迷惑な狐に制裁を
「あんた、正気なの……!?」
身支度を済ませた少年が立ち上がる。見送りに来た少女の声にも振り返らず、前に進み出した。獣人族に世話になったのは、十曜を二回りした程度である。何か不便でもあったかと獣人族は心配があったが、彼は性急な用事が発生してしまったという。
誰にも真意は語らず、だが獣人族へ半永続的な不可侵の誓約を結び、彼等の下から去る。それを追ったのは、獣人族の中でも崇高にして神族と対等に渡り合える存在――当代の魔術師を担う少女は、彼の目的を知り驚愕する。
龍は予てより耳にしていたため、然して驚くことなく、それを制止する意も見せず付いて行く。冷静とは言い難いほど無謀な行動を起こそうとする相手に、少女はその沙汰を疑う他に言葉が出なかった。
無言で長し、北の大陸を目指す足取りに迷いは無い。少女には、彼が自ら命を擲っているとしか考えられず、捕まえようと伸ばした手が空を切る。
これから彼は、“この世界”と契約を締結するべく、神族が住まう神殿へ。普く総てを統轄する神々の間、その中心部にあるのは主神の座。そこに『肉体』と『業』を失い、『精神』のみで存する神族の長がおり、少年はその場へと馳せ参じる。
「無理よ!主神様に敵う筈が無い!」
「それでも」
「何故……呪いを解く為に?」
「いや」
「でも……入れるの?あの神殿に?」
「彼が認めている」
短く答えて、少年は足を止めた。頭上を見上げると、その先に軻遇突智が居る。虚空に見えぬ椅子があるかのように腰を据えたまま、神殿へ歩を進める少さな影を静観していたのだ。無論、それを知らなかった少年ではない。魔術師は畏怖にその場で硬直する。
軻遇突智は空から降りると、目前に続く道の中央に着陸した。少年はその隣を通過して再度足を前へ運ぶ。龍は警戒に何度も背後へ顔を巡らせながら唸り声を上げる。
「問おうか、闇人。次に貴様と相見える機会があるか?」
「無い」
少年は断言した――その先の未来に、一分たりとも可能性が無いと。軻遇突智も疑わず、神妙な面持ちで頷いた。もし、有ると答えたなら、心置無く再戦に挑んだだろう。だが、それすらも否定されては――況してや、彼に告げられたなら、もはや叶わない。
少年の後ろ姿を三つの眼球で捉えて、軻遇突智は風に叩かれる羽衣の裾を捌き、空中へと浮上した。
「ならば見守ろう、貴様とその先を。だが心せよ、我が父上に代価として要求されるのならば、それが未来永劫その魂を現世に束縛される苦役であろうとも、決して免れんぞ」
軻遇突智の声も沈黙で返す。
その背中が語るのは、如何なる危険を伴おうと、元より覚悟の上であり、粛々と承るという思念。魔術師の視界には、憂慮と最悪を想定してしまった悲嘆に滲む涙で歪んだ少年が、一度も振り返らず去る光景だけ。終の別れを告げる言葉はなくとも、皆が了解してしまう。
そして、彼は二度と獣人族の前にも姿を見せず、“この世界”との約定を結んだ。
× × ×
今朝に撒かれた「月狐」の兇手によって、混乱の渦中にある白壕。「西人狩り」の運動に参加するか否か、旅館前に居らずこの指名手配書の真偽を判じかねていた民衆は、街路のそこかしこで団塊を作り詮議していた。
幹太と鈴音は衆目を避ける為の路地裏も、今は所々が人によって封鎖されているとあり、堂々と繁華街を駆け回っている。無論、その姿を見咎めて噂する声が周囲から飛び交うのを耳にし、幹太の中で焦燥感を掻き立てる。彼を山賊と特徴付けられた人だと察する人達を視線で牽制する鈴音の行動が、図らずも余計な心労を本人に掛けているとは知らずに。
