこの世界を創り出したばかりの筈なのだが…
「いえ、破壊能力の神はこの世界を壊す事が出来なかったのではなく、まだ壊せていないんです」
何…?壊せていない、つまり…まだこの世界を壊そうとどこかに潜んでいると…?
俺は頭が痛くなるのを感じたが表情には出さないようにしていた
「そして、破壊能力の神と回避能力の神は一度、出会い戦った事があるそうです、そんな中で語られている回避能力の神の力は、どのような攻撃もその神には無力でありその身に降りかかる害は鬼神の如く屠り去った、とされているんです…」
まさに俺のスキルまんまの回避能力だな…
というかこの世界の神なら俺の事なんじゃないのか…?
「それで、その2つの神の戦いはどうなったんだ?」
俺には知るべき事が多過ぎる、なにより破壊能力の神がこの世界にまだ潜んでいるかもしれないという事はいずれ俺がなんとかしないといけない問題なんじゃないか…?
「その戦いの終わりですが…回避能力の神は自らの力を解放し、世界の破壊を回避させ…消滅した、と言われています…」
は……?消滅した…?
「どういう事だ?神が消滅したって、つまりはこの世界に神は存在していないという事なのか…?」
「それは俺にも分かりません、神話には回避能力の神は消滅した、としか」
どういう事なんだ…この世界を創ったのは俺で…この世界の神は俺だ…しかし神話の通りならこの世界にはもう、神は居ないじゃないか…
訳がわからん…そうだ、ミラクリア、あいつは神の使いがどうこう言っていた何か知っているんじゃ
…そこまで思った所で思い出す
そうだった、あいつは何を聞いても何も知らないアホだった…
「なるほどな…たしかにその神の能力と俺のスキルはあまりにも似過ぎている」
俺は落ち着かせる為に考えるのをやめて話に戻ることにした
「なあ、お前さんは今まで何をしてたんだ?」
そこで突然キーリスが俺に問いかける
「は?なんだよおっさん急に、俺の話は別にいいだろ」
「いやな、お前さんがランクSSのスキル持ちなのは分かったんだがよ、SSのスキル持ちって話を今までに聞いた事がねぇ、いくらなんでもそんなレアなスキルが噂話にすらなってねぇってのはちょいと妙じゃねぇか?」
うっ…地味にこのおっさんは頭が回るから腹立つな…
まあ、この程度なら想定内の疑問だ
「あぁ、それは、俺はずっと森の中で暮らしていたんだ、ギルドに登録したのもつい先日の事でその時にSSランクのスキルが判明したんだ」
そこまで言った時、ミリアが「え?シンジ、最初に会った時自分で…」と余計な事を口走りそうになるので2人に気付かれないように口を塞ぐ
「そんな訳で俺のスキルについては誰も知らなかった訳だ!」
そういうとキーリスは「ほー…なるほどなぁ…」と未だに疑っているような顔で返事をする
ミリアはというと突然口を塞がれた事がお気に召さなかったらしい、ずっとこちらを見て膨れている
「なにはともあれフォーブル、話の続きはどうなんだ?」
俺はなんとかこの状況を脱する為、フォーブルに話を続けさせる
「え?あぁ、えっと、消滅した回避能力の神のおかげでこの世界は破壊から一時的に救われた訳なんですが、破壊能力の神はいまだにこの世界を破壊することを目的としているらしく、この世界は狙われ続けている」
というのがこの話の顛末です
え?あ、終わりか、破壊能力の神か、なんというか俺には荷が重いな、なにより俺の危機回避には謎が多過ぎる…
実際問題、俺がこのスキルの事を知ったのだって大体1週間くらい前の事なんだ、この上、神と戦うことになるかもしれないって…
「とりあえず、今日はもう寝ませんか?明日にはこの森を抜けたいですし…」
ミリアが少しだけ眠そうにそう言う
「そうだな、とりあえず見張りは俺とフォーブルで交代してやる、ミリアはゆっくり寝てな」
そう言ってミリアの分の毛布をカバンから取り出して被せてやる
ミリアは少し嬉しそうにした後、毛布に包まって眠った
「おい、俺もいるんだが?」
キーリスが今にも弓を撃ってきそうな剣幕でこちらに目を向けてくる
「ジョークだよ、ジョーク、お前にも任せるよおっさん」
俺はカバンから一冊の本を取り出し、笑いながらそう言ってやった
「…ったく、というか、俺はいつまでおっさんなんだ…」
とキーリスがぼやいていた、が知らんなお前はこれから先ずっと俺の中ではおっさんだ
「とりあえず最初の見張りは俺がやるからお前達も寝ておけよ、何かあれば起こす」
そう言って俺は取り出した本、魔法書を読み始める
この魔法書はミリアの武器となっている魔法書とは違い、魔法を習得する為の詠唱式、魔法陣が書き記されている本だ。
なになに…我乞うは大地の力、今我が槍となりて敵を撃ち貫け、アースドスピアー
その瞬間土で出来た槍が目の前の木に向かって飛んでいく、槍は木を貫通し消滅した
は…………?
