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森出身で世間知らずな少年の世界革命  作者: スタミナ0
五章:ミシルと罠師の糸
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雨音に紛れた烏の鳴き声

更新しました。



 ガーゼは知っている。

 どんな人間にも必ず勝てない敵がいる。自分の場合は、途轍もない強者ばかりだったし、戦う前から弁えていた。そういう相手ならば、一目で判るのが、剣呑きわまりない業を持つ者の感性。標的の血臭と怨嗟で練り上げられた業を振るうなら、必然的に育まれる人道逸した罪人の牙。

 あれは、まだ自身が暗殺者としての立場を確立する半人前の時だった。仕事の成功率や手際を鑑みても、既に地下組織の中で高い地位が約束される程の実力は備え、この職にいよいよ本腰を入れて取り組もうとした時だ。


 人を止めた怪物が跋扈する第三区――驟雨に町の家屋が叩かれて騒がしい音を立てる中、組織の見張り役だった人間が全滅したという報せを耳にした。当時は大陸同盟戦争の予感が万人に恐怖を与えていた時代で、そういった緊迫した状況下では人の軋轢や差別などに端を発した問題が頻発に起こる。そこで未だ活気のある市井として機能していた第三区の地下組織への依頼の量も増加の傾向にあった。何らかの形で干渉した際に誰かと禍根を残し、遂には凄腕の刺客による壊滅を目論んでいると危惧する。

 カーゼは手先として遣わされ、夜半の町を監視した時に、その人物を発見した。

 刺客、というには、あまりにも年端のいかない少年。しかも、その風貌を観察すれば得物らしき物が見当たらない。もしや、徒手空拳で彼等を凌いだというのか。――こんな夜更けに一人姿を晒して町を歩く様子は、たしかに如何なる急襲を受けようとも敵を退けてみせる余裕が感じられた。


 監視を続けて、およそ二週間が経った日。

 地下組織の幹部の一人が返り討ちとなった。その情報に内部が騒然としている中で、町の路地裏にある家で待機していたカーゼの下を、件の少年が訪ねたのである。意図を読ませない無表情と、琥珀の輝きを持つ炯眼はカーゼを萎縮させた。


『クェンデル山岳部に住む人を訪ねに来た』


『……正気か?まさか、そんな事の為にこの町を彷徨いてたってのか。だが……確か小人族の隠居してる老人だろ?物識りな以外、何の取り柄も無いって噂の。それを何でわざわざ』


『頼む』


『何でまた、その役をオイに?』


『年の近い相手なら、あまり取り繕わずに交渉できると思ったから』


 取り繕う事などあるのか。既にこの地域で組織全体に畏怖されているその人物に、内心で皮肉を言いながらも、命が惜しいとカーゼは彼を山中へと導いた。その行為が裏切りとされ、組織に追われる身となり、暫し町を離れて再び帰った少年に同伴することとなった。

 戦争が始まれば、互いに別々の任務を請け負うこととなり、それ以来は連絡も取り合ってはいないが、それでも彼の噂は聞いていた。殺し屋として大成していく彼との実力の差を感じつつ、カーゼもまた名を馳せるまでの力を身に付ける。


 組織に依存せずとも、一人でこの職能を発揮できるようになったカーゼの耳にある噂が入った。南方の有名な一族の当主が、桁違いの手練れを雇ったという。魔族や政界でその一族を障害と見なす者に嗾られた刺客を悉く滅する。ふと覚えがあると感じて、カーゼは当主の随身となった人間の名を聞いて思わず笑った。

 ベリオン大戦で彼が死んだという伝聞がある。

 既知の仲である【猟犬】のシュゲンとも連絡を取り合っていた故にそれが誤報であるとはすぐに察したが、何と彼が子を連れているというのには耳を疑った。それも、『愛を注ぐ』などと彼らしくもない発言まで残して。

 あの冷酷無比だった殺し屋が、如何にして人間の感情を取り戻したのか。不思議に思っている最中で、仕事中にミシルという子供を引き取る事になる。暗殺に惹かれるとは何とも常軌を逸脱した子なのだろう。

