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森出身で世間知らずな少年の世界革命  作者: スタミナ0
第三部【君が待つ神亡の彼方へ】
280/302

プロローグ

プロローグです。



 暗闇との格闘を終え、少年は帰還した。

 先生と川で身を清めた後に就寝し、森に曙光が差し込むよりも早く起きた。短い睡眠時間といえど、二人は特段疲労はない。()()()()()()なのであり、これが異常とは全く自覚していない。

 朝の歩み寄る音を聞くように瞑目し、屋外にて体を解す体操を済ませる。

 入念に繰り返し、その動作を留まった虫が飛び立たぬくらいに、ゆっくりと焦らず行う。

 小屋では先生が朝餉の用意をしている。食器の音は聞こえないが、鼻先に漂ってくる臭いが空腹を誘った。

 体の凝りを完全に解消した少年は、急ぎ足でそちらに向かう。質素な料理といえど、毎日先生が供する食事は舌を満足させた。

 量ばかりは育ち盛りとあって、摂取量もかなり要する。その配慮についても、先生は一日たりとて欠かさないし、後刻の修練を阻害せぬ程度の量以上は出さない。


 二人は食事を終え、食器などを片付けた。

 その間、少年は昨日の話の続編――否、完結編とさえいえる終盤が聞ける。何度聞いても彼が胸躍らせる理由の、最も大きな部分を擁するからだ。

 先生はその意中を察してか、時折呆れたような、どこか嬉しそうな微笑を浮かべる。少年はずっと、彼の屈託の無い笑顔を見たことがない。


 囲炉裏のそばに再び座った二人が向き直る。

 先生は水で浸した椀を前の床に置き、一度だけ窓の外を見遣った。風に揺れて闇の中に(さわ)立つ枝葉が幽かに艶を帯びる。そこに少しずつ光の手が伸び始めたのだ。

 森に黎明の光が届く。

 先生は椀の中身をすべて飲み干した。


「誰に幸せになって欲しい?」


 唐突に先生が問う。

 虚を衝かれた少年は、慌てながら応えた。


「それは、みんなです。物語の登場人物」


「神族も?」


「……はい」


 するとまた、先生はあの時と同様に微笑む。

 正誤の判断が付かぬ質問に思えたが、彼の癪に障る回答だったかと憂慮した。少年は正座した己の膝の上に置いた拳を見詰める。

 漸う経ってから、先生が襷を緩めた。

 布擦れ音に気付いて、少年はちらりと窺う。


「そうか、優しい子だな」


「…………」


 先生は襷をそのまま懐中に押し込んだ。


「では、話そうか。これは終わりの物語、人が神を淘汰する時代に、その在り方を問われた奇妙な少年の話だ――――」






皆様にお楽しみ頂けるよう、努力致します。


次回から第三部本編スタートです。


次回も宜しくお願い致します。



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