キスリート襲撃戦(1)/あの宣誓を果たしに
東国の南部にある平野――鴫原。
普段は長閑な土地であり、農夫が放牧などの場所として利用する万人が親しく自然界に接する空間は、今は凄惨な戦場と化していた。山々に囲まれた地勢もあり、砦を築いて互いに牽制し、時に夜襲を仕掛ける。昼夜問わず、敵意が交錯するそこには常に悪臭が漂う。
この世の地獄絵図の様相を呈する戦地、そこでは今日も異なる主張を掲げた者が武力を以て、他を制する手段による殺し合いが始まっていた。開戦の狼煙は、鴫原の西と東に建てられた木組みの要塞から火を吹く大砲の硝煙。
銃火を合図に駆け出す双方は、躊躇いなく敵に刃を振るい、拳を振るい、あらゆる武器で敵を圧する。積み重なる死屍を踏み、その上で火花を散らす様は人の道を外れた悪魔へと、人間を変貌させるものだった。
どちらも傲慢に退かず、来る筈の無い沈黙を待ち、敵味方を隔てず数をいたずらに減らす。いや、逃げようとした者もいた。だが、背を見せれば血飛沫の上がる前触れ。要塞へと無事に生還するのは人を捨てた修羅のみ。後に己の所業を顧みても、違和感すら感じないほど奈落へと堕ちた状態である。
そんな戦争の真っ只中を、中途半端な刃渡りの長剣を片手に猛進する存在。滾る血潮に染められたような赤髪赤髭の巨漢。どちらにも味方せず、ただ接敵してきた者を殴打し、武器をへし折って鴫原を縦断する。
その足が目指すのは、東国の首都だ。この殺し合いを是とし、さらなる混乱を呼ばんと国の騒動を座視する悪徳の総本山がある伏魔殿。
国の動乱を鎮めんと志を高く持つ男は、敵国出身であるにも拘わらず、行動に迷いは無かった。それは物語の始まり――いつしか伝説になるであろう勇者のような存在による序章の描写になる一つだと予測できる。
しかし、異様なのは彼が二人の人間を伴っていること。山賤と揶揄されても仕方ない、山刀と鉈に雑嚢のみを携えた男性と少女だ。
「さあ、往かん!狩人、魔娘よ、必ず生き延びるぞ!」
「もっと安全な道、あった筈だよな!?」
頭上を擦過する矢に半分泣き面になりながら、不満を訴える男性に対し、哄笑するのみでまともな返事がない。
別に彼が能天気なわけではない。鴫原を迂回して山伝いに行けば、確かに乱戦は回避できるやもしれない。しかし、そこにどんな伏兵が潜んでいるかは想像が付かないのだ。伏兵を務める者は、表立って戦地で勲を上げる者よりも奇抜で群を抜く戦力を兼ね備えた人物ばかり。そんな地雷原のごとき場所を二人を守りながら進むのは困難だからである。
ふと、赤い巨漢が足を止めて、西の方角へと視線を投げる。事も無げに全方位から接近してくる兵を薙ぎ倒しながら、それでも遥か遠い山巓よりも向こう側を見詰めていた。
「……どうやら坊主の方も始まったらしいな、こりゃあ、うかうかしてられんわい」
赤い無精髭を撫でながら目を険しくさせる。きっと故郷の中枢で、かつて冒険者の後輩として育てた少年が、遂に目的の相手との再会を果たしたのだと確信した。
「良いから走ろうぜ、なぁ!?スズネと俺の後頭部をさっきから矢が掠めてる気がすんだけど!?里に返しやがれ!」
「んな事言ってもなぁ、娘がお前さんを連れてくと言ったからだろう、文句言うな」
「こんな事なら山に捨てときゃ良かった!なあ、スズネ?」
「カンタ、ごめん……私が贅沢を言ったあまりに」
「謝るな、お前は何も悪くない。スズネの為なら、俺は国だって壊滅させてやる。本当だよ、……九割くらい」
「もうちっと自信がありゃあ、様になったんだがな。ちんたらしておらんで、行くぞ狩人!」
