数ある種より芽吹く一輪こそ
第二幕のプロローグ的な物です。
次回11/25~28(木)更新より通常運転の長文です。
「この世界が、誰かの想像で生まれた物だとしたら?」
霊園でジンナに対し、青緑の髪をした少女が告げる。
悪戯の種を明かすような語調で、無邪気な笑顔で、深遠にさえ思える内容を諧謔で隠してしまう。
誰かの想像で生まれた世界――。
仮にそうならば、神族さえもが、起源たる二神までもが、何者かの悪戯で作られた存在なのか。それらによって増産された人類の存在意義とは。
「『チキュー』という世界で居場所を無くした神様たちは、自らを信仰してくれる人間たちを得る為に、別の星に住みました」
別の星。
人が星に住むなど聞いたことはない。
死者の魂が天に召し上がられ、以後ずっと輝き続けるという話は、どこかで聞いたことがある。星の瞬きは魂の輝き、流星は生まれ変わる瞬間と表現された。
彼女の言葉の含意が、徹頭徹尾理分からない。
「そして、『チキュー』から二人の男女を呼びます。玲哉くんとミラルナちゃんです。俗に言う、『イセカイテンイ』ってやつ。
二人は神様に力を与えられて、世界を作る使命を負い、彼等から賜った不思議な槍で海をぐーるぐーるかき混ぜて、あら大変、大陸を作っちゃいました」
語り口調は子供に聞かせるもの。
ジンナは小馬鹿にされているとさえ思える口調だが、奇異なる内容には引き込まれる。
「槍を突き立てた始まりの場所は『オノゴロ島』、またを『出雲島』と呼ばれました。
以後、二人はそこを管理するよう縛られ、『チキュー』に帰れなくなりました。世界創成を命じた彼らは、以降は自分達を崇拝する人間たちの信仰を得て、末永く安らかに暮らしました。
そんな神様たちがいるのを『高天原』、そして神様たちを『天津神』」
次第に、その話が明瞭な輪郭を帯びる。
ジンナも聞き及んだ単語が端々に現れ、それを繋いで再びこれまでの内容を反復すると、奇妙な筋道が通ってくる。
いや、まさか。
信じられない、そんなこと。
まだ『イセカイテンイ』も『チキュー』も判らないが、それでもジンナは物語の内包する深意に気付き始めていた。
それを察してか、『イセージン』を自称する彼女の顔にも意地悪な笑みが浮かぶ。
「ここは本来の世界に捨てられた神様たちの避難場所。救いを求めた神様たちの浅はかな考えで作られた楽園。
盲目の子羊と、その目を潰してまで慰撫が欲しかった神様の掃き溜め」
彼女の言葉を世界が遮らんとしているのか、台風じみた暴風が吹き荒れる。
それでも、ジンナの耳には滔々と流れてくる。
世界の真理が、言葉として伝わってくる。
「それを壊すために、『別天津神』は誕生する。『約束の子』は、その可能性を秘めた子たち」
そうして、己の存在意義を知る。
読んで頂き、誠に有り難うございます。
少し氣が逸ってしまった感じもしますが、第三部なので、きっと大丈夫でしょう、きっと(自己暗示)。
実は本作を作るとき、ファンタジー世界自体がどうして出来たのか、というのも考えていました。
『森出身で世間知らずな少年の世界革命』←何だか自分で題名詐欺な気がしてくるのは、本当に氣の所為だろうか……。
もうすぐ第一波が終わる。そしたら連続投稿できそうです。遅れを取り戻して、大晦日までに20……15話くらいを目標に行きたいですね。
次回も宜しくお願い致します。




