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紡がれた青春  作者: ノベルのべる
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校外学習Ⅺ

 まもなくショーが始まるといったところで、田口さんが友達と思われる女子生徒と一緒に現れた。片手を挙げて、田辺に合図を送る。これで役者は揃った。

「みなさま、ようこそ、サイエンスショーへ! 本日の内容は――《超えろ! 表面張力》です。自分のネーミングセンスの無さは重々承知していますので、どうか温かい目で見守ってください。それはさておき、この実験は観客の方々の中から二名にご協力を願いたいのですが――そうですね、そこのお兄さんと、あちらのお姉さんはどうでしょうか」

 白衣をまとった学芸員は、田辺と田口さんを指名する。

「はい、壇上に上がるときは気を付けてください。ここに来ればあなたたちは研究者。研究者というものは、一歩間違えれば――例えば階段で躓いて、危険物質をこぼしてしまったりすれば、大惨事につながるかもしれませんからね。どうか慎重に壇上へとおあがりください」

 冗談といった口調で、二人を壇上へと誘導する学芸員。

「さて、ではまずお二人には、こちらのお皿のようなもの――正式には十五センチディッシュと呼ばれるものですが――これを一緒に持っていただきます。そしてあちらの場所まで、中に入っている水をこぼさずに運んでもらいたいのです」

 五メートルほど離れた場所にあるテーブルを指さした学芸員は、さらに説明を重ねる。

「水をこぼさずに運ぶことができれば成功です! では、実際にやってみましょう。どうぞ!」

 その掛け声とともに、田辺と田口さんは、そのプラスチックでできたお皿状のものを二人で持ち、ゆっくりと五メートル先のテーブルまで運び始めた。始めは二人の歩くスピードが上手く合わなかったりしたためか、何度か冷や冷やする場面もあったが、それでも後半になるにつれて二人の呼吸も合ってきたのか、割とスムーズにテーブルへと到着した。

「おめでとうございます! 一回目から成功だなんて、お二人相当息が合っていますね!」

 わざとらしいくらい大げさに褒める学芸員。

 ――計画を知っているから、そういう風に感じてしまうのだろうか。

「では、次はさらに難易度が上がりますよ! 過去に成功したペアは一つもない――超高難易度ミッションです!」

 学芸員は懐から何やら容器のようなものを取り出した。

「じゃじゃーん! この中には、なんと――洗剤が入っています。これを水に少量垂らします」

 水の入ったビーカーに、洗剤を垂らした学芸員は、その水をディッシュに入れた。

「では、今度は成功なるでしょうか! 成功率ゼロ%の超難易度ミッション、始め!」

 ……遠くからなので水の状態まではよく見えないが、さっきよりも苦戦している様子だ。歩く速度がゆっくりだし、何よりペアの相手の動きに合わせるような姿勢が多く見受けられる気がする。

「ねえ、さっきよりも時間かかってるよね」

 聞いたことがある。詳細なメカニズムまでは知らないが、洗剤の成分には表面張力を弱くする作用を持つ成分があると。その影響で水がこぼれやすくなっているのだろう。

 先ほどの倍近くの時間をかけて、二人はテーブルへと到着した。水をこぼすことなく。

「おー! 成功です! 成功しました! 水を一滴もこぼすことなく、この二人は成功させました! 観客のみなさま、彼と彼女に盛大な拍手をお願いします!」

 しばらくの間、拍手が鳴りやむことはなかった。

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