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森出身で世間知らずな少年の世界革命  作者: スタミナ0
五章:ミシルと罠師の糸
82/302

雨の臭い漂う路地裏で

更新しました。




 ユウタは杖の石突で音を立てながら進む。

 第二区などの喧騒からは遠く離れた静寂の中、その堅い音だけが響き渡って、ユウタの存在を報せていた。これを聞き付ける人間は、この場には暗い生業に生きる者たち。自ら命を危険に晒す真似だと承知した上で、杖の律動は止まない。

 追跡者の足音。

 視覚を遮断して、耳に届く情報のみに意識を傾注する。旅に出てから、ヤミビトとしての成長の影響もあり、五感の鋭さは森に居た頃よりも鋭い。日常をただ過ごしているだけで、人よりも多くのモノを見聞きしてしまう。対面する人間の拳措、声に含まれる感情が音、それらを見て相手の真意を推察する術に長けたのも、その副産物と言えよう。

 だからこそ、アレオによる攻撃を即座に察知して、防御することが出来た。見えずとも、ナイフが空気を走る音、上体にわずかに現れる予備動作の兆し。読み取れたのは偶然だった。あと少しでも相手に気を許し、会話に集中していたなら、今頃はムスビが片足を失っていた。

 ユウタは第二区からも離れ、かつラングルス入り口からも遠い距離で立ち止まった。杖を左で逆手に持って、直立したまま周囲を窺う。


「誰から使嗾られた刺客なのかは知らない」


 ユウタは気配を感じる物陰を一瞥すると、杖を握る手に力を入れた。空の手は指先まで余計な力を抜く。脳裏にはハナエの姿を思い浮かべ、己が剣を振る意味を検める。

 傷害や殺害の意図を持つ人間以外を攻撃対象としない。ロブディで自分に課した自戒と誓約を再確認し、深く吐いた呼気が空気に溶けた。必要以上の殺傷は控えるが、相手が刺客ならば躊躇せずに切れる。




 追跡者は戸惑っていた。

 自分達の追跡術は、長い経験の中で練磨された技術。並大抵の人間では、およそ気配を感じ取ることも出来ない。しかし、対象の少年は町へ入ってからというもの、視線と僅かな動作のみで追跡者の位置を把握していると言わんばかりに牽制し、第三区に戻ってからも悠然としている。

 噂になっていた――二代目ヤミビト。

 シェイサイトで初めてその姿が確認されて以来、そう嘯かれる人物は、まだ年端もいかない少年だった。だが、その実力は伝聞のみでは疑わしくなる。

 満足に行動もできない手負いの体で、百戦錬磨の傭兵クロガネとの一騎討ちで勝利した。それからも、聖女暗殺に荷担したとも言われ、本人の気質を知る人間は否定するが、先代ヤミビトを知る界隈の人間としては信憑性があった。

 本来、表舞台に立たない暗殺を事とする力の持ち主なのである。

 互いに同種の人間。

 されど、実力の差については不明だ。あの杖が得物であるのは、容易に判る。我々にとっては、都合の良い武器であるからだ。相手を欺く擬装は常に自然であらねばならない。同じ職能の人間ならば気付かれ易い。

 相手は杖を主流とした戦術。相手はまだ経験の浅い少年、油断しなければ返り討ちは無かろう。――されど、追跡者を畏怖させるのは前例の場合。

 如何なる手段で奇襲を仕掛けようとも、その暗殺者は全く動じなかった。襲撃者は分け隔てなく、切り殺された。一種の化け物のような手練れ、歩く天災。

 もし、本当に情報通りに、あの殺し屋の弟子だというのなら……追跡者の背筋が凍る。

 本当に、あれが殺せるのだろうか?依頼は何かの手違いでは無いのか?誰がそんな事を考えた?