内乱の騒擾より離れた平穏を築いていた白壕は、この緊急時に展開できる体制は無く、それが奇しくも自警団「月狐」がいの一番に稼働したとあって彼等に望みを託し、今は容疑者四人と「月狐」以外にこの抗争に参加する者はいなかった……筈であった。
突如として天空より現れた神族の刺客二人組により、主戦力たるガフマンと仁那と一時別行動となり、鈴音と二人で「月狐」の根城を探り当てるしかない。だが、旅館前に戦力を配置するのみで本陣に据えた構成員は座視する積もりだったのか、現場から逃げ帰った「月狐」以来、町中では一匹とてその尻尾すら見受けられない。
探索に出た二体の獣――弁覩と祐輔の報告は未だ無く、また何処で合流するかという取り決めすら出来ていない、いや、祐輔なら上空からこちらを見付けるだろうし、弁覩は臭いを辿って来れるのでまた会えるだろう。それを阻害するとするなら、二体が捕獲された場合のみ。または、あの刺客二人の同族か、まだ見ぬ「月狐」の別動隊。
いずれにせよ、衝突は免れない。敵の本陣に踏み込もうと意図するなら、相手の距離は否が応でも縮まる。幹太としては正義感よりも、命の安全を考慮して町より去りたい一心だが、鈴音も髪色や出で立ちが西国出身と間違われることもあってか、おそらく容易に白壕の脱出が図れない。家族を町に置くという思慮など一切無い幹太としては、既にこの戦いを避ける道理など皆無。
ならば、懸念すべきは敵の勢力。その自警団が十数人程度の小規模なものか、或いは繁華街の一角に、または裏で横専を可能にするほどの権勢を所持する強敵かは判らないのだ。無論、恐らく前者は無いと、まだ推察ではあるが幹太には言えた。
昨晩撃退された者は、少なからず負傷している。旅館前に派遣された構成員は、ガフマン達より敗北を経験していない故に陣形を立てて対峙する意思があったのだから、こうして町を巻き込んで対立の意を示したのだろう。最悪の後者である確率のみが高まっている。
今は平和協定を申請する西の国では、既に「東人狩り」の運動も撲滅され、完全に終戦に向けた活動を志している。だが、西からの使節団を「西人狩り」の歯牙に晒し、さらには内乱を理由に平和協定の話すら耳に届かないと悉く否定。総督には間違いなく、戦争を終わらせる腹積もりが無いのだと誰もが納得するしかなかった。
いま白壕に居る「月狐」も、その総督によって生かされている。
「ったく、鈴音とのハッピーライフを守る為には、総督様が早くご臨終なさってくれりゃいいんだけども」
「判った、殺ってくる」
「鈴音、活動的な娘は好ましいけど、お父さんは少し心配になっちゃうな」
「……幹太は父親じゃないよ」
「くっ、いきなり反抗期かよ!!」
「私は幹太の妻だよ」
「数年後、「私、この人と結婚するの!」って言ってくるんだよな、判ってる判ってる……くそ、今日は仁那に愚痴るしかねぇな、チクショウ!」
「……もう」
表情にこそ出さないが、鈴音に呆れられた。二人の間に生じた齟齬は依然として改善の一途を辿らず、この状態が続いている。
鈴音は己を保護した男に対し、単なる親愛では留まらず、それは異性として、家族としてではなく生を隣で共にする番として求めている。だが、肝心の幹太はその思慕にも迂鈍で、愛情を示されるほどに父娘の仲が深まった証左と認識してしまう。――つまり、二人の間では長らく鼬ごっこが繰り広げられているのである。鈴音からすれば、想いが強くなるほど幹太とは別の形で強く結ばれていく一方なのだ。
