(4) 俺だって無実
『これはきっとあれだ。謎の翻訳パワーが固有名詞にだけ適用されないヤツだな』
「分かりません。どういうことなのでしょうか?」
『まあ、そういうものだと割りきるよりないってことだよ、パグ子さん』
「むぅ、私の呼称はパグ子で決まりなのですね、ニート様」
『むぅ、ニート様かぁ。けっこう心に刺さる呼ばれ方だな』
「はッ。もしかして私、大聖霊様にとても失礼なことを……」
『もういいよそれで。ニートなのは本当だし。それよりもさっきの話』
「はい」
『死ぬとか、獄舎とか、どういうことだよ? パグ子さん、もしかして死刑になるほど悪いことしたんか?』
「ぐすん……。私がこうなったのは、すべては大聖霊様の、ニート様のせいではありませんか」
『ほへ、俺のせい? 何でさ?』
「とぼけないでください! ニート様が私なんかに、私なんかの掌に、救世の紋章など大それたものを授けたからですよ」
『パグ子さんの掌に紋章? 何なのよそれ?』
「だから救世の紋章ですよ。最強にして至高なる大聖霊様がお授けになるという紋章ですよ。千年にただひとりの聖女様の印ですよ。『地上に悪徳栄え大愚の民迷うとき現れ、正道を照らしたもう』っていう聖女様の、その紋章じゃないですか、これは」
『なんか知らんけど、パグ子さんって千年にひとりのアイドルみたいな存在なのか……』
「ぐす、ぐす、そんなすごい大聖霊様なのに……。ニート様は、ニート様はなんで私みたいな平凡な村娘にこんな紋章を……。う、うぅ、うわーん」
『だから俺は知らんがな。頼むから泣かないでくれよぅ……』