ユウタの敗北/決起するティル
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首が直りました(首が曲がるって最高です)!
リュクリルにて、ユウタが出立する数日前。
鍛冶屋のトードは、ユウタから徴収した武器を机に並べて拝見した。年端もいかぬ少年が呑んでいるとしては、些か物騒な所有物である。町を訪れた時もだが、尋常ではない事情があるのだろうと納得した。
仕事場の部屋には、槍や剣、鎧兜など様々な武具が安置されている。中には自身の独特な意匠を入れた物まであり、彼の鍛冶に懸ける意の強さを示唆していた。
傷付いた短刀は、長らく吸い続けた血錆によって鎬の部分から頼りなく揺れていた。受け太刀があれば、斧などの一撃に粉砕されるだろう。ユウタに物騒な凶器を所持させるのも、些か心配ではあるが旅先で悪意のある人間を牽制する飾りにはなる上に、最低限の護身となる。
トードは凝った肩を揉みながら、すぐに損傷寸前の短刀の代わりを誂える為に、炉へと戻ろうとした。
「……ん?」
ふと、引っ掛かった。
机の上に並べた、確認をせずに放置しそうになってしまった武器。仕込み杖という、如何にも常人が持つには異様な得物だ。仮に適役があるとするならば、それは刺客だ──敵が抜く前に切り、敵に殺される前に殺す業を為す人種が選り好みしそうである。
だが、大抵が体重をかけやすい樫の木を削り出した物の筈だが、これは完全に異質だ。楕円形の断面で、全体が微かに湾曲した三尺あるその中は、長二尺の刀身が隠されている。
トードは紫檀の杖を見回し、ふとこれに関連する有名な話を思い出した。
帰宅したハナエが、仕事場の入口から覗いている。彼はそれに気付くと、手招きして立ち入る事を許可した。こういった職に身を窶す人間は、並々ならぬ事情が無い限りは仕事場の拝見すら頑なに拒む。
トードの態度に疑念を懐きつつ、その傍に立った。握られている杖を見て、トードを見た。
「あの、これユウタのですよね」
「ああ、ちと拝借してる」
トードは刃を天井に向けて立て、研がれた刃先だけがぎらりと光る剣呑な武器に、目を細めた。その刀身から、使い手の過去を探る為に集中しているかのような面持ちだ。
「気になるんですか?」
「紫檀の杖は珍しいんだ。それも──仕込みとなりゃ、かなり有名な話がある」
「どんな話なんですか」
「とんでもねぇ殺し屋にいたんだよ。
人相も名前も一切が不明で、ただ化け物じみた達人らしい。ソイツが現場でいつも愛用するのが、紫檀の杖に隠した刀だったとか」
「凄く怖いですね」
「ああ。だが、幻の存在とされてるからな。昔は俺なんかも息子に、「良い子にしないと“アキラ”が来るぞ」って躾たもんだ。ガキの間でも有名だし」
「アキラ?その暗殺者の名前ですか」
「ああ……ま、話はこれくらいだ。ハナエが帰って来たって事は、そろそ昼時だな。ユウタを呼びな」
トードがそう言うと、少し照れ臭そうに笑ってハナエは裏の戸口に向かった。それを見送り、仕込み杖を改めて見つめる。
そう言えば、十数年前に赤子を抱えて此所へ来た老人も、同じ物を携えていた。旅に着ていたであろう服を半ば強引に、処理は任せたと押し付けて去った意味不明な人物。貴重だと取っておいたそれは、ユウタに譲渡している。
まるで運命の如く、少年とあの老人を引き寄せているかに思えた。
「まさかな」
想像が過ぎた、と考えるのを止めて居間へと出る。
× × ×
翌朝のこと──