 仕方なく、彼女が諦めが付くまで面倒を見ると気紛れにラングルス第三区へと戻って育てた。幸い、自宅はまだ残っており、二人で暮らすには差し支えが無かった。

 ミシルの成長を見て、カーゼもまた人として還元されていくのを感じ、あのシュゲンもまた部下を子も同然に愛でるといった状態であった。

 優しさとは遠くかけ離れた自分が、こうして幸福を掴んだのは、まさか彼のお蔭なのか?


 シュゲンが死に際に、手紙を寄越した。

 無論、友の死ともあり内容を確認しないわけにもいかず、何より自分も死期が迫る老体の一人。


(あかつき)が夜に遺した光の迷い子を、どうか導いて欲しい。近い内に、そちらへと行くだろう。彼もまた、修羅の道にあるのなら、先達である我々が救わなくてはならない。そして何より、その子を理解する一人の親として』


 旧友の恃みとあらば、致し方ない。

 現に、手紙が来て三ヶ月後に現れる。それは数十年前の彼を彷彿とさせたが、穏やかな瞳が別人であると語っていた。これが、彼の愛情が注がれた形見なのか。

 ヤミビト――否、アキラが、そしてシュゲンが彼を導いたのなら、自分がそれを継がないとは道理が通らない。

 この老体が最期に担う大仕事として、ユウタと名乗る少年を導く決意を固めた。







   ×       ×       ×




 荒涼とした山小屋付近の森。倒れた樹木、近い場所を過ぎ去る雲が次第に周囲を暗くしていく中で、ユウタが手にする翡翠色の氣巧剣の切っ先は、跪くように片膝を屈した片羽根の八咫烏の首筋に翳されていた。断ち切られた翼の断面は焼け焦げ、未だに煙を上げる。手には毀損した刀があり、一寸ほどの刃しかないこの刃では、もう少年を殺傷する能力も失われている。

 ドゥイが山小屋から降りて来た。片手には大鎚を担いでいた。その険相が寸分違わず項垂れる烏の頭頂を憎悪に睨んでいるのは一目瞭然である。同胞の復讐を為すのは当然だろう。ユウタもまた、彼を仕留めるならばドゥイの役であると判断していた。


「おい、ユウタ。こいつぁ何をしに来たんだ?」


「ラングルス……町に仲間が居るそうです。彼はそこへ情報を届ける最中に、僕の姿を目撃したと」


 ユウタが顔を顰めると、ドゥイが首を緩やかに横へ振った。少年に責任を問う必要は皆無。此所を訪れたことは必然であり、それが仲間を失う未来に直結する話でもなかった。この烏が独断で、それもユウタを誘き寄せる為に行った事。罪を断ずるべきは、この襲撃者だけだ。

 ドゥイは片手でその長柄を一旋させ、鎚の鈍く尖った先端を烏の後頭部に向ける。その筋肉が憤懣に震え、今にも爆発する隙を窺っている。気にくわない……この状況においても、敗北を認めながらも不敵に、重傷を負いながらも毅然としたこの様子。


「ドゥイさん、訊きたい事はもう終わったから、好きにして良いよ。……だけど、後悔だけは無しです」


「ああ……当たり前ぇよ」


 ドゥイが上体を巻き込んで鎚を水平に後方へと引き絞る。彼を中心に空間が収斂しているように錯覚し、ユウタは思わず息を飲む。怒りに任せ、既に満身創痍の敵に渾身の一撃を叩き込むことを意図して力を込める。

 ユウタが氣巧剣の先端を、烏の首筋から離したのを合図に、頭蓋を穿孔する低く鈍い轟音が鳴り響く。あまりの膂力に尖端が側頭部の皮膚と骨を突き破り、烏の眼球が溢れ落ち、見るに耐えない惨たらしい死体と化した。

