表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森出身で世間知らずな少年の世界革命  作者: スタミナ0
五章:優太と道行きの麋──上
213/302

闇夜の襲撃者


 風が過ぎて森林より日中に得た熱を奪い去る夜中には、人ならざる魔が蠢くと太古より伝えられる。

 葉叢の影より、森を往く二人の姿を見咎める者あり。注視の的は黒衣の少年に向け、息を潜めて様子を窺う様は、獲物を目に捉えた獣の如く強かで狡猾な姿勢。しかし、彼等は捕食者と被捕食者の相互関係にあらず、迂闊に動けば己の喉仏を噛み千切られると悟る拮抗した捕食者同士。

 闇に紛れた異物は、しかし存在感を消して移動する。少年と一定の距離を維持し、静かに追尾を続けた。判断を誤れば、打つ手を過てば、一瞬の後に危地となる。慎重を期して前進する移動速度すら細心の注意を向けた。

 同伴者の少女と談笑する標的は、未だ此方を気取る素振り無く歩む。僅かに不審な所作でもあれば、感知されたと断じて早急に退避を行うべし。自身が追跡する対象が、如何に危険であるかを正確に量った故に事前に取り決めた約束。

 その視界から少年が樹幹に遮られる。僅かに急いて前進速度を上げた。見失っては拙い、動きを覚られてしまったかと焦燥感が湧く。

 樹幹から再びあの姿を暴いた瞬間、標的の少年は身を翻し、素早く懐中で抜き放った匕首を擲つ。一連の動作が同時に行われたかと見紛う体捌きに対応も追い付かず、眉間を刺し貫かれた。

 刃先には(ともしび)の如く、しかし光を発しない禍々しき邪氣が揺曳する。武具に付加すれば、絶命を確約する最悪の属性。追跡者は消え往く己の命を嘆く暇も無く、砕け散って消滅した。


「あ……やられた」


 消滅を見届けた二名は、声音に僅かな悲嘆の色すら無く、樹上に身を寄せている。針葉樹は鋭い槍の如く天に向かって突き立ち、その樹頭に掴まったまま、樹冠の下を過ぎる少年を遠目に見送った。

 追跡者とは、この樹上に匿われた二名に放たれた魔物。土で組成した身体で動き、設定された動作のみを遂行する。感知領域を侵犯せぬ範囲を徹底していた筈だが、少年の能力の前には意味を成さなかった。何よりも、他者の魂に直接干渉する邪氣を精密に操作する技量は強敵である。

 正面から対立し、無事である保証は皆無。闇討ちを企図しても、寧ろその方面に於いて少年は、確実に師に企及する勢いで成長する手練。危険を冒す覚悟だけでは足りない、己の死を確信した上で相討ちを狙わなければ勝機は薄い。

 先の作業が困窮すると予想して、二名は嘆息を禁じ得なかった。主の密命を帯びて下界を訪れたが、事前に聞き及んだ情報以上の難物である。天照大御神が手傷を負わされた理由を、今になって重々承知した。

 少年には不完全でありながらも『天眼通』、微細な邪氣すら変幻自在に扱う高度な功緻性、対人戦闘に特化した戦技。強者を自称しても何ら遜色無い瞭然とした能力を体得した者。

 だからこそ、今回は二名が派遣された。少年に萌芽した危険な力が開花する寸前で、摘み取って確実に滅ぼす為に下界に降り立ったのだ。


「首だけ欲しい、美しい顔」


「達成の報酬にしては、理解し難い酔狂だな」


 赭馗深林を開拓した夜の帳を眺める。

 外れにもまた一つ、灯の光が揺れていた。少年が来た方向と一致する。果たして、先に何があるかを知らぬ両名は、獰猛な笑みを面に浮かべて標的に背を向けた。目指すは、森に佇む一軒の家である。