「おっさんが止まったからだろうが……ひぃ!」
また後頭部を風で撫でながら過った矢に身を竦める男性を引っ張り、一党は戦場を駆け抜ける。
× × ×
西国――首都キスリート。
町を防護する高い壁の周りに、平常時よりも増員された兵士が列を作り構えていた。全員が鈍く光る甲冑を身に付け、隊列を崩さず維持する。その身を冷たく包む雪よりもさらに体を凍らせるのは、これから来訪する未知の敵。
予備知識は皆無。氣術師などという謎の技を使う集団に混乱と犠牲者は必至。どういった物かを知る時間と余裕があまりにも無かった。同じ氣術師である梟ユウタと少年マコトからの教えも同様の始末。
町内には外出禁止令が出され、静けさに包まれた首都は完全に無人の町――これから戦場となって蹂躙されるであろう舞台に相応しい静謐の世界を防壁の中に内包していた。
冒険者協会の支部があるため、王の命令により急遽臨戦態勢を整え、迎撃に町の各所に配置された冒険者達。
恐怖に冷える体温とは裏腹に、汗が滲んで肌着が吸い付く。呼気が異様に白く濃く空気に浮かび上がるのは、感覚と違って戦の臭いに血が沸騰している。兵士は思考を掻き乱す静けさに狂ってしまいそうだった。
そんな彼等は前方――あらゆる旅人や商人の為に平原を切り裂いて作られた街道の彼方に蠢く黒い影を発見した。広い道幅を埋め尽くし、進軍するのは間違いなく敵だと知覚する。
同時に、彼等を中心に発生したかのような突風に全員が数歩退いた。流れてきた空気に香るのは生臭さ、戦場では嗅ぎ慣れた血臭だ。
戦槍を半円状に展開し、入口を封鎖する陣形を立てた。その奥では震える手に抜剣を握り締めた兵士による最後の砦が急造される。戦う前から予想される明確な劣勢、それをわずかにでも覆そうと、たとえ自分が蛮勇に命を無駄にしていると判っていても、故郷と忠誠を誓った王を守る為に武器を手放さない。
そんな気概を見せ、戦闘に臨もうとする兵士は次の光景にすべてを諦めた。
黒い陣の人影、その向こう側から急接近する巨大な影。聴こえるのはまるで犀が地面を踏み締める音、それが潮騒の如く連なって地面を揺るがす地響きとなって迫り来る。正体を見極めんと目を凝らした時、絶望という感情を懐かせる景色に呆れ笑いを溢した。
どれも体躯が二丈を上回る魔物ばかり。血に飢えて、唾液を撒き散らして獲物を捉えた興奮に目は血走っている。昂る食と殺戮の欲望を抑えられず、本能のまま足を早く前に駆動させた兵器。敵によって我を忘れ、血肉を求めた獣だった。
戦きに膝を屈して、組んだ手を空に挙げて神に祈る者が続出した。武器を手放し、後は己の冥福ばかりを想う惨状。完全に戦意喪失の守衛達に魔物は牙を剥いた。
到着してすぐ、槍を持っていた兵たちが肉片となってあたりの新雪を汚した。押し潰され、食い千切られ、原形を留める人間などいない。
兵を殺した魔物は、そのまま門を突き破ってさらに、その渇きを潤すべく町内を走った。対峙するは冒険者、果敢にその魔物を一体ずつ処理していく。首都に集結するだけあり、強者揃いである故に巨大な魔物に怖じ気付くことなく戦った。
王宮に真っ直ぐ繋ぐ中央の街路。
そこを悠々と隊列を組んで、黒衣の武装集団が進む。王宮を守る兵士に向かって、急がずにゆっくりと刀や鎌を手に取る。
鬨の声を上げ、進む兵と冒険者に集団が正面から衝突する。町中に響き渡る金属音と悲鳴と雄叫び。神聖な土地として、信仰の集う場だった筈の首都の地面や壁が赤く彩られていく。
苛烈な戦端の開かれた場所を通過し、王宮へと近付く百人以上の黒衣。兵と冒険者の包囲網を潜り抜けた者が歩き続け、十数分後には階段を上った。