 少年の足が止まり、全員が息を呑む。


「本当に、やれるのか……?」


「知らん、だがやるしかあるまい」


「合図と共に、出るぞ」


 少年を見据えて、三人の追跡者が得物を手に取る。標的は依然として構える事もせず、路地の中央に仁王立ちをしているだけだというのに、隙は全く見当たらない。


「行くぞ」


 実行に躊躇う中で、一人が決死の覚悟を決める。



 それからは、刹那の出来事だった。


 三人がまさに、地面を蹴って飛び出さんとしたとき、今まで動きを見せなかった少年が身を翻して肉薄してきた。文字通り無音の一足で距離を潰され、恐慌に武器を抜く事を逡巡した一瞬で、二人の首が断ち切られた。その剣閃は見えず、僅かについた血をふるって納刀した音と共に、首は地面へと落下する。何事かをまったく解することも出来ずに、呆然と突っ立っていた一人は数瞬後に、自分が生かされた事実を察する。

 刺客に仲間などない。だが、それでも同胞を討たれても為すべき行いは変わらない。出遅れる形だったが、すぐに攻撃しようと少年の方へと踏み出した時には、体が宙に浮上していた。

 首に感じる圧迫感――それは、少年に持ち上げられているのではない。見えざる手に捕まれたように、全身が硬直したまま中空で静止している。状況がどこまでも常識を逸しており、間も無くして地面に叩きつけられ、意識を失った。






   ×       ×       ×





「……やり過ぎたな」


 朝の廃れた旧市街で、ユウタは嘆息した。転がる遺骸を憚りもなく跨いで越え、地面に倒れた唯一の生存者を肩に担ぐ。片手で器用に袴の腰紐に紫檀の杖を結わい付けると、近くにあった廃墟へと入る。他の人間に見られては少し拙い。

 荒れ果てた内装の中でも、壁際に襲撃してきた刺客を安置して、意識の回復を待った。


 氣術師としての技量が上がったと自覚はあり、最近では異なる力の働きを同時に発生させることも可能となった。それはシエール森林の中で、魔物を相手に試行錯誤を繰り返した末に獲得した努力の賜物。

 二人を仕留めた後、男の体を浮力で行動不能にさせると、全方位から氣による圧力で全身を拘束した。男からすれば、不可視の巨人の掌中にいるという錯覚があっただろう。確かに、手応えとしてはユウタが掴んでいるも同然である。

 わざわざ氣術まで行使して敵を生け捕りにしたのは、ムスビと自分を狙う理由。町に入った時、警戒の為に追尾するのは判る。だが、第二区で食事をする際も、未だに態勢を崩さずにいるのは不自然。ユウタとムスビを付け狙う事情――当然、刺客ならば殺人の任務を受けているのだ。


 ユウタは誰かに禍根を残した事があったか。今までの旅路を思い返すが、可能性としても何一つ該当しない。敵はこれまで殲滅させてきた、証拠もすべて消却した。

 <印>の仕業かと思うが、彼らから直々に氣術師が向けられた事は無い。彼等は現在、国家転覆を図る反乱分子を操りながら裏で暗躍している。幾ら明瞭な敵対関係を示したとはいえ、ユウタ一人に対して構うほど、<印>にとってユウタはまだ脅威ではない。

 元は<印>に所属していたアカリ・カルデラに訊ねると、タイガと同様の猛者があと十一人は存在することが明言された。

 『十二支』――矛剴の分家の長の総称。本家を守護する戦士の中でも強力な戦士であり、その内の一人が行動不能にしたタイガ、ムスビが斃したシズカ。

 即ち、残り十人の長と、本家の棟梁。その誰かが同胞の為に怨敵を討つべく刺客を雇ったと考えるしかない。まだ自分が出向くまでもないが、無視できる範疇ではないということ。

 ヤミビトの「黒貌」で倒せた。だが、ユウタにこの技を使う意思は無い。次は、ヤミビトとしてでなくユウタとしての戦闘だ。故に、タイガに苦戦していたようでは、まだ自分は残る十人の強敵と張り合えない。何よりも、その中にはゼーダとビューダがいる。