ダンジョンから帰還し、夕食を取ったまま彼の帰還を待っていたムスビ達は、観音開きに扉が開かれる音に気付き、机に付して眠っていた意識を起こす。ムスビはまだ微睡みの中で、夢と現の境目を彷徨していた。
霞む視界で玄関を見ると、そこに一人立っている。朝の陽光を背に、床に影を引き伸ばして立ち尽くしていた姿に、ムスビは頭を殴られたような衝撃を受けた。
「あ……あんた……!」
そこに、ユウタがいる。
慌てて駆け寄ったムスビは、傷が無いかを見回す。
「ムスビ、逃げろ」
「え?」
一言だけ言うと、ユウタはムスビに覆い被さるように倒れた。慌てて受け止めたムスビは狼狽し、抱き止めて顔を真っ赤にした。
「ちょちょちょ!なになに!?」
「……………」
ムスビが彼の肩を掴んで引き離す。突然、密着してきた彼に戸惑い、動揺のまま乱暴にすると、ユウタの体は後ろへと傾き、そのまま倒れた。玄関に寝転んでしまった少年に唖然としながら、屈んで彼の様子を確認する。
ユウタは苦しそうに顔を歪めて瞑目し、沈黙していた。彼が気絶しているのは明確だ。ムスビの声にも応答せず、時折呻き声を上げて身を強張らせるだけである。確かに、朝に帰還したという事は、作業が難航したのだろう。単に疲労で寝てしまったのかもしれない。
ふと、横倒しになった彼を見て、ムスビは納得した。
その背中に、縦一筋の傷が入っている。出血は見られないが、彼の単衣を切り裂き、傷口付近を青黒くさせていた。見るのも痛々しいその切創に、ムスビは急いでガフマンを叩き起こす。幾らムスビが肩を揺すろうと、背中を強く叩打しようと、厳然と屹立する氷山の如し強い体をした彼を起こすのは難儀だった。
ムスビの飛び蹴りを受け、漸く起きた彼が振り返る。片目だけを開いて、まだ眠そうにしていた彼も、ムスビが見せる必死の形相に事の重大さを感じた。
「どうした、娘」
「アイツが…アイツが……!」
ムスビが玄関へ向かう。ガフマンは彼女へ付いて行き、そして倒れたユウタを見る。膝を曲げて彼を抱き上げると、ムスビへと振り向く。既に彼の表情は固く、深刻そうにしていた。
この時、いつもなら反発していた彼女もガフマンの指示に従うつもりだ。今はユウタの容体が心配なのである。
「我は坊主を知り合いの魔導師の下へ連れて行こう。この傷だと、事は一刻を争うものだと見た。医師なんぞに見せていたら、その前に力尽きるわ」
「……お願い、します」
ムスビが頭を下げると、ガフマンは頷いて町中を駆けた。
その背を見送って、その場にずっと立っていた彼女の胸は、罪悪感に押し潰れそうになっていた。自分の解放の為に、ユウタはシュゲン救出に並行して暗殺まで行おうとした。自分の手を汚す羽目になろうとも躊躇わずに。赤の他人である自分に情をかけてくれた彼に、今は何も出来ないのが歯痒かった。
ムスビはギルド内に重い足取りで引き返そうとした時、背後から肩を掴まれた。一瞬振り払おうとしたが、今はもうそんな気力もなく、もしかするとガフマンが帰って来たのだと思い、ゆっくりと振り向く。そしてその先の人物に、視界が凍った。
「見付けたぞ、麗しの娘!」
そこに立っていたのは領主の息子──ビバイ。
背後には、長い錫杖を手に持った長身に長作務衣を着た男だった。ユウタの様な東国の服装である。その右目から刈り上げた頭には長い裂傷の痕があり、唯一残った隻眼の炯々とした眼光は、刃の鋭さを連想させた。
ビバイに腕を引かれたが、その隣に立つ男の発する殺意に身が竦んで抵抗できなかった。ムスビは彼に引き連れられ、領主の館へと向かう。
そんな筈が……ユウタが負けた……?
