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樹海

異世界転生もの描きたかったのいつの間にかサバイバルに…

何故だ…

とりあえず仮拠点に帰還し今後の行動を考える。

出口を見つけたことで行動に選択肢ができた。

今まで先の見えなかったこのサバイバル生活に『前進』が見えた初めてのは初めてのことだった。


「いいかお前。これから言う事をしっかり守るんだぞ」

「…?」

洞窟内の探索はこの二か月でほとんど完了している。

出口発見後、即外の探索に出てもよかった。

だが仮拠点に戻ってきたのは、そこで首をかしげてる彼女に言い含めなければならないことがあったからだ。

「まず、俺から絶対に離れるな。そうしないと安全は保障できない」

「…ん(コクコク)」

いつものように『YES』しか返さない彼女に順にここから出た後のことを話しておく。

魔物にあった場合。

それが俺の手に負えなかった場合やそうでない場合。

人に会った場合。

友好的な場合や好戦的な場合。

彼女の立場を説明することになった時にどう答えるのか。

(少なくとも地球なら彼女の恰好は俺が捕まるな…)

その瞬間になった際、口頭では対処できない緊急時の行動。

他者とあった時の『口裏の合わせ方』。

そういった部分を彼女に丁寧に教えた。

彼女が厄ネタであることは俺の中で確定事項になっている。

この世界での自分の立場もわからん状態で問題はできる限り起こしたくない。


数時間かけて彼女に教え、それを確認していた時。

俺は彼女から『YES』以外の言葉を聞くことになった。

「私の名前…お前じゃ…ない」

「はっ?」

俺はこいつは自己主張がほとんどない奴だと思っていた。

この二か月、彼女からは俺の言葉の一切を首肯し追随してきた。

だから名前については暗黙の了解だと思っていたのに…

「いや、いいだろ。お前しかいないし」

「外…出るなら、呼び方…必要」

「ああ、そういう…」

こいつは自己主張したわけではない。

彼女は必要だと思った事柄を俺がしなかったから疑問に思ったのだ。


最初はそんなことはなかった。

俺自身、後から自分の発言を訂正することなんてよくあった。

はじめてのサバイバル。

失敗なんて成功の数十倍あった。

その中で彼女は俺の失敗の被害を一緒にかぶり続けてきた。


だが彼女はこの二か月で明らかに成長していた。

それは今まで感じてはいた。

今回の名前呼び云々はきっかけに過ぎない。

(そうか…俺は彼女を「お荷物」だと思っていたのか…)

自分がいないと生きていけないと彼女はいった。

俺は彼女を二か月、介護してきた。

大切に、壊さないように扱ってきた。


だが、当然彼女はただの人形ではなかった。

「これからは旅の仲間、ってことになるのかな…」

「?」

「何でもない。悪い、俺が間違ってたよ。もう一回一からさっき言ったことを説明するから聞いてくれるか?」

「え…?私、覚えたよ?どうして…」

「そしてお前の意見を聞かせろ。間違ってることも多いと思うしな。肯定でも、否定でも何でもいい。」


「一緒に考えるぞ。ユリア。」


「え…?あっ……」

俺は自分一人で生きているつもりだった。

だが、彼女は成長していた。

二か月前では考えられなかったことだが、俺は彼女に依存されているようで彼女に依存していたのだ。

何かを始める第一歩。

その動力を『これをしないと彼女が死ぬ』と、割り切ってきた。


俺は自分を恥じた。

彼女が厄介な存在であることもわかっている。

(それがどうした)

関わらないこと、最低限の信頼関係を持つこと、それしか持たないことに注視していた。

(最善策を選んでる気だったんだけどな…)

そうだ

『生きるために彼女を利用すればいいんだ』

(そんなことにも気が付かなかったのか、二カ月も)

いや、二カ月ともに過ごし、最低限の信頼関係がなければ見えないことでもあった。

自分が生きるために、彼女を積極的に『利用』すればいいんだ。


「なあ、もし人間に会った時、の立場。これは少し不自然だと思うか?」

「は、はい。そう言ったときはその言葉回しより…」


結局洗いなおしてさらに多くの時間がかかったけど。

ほとんどの対応策は訂正の必要はなかったけど。

彼女は肯定ばかりしているのは変わらなかったけど。

この時、初めて俺は彼女を『仲間』だと思えた。


「っと、そろそろ飯にしようか」

「はい…タクハ」



小さな『情』から起こった『利用するための友情』は歪ではあった。

が、彼らにとっては初めての『確かなつながり』であった。


**********


相談の結果、すぐにも外の探索を行うことになった。

もともと『位相空間』のおかげで荷物、その気になれば拠点ごと簡単に持ち運ぶことができる。

地上が世紀末な、荒廃し毒の蔓延する死の大気出ないことは確認している。

身一つで地上に出ても問題ないはずだ。

彼女に教えることさえ教えれば立ち止まっている暇はない。


そうして久々に見た地上は…


(運がいいのか悪いのか…)

