表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

調査

我ながらいままでくどかったと反省

いままで無駄に長かったので今回バッサリカット

でも説明ばっかです


ここはシルヴィにある山脈の一つ。

切り立った山々に囲まれ、人里を見ることはない。

まだ標高はないため木々が散見するが、それはそこかしこに魔物が隠れ潜んでいることと同義である。

位置で言えば帝国中央都からも、亜人域からも離れたそれら勢力の区分がない無法地帯の一つだ。

最近、国のようなものを作り上げ領土に腰を据えるようになった亜人の影響で、シルヴィは大きく4区画に分かれている。

つまり、帝国中央都を中心した帝国、それ以外の人類国家による『人類領域』

亜人の頭領により平定された地域と、それらに類しない亜人らが跋扈する『亜人領域』

それらの境目、各陣営が侵略や防衛を繰り返す地域である『前線領域』

そしてそれ以外の地域、各陣営から見放された地域。人類と亜人の勢力図が描く陰陽の円の外である『外周域』

この区分わけが各大陸で、各地方で点々と何重にも発生しており、その中でも託羽がいる大陸は最大規模にして大激戦区。

もし勢力図を描くとしたら大きな陰陽魚の円と、その内部に、そして外部にある小規模な陰陽魚が、大陸に渡って描かれるだろう。

中でもこの大陸はその数が、規模が、そしてそれらの変遷度合が桁違い。

多くが死に、多くが生まれる輪廻の高速回転がなされている大陸だ。

この山脈地帯はその区分で言うなら前線よりの外周。

どちらの領土でもないし、各勢力の激突もないとされる場所。

どこにでもある未開の地の一つに過ぎない。

もし、他と違うことを挙げるとすれば一つ。

それは


理の激突がこの周辺で起きたということだけだ。


雑踏を彼の軍靴がかき分ける。

いつもなら張り詰めた音を響かせ、聞くものに緊張感を与えるその靴も整備されていない道が相手ではその働きはしていないようだ。

だが、それを抜きにしても歩を進める偉丈夫から感じられる威圧感はけして馬鹿にできるものではない。

ただ歩いているだけなのに、草木が彼のために頭を下げ、道を空けているかのようにも感じられる。

称える長い金髪も、それと対極的な碧眼、黒い軍服もそのほかのあらゆる要素が一般とは逸脱している。

ファンタジー世界であるシルヴィでもそれは変わらない。

視覚的に、精神的に自ら膝をつくことに一切の疑問を持たせないほどの容姿とカリスマ。

まさしく『英雄』という言葉に恥じない風格だった。

そして、この星でその称号を聞いた誰もが思い浮かび、彼を差す以外の用途で使うことすらためらう人物が彼であった。

しかし、それを知るものなら疑問を覚えるだろう。

彼はまぎれもなく最前線で剣を振るう『英雄』であるが、同時に帝国という千年単位で存続している人類最大国家の帝王であるが故だ。

中央都から離れた、しかも前線領域ですらないこんな辺境の山奥にいることはあり得ない。

ちょっと出かけてくる、なんて気軽さでほっつき歩いて運営できるほど小さくも軽くもないのだ。

この帝国は。


**********


「千年帝国…ねえ…」

その単語はどうしてもあのロマンたっぷりかつ、その国の母国語に訳せば大体かっこよくなることで有名な地球のある国を想起させる。


現在託羽は監視役のおっさんと共に町の図書館に来ていた。

あの後日をまたぐことなく『翻訳機』とやらが運搬され、あちらの意思とこちらの意思の伝搬がとりあえずできた。

どうやら語学を介さない、所謂『ニュアンス』をぼんやりと伝える仕組みらしい。

なるほどそれなら語学の問題も大体突破できる。

当然細かいことは伝わらんし、そのままでは支障があるためその『翻訳機』をとっかかりに軽い質疑応答を行った。

既に怪しさやフルバーストだったし、かつ丼の件でなんかばかばかしくなったので結構好き勝手応答した。

もちろん虚実入り混じった内容だったが吹っ切れたことでスラスラ嘘が出てきたし、嘘をつくことにいちいち緊張しなかった。

その結果、向こうも判断に困ったようで怪しいだけで特に何もしてないこっちを持て余したようだ。

なので放り出された。

もちろん監視はつくし、行動は制限されている。

とはいえ情報化社会で戸籍がない男への対応としては当たり前、というかかなり温情があった。

(そこは感謝しないとな…)

察しはつく。

おそらく今も俺を監視できる場所で煙草を吸ってるあのかつ丼のおっさんが便宜を図ってくれたのだろう。

(あっ…職員に怒られてる)

図書館で煙草を吸ってるから当たり前のように女性司書的な人に怒られている。

(またあの笑い…)

俺も何度か見たくしゃっとした笑みで頭を下げている。

対する司書さんも本気で怒っているわけではない。

語気は強いし、注意しているのも本当だが二人の間には絶妙な気安さがあった。

何もここだけの話ではない。

道中でもいろいろな人に話しかけられていた。

あれも一種のカリスマだろう。

人に好かれる。

多くの人が『あいつのためならいつでも駆けつけるよ!』というタイプ。

同じ目線で、みんなに気に入られる人望。

地球にいたときのあの男を思い出す。


(…あの男って?)


