ハナエという少女
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わたしにとって、ユウタは大切な人。
失ったら二度と立ち直れないほど、心の大半を占める。村の男のほとんどは、わたしの縁談募集に快く申し出た。我先にと競い合って現れる者は、大抵が村長の座でわたしを見ようともしない。
でも、別に構わない。
だって、村じゃなくても、わたしを見てくれる人がいるから。彼は誰にでも優しくて、時に厳しくて、不思議な魅力があった。友人として付き合っていく内に、家族みたいに思えた。
私のタイプは――なんて、彼に聞かれた時に答えたけど、正直にそんなものは無い。わたしを命懸けで守ってくれるのは嬉しいし、心強いのは認める。でも、わたしは戦って欲しくない。そんな事で失うのなら、最初から居なければ良いのに、なんて思ってしまうから。
じゃあ、何でそんな事言ったのか。
多分、春先に助けられた事なんかよりも、ずっと前から彼が好きだったんだと思う。普通の子よりも逞しくて、狩りも上手い。守護者からも一目置かれる程なのに、弱い一面を覗かせる。
それが不安定で、躓きそうで、目が離せない。それに、自分が危険だというのにわたしを気遣う姿は、壊れかけの機械みたいだった。中途半端な感情を持って、自ら暴走の一歩手前まで突き詰める。
そんな彼を支えるのは、いつも「先生」だけだ。でも、もう居ない人を心の拠り所にするなんて、そんな虚しい事があっていいの?
わたしが支えになる。
ユウタが幸せになれるように尽くす。出来る事なんて、きっと少ないだろうけど、彼が救われるなら、どんな結末でも良い。悲しませるなんて、絶対にあってはならない。
村を出ても、ユウタ以上にわたしの心を惹く人はいなかった。その間もずっと、彼が傷付いていないか、それだけが心配だった。届いた手紙を何度も読んで、時々寂しくなる。
ユウタの傍にはわたしが居たのに、今では別の人がいる。否定したいけど、わたしは彼が幸せになるなら、傍に居れなくても良い。見守るだけでも耐えられる。本当は何事もなく、わたしの所へ帰って来て欲しかったけど。
あなたの幸せは、わたしの幸せだから。
ロブディの町で再会できた。
でも、彼の相棒――ムスビさんと話す姿を見て、嫉妬しなかった訳じゃない。あの村の人以外で彼があんなにも心を開いているのは、初めて見た。
……良かった、いま幸せなんだね。
じゃあ、精一杯応援するよ。でも、わたしもまだユウタを諦めたわけじゃないから。少し意地を張って、ムスビさんと勝負しよう。
宴会に出席する為にドレスを着て、驚かせようとしたけど、やっぱり駄目だった。ムスビさんは、わたしに無い物を全部持ってる。ユウタを赤面させて、ドキドキさせて。女の子として意識されないわたしとは大違い。
敵わないなぁ……。
なら、二人を見守ろう。良き友人として、彼の過去を一番近くで見た良き理解者として。
ムスビさんが拐われている。
助けなくちゃ、そう叫ぶ心に従って動いたら、捕らわれてしまった。ああ、結局わたしは力も無い。また迷惑をかけてしまう。
どうして上手くいかないの?わたしはまだ、彼に何もしてあげられていない。
もう、このまま、消えてしまいたい。
ユウタが居る。武器を構えて、わたしを見詰めて。
短剣を握った自分の手。幾ら拒んでも把に絡めた指は緩まない。足は意思とは無関係に進んで、彼と距離を詰めた。
やめて、お願いだから、わたしに彼を傷付けさせないで、彼にわたしを殺させないで!
わたしの体を突き刺す鋭い刃。
力が抜けて、地面に落ちていく中で見えたユウタの顔は、今にも死んでしまいそうだった。そんなに心配しないでよ。
きっとムスビさんが、何とかしてくれるよ。
わたしは、あなたの幸せを願うだけの、役立たずでお節介な、ただの幼馴染だから。
今回読んで頂き、誠に有り難うございます。次回はいつも通りの、今回よりも長目でお送りします。
次回もよろしくお願い致します。