バルコニーに居た三人は、随分と近くまで来た敵を数えていた。王女の下へと、すぐに近衛が集合して彼女を安全な場所へと連行する。当然だ、一国の王女を無防備に敵前に晒すいい愚挙があるものか。
去り際に手を振る挨拶に、ユウタとマコトは深く黙礼した。結果によっては、もう会えないかもしれない。その不安を面には出さず、二人は王宮の中を走る。
「ユウタ、どうする!?」
「敵はすぐそこだ。マコト、杖を届けてくれ、僕はもう入口に迫ってる本隊を叩く!」
「遅くなったら?」
「……僕が死ぬ」
「判った、即行でやってやる!」
二人は互いに別の角を曲がって別れた。ユウタは王宮入口を目指し、マコトの足先は部屋へ。まだ首都の関門を突破されて三〇分ほどしか経たない今で、もう中心地を襲われている。何と手際の良さ――これが戦に慣れた矛剴の手練。
マコトは自分もその一員であった過去があるのだと皮肉に笑い、今は目的の物を取りに走る。それが欠けると、ユウタは全力を発揮できない。彼は王宮に侵入した不逞の輩を滅ぼすべく、小太刀の一振りのみで戦う筈だ。
何としても、この場所を守り抜きたい。ユウタが敵に確実に勝つ確率を少しでも上げる為に、今はあの杖が必要だ。
ユウタと別れて数分、廊下の先では戦闘が開始されていた。三叉路の中心で、一人を守るべく四人の赤い甲冑の騎士が必死に槍で突いている。それを全方位から跳躍して、返り血に染まった黒衣の裾を靡かせて応戦する<印>の構成員。
マコトは足を止めて、別の道を探そうとしたが、すぐに彼等を助けに向かう。見知らぬ顔なら、まだ断って見捨てられただろう。だが、目の前に居たのは自分達を城に匿ってくれた恩人である。
ニーナを護衛する近衛四人、窮地に苦しむ彼等を攻める敵に向かって、マコトは半身だけを見せるように立ち、片手を水平に上げて指先を翳す。
「氣巧法――氣巧砲・射手座の型!!」
轟音が空間を猛打し、震撼する空気に振り返った黒衣が一斉に吹き飛んだ。強烈な威力に脚や腕を、または頭部を半壊させる者まで現れた。指先から発射された巨大な氣の弾丸は、マコトの繊細な制御によって黒衣だけを仕留めるように軌道を屈折させて進んだ。
突然の現象に驚倒する近衛の傍に、マコトが駆け寄る。ニーナを一瞥し、彼等を見上げた。疲労の色はない、まだ戦える人間の瞳だった。
「無事だったか!」
「近衛の皆こそ!」
合流の安堵に笑う面々。呆気なく門を破られ、町を荒らされ、今にも命を狙う敵の殺意に刈り取られそうな状況下で仲間の生存が判り、一先ずの安心を得た。
だが、マコトはすぐに目的を思い出して全員に叫ぶ。
「手伝ってくれ、ユウタの杖を取りに行きたい!」
「姫を守るので手一杯なんだぞ!?」
「オレが加われば粗方凌げる……と思う。それに、ユウタに杖を届けること、それはきっと王宮に来た輩を全員掃除できる」
マコトの要望に渋面を作る。姫に危害を加える敵を一掃できるなら、是非もないことだが、その途中で何度襲撃を受け、そして無事に辿り着いてさらにユウタに届けられるか。懸案はただその一点に尽きる。
暫し少年と赤い甲冑の睨み合いが続く中で、沈黙を破ったのは少女の声音だった。
「行きましょう、ユウタ様の杖を回収しに」
「姫、しかし……」
「私の事は二の次で構いません。今は、この国を守る兵士に戻り、この現状を打破する一手を完成させる道具を拾いに向かいましょう!」
ニーナの言葉に異論はなく、頑な意思を感じさせる護衛対象に奮い立たされる。今はこの暴虐を止め、一刻も早い平和の奪還を為さなくては。