「ぐ……」


 意識を回復した刺客に、隙も与えず仕込みの刃先を突き付けた。抜き身の刀を前に、敵は自分の現状を把握して、両の手を挙げた。降伏の意を示す所作も見逃さない。相手は人殺しの業を幾度もこなしている。ほんの些細な動作にも凶器を忍ばせていることだってあるのだ。

 ユウタに対し、攻撃の意を見せず、その刺客は押し黙った。

 竹笠の鍔には薄い布が揺れて、顔を隠す役目を果たしている。実際にユウタには相手の表情も目視できない。黒の肌着の上に薄い胸当てを着け、腰帯にはナイフを数本だけ佩刀している。素足を露出した短靴を履いた見た目は、あまりにも軽装であった。いや、刺客ならば当然か。


「教えて貰おうか」


 一言呟くと、僅かに手首を回した。相手には、それだけの挙止に見えたが、実情を察して総身を戦慄が凍てつかせる。顔を隠していた布が切り裂かれ、はらりと緩やかに膝の上に落ちた。

 ユウタは再度、目前で萎縮した敵の喉元へと切っ先を翳して、冷然とした眼差しを注ぐ。これは警告である――不審な動きがあれば、膝に落ちた布と同じ目に遭うと。

 あたかも、心臓を握り込まれたような感覚に呼吸が乱れ、ユウタを見つめる視界が滲んだ恐怖の涙で霞む。

 ユウタを狙った刺客の内、尋問の為に生かしたのは少女だった。それも、十四、十五の歳と思われる。浅黒い肌に、長い黒髪を結って肩に流していた。片眼は死体を思わせるほど澱んで光を宿していない。


「誰の遣いで、僕達を狙う?」


 少女は押し黙ったまま、依然として口を開かずにいる。どうあっても話すつもりが無いという姿勢に諦念を持ち、ユウタは紫檀の鞘へと剣を納める。

 実力の差を示した後ならば、無謀にもまた襲撃を繰り返す事もない。それならば、ユウタの敵となる対象ではなくなる。廃墟の中を立ち去ろうとした時、少女が立ち上がった。


「あ、あの……」


 呼び止められて、ユウタは肩越しに振り返る。ようやく白状する気にもなったかと、期待を寄せたが、少女の顔を見て事態が異様であることに気付く。

 片眼を輝かせ、喜色満面の笑みでユウタを見詰めていた。先程までの敵意を隠す為の演技なのか、少女の変貌に冷や汗をかく。


「……何?」


「あ……あっしを、弟子にしてくれ!」


「じゃあ、僕はこれで」


「ちょちょちょちょ!?」


 初対面で、それも自分を殺しに来た相手が弟子入りを所望するという予想不能な言動には、ユウタも颯爽と廃墟を出る。猛然と追走する少女の気配を背後から犇々と感じながらも、振り返らずに路地を走った。町の出口にまで行けば、もう追ってはこれまい。しかし、少女の相好が純粋な羨望であることは判っていた。リィテルの町で船乗りの少年が氣術を披露した時と同じである。羨望が生み出す眼差しの輝きを知っているのだ。

 だが、殺し屋の弟子を志願するというのは、ユウタにも手に負えない案件である。元よりそちらを本業として生きているわけでも無いからこそ、その道を説く経歴も持ち合わせていない。


「弟子にしてくれよぉっ!」


「喧しい!僕に構わないでくれ!」


 悲鳴のようにユウタは叫んだ。殺意を向けられた時よりも、今の方が断然恐ろしいのである。

 しかし、全く諦めずに後を続く少女。無論、距離は離れていくばかりだが、構わずに突き進んでは止まらない。


「僕は今、人探しの最中だ!邪魔しないでくれ!」


「そ、それならお役に立てる人を紹介するよ!」


 ユウタの足が止まる。

 剣も届かぬ間合いで少女も立ち止まった。


「……それ、本当に?」


「うん、色んなこと知ってるよ。師匠の探してる人についても何か判るかも」


 師匠じゃない、と否定するよりも有力な情報に閉口し、彼女の真意を思索する。果たして、その人は如何なる人物か――少女が自分の暗殺を諦めずに、依頼主または仲間の前まで連れてから騙し討ちを仕掛ける心算か。人懐こい笑顔の少女を疑うことに対して罪悪感を懐かないこともないが、第三区は不穏な町として知られている。

