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現実

二章開始

キャラシがまとまらんのでこっちが先

託羽だけでWord4P持っていきやがったのでね

「…」

向けた視線の先にあるのはレンズ。

こちらの一挙一動を逃さんと駆動する人口の目。

「…」

首を少し曲げ半眼で向けた先に見えるのは五秒単位で報告を行う複数人の監視人。

誰か一人に異常があったらすぐに伝わるような配置だ。

(誰か、助けて…)

そんな状態の小さな部屋の真ん中。用意された椅子の背もたれに体重を預け天井を見上げる。

部屋を照らす電球もどきに、今日何度目かもわからないため息をつき数日前のことを思い出す。

洞窟から飛び出して、『影』に言われた方向の人里を目指して歩みを進め、旅の仲間と対策を練っていざ街道に踏み出したまでは良かったはずだ。

我ながら慎重すぎるほど慎重に行動した自負がある。

なのにこうしてつかまり、監視を受けているのはどうしたことか。

(やっぱり、思い込んでたってことか…)

警戒していようと、その思考の前提に思い込みがあった。

当たり前のように考えていた要素が覆された。

つまりそういうことだ。

(異世界、ぶっちゃけ舐めてた…)


**********


街道を発見し、ユリアの性格、感情の獲得を確認し、町での行動、口裏合わせをなした後、一度の野宿(さすがにサバイバルは慣れた)ののち、街道に沿って歩くことにした。

とりあえずの行動指針としては

・町の様子を外周を回って確認する。

・それで得た町の大きさや技術レベル、人口や町への入り方、その頻度の情報を得る

・再度ユリアと相談

・町に自然に入って情報収集

といった手筈を構想していた。

街道に沿って、つまり街道から少し離れて誰かを鉢合わせないようにする。

誰にも見つからずに観察を行おうとしていた。

軽く未来観測も使いつつ、腕に巻き付く布上に変形したユリアと共にコソコソ移動すること数時間。

(慣れない…ていうか違和感、か)

大地に起伏はなく、それゆえにもし近くに町があるのだとしたらすぐにわかるのだろうがそれがどうしても違和感だった。

つまり、大地の高低差が多い日本の県出身の身にしてみればこの平かつ水平線まで緑以外何もない景色は物珍しく感じた。

大体が建造物や山によって全方位囲まれ、地平線が見えるのは海程度。

ゆえにこの先にある町も所謂『城壁に囲まれた町』や『村のような集落』だと思っていた。

それは地球にいた際の『異世界』におけるテンプレート。

魔法と剣の世界のお約束。

地球より劣った技術力で、良くて中世レベル、下手したら狩猟生活か。

後者は『亜人』系、所謂敵勢力の生活体系として描写されることが多いだろう。

だから油断したのだろう。

茂みの中に潜みながら街道に沿って進む俺たちがそれに気が付かなかったのは。

[そんなものがあるはずない]

そう思ってしまったのだ。


ゆえに茂みでふと発動していた未来観測が自分に知らせてきた数秒後のことに俺は心底驚いた。

それが、人や魔物なんかの動物ならよかった。

何故ならその未来を見た瞬間踵を返せば発見はされない。

そもそもそういったことを期待して俺は未来観測をしていたのだ。

だが、見えた未来の景色はただ俺がふと視線を上げた先に『あるもの』を見つけたことを知らせるものだった。

(っつ!)

足を止め、とっさに視線を周囲に回す。

なんの変哲もない茂み。

(いやっ!)

かすかに木々から差し込む日の光が本来あるはずのない光沢を映し出す。

魔法やらなんやらで巧妙に偽装されていたなら時間の流れを視れるこの左目は、そういった小細工を無視してそれをとらえられる。

格で言えば劣るそういったごまかしは、上位者である託羽には根本的に無意味。

だが、しかし

それでも彼が『異常』と感じないもの。つまり『純粋な物理法則』によってなされたものは違和感として認知できない。

それを違和感として感じるのは『世界を疑う』そして『自分を疑う』ということだ。

どんな創作でも『物理法則』は存在する。

何故ならそれがない世界を人は想像すらできないのだから。

想像できたら物理法則が少しでも成り立つといえる。

もし、物理法則に基づいたものを発見するならそれ相応の方法がある。

決して『異常を察知する』能力の出番ではない。

その欠点をいま見事に、偶然にも突かれた。

それを直視しないようにしつつも、それを見、呆然と目を見開いた託羽の視線の先には『カメラのような不思議なガラクタ』があった。

それは直接的な危険でもなければ異常なことでもない。

今、これを見つけた未来を知ろうが『明らかにすでにカメラで発見された後』なのだ。この茂みに入った直後なら数十分前から見られていたことになる。

その事実を未来観測で知っても、ねえ?

意味がない。

後の祭りだ。

過去改変の時間操作は当然ながら今の俺にはできない。

そもそもいろいろ使って、一瞬の時間停止が限界なのだし。

(逃げる?隠れる?待つ?何を?)

