文化祭Ⅷ
本真先生に連れられ、俺たち相談部四人は教室棟の屋上へと足を踏み入れた。
屋上には四方八方に柵が立てられている。その高さはちょうど先生が腕を置き、顔を外に乗り出せるくらいだった。
「私、ここが好きなの。この屋上のここから見える景色が好きなの」
先生は俺たちの方を見ない。
「……それで、話って何かな」
風が声を運んでくれる。
本真先生がこちらに体ごと向き直る。
その目には微笑をたたえているが、無理して作った笑顔であることが、遠目からでもわかる。
これは本当に言うべきこと、聞くべきことなのだろうか。本真先生とあの人を傷つけてしまうだけの結果しかもたらさないのではないだろうか。
口が貝になったように固く閉ざされている。何のためにここまで来たんだ俺。懸命に自信を奮い立たせるも、なかなか思い通りに俺の口は開いてくれない。
やはり言うべきではないのかもしれない。誰も救われないであろう言葉を口にする必要がどこにあるというのだろう。ここは、上手いことごまかしてこの場をやり過ごすのが正解なのかもしれない。
「春樹……大丈夫。僕たちがついている。僕たちが君の背中を支えるさ。だから、君一人が背負い込む必要なんてない。君一人で抱え込まなくてもいい」
背中に手のひらの感触が伝わってくる。そして、少し小さめの手が二つ背中に押し当てられる。
ああ、そうだった。俺は一人で生きているわけじゃなかったんだ。相談部のみんながいたからこそ、今この場に立っていられるんだ――中学最後の頃には、人を頼るのを嫌悪していた俺が、まさかこんな気持ちを抱く日が来るとは。人生わかったもんじゃない。
体中の筋肉を弛緩させる。視点を屋上の床から本真先生へ移す。
さあ、推理を始めよう。
その結果が何もたらすのか――希望か絶望か、それとも無気力か。
とにかく進んでみなければ、踏み出さなければ、何も変わらない、変わってくれない。
――大丈夫、俺には彼ら、彼女らがいる。俺の背中を支えてくれている。
俺たち相談部が物語を紡ぐための物語が今始まる。




