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紡がれた青春  作者: ノベルのべる
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入学Ⅰ

「兄ちゃん! 朝だよ、朝! 入学式でしょ、今日。遅刻しちゃうよ!」

 ……ん、まんじゅう、おいしい。もぐもぐ、やわらかい。もっと、もっと――。

「ちょっ、兄ちゃん何してるの! それは私の腕! いつまでも寝ぼけてないで、ほら!」

 俺の体は一瞬体重のよりどころを失った。そして、自室のフローリングに体を打ち付けた――これはあくまで事後分析だが。とにかくそういう朝を俺はこの日――高校入学式の日に迎えた。体の痛みで朝の眠気が吹っ飛んだ、というよりは、体を打ち付けた痛みと朝の眠気が反比例してくる感じを味わった。つまり徐々に眠気がなくなってきた感じということだ。朝からこんな戯言思考が浮かんでくるのもいつも通り――今日も通常運転だな、俺。

「早く降りてきてね! ご飯!」

 この、朝から元気なのは俺の妹、夏希だ。俺の妹とは思えないような出来っぷりで、小説だったら人間書けてないだろレベルに超人だと俺はいつも感じている。まあ、俺から見たらたいていの奴は超人に見えるんだが。

「……了解」

 俺が言い終わるよりも前に、妹は部屋から出て行ってしまった。まあ、これもいつも通りだ。夏希と俺は、両親が東京に長期出張しているため、現在二人暮らしをしている。夏希の中学受験が一段落したところで、両親は出張に行ってしまった。ちなみにそのとき俺の高校受験はまだ終わっていなかった。……やばい、夏希と俺の扱いの差に泣けてきた。何とか第一志望に合格したときの幸福感を思い出すことで、酸とアルカリを中和するみたいにしようと思ったがうまくいかず、そのまま蹲ってしばらく動けなくなってしまった。

 そうこうしているうちに、階段を上ってくる音が聞こえてくる。

「……ちょっと、兄ちゃん。……何してるの」

 妹が少し引いたような目で見ているのが実際に見なくてもわかる気がした。

「……いや、小指をタンスの角にぶつけただけだ」

 それを聞くと、とにかくご飯出来てるから早く降りてきてね、と言い残して、夏希は階段を下りて行った。

 そんないつも通りの目覚めから、俺の高校入学式の日は始まった。


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