 火を焚くのは何者か、確めて期待外れならば抹殺し、興味を惹けば弄ぶ。悪辣な感情に身を委ね、樹上より跳躍した二つの異物が夜空に躍る。人に似て非なる姿形は、一瞬だけ月光を満身に浴びて地上に影を落として再び消えた。


 囲炉裏の熾火に薪を入れ、明かりを絶やさぬよう努めるゼーダは、少年の帰還を待っていた。仕留めた獲物を後日の食事に調理し易い形に捌き、それぞれ別の保存法で管理する。少年が仕上げ砥を入れた短刀はよく切れる。

 刀身の獣脂は水に浸した手巾で拭い取る。新たに組み上げた桶の水は、明日の生活に支障無い程度に補充した。後は今後の方針を詮議し、調えた寝床に就くだけである。

 ゼーダは背筋に悪寒が走って、短刀を逆手に握って通路を睨んだ。小屋の付近に感じた気配、少年とは異なる氣の波動を知覚した。同伴者の存在が弊害だと判断し、その場を離れた隙に矛剴が刺客を使嗾したか。否、氣術師たる彼等が相手に襲撃を悟られる不手際を出す訳が無い。

 気配を知られるのも平然とした、鏡花と同じ事情を持つ無害な使者。それとも……存在自体を知られてなお、正面からも堂々と向かって勝利を確信する自負を持った輩。

 ゼーダは鉄筒の両端から氣巧剣の刃を出現させ、廊下に躍り出て短刀を投擲した。虚空を切り裂く刃が、戸口から現れた影に受け止められる。


「何用だ、貴様ら矛剴ではないな」


「ああ、駄目だ――これは期待外れだったね」


 来訪者が醜悪な笑顔でゼーダを見据えた。背後からまた一つ、異形の影が現れる。明らかに矛剴では無い。

 囲炉裏の灯を氣術で鎮火し、窓から外へと飛び出す。屋内で二対一の戦闘は困難、何処から遣わされた手勢かは未だ判らないが、少なくとも自分一人での対処するには屋外へ逃げる他に手は無い。草履の足の裏で砂を踏み締めて着地し、骸取り草に背を向け林間を走る。

 遅れて小屋を出た影が追随した。それを後方に見咎めて、ゼーダはより奥深い場所へ誘導する。三人は、月光の射さぬ暗闇へと潜り込んだ。





  ×       ×       ×




 優太は道中、後方から一定の間隔を保っている不気味な気配を取り除いてからも安心出来なかった。矛剴が常に監視の目を仕込んでいるのかとも考えられたが、最近神族の襲撃が無い事を想起して不穏な予想が過る。

 これが神族の手だと仮定した時、それが自分を追うならば、害為す対象が己だけで済む。だが可能性として、身内であるゼーダを(むかわり)にすべく、離れた優太の様子を見つつ彼の確保に向かっていたのなら――優太は一度だけ振り返った。彼等は手段の是非を考えない、だからこそ自分以外にすら害を及ぼす確率も無視出来ないのだ。優太の力を畏れて襲う、その被害が身辺に居る大事な者にまで波及してしまう。

 森の奥から戦闘の音は聞こえない。思い過ごしなのだろうか、嫌な予感がする。

 骸取り草の団塊を脱し、矛剴の北に屹立する崖に立った。寝ず番の警邏が森に行く一隊、里を防護する隊に分けられ、各々の配置に向かって散開する。未だ小屋から漏れる明かりの中に団欒の声が聞こえず、耳を澄ました優太は異様な雰囲気に顔を顰めた。

 ――やけに静かだ……子供の声が無い。

 崖に留まって里を見下ろす背を、響花は訝って傍らに歩み寄る。昼間は子供が道を元気に駆け抜けていた風景があったとは思えぬ静寂。夜道に人の声はせず、室内灯の光が無ければ廃村と思われる。

