5/84
入学Ⅴ
帰宅しようと鞄を肩にかけ、教室の扉を出ると、教室に入ってくる晴人と遭遇した。
「あ、ちょうど呼びに行こうと思ってたところなんだ。知り合いの先輩が入っている部活を今から見に行こうと思ってるんだけど、一緒に行かないかい?」
特にこの後の予定はない。断る理由もない。
このとき誰かの視線を感じた気がしたが、気に留めはせず、俺は促されるままに教室を出た。
「部活って何部だ」
特別棟三階にあるらしい部室に向かう晴人に声を掛ける。
「うーん、それが僕も知らないんだよね。だからこそ知るためにその部室に足を運んでいるんだ。楽しみだなー」
知りもしないのに俺を誘ったのか。恨みがましい視線を晴人に送るが、晴人は気にせず会話を続ける。
「どうだい、クラスのメンバーとはうまくやれそうかい?」
視線を前に向けたまま、あっけらかんとした様子で聞いてくる。
「……まあ、ぼちぼちな」
その返事を聞いて晴人は何を思ったのか、そうかい、という言葉を返すのみであった。