少なくとも、人里は近くにはないことは分かった。


「高い木、いっぱい…」

「だな。まじかぁ…」


今まで過ごしてきた洞窟が縦横にひろい三次元構造の洞窟だったことはわかっていた。

そして、洞窟というからには山とかが周りにあるものだと思っていた。


だが、今頭上にあるのは木。

50mを超える木々が日の光をさえぎるほど多く密集してそびえたっている。

そして四方見ても景色は一切変わらない。

木々は葉も幹も黒い。

つまりは『樹海』


おそらくこの木々は『黒龍個体』と同じく、黒龍の影響で変異したものだろう。

つまり、この樹海は今までいた洞窟を苗床にして成長したもの。


ただ、今はそんなことはどうでもよかった。

「あぁ…」

そんなことは気にかからなかった。

この異世界生活の開始から、前の『機界』から、見ることができなかったのだ。


『空』を


『機界』では荒廃した世界で黒い灰が空を覆っていた。

三年間、あの地球での最後の日から空をみたことはなかった。

頬をつたう液体は、あの日みた思い出をまた見ることができた感慨なのか。

(くそったれ)

彼女に見られないうちにそれを拭う。

捨てたと思っていた。

あの日に帰りたいと願ったから、そのためには何でもしようとしたんだ。

もうあとには戻れない。

この『空』は木々に隠れて少ししか見えなくても、自分がすべきことを再確認させてくれる。


頭を切り替えて思考を始める。

「洞窟を抜けたと思ったのにな。迷宮第二層、ってところか…」

樹海の下に洞窟がある、というか、洞窟の上に樹海がある、ということだろう。

つまり『この樹海は少なくとも洞窟の横軸分の広さがある』ということだ。

まったくもって気が遠くなる。


だが樹海、その環境はサバイバルをしていくうえで砂漠や荒野に出されるよりはまだましだ。


「不幸中の災いって感じだな…」

木々の加工、目印の設置、拠点の製作、生態系の把握、そしてマッピング。


やることは洞窟とは変わらない。

むしろましだ。

だが

「や、やる気でねぇ…」


ユリアはユリアで黒い木とつついている。

黒いのが珍しいのか、そもそも木が珍しいのかは知らん。

こいつは持っている記憶がおかしい時がある。

封印されていたにしては知識を持っていなさすぎる。

まるで生まれたてのよう。

俺の言ったことをすぐに学習し成長している。

ただの無知では説明できない状況。

「ほんと、面倒なもん押し付けてくれたな、あの黒トカゲ」


どちらにしろ、すぐにでも探索を開始することになった。


ほとんどは洞窟の時と変化はない。

ただ、寝れる場所を確保できていること、木々の加工などの試行ができる点は違うが。


「んっ…うっし!ユリア!行くぞ!」

大鎌で洞窟への入り口周りの木々や地面に遠くからでもわかるように傷をつけながら彼女に近づく。

「…っ!はい…!」



地上に出た日から、夜は仮拠点に返りながらも地上に第二拠点の設営を進めていた。

地上は危険ということでツリーハウスにしたいのだが、いかんせん木が高すぎる。

支えにする枝葉が出ているのが地上と数十m離れている拠点は現実的ではないとして普通に小屋を建てることも満足にはできないだろう。

黒い木は堅かったが鎌を使ってきれないほどではなかったが、いかんせん俺達には建築技術はない。

俺の知識層はテレビのサバイバル企画ものぐらいの知識しかないのだ。

それでも地下の生活から今に至るまで俺を支えてくれているのだからバカにできないのだが。

基礎を作る本格的な家はできないと判断し、小屋の制作を行いだした。


「地上のほうが安全確保が難しいな…」

地下のように敵の来る方向が一定ではないのが問題だ。

テントを作ることもできない。

いろいろ前の世界から持ってきたが、機械の発達した世界だったため布は持ち込めていない。

薪をして、代わりに番をすることも彼女がいればできるのだが、あれは『知っている世界では有効だった野営』であって今ここで有効とは限らない。


そうして、現実との差異のすり合わせ、検証を少しずつ行っていた。


推測通り小動物を発見できたため収穫はあった。

木々の最高高度、その周辺に何かが生息しているのはわかっているが彼らはこちらを機にかけていることもないため、まだ手出しはできない。

最後の食料源だ。

水源の確保もできればよかったのだがそちらはまだ見つかっていない。


そうして第二拠点製作が少し進んだころ、第一拠点(地下拠点)でユリアと俺は拠点移住について相談していた。

「まだまだかかりそうだな…」

「うん…。最低でもあと数週間…は、かかる。地上の拠点確保、難しい…」

「あーーーまたこの洞窟の生態系が崩れないとも限らないし、はやいとこ拠点は確保したいのにな」

「しょうが…ない」

焦っても仕方ないことはわかっているが、もどかしい。


『時間加速』で走れば案外すぐに人里にたどり着くんじゃないか?


そんなことは何度も考えたがそのたび頭を振ってそんな甘い考えを追い出す。

ここは創作の世界ではない。

ご都合主義も突然の覚醒ないのだ。

信じられるのは自分が積み重ねてきた実績に裏打ちされた技術、経験のみ。

一手のミスが即死につながる。

伸長すぎるくらいに行動するのだ。


「え…?」

「あ?」


揺れた。

この洞窟全体が揺れた。


いままでここで生活してきた中で初めての現象。

俺たちは顔を合わせるとすぐに立ち上がり、最大警戒で第一拠点を飛び出す。


地上への道すがら


生態系を崩しすぎないため、そしてサンドバッグ用にいつでも殺せる状態で放っておいた『黒龍個体』数体が溶けるように消滅しているのを目撃した。

いい加減主人公のチート能力を活躍させたい

誰だ主人公をこんな面倒な性格にした奴

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