 響花はその意を悟って苦笑した。


「夜間は警邏隊を阻害せぬように“無声の時間”が決められているの」


「夜間外出も禁止されている?」


「うん、本来は駄目なんだよ」


「響花みたいに命令を受けた場合を除いて、か」


「…………わたしは命令が無くても……」


「……響花?」


 小さく呟いた響花の声を拾って、優太は小首を傾げた。今までの旅路で、夜間外出禁止令が発令された街を幾度と無く眼にした経験がある。優太にとって珍しい様子でも無い筈の矛剴の里は、それでも奇観として映った。何より、その状況下で命令の有無を問わず、外出を許されたような口振りの響花には、並々ならぬ事情を感じる。

 里を一望する崖に立つ二人の影は、里を巡回する警邏にも発見された。松明を片手に駆け上がる数名の接近に、優太は自然と脇に腕を垂らして構えずに対する。身を固くする響花は、顔を蒼白にしていた。

 駆け寄た矛剴の者達は、優太の右腕の黒印を認めて事情を察する。予め煌人より報せを受けていた者の対応は迅速であり、響花に一瞥のみを送ると再び里へ降りた。

 優太は漠然とではあるが、響花が表情に翳りを見せた理由に気付いていた。矛剴殻咲の出身の者となれば、カルデラ当主となって妨害を働いた響という前科がある以上、裏切者を輩出したと蔑視を受ける。

 矛剴には古くから、近親婚を続け純粋な氣術師の血統を維持する事に拘る傾向がある。しかし、やむを得ず外部から人間を誘拐し、後継者を見付ける必要を迫られる時になると、響や矛剴鱗瞳の慎と同様の“白印の呪縛”を受けない例が現れた。

 後嗣の問題を解消すべく採った手段の末に生まれた存在は忌諱される。優太も過去、氣術師の襲来への対策として共闘した神樹の村の守護者が戦死した結果、経緯を問われる事もなく怨恨の視線を受けた。喩え複雑な事情や切迫した苦境を打開する為に起こした行動も、周囲からの評価が残酷な場合は免れない。

 恐らく、響花は過去の異物――響という前科を持つ殻咲の出身として、周囲から忌まれている。彼女自身が呪縛を受けぬ響と同様の例であるかは判らないが、里では侮蔑の対象にされ易い。

 優太は何も言えず、眼下の景色を眺め下ろす。


「……また、翌朝行くから。何かあったら、わたしに言ってね」


「判った、転ばないようにね」


「優太もね」


「僕が?」


 響花が手を振って崖を降りて行く。

 優太が夜道で何かに躓く事など有り得ない。過去の訓練で夜目が利くため、結に乱暴に引かれたり戦闘で無い限りは、不注意で地面に転がった例が無い。それを知っての冗談なのだろう、意趣返しに小癪な笑顔を作ってみせたのが精一杯であった。

 彼女が去って暫く、小屋へ帰ろうと踵を返した途端、両目に激痛を覚えて踞る。幾度も味わっているとはいえ、慣れる事の無い痛み。眼球内を虫が這っているかと錯覚させ、脳を激しく打つ鈍痛が伴う。昼に屋敷で罠を看破する為に千里眼を使用した影響だろう。時差で発症するとは慮外の事だが、直に収まると考え、木陰に腰を下ろして深呼吸する。

 夜風が火照った体に涼しい。流石に長かった旅路の疲労を今になって筋肉が思い出した。関節に枷を付けた様に、優太の体は地面から離れず、小屋に帰るのも億劫な状態になる。氣術で体内環境を調整する技は、多用すると副作用で暫く体調不良を来す。生来より高い自然治癒力に任せ、余計な思考はせずに居る事が最善である。

 痛みが鎮まり、視界が機能する程度に復調した優太は、疲弊した体に鞭を打って帰路を辿る。骸取り草の葉叢に道が切り開かれ、一歩を踏み出して小屋へ向かう寸前で、背後の里から蛮声が響く。