鈴音としては望ましくなく、幹太からすればこの上ない至福。しかし、この飽くこと無く続く想いの擦れ違いでも、鈴音は彼を想うことを止められない理由は、相手の人柄の所為であった。幹太は何よりも己の命を最優先に考え、恐怖する対象にも正直であり、男が見せる蛮勇や虚勢を全く見せない。
自分さえ残れば良い、そう公言していながら、その身内である鈴音や弁覩に含め、共に行動するようになったガフマンの身を慮る。その家族や仲間を慈しみ愛する心があるからこそ、鈴音は彼に惹かれたのだ。
「鈴音、どうした?」
「幹太は絶対に守るよ」
「逞しくなったなぁ。でも無理すんな、俺はお前が一番大事だからな、何かあれば一人でも逃げてくれよ。……余裕があったらあのクソ猫を抱えてな」
『誰がクソ猫ニャ』
幹太の頭頂部に白い物体――弁覩が着地した。首を急襲した体重に、衆目の面前で盛大に前のめりに倒れ込んだ。弁覩は宙で鈴音が受け止めたが、幹太本人は街路に伏せている。敵の奇襲に警戒していたというのに、身内から攻撃されるとは慮外のこと。無様に倒れ、背中に注がれる視線に忸怩たる感情で赤面した幹太は、矛先をその原因たる猫に差し向けた。
走りながら弁覩の首を絞める。それも、呼吸困難に陥らず酸素を最低限取り込める程度の余裕はあるが、苦しみからは逃れられないよう加減した悪質な技であった。必死に首を締め上げる腕を叩き訴える弁覩の意思を、だがしかし幹太は敢えて無視する。
「……幹太、弁覩は多分「月狐」の居場所を知ってる」
「あ、そうか」
『ブヘェッ……!やっと楽になったニャ……』
「早く言えよ、再開できないだろ」
『じゃあ精一杯、尺を伸ばして呼吸整えるニャ……』
咳払いを一つし、弁覩は地面に立った。
『奴等は娼館に居るニャよ、祐輔と一緒に潜入したニャ……そこまで案内するニャ!』
「俺入るの初めてだけど、何かマナーとかあるのかな?」
『「月狐」ちゃん、居るかい?って言えば出るニャ』
「正面突破かよ……」
軽口を叩く二人に緊張感は無かった。弁覩と無事に合流を果たせた事に安堵し、足を先に進めようとした時、鈴音の背後から複数の手が伸びた。服を乱暴に掴まれ、引き寄せられた少女の体は男の腕に捕らえられる。
鈴音が隣から急に消えて驚いた一人と一匹が背後を肩越しに窺うと、複数の男性が立っている。鈴音はその一員に羽交い締めにされており、被りを取り払われ、後ろから首筋を舐める男に眉を顰める。怒りに身を委ねて翻身し、殴り掛かろうとした幹太もまた路傍で談笑していた町人たちに取り押さえられた。
弁覩が唖然とその光景を見詰めていると、一人の女性が進み出て、脇から抱え上げる。不快感に顔を歪め、振り仰いだ先には艶紅を唇に差した妙齢の女性。弁覩を面前まで掲げると、恍惚とした笑みで観察している。
抵抗せず、毛を逆立てず、しかしいつ切りかかっても良いよう爪を出して女性の手の中にいた。弁覩は背後で幹太と鈴音の無事を確認してから、視線を前の女性に戻した。
「可愛い猫ちゃん、大丈夫だった?やっぱり、指名手配者なのね……山賊らしいわ、本当に。私は茅出。今日から私が家族になってあげるわ」
『勘違いしてるのはおミャーらだ、ボケ。ニャーを触って良いのは可愛い女の子と、……遺憾ながら知り合いの幹太だけニャ』
「あれ、俺の扱いが……」
数人の男によって、地面に全身を固定された幹太は、顔を上げるしか出来ない。鈴音の背面に貼り付いた男は、彼女の体の感触を楽しんでいるらしい。卑劣な行為を見咎めて、憤怒に抵抗するが、数人の力によって体はまったく地面から離れない。
鈴音も自身が抵抗すれば、幹太の身に危険が及ぶと感じて耐えている。
