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紡がれた青春  作者: ノベルのべる
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文化祭XV

 とは言ったものの、あの屋上での出来事があった後、俺は晴人に聞くことができていない。それがなぜかといえば、晴人がその話題をあからさまに避けているからだ。俺がその話題を出そうとすれば、席を立ってその場からいなくなる。始めは俺の思い込み過ぎかとも思ったが、こう何度も同じような場面が繰り返されれば、晴人が故意に、あのときの話題を避けているとみて間違いないだろう。

 それに、俺も晴人のプロットを文章に起こすのに最近は時間の大半を費やしているため、あまり晴人の様子を窺っている暇もなかった。

 まじで、執筆作業って鬼畜だな。今更ではあるが、執筆を担当するのを断っていればよかったとしみじみと感じている。

「春樹、執筆は順調?」

 表紙などを担当していた秋月は、白紙に鉛筆を走らせていた。ちらりと覗いてみれば、そこにはラフ画が描かれていた。……うまい。案外器用なんだな。

「ちょっと、今何か失礼なこと思わなかった?」

 秋月のジト目から逃げるように視線を外して、パソコンの画面に向き直る。普段パソコンをあまり使わないから、タイピングの速度が遅い。隣の冬川は、先ほどからパソコンの画面を見ながら、リズミカルにキーボードをたたいている。あれがシャドータイピングというやつか。架空上のスキルかと思っていた。ゲームみたいに、スキルの譲渡とかできないのかなー。

 そんなどうでもいいことで現実逃避をしている間にも、時間は刻々と過ぎていく。

「絵の方はどうなんだ?」

「ぼちぼち、かな」

 煮え切らない返事に違和感を覚えたが、その疑問をこの場で口にすることはできなかった。なんと、晴人が耳打ちしてきたからだ。

「春樹、この前の屋上の件なんだけど、つまびらかに話すのは、すべてを開示するのはもう少し、文化祭まで待ってもらってもいいかな。心の準備ができていないんだ。それに、今は春樹もそれどころじゃなさそうだしね」

 俺の耳元から顔を離し、パソコン上に映し出された俺の原稿に目を向けると、冗談交じりの表情を浮かべてそんなことを言う。

 確かに。今はそれどころじゃないかもな。

 このときの俺は、晴人が抱えている問題を過少評価していた。晴人があれほど苦しんでいたことを失念していた。いや、晴人が「それどころ」と表現したことから、たいしたことではないのだと思い込まされていた。他ならぬ晴人によって。

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