 再度崖に立つと、松明の灯が団塊となって一層明るい場所がある。松明が列なる火の環の中に、警邏隊に取り抑えられる子供の影が複数見受けられた。必死に抵抗する子の頭部を掴み、地面に叩き付ける。外出の禁を犯したとはいえ、過度な体罰を目にし、優太の体は既にそちらへと駆けていた。

 邪氣で創造した階段で距離を省略し、火の環へと急接近する。頭上から現れるとは予測すらしていなかった警邏は、邪氣で作り出した足場から飛び降り、突如として姿を現した闇人に驚愕した。

 包囲網を斜視した後、子供を下に敷く警邏へと歩み寄る。敵意を含む注視を一身に受けても物怖じすらせず、優太は警邏の一人の肩を摑んだ。


「その手を離せ」


「先ず貴方がそこを退いて下さい」


「一族の掟だ。当主が滞在を許可したといえど、逆らうなら貴様も罰する」


 子供の頭部を鷲掴みにして地面に抑える警邏の腕を一瞥すると、その肘窩を踵で蹴り上げた。横合いからの衝撃に、子供の頭部を支点として立ち、緊張していた筋肉が弛緩する。肘を曲げ、子供に覆い被さるや否やの寸前で、今度は優太がその側頭部を押しやって傾かせた。

 隣へ転倒する警邏を見下ろしながら、硝子物を扱う様な優しい手付きで子供を抱き上げる。何度も地に面を叩き伏せられたのか、鼻の出血と涙で汚れていた。呆気に取られる警邏の懐中から手拭いを奪い、未使用と思われる部分で血を拭う。

 子を虐げる大人の暴挙が、喩え法を下に行われた罰なのだとしても、優太は度し難い抵抗感を覚えた。弟子の弥生を救った際と同様に、激烈な憎悪を抱かせる獰悪な光景である。看過する事は唾棄すべき行為であり、仮に現場から目を逸らしたならば優太は己を恥じて、酷烈に蔑む。

 かつて山道で生気の無い奴隷の少年に背を向けた時も後悔し、セリシアへ暴力を振るう聖女の衛兵も止めた。せめて自分の目の届く範囲で、理不尽な理由で子供が心体ともに傷付くのを防ぎたい。その一心だけが、今の優太の意中にあった。

 仲間の一人に非礼を働いた闇人を取り押さえんとした一団だったが、地面を突き破って全身に絡み付く邪氣の鎖が拘束する。子供を捕縛した者は僅かに乱れた火の環まで引き摺り戻された。

 優太は子供達を一ヶ所に集め、鋭い視線で周囲を睥睨する。いつの間にか、子供が優太の服の裾を摑んで震えていた。その背を窘めるように撫で、先程から意識が朦朧として何度も上体が傾く子は抱き寄せた。邪氣の鎖を解除しながら、眼差しのみで牽制する優太と警邏の醸し出す緊迫した空気に、子供達は忙しなく周囲を見回す。

 環の外から駆け寄る足音を聞き咎めて、一同の意識がそちらへ集中する。優太は肩越しに後方を窺うと、夜闇から龕灯を片手にした響花が駆け寄って来た。続いて煌人と康生が闇の中から姿を見せた。

 本家当主にその場で優太を除く皆が跪いた。

 響花は子供達の傍に屈み、全員を腕に囲って抱き締める。彼女の懐へと競い合って、優太から離れて行く。寂寥感に苦笑しつつ、煌人に向き直った。

 警邏の隣を過ぎて、優太の前に立つ。


「俺の保護下とはいえ、此所は矛剴の掟に従ってくれないと困るぞ」


「厳しき原則でも、彼等が子供を罰した行為は、明らかに度を過ぎた。黙認する範疇を逸している」


「あー……そっか。じゃあ、優太!」


「……何?」


「この子達の面倒でも見てくれないか?」


「……は?」


 当主の言葉に、優太のみならず一同が思考を停止させた。




  ×       ×       ×



「……兄さん……」


「その頭大丈夫?って顔やめてくれよ。確り理由はあるからさ」


 飛躍した兄の思考に理解を示せず、困惑する優太は子供達を見遣った。事の次第が読み取れず、響花に縋り付いている。警邏までもが茫然としている最中、意気揚々としているのは煌人のみであった。