知らず上がっていた口角が一瞬でずり落ちた。

自分は今、ナニヲカンガエテイタ?


(はは…まいったな)


どうやらすでに地球での思い出の一部は『どうでもいいこと』と無意識に判断して忘れてしまったらしい。

人の名前を記憶することは苦手だったとはいえクラスの中心人物の名を忘れることはそうそうない。


(はぁ…)


嫌なことを自覚してしまった。

切り替えるように肺から息を出しながら椅子に座りなおす。

まだ小言を言われているおっさんを横眼に再び抱えていた本に目を向ける。

当然目に入ってくる文字は一切理解できないが、それを視認するだけで意味が読める。

一度こちらの言語をニュアンスに変換したのち、使用者の知っている言語に置き換わって伝達する機構、らしい。


あまりにも都合がよすぎるし、この砦町に短時間で運搬されたのも、そもそもこんなものが発明されているのが不思議だ。

まるで俺のようなものが出てくるのを予期したかのような用意周到さ。

(どう行動しようが掌にいるようで嫌になるね…)


そんなこんなでとりあえず情報を集めたかった俺はベタに図書館に行きたいと進言し、こうしてこの国、大陸、星の基本情報を集めている次第。

元々母親のミステリー小説や、ラノベなんかをよんでいたため『読書』という行為に抵抗がなかったのが幸いした。

(抵抗なく読書ができるのも一つの才能だよな…感謝感謝)

テーブルに置いておいたカップを口元に引き寄せ中身をすする。

かつ丼の時点で予想してはいたが、大きく味覚は変わらんらしい。

不思議な味ではあるが別に普通に巧い茶だ。


先ほどから読んでいるのはこの国の歴史書だ。

この砦の所有者の国について調べていた。


始めに何を調べたらよいかは、調べたいことが多すぎるせいで混乱した。

が、中でも『記憶喪失』の設定の人物が調べ始めて不自然でないものとなるとこの国の歴史についてだった。


(2000年以上の超長寿国家ね)

地球ではありえない長さだ。

しかもこの国の創立初期からある程度文化ができていたようで、それ以上の、下手したら万を超える人類史があるのかもしれない。

帝国、というらしく現在の帝王が第91代目。

一代で約30~40年任期があるらしく、現皇帝は齢50に差し掛かろうという次第らしい。


パラパラとめくってくとそこに記されたのはある種『英雄的』『物語的』な伝説の数々。

ドラゴンを倒しただとか、どこどこの国との恒久的平和を実現したとかそういった英雄譚のエンディングでありそうな出来事がほぼすべての歴代帝王の足跡として少なくとも一人一つ記録されている。

鼻で笑ってしまいそうなほど空想上の物語だが、先代や現代の記録ですらそのありさまなのだからあながち嘘でもあるまい。

次代を台頭する歴代英雄によって率いられたほぼ全人類が所属する大国家。

それがこのシルヴィの帝国らしい。


(いきなり飛ばしてきたなぁ…)


よんでてめまいがしてくる。

地球より多くの時間をこの星が積み上げ継承してきたことは装甲車やらで予測できていたので驚きはしないが、いささかぶっ飛びすぎている。

世界観の設定として異世界転生ものの国家って言ったら基本無能だったり、ラスボスに裏から支配されていたりするのがテンプレなのにこの帝国とやら。

一切の遊びがない。

何このガチ国家。

の割にトップは英雄だし。

こっちに都合が悪いように空想と現実がミックスされている。


飛行機や銃器、リニアモーターやらの地球でもあった技術の発展系。

魔法やステータスなどのファンタジー世界特有の技術。

そしてそれらの融合体。


歴史書をめくればめくるほど飛び込んでくるファンタジーが、見覚えのある科学技術によって現実味を帯びて殴り掛かってくる。


(……)


少し打ちのめされたがぼおっとしている暇はない。

今は保護観察的な立ち位置の俺だがいつまでも甘んじてはいられない。

調べものをすることで早急に決めねばならんことがある。


それはこの異世界への向き合い方だ。

つまり

『帝国にはいりこんで比較的安全に地球への帰還方法を探す√』

『あらゆる国に唾はいてアウトローにきどって放浪の旅に出る中二病√』


確実性では前者だろう。

そもそも帝国にこうして接触してしまている以上、敵対するか懐に入るかは決めねばならない。


(まあ、もう決まってるようなもんなんだが…)

(タクハ)

(ああ、はい。『翻訳機』の解読。できたのか?)

(うん)

(うっし。サンキュ)


耳に突っ込んでいたイヤホンのような形状の翻訳機に使われている魔法の解読、というか実質『暗記』を任せていたが無事終わったようだ。


(まあ、ユリアを連れてる時点で中二√一択ですよね~)


刻一刻とこの砦からトンズラする算段を建てているが、しばらくは情報収集に順次することになるだろう。


とりあえずは読み終わった帝国歴史書で出てきた気になる単語について別のほんで調べるとしよう。


(えっと?『亜人』『レイル』『迷宮』…あとは『鬼王』だっけか?)


しばらくは視点を二つに分けて世界観の解説とそれに関連した戦闘の予定

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