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開演

よろしくお願いします。

薄暗いなかに水滴の音が響く。日に当たる場所から離れたこの場所にはおよそ日常では考えられない生き物が生息している。ゴブリンのような生き物、スライムのような生き物があたりを徘徊しつつ日々の生活をしているようだった。

だがこの日だけは違った。

静かな空間に突如大きな音が響き始める。紫電を伴って空間が歪曲するのが見て取れる。周りの生物たちも異変に気が付きその空間を凝視しながら気を引き締め、緊張感が走る。

その間にも空間の歪みと紫電の勢いと音はますます大きくなり、地面をえぐり、周りのものを吸い込みながらその勢いは臨界を超えた。

圧倒的エネルギーによって引き起こされた暴風は空間が急に元に戻ったことによる弊害だろう。砂煙の舞うその中から影が見えた瞬間、辺りの生物の緊張感がより強くなっていく。

そしてその煙がだんだん晴れてゆき、そこから姿を現したのは

「…転移できたのかな?」

挙動不審の少年の姿だった。


いざ降り立った空間はいかにもな洞窟内。周りにはゴブリンとかがいるのだろうか。

『グルルッ…!』

と、おもったらいた。ゴブリンだと思われる緑色の体表の亜人。なぜかこちらを過度に警戒?というか敵意を向けられているが俺には覚えがない、はずだ。

「まあ、とりあえず」

いつもどうり位相空間から使い慣れた大鎌を取り出す。明らかに向こうの警戒が強くなり、周囲の空気が重くなる。

足元から地面をこする音がし、向こうの緊張感が最高潮に達したのを見計らったのち、


時間操作で加速してダッシュで背を向けて駆け出した。


数分後


「はぁ…はぁ…もう大丈夫かな…」

別に体力は消耗していないが精神的に疲れた。

改めて見ると明らかに現実にはないような色の鉱物があり、ここが異世界なんだと実感させてくれる。

「…とりあえず落ち着ける場所を探そう。そうしたら地上にでる準備かな…」

向こうにいたころのテンプレな行動を脳の奥から引っ張り出して散策を開始する。

ここは小説の中ではないためレベル1でラスボスと道の角でぶつかってもおかしくない。

(そんなことになったら俺のほうが吹き飛ばされるというか微塵も残さずに消し飛ぶだろうな。)

くだらないことを考えながら前に注意を払いとりあえず落ち着ける空間を探す。

途中にスライムとかゴブリンとかいたけどそれらを足音で避けながら暗い中歩みを進めること数十分。

目の前の通路が少し赤く光っているのが確認できた。

大きな空洞のようだ。

だがその光はゆらゆらと揺らめいてかすかにだがうなり声と水鳴りが聞こえる。

(…ん~、明らかにこれは)

というわけで引き返そうと踵を返すがそちらから複数人の足音が聞こえてくる。

(囲まれた、か…)

次第に足音が大きくなってゆき、暗闇の中からゴブリンの集団が現れた。



この洞窟でゴブリンの集落の若頭として死んだ族長に代わり狩りのリーダーを引き受けて数が月が経つ。

この危険な洞窟では死が非常に身近に存在し、今まで族長が一年以上同じだったことはない。

俺たちより強力な個体がごまんといるため狩りは非常に慎重に、迅速に行われる。

しかしこの深さでは強力な魔法を使う人もいないし、この近くに眠っているらしい強力な何かにおびえているものが多くまだ安全な場所といえるかもしれない。

ここいらは食料になる魔物がいないためこうしてしばしば遠征に出ているというわけだ。

今日も少し上層に行き獣の魔物を狩っていままさに集落につこうとしていた。

明かりも見えてきて、みな安心したように気を緩めた。

その時、足元がなくなった。



「よっと、こんなところか」

おそらく狩りから帰ってきたのであろうゴブリンの集団を落とし穴的に位相空間に収納し終えた俺はそそくさとそこから離れる。

一応時間は止めてあるので彼らが死ぬことはないだろう。

彼らの持っていた食料を拝借したいところだがさすがに悪い。そこそこ離れたところで彼らを解放する。

彼らは周りの景色に驚いたのち、辺りを警戒していたがしばらくするとあきらめたようにまた集落へと帰ってゆく。

それを確認し、彼らのいた方向とは反対方向に歩き出す。

そこから丸一日、同じ様にガン逃げ一択を繰り返したが、おかしい。

「誘導されてる?」

ここがどんな形の洞窟なのかはわからないが先ほどから一定方向に道が偏っている。

気のせいかもしれない。

もし自分を誰かが誘導している可能性があるとしても俺にはそんな心当たりがない。何しろ先刻この世界に来たばかりだ。

さっきからゴブリンみたいな奴らを『逃げる』一択で避けてるだけで、誰も殺してないはずだ。

(だとしてもやることは変わらないよな)

万が一誰かが洞窟を誘導する形にしている、もしかしたら『そのように洞窟をリアルタイムで変形している』かもしれないのだ。進むには万全の準備をして然るべきだろう。

尚更1度拠点を軽く作って体制を立て直したいが思うような空間が存在しない。

そもそもここが相手の腹の中の可能性が出てきた時点で休憩、ましては寝ることなんて出来るはずもなく道なりに進んでいくことになる。


更に進むこと数時間。向こうもこちらが感づいたことを理解したのか誘導が雑になっている。分岐なしの一本道が続く。

(うへぇ...)