マコトを加えたニーナと近衛の一座が廊下を疾走する。目の前に現れる敵を、卓越した氣巧法で速やかに撃退した。近衛もこの頼もしい少年に負けじと、彼の討ち損じたものを残さず槍で止めを刺す。完成しつつある四人と一人の連携を見守りながら、ニーナは希望に拳を握った。
予断も許されない敵の脅威の中で、それらをすべて薙ぎ払える戦力は存在している。町でも、魔物と武装集団を相手に奮闘する冒険者や兵士、王宮内にはあの梟と「白き魔女」が居るのだから。国に畏れられた二人も、今や協力関係にあるのであれば、氣術師であろうと反乱軍であろうと勝てるという予感があった。
恐らくニーナだけではない、近衛も信じている。あの奇妙な二人ならば、と期待してしまう。
「うわっ、来た!」
左右の角から躍り出た<印>に挟み撃ちとなった時、マコトは二挺の銃を抜き放って炸裂させる。銃火に照らされた人影が廊下の壁に乱舞し、その中の一つ、また一つが床に倒れ伏していった。毎秒約二〇発の連射可能な短機関銃、漆黒の拳銃を媒体とした氣巧砲を併用した攻撃は襲い掛かった者を倒したが、その後ろに控えていた増援を前にして弾が切れた。
近衛がニーナとマコトを背に立ち、彼等と刃を交わす。姫を守る為に練り上げられた赤い騎士の技は、しかし武術の手練れを前にしてそう長くは続かない。せいぜい五合、十合がやっとである。
しかし、それでもマコトが短機関銃の弾倉を入れ換える充分な時間が稼げる。――否、元より充填に時間は然程要することはなかった。
空の銃を近衛の隊列の隙間から出し、銃爪を引き絞った。すると、弾丸を切らした筈の銃身が喧しい音を立てて幾度も衝撃に震える。
「氣巧法――氣巧弾・機関銃式」
近衛の首筋に刃を閃かせた黒衣に風穴を作り、敵を一瞬で一掃する銃の効果に、ニーナは思わず拍手する。戦闘の最中にこんな反応を見せる姫に、思わずマコトは睨んでしまったが、本人には全く通じていない。
疲労混じりの嘆息を吐いて足を再び進める。
「あと少しで部屋に着く!」
「して、ユウタは何処に居る?」
「ユウタは……」
× × ×
王宮入口の空間。
倒壊した柱と、その下に積み重なる<印>や王直属騎士団の死者。突き立てられた武器たちが列座する中、その場へと歩み入る少数の人間。その衣服には戦闘の痕跡が見られず、雪の降りた場所に染みが残る程度だった。
一行の中に居た黒髪の女性は、死体の山が幾つも形成された王宮の出迎えに、思わず感嘆の声を上げる。首都を護衛する任務を請け負うのは、どれも貴族の出身などで、荒事には慣れない者が多いと予測しての人員だったが、存外実力の高い者ばかりだったらしく、総員が相討ちとなっていた。
足許の死体を蹴って笑う女性に、一行の中でも幼い金髪の少女が顔を顰める。この命を弄ぶような人間に蹴られた彼が生きていたから、一体どのような反応を見せたか、想像に難くない死者の思いを推し量って少女は視線を鋭くする。
その傍で黙々と歩を進めている二人の男は、少女の意を察した。この子の前では、せめて見苦しい行為は控えたい。特に、この女性の醜い行いだけは。
「ミヨリ、止めておけ」
「何故、敵の死体なんて……いえ、済みません。でも、【冒険者殺し】をやっていた時でも、こんな数を仕留めた事はないので」
紅潮した顔で興奮に荒々しく鼻息をつくミヨリを、二人は呆れ顔で見た。
「目的を忘れるな、我々は国を獲りに来たのだ」
「ええ、勿論忘れてなんていませんよ……?」
何かの気配を感知し、全員の意識が一つの方向に集中した。氣術師であるが故に、微かな自然の異変にも機敏に対応できるよう訓練されている。無論、それが害悪であった場合、迅速に処理が行える力も育む。