 鎚を振り回し、烏の体を投げ飛ばして血を払ったドゥイは、舌打ちをして地面を睨む。ユウタは何か言葉を掛けようかと逡巡していると、そのまま歩を進めて行く。行く先は血痕が続く場所へ、恐らくジンシの亡骸があるであろう場所を目指している。

 ユウタはその後を黙々と付いて行った。


「来んな」


「…………」


「お前ぇにゃ関係ねぇ。さっさと手紙出しに行け。このまま真っ直ぐ登りゃ、山小屋に着く。もうそろそろ、嵐並みのやつが来るからな。早々、雲の上からならバレねぇだろ」


「でも……」


「仲間を弔うのは、仲間の役目だ。関係ねぇお前ぇにまで同情される筋合いはねぇし。……それに、婚約者が危ういって時に他人の心配事すんのはいけ好かねぇな」


 ドゥイが一人歩くのを見守ったユウタは、後ろ髪を引かれる思いに重くなる足を山の頂を目指して踏み出す。やはり、八咫烏とは相容れないようだ。目的を完遂する為の冷徹さとは違い、心の底から獣人族や己と縁ある者以外を差別的に見るその思想。

 地面の上に草臥れた死体を睥睨して、暑い雲に覆われつつある場所を通過した。霧のように濃く、されど呪術でも受けたように視界が悪い。ユウタは少し歩調を速めて、山小屋までの距離を潰す。麓の工房にはカーゼ達が待機しているが、追手の襲撃を二人のみでは処理できないだろう。幾度も修羅場を経験したカーゼや、幼いとはいえ実力は背を預けるに相応しい強さを持つミシルでも苦戦は必至。何故なら相手は、騎士のように矜持や尋常な戦いではなく悪辣、外道と罵られても遜色無い手段を是とする闇の住人たち。生態が知られた魔物よりも質が悪く、恐ろしい敵だ。何よりも仲間に対する敬意など微塵も持ち合わせておらず、仕事の報酬を望む我欲のみが彼等の持つ感情。そこに一つの悟りを見出だす者が稀有と言われるほど。

 吹き付ける風が荒々しくなり、枝葉が激しく揺れて、樹間を流れる空気に雑草は不自然に傾いたままだ。此所から山頂まではおよそ半時を要する計算だ。山に慣れているドゥイの助言から逆算すると、ユウタの足では精々一時間。恐らく麓へと向かう頃には、黒い雲海に呑まれた山々を眺める。


 ハナエへの手紙を書けなかったことが悔いるが、余計な不安を与えるよりも、まずは護衛を手配するのが先決。

 ロブディで<印>が策謀によって、ハナエを殺そうとした意図を理解できず、それをドン爺に問えば、彼は明快な解答を導きだしてくれた。

 皇族の持つ「王の証」と呼ばれる『神の加護』は、娘の二人に継がれたと主神からの天啓を聞いたという。すなわちハナエと、そして妹のカナエのみ。『加護』は皇族の血筋ならば何者でも持つとされている。子を生めば、末裔に継承されるため、恐らくハナエの父である村長には、もう既に『加護』が無かったのだ。

 そして、考えられるのは、ハナエが<印>にとっては、ユウタの自我を破壊する道具でしかないこと。そして――カナエが生きている可能性。

 実質、ユウタは村長とカナエの死体を確認していない。村を焼き付くす烈火に阻まれ、正視に耐えずに捨ててきた故郷。守護者ギゼルとの戦闘後は、すぐにリュクリルへと出立した。

 仮に、逃走したゼーダとビューダがカナエと共に逃げていたとすれば、話の筋が通る。実質、ギゼルは村長の安否を確認していない口振りであった。ならば、カナエとて同じこと。

 妹カナエは<印>に捕らえられたまま、大陸を束ねる王として生存しているのだろう。どちらにせよ、そうなった場合、ハナエはその目的の弊害になりかねない。言葉を失った彼女は無害ではあるが、慎重に国の内乱分子を育ててきた<印>ならば、再びハナエに向けて兇手を繰り出すだろう。