弁覩を抱える女性――茅出は、驚嘆に目を見開いたが、すぐに笑顔を取り繕った。
「だ、誰かしら、今の声。
兎も角、連れの女の子は死んだような顔をしてるし、奴隷なんでしょきっと。それを表通りでも引っ張り回して、猫まで虐げるんだから、悪党以外にあり得ないわね!」
弁覩の瞳が白い光を放つ。
『誰?ニャーしかいニャいだろ。萎れた女は興味ニャい、失せろニャ。
茅出……というのは偽名、本名は昼傘。見てくれは女に巧く偽装した男じゃニャいか。しかも……館、娼館、「月狐」が根城にしてる『散華』じゃニャいか』
弁覩が滔々と口から語り出した情報が、すべて自身に該当すると茅出は驚嘆した。
「なッ!?……そ、そう……なんて珍しい猫ちゃんなの、女装を見破られたのは初めてだわ。でもね、わ、私はこれでも館を営むほど財はあるのよ。猫ちゃんに裕福な生活が提供できるわ。だから、この危険な指名手配者から今すぐ離れましょ」
× × ×
茅出という女性――ではなく昼傘という男が目配せをすると、二人を取り押さえていた面子がうなずく。
幹太は険相のまま、横目で昼傘を見上げる。どうやら、裏で彼等は結託しているらしく、弁覩の情報が正しければ、町人に扮して「月狐」に協力しているのかもしれない。
『仕方ニャい……』
弁覩の総毛が波打ち、全身の模様が蠢く。昼傘はその変化を目にした瞬間、空気が火花を散らして爆ぜたような衝撃に襲われ、街路の端まで吹き飛んだ。竹の垣に背を打ち付けて気を失った彼に呆然とする男達の脇で、弁覩は本物の虎に見紛う体格まで成長した。黒い縞が爪先にまで行き渡り、体長が一丈半に近い白銀の虎と化す。
低く喉を鳴らし、牙を剥き出しに咆を上げて肉薄する猛獣の姿に男達が怯んだ。 獰猛な生物を前にし、束縛する力を緩めた隙を幹太は衝いて、腕を引き抜き、上体を回して背を上から押さえ付ける人間の頬に肘を叩き込んだ。痛みに上から離れた瞬間、幹太は両手を地面に付いて体を浮かすと、下半身を引き付けるように足で地面を蹴った。
眼下で拘束を抜け出した幹太を発見し、急いで再び上から襲い掛かる町人の群れは、再び吼えた弁覩の一声に体を固める。
立ち上がった幹太はそのまま前方に向かって走り、鈴音を捕らえる男を正面から拳で鼻面を殴り付けた。衝撃で反り身になった男の腕を、鈴音がそっと握ると――腕は音を立てて歪に曲がった。悲鳴を上げながら地面に仰臥する仲間に、男の輪が二歩、三歩と広がっていく。
鈴音を胸の内に掻き抱く幹太と、二人を周囲から守るよう立ち塞がる虎――弁覩の鋭い眼光に、一連の動きを見ていた傍観者たちでさえ息を飲む。先程まで可愛げがあった小さな猫が、今や人を殺せるほどの凶器を口や爪先から覗かせる魔獣に変容した。
倒れた男の股間を獣の足で踏み下ろし、白銀の虎は鼻を鳴らした。
『鈴音を舐めて良いのは……ニャーだけだ』
「それもどうかと思うけどな」
幹太がそう返すと、虎が苦笑する。獣には不可能な感情を顔で表現することを可能にしていた。何より、人の言葉で対話する虎の姿は、危険性よりも知性が見える。
鈴音は被りを直した。鮮紅色の角が外気に晒されるのを厭うてか、或いは――素性が周囲に露呈することを避けたいが為なのか。幹太はその頭を胸の内に寄せたまま、虎を挟んで男達を睨め上げた。
「確かに物静かだが、死相に見間違えるほどとは失礼な。一緒に生活してりゃ、この子がお前らを嫌がってるのくらい判るぜ!あと俺を卑猥だとか下劣だとか罵っておきながら、お前らあの女が言ってた内容と対して変わらなさそうだな、此所はまだ色街じゃねぇってのに、盛んだなおい」