流石に今までのように冷静さを欠くことはなかったため、

(…もし監視カメラですでにみられているなら逃げても無駄か)

程度を考える頭はあった。

コソコソ動いている姿を見られているのだろうし今更感が漂うが。

ゆえに変わらず、しかしそのガラクタの存在を認識しながら進み続けるしか選択肢はない。

(未来観測ではなく過去観測だったらすぐに分かった?だが…)

そもそも数秒後の未来観測がしたまま、下手したら過去数年分を回覧するなど不可能だ。

同時使用はできないし、回覧を行う思考リソースもない。

できないことを考えても仕方ない。

でも、先ほど見た『ガラクタ』については考えざるを得なかった。

何故なら彼が先ほど見つけたカメラは『大きさが砂粒程度しかなく木に埋め込まれていた』のだから。

彼の知っている監視カメラ程度なら問題ない。当然のように発見、対策ができただろう。

当たり前だ。今の彼は『できることは全部やっている』のだから。

隠された砂粒程度のレンズの反射を観測できた時点で異常なのだ。

だと、しても

一番の問題は『彼がそれをガラクタだと認識したということ』だ。

普通現代人は監視カメラに準ずるものを目にしたとき、それを頻繁に見るものではなくともなんであるのかは何となく理解できる。

世間一般に知られ、常識の一端として浅くはあるが広く認知されている情報であるのだから。

中にはその理屈までもを理解しているものもいるだろう。

ゆえにもし彼が発見したものが『地球で当たり前のもの』なら、ガラクタには見えないはずだ。

専門分野の機器となれば話は別だが、彼がそれを見たときに感じたのは圧倒的な『基礎』の差。

分野、方向性の問題ではなく根底の『技術レベル』の差を感じた。

ならばそれは『魔法、ステータス』に関する、いわゆるファンタジー要素によるものかと言われたらそれも違う。

そもそもそういった『異常現象』、世界の改変は彼には意味がない。

単純な、そして純然たる事実をそのガラクタから彼は感じ取った。

感じ取ってしまった。

(…とことん優しくない、というか創作の異世界が甘っちょろすぎただけ…か)

まだ一つしか見てなかったそれ。

が、注意して観察すれば明らかに『ガラクタ』だとしか認識できないそれらがそこかしこに確認できた。

(多分、なんらかの敵の進入察知ようだな…少し考えればそういったものがあるのは当然だろうに)

だがこれらは彼にどこまでも厳しく現実的な一つの可能性を示した。

目にしたものを、『地球の技術水準が基本』である彼が『ガラクタ』と認識した。

してしまった。

まるで数百年前『黒船』が来航した際の日本人のように。

それを超える圧倒的技術力の差を痛感した。

彼の根底にある常識がこの世界技術の一端を見たとき


この異世界は物理法則の利用、その技術力が地球の遥か上だ、という可能性を認識した。


誰が異世界を地球の下だといった?

決めつけた?

それはもちろん『地球のあたりまえをひけらかすだけでチートできる』からだろ?

そのほうが『展開上』都合がいいからだろ?

何も持たないくせに自尊心と下半身だけいきり立ってる糞野郎どもが有利になる設定だからだろ?

屑が。

そんな思い上がった都合のいい現実なんて厳しい現実の前ではなんも重さも持たない屑であるというのに。


考えてみれば当然。

魔法、ステータスという地球と違ってある程度理屈を無視できる手段があって?

魔族やらと常ににらみ合い争うという技術が進みやすい環境。

時間は短くとも数百年はあり?

そして当然『物理法則』が共通なんだぞ?


21世紀地球より技術が上で何がおかしい


半導体、銃器、飛行機、電子機器だって当然いつかたどり着く。

基板は同じなのだ。

同じ『物理法則』の上にあるのだ。

だったらその後の環境いかんによっては地球のそれを超える技術を持っていてなんの不思議があるという。


『軍事チート』?『内政チート』?

馬鹿が。

そんなもの『地球のほうが技術や情報が上』だなんていう異世界を見下した屑どもが考えた現実味の全くない妄想だろうが。


それを都合のいいように理解してどいつもこいつも異世界は中世レベルの技術だァ?

ふざけるんじゃないぞ。

戦争が技術の進歩に貢献していることなど地球の子供は誰もが知っている。

地球じゃできない魔法なんて理不尽が使えてしかも下手したら千年単位で歴史を刻んだ世界だぞ。

むしろ地球以下なんて考えるほうが不自然だとは思わんのか?


「ったく、この現実主義者が…っ」

「…?」

「いや、こっちの話だ」


腕に擬態していたユリアが首を傾げた気がしたので軽く返事を返しつつこの世界の設計者に届きもしないだろう文句を垂れる。

この世界が既知ではない可能性は考えていた。

実際、この世界への転移後に呼吸の可不可はすぐに確認したし、地上に出るときは空気汚染や毒ガスなんかの環境の確認をしていた。

だが、対策を建てられて対応できるのは既知が相手の時限定だ。

相手が未知なら。

いくら頭をこねくり回そうが答えは出ない。

情報がないのだから。


(その辺、あの影は間違いなく分かったうえで言わなかったな…)

あのやろう今度会ったら殺す、とにやけるあいつの顔に頭の中でパンチをしつつ進行を積つづける。

暫くすると何もなかった水平線上になにかやけに高い建造物が見えてくる。

そしてその方向から近づいてくる複数人の重火器や槍で武装した装甲車も。

「…」

既にあきらめの境地に達し、死んだ目で立ち尽くす彼を心配する気配をユリアから感じ取る。

が、彼にそれに対応する余裕はない。

既に見える装甲車以外の方向から、7か所の方向からこちらを確認する気配を感じ取っているのだから。

「…あぁー!!!!ーーーもういい!!!!!」

なかばやけくそ気味に両手を上にあげて降参の意を示す。


数十分後、装甲車数台に乗せ慣れながらドナドナされる少年の姿がそこにあった。


情報を得たい彼にとって己の武力は無意味である


迫りくる情報化社会

『金と信頼』

彼が持たないそれが世知辛い現実として迫る


次回─

取り調べとかつ丼


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