 この廃墟の町並みに潜む輩が、易々と情報の提供に応じてくれるのか。そこには陥穽(かんせい)がある可能性も否めない。

 だが現状では、アレオによれば北の山にいる、という程度だ。その真偽について考察もせずに飛び出してきた手前。仮にそれがムスビから遠ざける為の策ならば、ユウタはまんまと引っ掛かってしまっている。なれば、今少女が示す人物に確かめる他にない。明確な目的地というものを持たずに、山を廻るのは難しい。


「……仕方無い、その人の場所まで案内してくれ」


「じゃ、じゃあ弟子入り承諾!?」


 ユウタは無視して、案内をするように催促する。沈黙を肯定と解釈して大喜びし、路地の裏側へと導く。隣り合う倒壊した平屋が互いに支えている間を通過し、瓦礫の山を越えたりと荒涼とした道を辿る。どうやらこれが捷径らしく、ユウタは文句を言わずに軽快に進む少女の後ろを黙々と続いた。

 道中に感じる気配はどれも息を潜めて、注意深くこちらを観察していた。ユウタは視線を全方位から感じて、警戒心に感覚が鋭く研ぎ澄まされる。恐らくあちらも、この町の中を悠陽と進む少年の姿を認めて、訝っているだろう。

 空を覆う厚い雲から、時折雷の轟く音が聞こえた。ユウタの鼻腔が湿った空気に含まれる雨に濡れた土の臭いに満たされる。雨も近付いている。空があまりにも暗くて忘れていたが、今はまだ朝方なのだと。

 これからの雲行きが怪しくなってきた。






  ×       ×       ×






 ミシルを名告(なの)る刺客だった少女に連れられ、随分と路地の深い場所まで来ていた。町の入り口から、第二区へと続く中央道からはかなり遠い。次第に石畳だった地面は、粗末な溝板(どぶいた)が施された狭い小道になっている。民家だった建物の間を縫うように歩いて一〇分が経った。近道だと言って付いて来たが、未だに目的地に着かないと不信感を抱き始めていたユウタの疑念は杞憂であった。

 ミシルは一軒の手前で立ち止まって、中へと誘う。一度だけ左右を目で、背後の物陰などにも気を配ってから、扉の無い家屋の低い戸口を潜って入る。

 中は至って普通で、特に目を惹く物は無い。四方が二丈の長さの一室で、空間の中央に配置された机のみ。趣向というものが欠けた景観は殺風景で、住み着いた人間の性格を想像する材料にもならない。

 ユウタとミシルが並んでいると、部屋の隅で何かが蠢いた。気配も無く、呼吸音も聴こえなかった故に闇の濃淡のみで判じたが、そこには人がいる。膝を抱えて小さく縮こまった姿勢で、ユウタ達の入室に気付いて体を解す。関節を伸ばした時に骨が鳴る小気味いい音がした。

 体を揺すって、膝を引き摺って四つ這いのまま寄ってきた人影に目を凝らす。

 闇の住人は二人の前で姿勢をただして胡座をかいた。


「ようこそ、古ラングルス市街地へ」


 この国では珍しい東国の身なり――法被を着た人族の男性だった。頭頂部から広がったように、白髪が僅かに残った禿頭を晒している。斜交いに左の顔を隠した麻布は後頭部で堅く結ばれており、覗く右目は炯々とした眼光を放ってユウタを見た。その面に深々と刻まれた皺を引き締める。