 ユウタは、約一ヶ月後の首都でゼーダとビューダに相見える運びだ。その間、ハナエの身の安全を保証する為に、信頼できる者の力が必要。旅先で出会った友人を頼る他なかった。だが、国家転覆の容疑者である自分の依頼に快く応えてくれるのだろうか。懸念はその一つのみだった。共に苦難を乗り越えた仲たが、今回の敵は格が違う。云わば、いまは平和に暮らしている彼等を、自分達と同じ犯罪者同然の扱いとなる身分に貶める願いだ。

 夜は明け、一日が過ぎたいま、ムスビはどうしているだろうか。きっと再びその奇妙な魅力で惹き付けた者の協力を得て、アレオや刺客に対抗しているのかもしれない。これまでの道程を顧みれば、彼女と事件で協力する際は大抵が別行動で奔走している。


 ムスビの種族は<印>に殺された――その合図を送ったのもまた、あの双子の守護者……『巳』の名を冠する矛剴の分家、十二支の一角を担う者。強力な呪術と卓越した狩りの腕、そして氣術。間違いなく、これまでの旅路で最強の敵。あの『酉』のタイガよりも難敵の予感がある。

 ユウタ一人では勝てない。ムスビも参加するとして、この共闘で相手を撃破できるか否か。それも判じ難い。

 手紙の返事は、一ヶ月以内に欲しいと綴ってある。それまで待ち、仮に誰一人の協力も叶わなかった場合は、あの二人との再会も断念して、ハナエを迎えに行かねばならない。


 雲上の景色は明るく、先程までの薄暗さを嘘だと思わせる。やはり想像した通り、雲海は濁流の如く黒い澱みを湛えた水面となっていた。山小屋をいつしか過ぎていたユウタは、そこから徒歩一〇分で山頂の地面に佇立する楕円の岩石を見咎めた。風は凪いでいて、やや気温が低い。

 ユウタは書面に氣術と同じように魔力を込めて、頭に思い浮かべた面々に向けて手紙を送る。すべてが東へと飛んでいくのを見送り、ユウタは急いでガレ場を駆け降りた。ドゥイを待たせるわけにはいかない。もうジンシを葬って、木陰に身を寄せながら雨風を凌いで辛抱しているだろう。

 ドン爺の仕事が終わり、新たな武器を手に再び町への潜入を図る。隙を窺って第三区の凶刃をすり抜け、危険地帯にいるムスビを速やかに救出して首都を迂回しながら目指す。ゼーダとビューダが到着する日に合わせれば、首都の中でまた追われる危険もない。それまでまた、野営が続いてムスビの反感を買うかもしれないが……


 雲の下は凄まじい豪雨に水の壁があると錯覚してしまった。猛烈な勢いは樹冠から滝を作り出し、小枝を根本から折っている。

 ユウタは急いでドゥイの元まで戻った。彼は樹幹に背を預けて空を見上げていた。強かな打擲のような雨滴を顔に受けていたが、その頬を熱いものが紛れて流れているのを察して、ユウタは押し黙った。


「用は済んだか?」


「……ええ、もう大丈夫です」


「そうか、じゃあ下るぞ。これなら、お前ぇらを追ってる連中も足が止まってるに違ぇねぇ。戻るなら今の内だ、工房に入りゃドン爺の許しが無ぇ限り、鉄壁の城塞だ」


「そうですね」


 二人は雨降り頻る山の中を進んだ。





  ×      ×       ×






 やけに周囲が慌ただしい。

 拠点の家屋の中を忙しなく荷物などを運んで往来する構成員たちを横目に、町の見取り図を眺めていたムスビは、外で雨が降り始めたのを感じた。今までの町では悪くとも空が曇るだけだったが、今回は不穏な未来を暗示していると感じてしまう。この地域がそういう気候であることは承知していたが、ムスビには不吉に思えて仕方がなかった。