男と町人の集団――否、昼傘が張り巡らせた手の者が一斉に退却を始める。まだ罰責が足りないと不服に目を険しくさせる弁覩を、横から鈴音が手を伸ばして撫でた。ごろごろと喉で音を立てて喜ぶ様子に、周囲の空気が弛緩する。
立ち上がった幹太は、弁覩に感謝しつつ……再び首を絞めにかかった。しかし、現在の弁覩の首は幹太の腕が回らぬほど巨大化していた。軽く手で払われてしまい、路傍まで転がって昼傘の横に倒れる。
『ニャーを触って良いのは……可愛い女の子だけニャ』
「あれ、さっき俺も触って良いって言ってなかった?」
「あはは、貴方も大変ですねぇ。大丈夫ですか?」
「ん?あんたは?」
横から倒れる幹太に手を差し伸べるのは、鼻眼鏡を掛け、羽織を肩に掛けた糸目の男。黒が基調ではあるが、毛先のみが白く染まった奇妙な髪色。凛々しい太い眉は目尻で下がっており、優男の印象がある。
腰を折って一礼するように幹太へ手を出していた。それを柔らかく断って立ち上がった幹太が再度問うと、男は苦笑した。
「実は、昨日あなた方が利用した飯屋の店主でして……」
「……まさか、被害請求に……」
「いえ、私が所望する返報の矛先は、あの「月狐」とやらに対してですよ。美味しくご飯を食べて頂いた上、きっちり勘定を済ませてくれたお客様を責める道理は無く、寧ろあんな場所で荒事を起こした無礼者ならぬ無礼な狐に、きっちりと躾をしてやらねばと」
自身の胸を張って叩く優男に、幹太は首を竦める。
「しっかりしてんな。でも、今は危険だからな、お気持ちだけ。……あんたが元兵士だったりしたら、話は別だけど」
「大丈夫、私はこう見えて魔導師ですよ。西国出身でしてね、ですが肩身が狭いものですよ、まったく。今日まで飯屋が存続できた、これだけで奇跡だというのにうちの商売場を汚すなんて許せません」
「魔導師……って、あれか?火を吹いたり、人を食ったりするあの?」
「それ魔物ですよ。確かに火を吹く魔法はあれど、人を食うなんて魔導師の文化にはありません」
幹太の知識に大袈裟に大きく首を横へ振る。
魔導師や呪術師――東国では魔法や呪術すら珍妙な技と形容されるほど、武術の大国にはそれらに通ずる者も少ない。幹太としても、魔導師に出会うのは初めてだった。ガフマンも使用するが、幹太はそれを目にした事も無い。
仁那とガフマンが欠けた面子で、弁覩と鈴音、合流すれば祐輔が強力な矛となる。だが重ねて戦力をより増強する人材が目の前にあって、看過する手立ては無い。
幹太は自分を支えようとして役目を果たさず所在なさげにしていた優男の手を握った。握手であるとすぐに察して、幹太の手を握り返す。
「そいじゃ――俺は幹太、宜しくな」
「私は昆旦――というのは偽名で、バルダと申します。お好きな方でお呼び下さい。こちらこそ、宜しくお願いします」
「んじゃ、昆旦で」
丁寧に自己紹介する昆旦と笑い合う。
鈴音を背に乗せて待っていた弁覩の瞳がまた銀の輝きを帯びていたが、やがて瞼を閉じると消えた。全員を背に載せると、その巨体を躍動させて路地を風となって走り抜けた。
口にはいつの間にか、失神した昼傘を咥えている。牙を立てぬように上手く運んでいた。
「す、すごい速度ですね!」
「これはまだ、本気じゃねぇけどな……。取り敢えず、いっちょ狐の尻尾に火でも付けてやるか!」
アクセスして頂き、誠に有り難うございます。
外出したら驚きましたね、最近の気温……サウナの脱衣場並みでした。外で蒸されてる感じです。夏を楽しんでおられる方も、熱中症には注意して下さい。
次回も宜しくお願い致します。