 ミシルの話によると、古ラングルス市街地に跋扈する裏組織に出入している。


「此度は娘が世話になったようで。世に聞くヤミビトの後継者には恩情があったらしい」


「違うよカーゼ!この人は師匠!」


「……どうやらオイの教えじゃ満足いかなかったか。今回の目標を仕留める筈が、まさか弟子入りしようもんとは。とんでもなく突飛な発想が出たもんだ」


 呆れたとばかりに目を細めて嘲笑するカーゼという老人が、近くの床に座るよう促す。ややその反応に不服と頬を膨らませたミシルは自然に腰を下ろした。

 ユウタは暫しの間を置いて、渋々彼等の正面に跪すように座った。


「娘とは言ったが、単なる養子。気紛れで育てた飼い犬だ。それがまさか仕事失敗の情状酌量を求めて、此所に標的を同伴するとは」


「違う違う。師匠が訊きたい事があるから、わざわざ連れてきたの」


 カーゼは彼女の行動を咎めたつもりだったが、真剣に取り合うつもりは無いらしい。不真面目な反応にも険相はなく、素っ気ない態度である。

 ユウタへと顔を向けたが、その手元――杖を注視していた。


「んで、訊きたい事とは?」


「……この町の北部にある山に住むと言われる、小人族の所在です」


「ほう……これまた珍しい。あの人に用か」


「知っているんですね。教えて下さい」


 ユウタの剣幕に気圧されたのか、少し右目を大きく開けて口許を歪めると、顎を指で擦る。彼の記憶には、ユウタの求める人物に該当するものがあった。


「何だ、初代の跡を追ってるのか」


「初代?」


「アンタ、弟子なんだろう?えーと……アキラの。五〇年よりちょいと前、オイもまだ餓鬼の頃に奴も訪ねて来たよ。そして、同じ事を問うしな」


「……そうですか」


「何かの縁だ、教えよう。

 ここから北に進めば、クェンデル山岳地帯がある。その中でもとりわけでかい山がある。その中腹辺りに一人の小人族が住んでるが……随分と前の話だ、確かから判らん」


「山の中腹……ですか」


「樹林とガレ場が接する場所の方だろうな。多分、麓にある工房にゃ居ないだろう」


「工房とは?」


「ソイツは鍛治師だ。昔っから居て、剣を打つ事が生業のくせして、医術やら魔法やらを知悉してる」


 どうやら、ユウタが求めるモノをその鍛治師の小人族は所有しているようだ。医術にも知識で精通しているというのなら、人体を脅かすヤミビトの力を払拭する為の知識があるやもしれない。

 そうすれば、言語を司る脳に氣が行き届き、ハナエの声も取り戻せるだろう。まだ確実では無いが、それでも光明が見えた。


「もしかして山に?」


「はい、そうです」


「なら気を付けな。まだ、そこいらでアンタを殺ろうって気勢を上げてる連中がいる」


「……あの、僕はどうして狙われているのでしょうか」


 カーゼはこめかみを掻いて、眉を顰めた。無知のまま、此所まで踏み込んできたのか。それならば、何たる愚挙。命を狙う敵勢の腹の中へと自ら入り込むとは、正気の沙汰ではない。

 しかし、少年の顔には自身の行動に対する恐れや迷いは一切窺えない。隠しているのではなく、そもそも危惧すらも無いのだ。向かってくれば、必ず返り討ちにできる自信がある者が見せる余裕だ。

 数十年前に見た男と同じだ、とカーゼは嘆息する。


「こりゃ、面倒なこった。良いか?今アンタは指名手配を受けとる。ついでに、「白き魔女」……アンタの連れだな」


 「白き魔女」と聞いて、首を傾げたユウタに説明を補足する。本当に何も知らないのか。


 カーゼは凄みのある表情で、組んだ足の上に頬杖をついて言った。


「アンタらは今や犯罪者……。それも凄ぇ事に、容疑は国家転覆」


 ユウタは唖然とした。口を開けて間の抜けた顔でいると、カーゼが不敵に笑った。


「悠長に山まで行けんのか?国のお尋ね者よ」






















 

今回アクセスして頂き、誠に有り難うございます。第三区を中心に動くユウタと、“明るい町”を奔走するムスビ。二人の活躍をしっかり書いていきたいです。

次回もよろしくお願い致します。

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