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紡がれた青春  作者: ノベルのべる
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校外学習Ⅶ

 五月も中ごろに入ったその日、俺は部室で読書をしていた。一昨日書店で購入した文庫本で、これがなかなか面白い。九人の天才たちが孤島に集まり、次々と何者かによって殺されていく。一見、ただのクローズドサークルものに聞こえるが、トリックが秀逸で、思わず昼夜問わず読み進めたくなる内容だ――授業中は読んでいませんよ。僕は真面目な学生ですから。

 誰に向けたともわからない心のつぶやきを、そっと心にしまい込む。

 休憩がてら部室を見回すと、読書に夢中で気が付かなかったが、どうやら全員――晴人と秋月と冬川――揃っているようだ。元部長の桜井先輩は、俺たちが推薦した――押し付けたわけでは決してない――冬川にいくつか伝言をした後、じゃあ後はよろしく、といって部活を引退した。一緒に活動した時間は短かったが、というか一度もなかったような気もするが、とにかくあっさりとした感じがいかにも桜井先輩らしい。あれから部活見学に来る新入生もおらず、俺たち相談部は四人で活動している――といっても、あのフルート事件(晴人が命名)以降、相談事は全く持ち込まれていないのだが。

 冬川は生徒会役員を務めているので、週に一、二回部室に顔を出している。晴人は、クイズ研究会と料理研究会にも在籍しているらしく、顔を見せるのは不定期だ。一週間全く来なかったかと思えば、次の週は頻繁に顔を見せる、といった感じで、まあ、各々好きなように活動している。秋月はと言えば、意外なことに――これを本人に言ったら怒り狂うだろうが――皆勤賞らしい。ちなみに、俺は時々なんとなく休んだりするから、秋月に最近頭が上がらない。これは冗談としても、こんな感じの出席状況なら、秋月が部長の方が良かったんじゃないのかと、秋月に尋ねたら、いや、私はそういうの向いてないから、と取り付く島もなかった――本人に不満がないのなら別に構わないのだが。

 そんな感じで今日一日も何事もなく、相談事も持ち込まれず、平穏無事に終わるのが当然だと考えていた怠惰な俺に天罰が下ったのだろうか――その日、部室にノックが鳴り響いた。

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