「当主でも目の届かない場、例えば家中で仮にその子達が今晩の失態を過激に責められたのなら、優太が守ろうとした行為も空しくなる」


「だから僕の管理下にと。でも、あの小屋は……」


「材料手配するし、何なら人手も出すぞ」


「…………」


「いや、そんな疑うなよ。他意は無い、今日は屋敷で預かって、明日以降任せる」


 優太が改めて振り返ると、響花も理解できず途方に暮れていた。煌人に忠実な康生までもが、その真意が知れず、怪訝な表情である。確かに子を守るには良策ではあるが、闇人の住居に易々と矛剴の子を招き入れても良いのか。ゼーダの場合は優太の同伴者、傍に居る理由があった。

 屋敷で預かる間の身の安全を保証すると約束する煌人の口振りは、相変わらず何を企んでいるかは判らないが、少なくとも現状では警邏などより信頼が置ける。暫く思料した結果、優太はその案を承諾した。

 それからの行動は早く、響花と子供を引き連れて煌人は屋敷へと帰る。


「あ、先日話した連中を優先してくれ。子供は二の次だから」


「判りました」


 先日依頼された人材育成は、三人の矛剴を対象としたもの。一族の中でも特殊とされる面子で構成されており、これを扱い倦ねていたので優太に一任したのである。現在の矛剴を統轄する煌人が処し難い問題とあって、優太にも難題となるのは明確だ。

 警邏が去った後、優太は邪氣の段差を生成し、崖まで一直線で駆けた。追跡者の様子が気になる、あの出所は果たして何者によるのか。あの時に脳裏に過った嫌な予感を思い出し、優太の足が加速する。

 骸取り草の道による誘導はもう必要ない。叢の上に邪氣の道を急造し、小屋の方角へと最短距離で向かう。此所は然るべき始点、明確な動機を持ち合わせる者に正しき道を提示するが、仮にこの叢を樹上からの移動や、叢を回避せんと迂路を選択しても小屋には辿り着けない。その地に侵入者を防ぐ力が骸取り草の他に宿っている。

 しかし、優太はその地に住まう闇人。横着も省略も、迂回をしても必ず着く。否、優太自身が本能的に引き寄せられる感覚があった。脳裏で呼ぶ声がする。

 ふと、進行方向の森林で木々が倒れる騒音がした。音は絶えず闇夜に轟き、これが自然的現象ではないのだと語っている。何者かによって伐採されている、この奥地にはゼーダしか居ないが彼が何の意図があってそんな行為に及ぶか。

 小屋に到着するや否や、音源の方向を再確認し、桟敷の下の掘立柱を潜って、樹林の中を矢のごとく馳せる。


「無事でいてくれ……!」


 優太の心臓が激しく胸骨を打つ。

 片手に邪氣の刀剣を生成して武具を拵えた。徒手空拳で救える相手ならば、ゼーダで如何様にも処理が可能だ。しかし、森の騒々しさなどを鑑みるに、相手が尋常一様ではない事が用意に予測し得る。最も、この深林に外部から踏み込める時点で事情の特異さなど知れていた。

 薙ぎ倒された樹木に(とざ)された場所に着き、障害物の幹を蹴って越える。相手に悟られるのも委細構わぬ荒々しい戦闘の痕跡、優太の視界の隅に映るそれらはゼーダの生存を不安にさせた。

 樹林が一掃された荒地に辿り着く。その中心に倒れるゼーダを発見した優太は、駆け寄ろうとして足を止めた。


「来たよ闇人」


「それじゃ、仕事を終わらせようか」


 背後から飄々とした声音を聞いて振り返る。

 樹影の中に佇む、異形の人影が優太を待ち構えていた。





アクセスして頂き、誠に有り難うございます。


次回も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