 全員に指示を出していたジンが、合間を見付けてこちらに来る。その傍に居るマギトの水を含む咀嚼音に顔を顰めながら、ムスビは地図から目を離して彼等に向き直った。


「ムスビ、拠点を移動する。君も支度をしてくれ」


「?何かあったの?」


「「ジョーカー」の内通者がいたのかもしれない。逆にこちらから遣わしていた密偵からの情報だ。長い付き合いだから信頼があるし、デマを掴まされたわけじゃ無さそうだ」


「要するに、所在が露呈したってことね」


「地下水道を通って移動する。できる限り奴等の視界に入らないようにしたい。既に何人かを配置しているから、心配はない」


「了解。でも、組織全体で動くと目立たない?」


「その為に、皆がそれぞれ異なる迂路を使用して合流する算段だ。ムスビは俺と一緒に来てもらうけど、構わないか?」


「異存無し。文句は言ってられないわ」


 ムスビは腰を上げた。

 準備という程の所有物がない――昨日の宿屋で荷物を喪失した故に、ほぼ身軽な空手である。膝下まで隠れる長い黒外套を羽織り、ジンに導かれて地下水道の入り口に立つ。仰々しい見送りと思われる集団の中に居た上背のウェインが際立っていた。ムスビの姿を見付けて駆け寄ると一礼する。


「姫、また後程お会いしましょう」


「はいはい、また後で」


 戸が開けば無粋な石の空洞が現れ、急な斜面を作りながら下へと続いている。ジンを先頭に進む一行の移動が始まった。








  ×       ×       ×





 ミシルと共に工房に留まっていたカーゼは、腕を組ながら伏せていた面を上げる。法被の裾をすぐに襷で絞ると、鞘に納まった小刀を懐に入れて、身支度を始めた。罠を仕掛けるのに必要な道具を揃えて装備していく彼に、ドン爺もミシルも訝った。


「カーゼ、どうしたの?」


手練(てだれ)だ、厄介な連中が雨ん中を行軍してやがる。オイで漸く気付いたぐらいだが、ドン爺……アンタの感知に引っ掛からなかったのかい?」


 ドン爺が驚愕に目を見開いた。険しく眉弓を浮き立たせて瞑目し、暫く沈黙するとやがて重々しい口調で口を開いた。


「ワシの感知できる対象外……北大陸出身の連中だな」


「大体、予想できるかい?」


「獣人族の姫……じゃねぇな。こんな南にまで来るとなると……八咫烏か!」


「確か東国の鳥族だったな」


 カーゼが戸を開けて外へと出るのを、ミシルが追おうとした。まさか彼一人に任せるなど有り得ない。

 しかし、本人から制止されて戸惑う。ミシルを一瞥で止まらせる。


「奴等がこの工房に押し掛けてきた場合……どうなるか」


「此所を訪問って事ぁ、ヤミビトの事情を知ってる筈だ。つまり……当代の小僧に剣を打たせねぇ為に、ワシを処分しにきたやもしれん。或いは、単に小僧を追跡しに来たか」


「どちらにせよ、穏便に済まなさそうだ。理を言って通ずる輩じゃ無い。オイが罠で牽制する……その間に、ドン爺を連れてミシルはお前の師匠と合流しろ」


「で、でもっ、あっしは……!」


「師匠の言う事聞くくせに、育て親の声は耳にも入らねぇってか。都合の良い耳してやがる。そんな奴に育てた記憶が無いんだが?」


 カーゼは戸を閉めた。

 これで良い。相手が神族の縁ある者ならば、かなりの遣り手だろう。正面から向かえば、持ちこたえられない。罠を仕掛ける時間にも限界がある。この雨の中、鳥族の彼等の動きは鈍りやすい。その利点を活かせば、大数を削げるのも不可能ではない。


「さて、愛娘に親の背中を見してやるか」








今回アクセスして頂き、誠に有り難うございます。作中でアキラ、シュゲンと比肩する殺し屋カーゼの本領発揮です。

次回もよろしくお願い致します。

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