そう動揺した彼女は、すぐに館へと到着する。
門の前で三人の人間の頭が転がっている。忌々しいとばかりに、それを庭へと蹴飛ばした。鈍い音を立てて芝生の上に落ちたそれの目は白濁しており、生気が無い。
「本当に面倒だ。──クロガネ、あの子供はそんなに強かったのか?」
ビバイが不機嫌を一切隠さずに、長作務衣の男──クロガネが黙って頷いた。錫杖の石突を打ち鳴らすと、連動して五つの輪が鈴の音を立てる。朝の町のどこまでも響いて、空気を澄み渡らせるようだった。
「当然だとも。戦いを見て確信した。貴様はあれを甘く見ている。あの業、あの杖、あの武器の技量……私が見た物に遠く及ばないが、間違いない」
口調も正さず、クロガネは己の右目に触れた。その途端、ムスビには周囲の空気に途轍もない重圧を感じたのである。息苦しくなるほど、辺りを緊張させた男の気迫がビバイすらも慄然とさせた。
傷痕を撫でるクロガネの無骨な指。
「二〇年前の戦争で、この右目を潰した手練れの弟子だ」
ビバイはふん、と鼻を鳴らすとそれを無視してムスビを引いて館へと戻った。
× × ×
「あれ、ガフマンさん?」
「おお、確かティルと言ったな!悪いが先を急いどる!」
町中で朝から炭鉱に向かおうとしていたティルは、騒々しく中央道を猛進するガフマンに遭遇した。彼の進行方向は人が自然と避けるため、恰も大海を割って進む神話を想起させた。無論、それはガフマンほどの人物であったからこそできたこと。
ティルに挨拶をして、早々に去る彼が横を通過するとき、ティルはその腕に抱かれた少年の姿を見咎めた。そして風の如く去る彼の背を目で追うと、体も意図せずしてそのまま追い掛けていた。
ユウタが気絶したまま、顔色を悪くした姿を見て愕然とする。自身が敵わなかった、そして数多の冒険者を屠った【冒険者殺し】にも引けを取らなかった彼がどうして。ティルには受け入れ難い現実として映えた。
ティルとガフマンは一軒の家に立ち止まった。
ガフマンは遠慮なく、その戸を蹴破って中に入る。ティルも構う余裕がなく、彼を咎めずに上がった。二人は中を不躾にも見回して人の姿を探す。
「おい、ルクス!怪我人を連れて来た!早う治療してくれ!」
建物を震わせるような彼の声に耳を塞いだ。ティルは耳を押さえながら、もう一度中を見渡した。
すると、呑気な声と共に階段を軋ませる音がする。
「はいは~い。そんなうるさい声を人ん家に遠慮なく響かせるのは、どちらのガフマンさん?」
「よう、ルクス!早うしろ!」
「うわ、久闊を叙すこともなく要件だけかよ」
ルクスという男性が、面倒臭そうに欠伸をして二人に歩み寄る。上裸のまま、彼は分厚い胸毛を掻いて、ガフマンの腕に抱かれた少年を見ると、恍惚な表情を浮かべた。一瞬、ティルの背筋に悪寒が走る。被捕食者が捕食者に見付けられた時の恐怖に相似していた。
ルクスがユウタを受けとり、一階のベッドに乗せる。
「貴様、昨晩は何処で寝ていた?」
「上の研究室だよ。お前の声で実験器具が落ちて最初からやり直しだバカ。
それにしても……」
ユウタの顔を撫で、ルクスが吐息を漏らす。
「隈が残念だけど、きっと平時はさぞ好みだったろうなぁ」
「男漁りも大概にせい。貴様の所為で依頼期限を過ぎた事があったのを忘れたか」
「忘れてないよ。あの後、金欠で暫く男の子を堪能できなかった……そう、苦しい一週間」
「今度は人の命だ。性急なモンだからな」
ルクスは無言で少年の背を診た。傷口を撫でると、ユウタが大きく唸り声を上げる。ティルはベッドから落ちそうになった彼を慌てて押さえた。
「問題はない。でも、早めに治療した方が良いかな。ガフマンとそこの可愛い子は外で待っててね?」
