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森出身で世間知らずな少年の世界革命  作者: スタミナ0
第一部【裏切り者の足跡を辿れ】
1/302

プロローグ

プロローグです。



「先生、お話して下さい」


 普段は表情の希薄な少年が言う。無邪気な微笑みを浮かべて、その目は期待に輝いていた。平生寡黙で大人びている少年が、唯一年相応の一面を見せる時間だ。

 囲炉裏の火で鍋に投じた具材を煮込んでいた老人――先生は振り返らずに、自分の隣の床を軽く叩いて招く。

 少年はすぐに横へと滑り込むように座った。先生の話を聞くのが待ちきれないとばかりに、彼へと身を乗り出す。先生は音もなく、湯の入った椀を少年の前に置いた。


「しかし、話は完結した筈だったが」


「では、最初からお願いします」


「この話がそんなに好きか?」


「はい!」


 横目で見た少年の姿がふと、ある人物と重なって先生は目を伏せた。囲炉裏の火が揺れる度に、その双眸が光を灯したように揺らめく。涼風が窓より吹き抜ける。此所はいつまで経っても変わらない。外から聞こえる鳥の囀りに耳を傾けながら、先生は目を閉じる。この静かに心を落ち着かせる環境も好きだった。


「先生?」


「いや、何でもない」


 先生は気を取り直して、自分用に一杯注いだ碗の湯を一口だけ含んで舌を湿らせると、記憶の糸を手繰った。聞かせた話は、もうこれで何回目になるだろうか。飽きもせず、繰り返し話聞かせているのに、まるで鮮烈な衝撃を受けたかのように少年の反応は豊かだった。語り手としても、これには語り甲斐がある。

 単衣の袖を絞っていた襷を解いて、少年の方へと向き直る。


「昔むかし、ある所に一人の少年が居た。森の中に暮らす、奇妙な少年の話だ――」








次から本編です。

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