大気を流れる氣の変化に心を澄まし、感覚を擽るモノの解明に神経を傾注する。騎士団の増援か、または予め雇っていた傭兵か冒険者、或いは……
携帯した武器に手を伸ばす二人の男、顔だけをそちらに向けるミヨリ。少女は困惑に男の背に隠れて、様子を窺うだけだった。何が現れるか、警戒と微かな期待を膨らませる男は前を見据える。
柱の影から現れたのは少年である。
琥珀色の瞳に黒装束、小太刀を腰に佩いた姿を見たミヨリが、怒りに顔を赤くする。初対面でありながら散々な目に遭わせてくれた相手。確かにあの時の立場上、対立は避けられなかったが仕打ちはあまりにも酷かった。
感情に任せ、前に進み出る。いつかの返礼にと腰の刺剣を引き抜いた。先端まで鋭利に研ぎ上げた得物は殺意の象徴、突けば確実に殺せるという示威。
「お久し振りです、……ミヨリさん」
「名前を憶えていて嬉しいよ。でもね、お姉さん少し苦い思い出があったから……。少しだけじっとしていてくれない?」
「済みません、それは聞けません」
少年が首を振り、二人の男へと向き直る。その時、ミヨリは血管が切れる感覚がした。自分は端から眼中にない、という彼の態度に堪えきれなくなる。
復讐の為に間合いを詰める第一歩を踏み出す、そこに男の制止すら聞かず、冷静さを欠いたミヨリの咆哮が高い天井と柱の間を谺する。刺剣を振りかざし、少年に向けて直線に向かう。
少年は動かずに待っていた。明らかに余裕を見せた構えに、一切の疑問も懐かず切っ先を突き出した。この時、彼女がもう少し慎重に敵の真意を探る思慮が残っていたならば、再び屈辱を味わうことはなかっただろう。
そんなミヨリの浅薄さ、そこを衝く奇襲があるとは露知らず、渾身の刺突を繰り出した。
ミヨリの体が中空に舞う。地面を鎚で強打した鈍い音と共に、喀血を振り撒いて回転しながら支柱の一本に衝突して死体の上に草臥れる。刺剣は主を残して床に突き刺さった。
ミヨリが少年に攻撃を放った立ち位置に、別の人物が佇んでいた。振り抜いた腕を引き戻し、息を吐いて残心する。白髪の中に一対の黒い獣耳を動かし、少年と同色の瞳で男を見る。
「ナイスだよ、ムスビ。君にしてはよくやった」
「拳の矛先を間違えたみたいね」
「僕は毎回くらってる気がするから遠慮するよ」
「毎回この拳を受けられるのは、あんたの特権なのよ?遠慮しなくて良いのに」
「その特権、放棄出来ないのかな?」
「無理ね、絶対に」
「ああ、神よ……どうか僕に慈悲を」
「普段は神とか信仰しないくせに、都合の良い奴ね、あんた」
ミヨリを急襲した打撃の出所であるムスビと話していた少年は、二人の男と金髪の少女に歩み寄る。足音はしない、死体と口を閉じた面子の沈黙を守るように少年は床を草履で擦らずに動く。
攻撃の届かない一〇メートルの間合いで足を止め、三人組を鋭い眼差しで射る。念願の出会い、これに込める感情は極端だった。男も少年も歓喜し、そしてこれを即座に殺意に変換していく。わかっていた事である、長らく離れていたとしても、次の機会にはもう余計なものは省略し、すぐに本題に移すと考えていた。
あの時の宣誓通り、復讐を遂行する為に。
「約束通り、殺しに来たよゼーダ、ビューダ」
「そうだな……会いたかったよ、ユウタ」
同郷の仲――否、あの森の中に紛れた氣術師の再会がここに果たされた。
アクセスして戴き、誠に有り難うございます。
次回は念願の戦いになります。
双子の守護者ゼーダ&ビューダ
VS
ユウタ&ムスビ
次回も宜しくお願い致します。