「……大丈夫なんでしょうか、俺は彼が信用なりませんけど」
「安心しろ。ルクスは治癒の魔導師。流石に病人に無粋にも手を出す輩ではない。趣向よりも矜持、享楽よりも命を貴ぶ人間だ」
ユウタを治療中だと、二人は住居の中から追い出され、壁に凭れかかっていた。ティルの憂慮にも、ガフマンが杞憂だと返す。
今日は快晴で、夏の太陽が燦然と町を照らし、道を通る人間達は頻りに汗を拭う仕草がみられる。荷車を押す人間は、頭から水をかけているほどだ。こんな猛暑の中、傷を受けたユウタの体力が気になる。
すると、横合いから殴り付けるように飛び掛かった小さな影に、ガフマンは気付いた。ティルはそれを受け止めて倒れる。自身の胸の中で小さく震えているのは、ミミナだった。
「どうしたんだ、ミミナ」
「ユウタさんは……無事なの!?さっき、ギルドに付いたら、朝から働いてた受付嬢の人が教えてくれたから……!」
「今は、魔ど……医者に見て貰っている。でも大丈夫だ、あのユウタがこんなので死ぬわけ無いだろ?」
泣きながら、それも道中をさぞ急いだのか息を切らし、詰問調でティルを見詰める。黄金色の髪を揺らして、目を赤く腫らす彼女の涙を指で拭ってやると、腰に提げた水の入った竹筒の栓を抜いて差し出す。彼女は一口含んで返すと、ティルから離れて踞る。きっと、ティルの姿を見て余計に危惧したのかもしれない。
ガフマンは黙って兄妹を横目に見ていた。
「それに……ムスビさんが、連れ去られて」
「おい娘、今なんと言った?」
ガフマンが愕然として身を乗り出す。慌てて彼を制止し、優しく問うティルに訥々と説明する。
「ガフマンさんが出た後、領主の息子が来て、彼女の腕を引いて連れ出したって……ギルドの受付嬢は個人への私的な干渉が禁じられてるから、手を出せなかったらしいんだけど。
ムスビさん、抵抗せずに出ちゃったみたい」
ガフマンが顎に手を当てて、その時の画を頭に黙想する。ムスビは、ユウタの為にもどうあっても領主の息子には捕まるまいと息巻いていた筈だ。それが素直に従うとなると、理由は二つ。
一つは、己の為と言いながらムスビを自由にする為に暗殺に出て、返り討ちとなったユウタへの罪悪感と自責の念で投降したか。
二つ目は、領主の息子に抗えぬ力を見せ付けられ、動けなかった。逆らえば死ぬ、という恐怖が勝ったのかもしれない。
後者の方が、ムスビとしては最も考えられる。自分にも反発してみせた彼女が、何よりも己が追われる原因ともなった敵なのだから。ユウタが敗走した事実も重ねると、凄まじい戦士が領主の息子に雇われたのだ。
「うーむ」
「ちょい良いかな?」
開いた戸の隙間から、ルクスが姿を現す。三人が詰め寄る光景に身を僅かに引きながら、後ろを一瞥してから話す。
「一先ずは安心だよ。凄い回復力だからね、観察してると傷が少しずつ塞がっている。こちらの治癒魔法で援護したから、明日には傷痕も無く治る。まぁ……中身はあと数日じゃないと駄目かな」
「つまり、完治するには時間が必要か」
「そうだね。その間はこちらで面倒を見るから、心配しないで今日は帰りなさい。見舞いにいつでも来ると良い」
× × ×
ギルドに帰還すると、薄手のシャツにズボンを穿いた男が待っていた。ガフマン達を見ると、椅子から手を上げ、こちらを手で招く。
ティルやガフマンはそちらへ、ミミナは受付に向かって歩く。
「またお前さんか」
「誰ですか?」
「えー……?何つったか」
「いや、憶えとけよ」
記憶の曖昧なガフマンは首を捻った。
その様子に、ヴァレンは苦笑すると、今度は打って変わって、真剣な面持ちになる。二人は黙って彼と正面から向き直る位置に座る。