いやいやいや⁉︎ 俺今詠唱してないだろ⁉︎ なんで魔法が発動するんだ⁉︎
そして、もしかしてと思い魔法書をステータスで調べると…
見習いの魔法書
詠唱簡易化、魔法威力上昇小
あー………
見事に武器として認識されちゃってますわ…
俺の武器は実質不明、つまりどんな武器でも使えるって事かと思ったが、もしかしたらこれはどんな物でも武器にする、って事なんじゃないだろうか…
そういえばスキルは…
アースドスピア、土、下級魔法
シルカッター、風、下級魔法
シャインコール、光、下級魔法
ヒーリング、回復、下級魔法
フレイムヴァーテックス、火、中級魔法
アクアリムスソード、水、中級魔法
ウィンドケージ、風、中級魔法
ロックスキンシール、土、中級魔法
サンライトレイ、光、中級魔法
カオシックフレイム、闇、中級魔法
ヒールドライト、回復、中級魔法
いや、魔法覚えすぎだろ…いくらなんでも多過ぎる
一応どんな魔法か試しておきたいな…しかしここで使うのは危険か…そうだ…!
俺は思い付いた事がありそのまま静かに見張りを続けるのだった
それから3時間くらいが経過した頃…
「そろそろ見張りを交代しよう、シンジもゆっくり寝るといい」
後ろからフォーブルが起きてきて見張りの交代を伝えてくる
「あぁそんな時間か、お言葉に甘えてそうするよ、後は任せたぞ」
俺はあくびをしながらそう言って毛布を被り横になる
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「…と、戻ってこれたか」
そう言って俺は神の間に戻って来ていた
そう、先程思い付いたのは神の間に戻って魔法を試す事だここなら何もないから思う存分に魔法の試し撃ちが出来る、そんな事を思っていると
「あら、帰ってきたんですね、今夜は何をしに帰って来たんですか?」
「まるで俺が帰ってきて欲しくないみたいな言い草だな」
戻って早々にミラクリアは絶好調だ
「今回は魔法の試し撃ちをしようと思ってなあ、そうだミラクリア、お前を標的にしよう」
さっきの事もありこいつには少しお仕置きが必要だと思い少しいじめてやる
『我乞うは流るる水の力、今我が剣となりて敵を切り裂く刃となれ、アクアリムスソード』
俺が詠唱を始めると同時にミラクリアは慌て出す
「ちょ、ちょっと待ちましょうよ!たしかに私が悪かったです!だから許してください、私をマトにして魔法の試し撃ちなんてしないでくださいーー!!!」
そして詠唱が終わると同時に俺の手に水が溢れ、それは剣の形をとる
「これは…剣の形状にした水を操れるのか…?」
そう言いながら操作しようとするが一向に動かない…ん?なんだこれ…?
魔法が飛んで来なかった事によってミラクリアがホッとしている
俺は不思議に思っていたが次に思い付いたのは剣として俺が使う事である
そして俺は水の剣の柄の部分を握る
「持てる…これはもしかして…!」
『クリエイト、ブリューナルド、メイジモード、エンチャント、アクアリムス』
成功だ、左手にブリューナルド、右手に水の剣これは使えるぞ…!
そんな事を思いながら魔法を解除する、水の剣は形を失いただの水になる
「さて、じゃあ本格的に始めようか?」
そう言って笑いながらミラクリアを見ると、ミラクリアは怯えたように全力で逃げ出した
ご愛読ありがとうございます
今回の件で破壊能力の神というのが判明しました
また、シンジはどんな物でも武器にする能力を持ちましたがまだまだ自身の能力について謎な部分が多いようです
冒険の旅でシンジは何を見るのか