こちらからしたら嫌な予感が現実になった事がほぼ確定したので今すぐ引き返してやりたいが当然そんなことは許されていないだろう。

多分もう塞がれている。

(無理やり穴を開けて突破してもいいけどそんなことをすれば大量の魔物的な奴らと戦闘になるやもしれない)

俺は逃げ足、速さだけには自信があるしとりあえずその相手の顔を拝みに行こうと更に歩を進めた。


その数分後。

「…」

(ドラゴンだぁ…)

少し広めの周りに明るい鉱石がある、丁度戦闘するのに最適な空間にわかりやすい位テンプレなドラゴンがいた。

爛々とした眼からは刺すような目線がこちらに向けられている。

間違いなくこちらを待っていたのだろう。ただこいつからはそこまでの意思の強さを感じない。

つまり誘導してきた人物とは別個体。

そこまでのんびり考えていたが相手はそこまで待っていてはくれないらしい。

『グギャァァァァアア!!!』

咆哮が壁に反響し、狭い空間にぐわんぐわん響き耳がおかしくなりそうになる。

(もし俺が生身ならの話だけどな)

この世界に来てからもう何回も行った位相空間からの鎌を取り出しての時間加速。

あいつら曰く数10倍の加速だったこの能力。今は直接操作のため前より格段に制御が難しい。

暴走しない程度、数倍加速をする。

もちろんこれだけで凄まじいチートなのだが、相手もドラゴン。

大体の作品で強キャラを担当しているのは伊達ではないらしく後ろに回り込んだ俺を尾で薙ごうとしてくる。

それを鎌の持ち手部分で弾きつつ距離をとる。

ドラゴンの方はブレスの事前準備だろうか、口の中に火花が散るのが暗い洞窟内では簡単に確認出来た。

そんな溜め攻撃をわざわざ受けてやる気もないので再びの加速と鎌を棒高跳びのように利用してのハイジャンプで回避する。

周りを見渡すと俺が入ってきた入口すら塞がれていたようでこの空洞には逃げ道がない。

ほぼ間違いなくこいつを殺さないと空かないって事だろう。

(で、奴さんの目的は俺の調査か)

意図的にゴブリンの集団をぶつけてきたのもそうなのだろうが、それでも逃げに徹していた俺には業を煮やした事で今のデスマッチじみた状況が出来たのだろう。

「」

地面に降り立ったのち回避と受け流しを中心に思考する。

(今の状況、打開策がない…なら…!)

大きく鎌を振り相手にスタンを与えいったん距離をとる。

左手がわずかな機械音を立てながら駆動させたのち、内蔵された空間に入れてあった薬物を手を振り口に放り込む。

(使いたくは無かったけど、やっぱり使うことになるか...)

そう、嫌なことは

「自分じゃない誰かがやってくれる...か』

俺の意識は沈んでいった。


風切り音と共に血しぶきが舞う。

そこには飛んでいったドラゴンの首と鎌を振り終えた少年の姿。

さっきのオドオドした姿からは想像出来ないほど最適化された鎌の操術。数年かけて手に入れたことが想像出来る肉を斬る手際の良さ。


手元でクルクルと鎌を回転させ血を飛ばす。

『結局、こうなるのか...』

もう罪悪感、嫌悪感はない。

だってそう感じないようにしたのだから。

『全く、自分じゃない誰かがやってくれる、わけないのにな。全部俺だ。殺したのは、首を切ったのは俺だ。正気の時にそう認めたくないから別人格って思い込んでるだけでしかない。』

先の薬は人格変更ではなく感情の欠落を起こす薬物。

どうやら持ってきて正解だったらしい。

そんなことを考えていると空洞の一分が崩落、変形し道が出来た。

そしてそこから漏れ出すこれまでの魔物とは格が違う圧倒的なまでの覇気。


『...行くか』

招かれたのだ。この世界に来た直後にこうももてなされてはこちらもそろそろ堪忍袋の緒が切れる。

まだ俺は何もしてないはずだ。

『とりあえず、言い訳を聞かせて貰おうか』

鎌を地面に擦り付けギリギリと音を立てながら出来た道を進んでゆく。

(何とか、薬が効いてるうちに済ませたいな...)


『...』

『デケェ...』

先よりもっと広い空間。野球ドームとかに近いかそれ以上の空間に先程のドラゴンが塵に思えるほどの存在感をした黒竜がいた。

主人公は薬飲むと感情が欠落して戦えるようになります。

あと弊害で中二病が出ます。

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