周囲には聞き取り難い声で話す。その声に耳を澄まし、ガフマンとティルは机に少し身を乗り出した。
「ユウタのお蔭で、俺らの親方を救出できた」
「そりゃ祝ってやりたいが、生憎とこちらも野暮な用事が出来ちまって」
「判ってる。受付嬢から事の経緯を耳に入れた。あの人個人からの依頼ってぇのがあるがな。俺もあの娘──ムスビちゃんを助けたい」
ガフマンが眉弓を浮き立たせ、険しい顔でヴァレンを睨んだ。それだけで、軍をも黙らせる事が出来るであろう眼差しに、ヴァレンは怖じ気付く様子を見せず、話を続けた。
「俺はユウタに詫びてぇんだ。幾ら責任の一端がアイツに課せられていようと、俺達の我が儘に付き合ってくれた。俺達を逃がす為に、格上と打ち合おうなんて」
ヴァレンは瞑目する。
何よりも、シュゲンがユウタの身を按じていた。取り残された彼が、果たして館にいる強敵に斃されていないか。
シュゲンの話によれば、その館には“三色兄妹”と、続けて二〇年前から活躍する傭兵クロガネという手練れの存在が雇われた事を聞き及んでいた。特に後者の人間は、戦場で残忍と畏れられ、その姿は修羅と形容されるほど。ユウタに太刀打ち可能な人間ではない。勝てるとするなら、彼が戦場でたった一度、敗北を喫した謎の人物か、Lv.9以上の冒険者である。
ガフマンは水に満たされた桶ごと飲み干し、机に叩きつける。
「我らもその腹積もりだ。だが、このガフマンは単なる指導役。私的感情で立ち入る事は許されん」
「そ、そんな」
「だが、奪う事は可能だ。恐らく、近々領主の息子が結婚を間違いなく公表する。本人直々に、それも公衆の面前でだ。そこで、奴が指名手配していた真の理由を暴露してやれば良い。
ムスビがその場でそれを告白しようがしまいが、どちらを信じるかに依る。仮に、それが虚偽だとされても、指名手配された人間を妻に娶ろうとする人間なんざ信用されん。
それでも領主の息子が断固として認めねぇなら、略奪だ!」
「えっ」
「ふふん、そうだろうな」
ヴァレンが笑った。
「だが、相手はクロガネ。ユウタじゃ勝てんだろう」
ガフマンは頷いた。
あのユウタが敵わず、更にはガフマンによる助勢も望めぬ今、誰があのクロガネと対峙する役に立候補できるか。
「この俺──ヴァレンが受けて立つ。なに、勝つ必要はないさ。ユウタの言う通り、こちらのやり方でいかせて貰う」
不敵に言って見せたが、ヴァレンでも時間が稼げるかが不安であった。実際に、ユウタがどれ程クロガネを凌げたのか。実力は伝聞や噂の程度であるが故に、その実力を推し量ることが難しい。
すると、ティルが手を上げた。
「俺もやります」
「何、お前もやるのか?」
「ユウタに命を助けられた。だから、俺も彼を救いたい。何も決闘じゃないし、時間を稼げれば良いなら……」
覚悟を決めたティルの顔に、ガフマンが大笑する。二人の肩を強く叩いて、勢いよく立ち上がった。座っていた椅子が猛進する闘牛にでも撥ね飛ばされたように転がる。
「よし、これからお前達を鍛える!」
「いや、アンタと手合わせしてたら、クロガネの時も疲弊しちまうだろ」
「安心しろ、そこらは配慮してやる!」
ティルとヴァレンは顔を合わせ、その発言を疑った。彼に、手加減や配慮という概念が存在するのだろうか。言うは易しである。始まれば地獄の開演なのかもしれない。クロガネとの戦闘が決定した訳ではないにせよ、果たしてそれまで無事でいられるのか。
ガフマンが二人を誘拐する光景を、受付嬢とミミナは遠目で見守っていた。
次回から二章も佳境です。
今回読んで頂き、ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!




